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雑誌目次

雑誌文献

病院49巻2号

1990年02月発行

雑誌目次

特集 中小病院サバイバル

現代中小病院論

著者: 竹川節男

ページ範囲:P.110 - P.113

中小病院の定義
 中小病院の明確な定義は現在見当たらないが,病床規模から定義するとすれば200床未満のものが当てはまることになるだろう.その根拠は,少なくとも200床以上の病院では病院管理体制の確立が必要であると考えられるからである.しかしまた,200床未満の病院でも100床未満と100床以上の病院ではその運営形態は明らかに異なる.医師一人の努力だけで病院を運営管理する病床規模は100床未満までで,それ以上となると,経営組織や管理手法の導入が必要となる.実際に民間病院の組織や人事および財務状況をみると,100床未満では全く病院経営に素人の医師であってもどうにか経営している場合が多い.
 病院管理体制の確立が必要な病床規模は,数年前までは300床以上とされていたが,近年は病院業務の拡大により200床程度の病院でも病院管理体制の確立は,健全な運営に不可欠であると思う.このように病院業務が拡大する動きは,今後さらに進むことが予想され,そのような意味では,中小病院を病床規模で定義することは全く無意味なことかもしれない.

現代中小病院論

著者: 梅里良正

ページ範囲:P.114 - P.117

はじめに
 昭和62年のわが国の病院9,841施設(昭和63年では10,034施設)のうち,病床規模が300床を超える施設は全体の15%にみたず,その大部分は中・小規模の施設となっている.大学附属病院や公的な総合病院などは,設立の当初から比較的大きな病床規模で計画が進められることが多く,医療機器・設備面においてもしかるべく整備がなされる.これに比べ,私的な開設者によって,徐々に病床規模の拡張がなされ,現在に至っているような施設においては,近年の患者のみならず医療従事者をも含めた,大病院志向の強まる中で,次第に長期収容傾向の強い患者へのシフトを余儀なくされるケースも見られるようになっている.
 しかしながら,前述のように,大規模病院の施設数は少なく,これらの施設のみで住民の急性期の医療需要に応じていくには,医療へのアクセッシビリティの側面からは,決して満足な結果が得られるとは考えられない.むしろ,急性期の医療応需においては,慢性疾患を対象とした長期収容型の医療提供に比べ,病床規模はそれほど大きくなくとも,地域に適切に配置されていることが重要視されるべきであるとも考えられる.

グラフで見るわが国の病院の変遷

著者: 中村健二 ,   川口毅 ,   入山文郎

ページ範囲:P.118 - P.122

 わが国の病院の変遷をみるために厚生省大臣官房統計情報部で行っている医療施設調査,病院報告,患者調査のデータをもとに,病床規模別の解析を行った.医療施設調査は,医療施設の分布および整備の実態を明らかにし,医療施設の診療機能を把握することを目的として,3年毎にすべての病院・診療所について調査しているものである.病院報告は病院における患者の利用状況,従事者の状況を把握することを目的として,患者票については毎月,従事者票については毎年,全国の病院について調査している.また患者調査は,医療施設を利用する患者の実態を把握することを目的として,都道府県別に抽出された病院,診療所について昭和59年までは毎年,以後3年毎に行っているものである.
 これらの調査の結果をもとに,病床規模別の病院の特色を示したものが以下のグラフ,表である.

公的中小病院の生きる道

著者: 岡本一雄

ページ範囲:P.123 - P.124

なぜ医療の谷間となったか
 まず初めに当病院の立地している六戸町を紹介する.六戸町は青森県上北郡の東南部に位置し,人口10,916人,東は下田町(人口9,102人),西は十和田市(人口61,750人),南は三戸郡五戸町(人口19,744人),八戸市(人口242,609人),北は三沢市(41,850人)にそれぞれ隣接している.車で三沢市まで15分,十和田市まで20分,八戸市まで40分の距離である.地形は南部台岳地帯の一部を形成している洪積層の台地と細長い沖積平野とからなり,目立った高地,山岳はない.また水系の主なるものは源を十和田湖に発する奥入瀬川の下流相坂川で,町の中央より南部を流れている.
 六戸町民の大半は農業に従事しており,老人もかなり多い.したがって当病院は老人医療を中心としている.医療圏は下田町の一部,五戸町の一部をも含んでいるが,三沢市,十和田市の八戸市への患者の流出もかなり多い.ちょうど医療の谷間のような場所となっている.なぜ医療の谷間になったのかは,六戸町立病院の歴史をたどってみると,なるほどとわかる.

私的中小病院の生きる道

著者: 福井谷祐一

ページ範囲:P.125 - P.128

はじめに
 地域医療計画の設定と第二次医療法改正を前にして,事実上従来の医療機関の成長過程もしくは維持に歯止めがかかり,ある意味では発展途上国ともいえる中小病院の立場は狭い選択肢の中に押し込まれた感があり,その存続の意義が問われると同時に,新たな展開の提示と実践が求められている.
 思い起こしてみれば,昭和21年に定められた日本国憲法で保障された「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある.……」の項の「健康で文化的な最低限度の生活」に関して,近年の国民意識の変化,経済動向,高齢者社会の到来等を前にして,その保護されるものの範囲と質に異変が起きてくるのは当然のことと言わねばならない.社会医学である医療の実践者としての中小病院の機能が,それに伴い新たな変化と対応を求められるのもやむを得ぬものであるが,この対応には中小病院群の問題だけにとどまらず,医療行政のあり方とともに,総合的かつ多角的側面を含んだ視野を必要とされてもいる.このような立場に立ち,中小病院の生きるべき道について,当院の実情も紹介しつっ触れる.

中小病院の経営分析—こんなことでは生き残れない

著者: 針谷達志

ページ範囲:P.129 - P.133

はじめに
 「中小病院サバイバル」,これが本号の特集テーマである.このテーマの背景には,中小病院が,既に生存し難い環境条件となった,あるいはなりつつあるという認識があると考えられる.
 環境条件には,病院の外部環境条件と内部環境条件がある.外部環境条件においては,地域住民の高齢化,疾病構造の変化,医学の進歩,医療費の高騰を核とし,医療機関の量的充足が医療の社会的効率化を命題とするなんらかの病院類型化と機能連携の要請を生み出した.また内部環境条件においては,職員の高齢化と平均賃金の上昇,将来予測のための意思決定機構の弱さに悩むトップ・マネジメント,中間管理層の手薄さ,看護婦をはじめとする一部の専門職の獲得難などを前提として,組織の整備,人事,財務等の管理の強化など院内合理化の要請を生み出した.

〔座談会〕21世紀の医療はまかせろ—病床過剰地帯から若手リーダーの発言

著者: 太田茂樹 ,   大橋正實 ,   秋山孝二 ,   西澤寛俊

ページ範囲:P.134 - P.141

 西澤 医療をめぐる環境が最近ますます厳しくなっておりますが,その中で特に中小病院の経営は非常に不安定な位置にあり,将来淘汰されるだろうという声も聞かれます.特に北海道,その中でも札幌は病床過剰地域として全国の注目の的となっています.
 本日はそのような地域を背景にして,30代で開業され,病院を経営されているお二人の先生に,お二人は21世紀になりましても現役のバリバリとして活動されるわけですが,21世紀の札幌の医療を担い得るのだという抱負を大いに語っていただきます.また,秋山さんは医薬品の流通関係の仕事をされており,医療の側面からの立場でご意見をおうかがいします.そこでまず,先生方の病院の理念と現在の特徴を簡単にご紹介いただけませんか.

アメリカにおける中小病院の苦悩

著者: ファイラマンゲイリー

ページ範囲:P.142 - P.143

 米国の中小病院は,これまでヘルスケアシステムにおいて果たしてきた役割が終わろうとしている非常に重要な時機にある.特に農村の小病院の将来は非常に大きな問題で,政治的問題にもなっている.

—インタビュー・仲村英一厚生省健康政策局長に聞く—中小病院の将来と医療行政

著者:

ページ範囲:P.144 - P.148

 —本号では「中小病院」の現在と将来についてトピックを中心に特集を企画しております.「中小病院」と申しましてもその定義はありませんし,現存の病院を見ましても,一般病院・総合病院・専門病院などその役割や機能はさまざまです.また,「公私」の問題もありますが,今日は200床以下の規模で公私を含めた中小病院ということで,お話をうかがいたいと思います.
 最初に,仲村局長はかねてより,21世紀に向けての医療変革の基本的考え方として「医療文化の変容」を提唱されていますが,まずこの考え方を改めてご披瀝ください.

グラフ

「やすらぎ」と「うるおい」のある開放的な病院を目指して—財団法人太田綜合病院附属太田西ノ内病院

ページ範囲:P.101 - P.106

 東北地方は,東北新幹線や東北自動車道などの開通による交通の便利さに伴い,急速な発展をみせている.福島県郡山市も,新幹線やまびこ号で上野より1時間20分で,十分に東京からの日帰り地域内にある.JR郡山駅より車で約10分のところに財団法人太田綜合病院附属太田西ノ内病院がある.
 本院は,総病床数1,800を超える太田綜合病院グループの中核をなす総合病院で,その病床数は1,000床に達する.太田綜合病院グループは,1895年に初代院長太田三郎氏が郡山市中町に医院を開業したのを発端としている.そして,1950年代以降,急速に発展・拡大し,現在では郡山市を中心に5病院,1看護専門学校,3保育園,2特別養護老人ホームを有する財団法人となっている.

第40回日本病院学会会長に就任された 土浦協同病院院長 登内真氏

著者: 川田健一 ,   八木保

ページ範囲:P.108 - P.108

 第40回日本病院学会は登内院長を会長として,平成2年6月つくば市で開催されます.
 登内先生は東京医科歯科大学医学部第1外科講師として胆道系・膵頭部外科の全盛期を築かれたあと,昭和48年に土浦協同病院の院長になられました.東京からあまり遠くないこの地域の医療レベルが大学に比べて10年以上も遅れているのに驚かされたそうです.その時すでに先生の脳裏には現在の土浦協同病院の姿が描かれていたようです.

主張

医療の公共性とは

著者:

ページ範囲:P.109 - P.109

 医療の公共性を検討する場合,私どもは医療の社会的態様について考えなければならない.一般的に,医療は,生活水準等社会的条件に左右されるが,社会福祉,社会保障の充実,さらには医療水準の向上は,国民が包括的に享受する権利としてよりも,個々人の満足度として認識されると思われる.医療の変革が叫ばれている現在,過去のわが国医療の変遷を顧みつつ,今後の医療の公共性について考えてみたい.
 わが国の医療施策は,明治7年の医制が公布されたことにより開始されたが,医療施策の中心は急性伝染病対策であり,医療の実態としては,警察行政的色彩が強かった.その後,慢性伝染病や精神障害者に対する施策が行われたが,国民一般に対しての施策ではなかった.昭和13年には厚生省が設置されたが,その後の医療は,軍事体制下における富国強兵としての施策が中心であり,公共性のある医療を目的としてはいなかった.

資料

21世紀をめざした今後の医療供給体制の在り方(抄)

著者: 厚生省健康政策局

ページ範囲:P.113 - P.113

1.我が国の医療の現状
(1)世界最長寿国の達成/(2)国民の医療需要の多様化/(3)量的確保の達成

建築と設備・46

中小病院3題

著者: 長澤泰 ,   辻野純徳 ,   高橋高雄 ,   阿部彰

ページ範囲:P.149 - P.155

魅力ある病院をめざして
 病院の新築で話題になるのは大病院であることが多い.また,患者側にも大病院指向があることは否めない.しかし,1万を超す全国の病院の85%が300床未満の病院である.100床未満の病院だけでも46%を占めている.病床数で見ても163万床の56%が300床未満の病院ベッドである(1988年10月1日現在).したがって,これらの病院抜きでわが国の病院建築の全体水準を語ることはできない.
 1987年の医療施設調査によると,これらの規模の一般病院の78%が民間病院(医療法人・会社・個人)である.現在の保健医療制度のなかで民間病院は特に採算を確保することが絶対条件になる.勢い,建築・設備投資に対しても厳しい条件が設定される.結果として建物の床面積は最小限に抑えられ,「無駄」な部分は最大限に削りとられる.

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

『絵に描いた餅』の話

著者: 古川俊之

ページ範囲:P.156 - P.156

 日本の人口当たり病床数は,国際的にもまずまずのところまで充実した.ところがアメニティの立ち遅れは依然として大きい.古い大学付属病院のなかには,余りにも不潔で入院したら最後,果たして生きて帰れるかと恐怖を感じるひどいものさえある.とくに患者の混雑は大層なもので,訪問者も職員も身体の接触なしに廊下を歩けない有様である.実情を知らぬ外人が見れば,日本には病人が氾濫していると誤解されそうである.ところがどこの院長先生にお尋ねしても,MRIだのDSA装置のことはとうとうと話されるが,病床当たり建築面積はいくらかという質問には,滅多に確かなお答えは頂けない.
 医療水準を人口当たり医師数や病床数で表すかぎり,医療の質は分からないのは言うまでもない.しかし日本の現状には,数の上での後進性が質の向上を妨げている気配がある.病床当たり建築面積を取ると,日本の病院の苦境は明らかである.10年前には日本の病院の病床当たり平均建築面積は,わずかに35m2に過ぎなかった.これは欧米の一般病院の病棟部門だけの面積比で,病院全体の面積比はイギリスで80m2とされていた.同じイギリスの教育病院では140m2,スウェーデンの教育病院は200m2にも及ぶから,何をか言わんやである.もっとも,最近10年間にこの数値は随分改善されて,大体65m2の線に達した.

病院管理の現場から 看護最前線

やり甲斐のある看護管理

著者: 板橋玲子

ページ範囲:P.157 - P.157

 青森県南部に位置する三戸町は,山紫水明にして農・水産・商業に恵まれた人口1万5,600の町で,南部藩の居城として栄えた歴史をもち,昨年町制100周年を迎えたところである.
 私が病床数638床の某市の総合病院の婦長を1年務めたあと,運と意志に任せて,180床の当院の総婦長の重責を負うことになったのは,昭和55年,私が35歳のときだった.赴任して当初の課題は,基準看護を採ること,そのために三交替制とチームナーシング方式を敷くこと,看護計画と看護記録を充実させて患者サービスに力を注ぐこと等で,目標は明確であった.

味わいエッセー 出会い

落語

著者: 桂前治 ,   中島英雄

ページ範囲:P.158 - P.158

 私が落語と出会ったのは小学校3年生の時で,詳細は省略させていただきますが,とにかく私の家で当時二ツ目の“桂伸治”師匠が落語勉強会を始めたのであります.私はただひたすら笑いました(エッ?小学校3年生で落語が解ったのかって?そうあの方の落語は「人情噺」はないし「廓噺」もない,ただ単純な熊さん,八っつあんの話だけでしたから大変分かり易いものでした).世の中にこんな面白いものがあったのだろうかと抱腹絶倒.たちまち傾倒して行きましたねェ.例のローレンツの“imprinting”というやつでしょうか.未だ脳細胞が150億個全部揃っていて神経線維も四方八方にnet-workを形成している最中でしたから,師匠の噺や仕草を片端から覚えてしまった(今この頃の才能があればなぁー).
 次には人前で演りたくなってしまって……演りましたねェ.クラスのお誕生日会なるもので,友達はみんなお歌やお遊戯をしているのに,私独り「エーお笑いを一席」とやっていた.受けましたねェ.友達はダメですよ程度が低いから分からない.参観の父兄,先生方に受けちゃった.そりゃそうだわね,小学生が「エー吉原というところは花魁てえものがおりまして……」なんて演っているんだもの.でも当人は勘違いしましてネ.「もしかして僕は落語の天才じゃないかしら」なんて,早速師匠に弟子入りを申し込んだ.「師匠!僕噺家になりたいんです」.

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

金持ち日本の貧しさゆえに

著者: 矢口光子

ページ範囲:P.159 - P.159

人間として診ると損する医療体系
 医者は患者を人質に,教師は子どもたちを表面上は人質にしているから,人質の本人も家族も大層礼儀正しい.蔭でほめられ,感謝されている医師や教師のほうが少ないかも知れない.それに気付かぬ医師や教師もこっけいに見えるが,裏で悪口を言っても解決にはつながらない.この双方を結ぶことはできないか?と考えていたら,本誌の昨年奇数月に健康・医療ガイドセンター(松原氏)の活動が紹介されており,先見性と必然性があり,ただし金もうけにはつながらぬこの事業がよくスタートしたものだと感心した.
 今の医師は人間をまるごとみることをしない.と言うより病気を診ているので,人間扱いをしていないドクターのほうが増えつつある.その理由は,医学の発達は専門分化に重点をおいて評価され,国民全体も○○の専門家というと尊敬し,医学も医療費(例えば点数制)も治療中心に成立っているので,その方向を強めざるを得ないのだろう.

特別論考

精神科急性期治療の臨床経済学試論(2)—精神病院が病院であるために

著者: 平田豊明

ページ範囲:P.160 - P.169

 前稿では,わが国の精神科医療の現状分析と当センター設立の作業仮説について述べた.要約すると,わが国の精神病床のうち,1年以内に回転する病床は全体の20%ほどであり,残りの80%の病床は,主として長期在院患者のための福祉施設として機能しているものと推測される.入院が長期化する要因には,個体因子,社会的因子,施設因子の3つが考えられるが,第3の施設因子の関与にもっと臨床家の関心が注がれるべきである.
 そして,施設因子による長期在院を予防するためには,精神病院の機能を空間的・時間的に切り詰め,急性期治療の段階に治療的投入(技術,人間,時間)を集中することが必要であり,また最もcost-effectiveである.すなわち,投じたコストに対する効果が高い.これが当センターの作業仮説である.当センターは,精神科救急医療からリハビリテーションまでを連続したシステムで行う治療施設であると同時に,この仮説を検証するための実験的施設でもある.

GROUPING & NETWORKING

東京都私立病院会青年部会の活動

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.170 - P.171

 東京都私立病院会青年部会は昭和59年,河北総合病院理事長(当時副理事長)河北博文が中心となり,都内の私立病院の若手経営者が集まり発足した.
 目的は相互に研鑽啓発し合い,地域医療の向上の中で私的医療機関の本来あるべき姿に基づき,激動する経営環境に適応し,各自発展繁栄を図る事とした.

厚生行政を読む

骨髄移植

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.172 - P.173

はじめに
 移植医療に関する話題が,最近,賑やかになってきている.世界でも数例しか経験のない生体肝移植が我が国で行われたり,心臓移植再開の動きが各地で窺われたりしているためであるが,今回は,移植医療のなかでも特殊な位置にある骨髄移植を取り上げてみたい.骨髄移植は,白血病や再生不良性貧血などの根治療法として約20年前より行われている医療技術である.(骨髄移植の試みそのものは半世紀前より行われているが,成功する見込みもない技術導入は,「人体実験」ということはできても「医療技術」とはいい難い.成功例が出てきた頃が約20年前ということである.)

病院運営の合理化を求めて

人員配置は最低限に

著者: 安田尚之

ページ範囲:P.174 - P.174

 病院運営の合理化には,人員配置数を見直すことが重要である.医療費抑制策が年々強化されている今日においては,収入を多くし支出を少なくすること,すなわち「入るを図り,出るを制す」ことが,病院サバイバル時代を乗り越えるための経営管理の根幹を成すものといえよう.
 病院の支出(経費)面で最大の割合を占めるのは人件費である.医療収入に対する人件費率は,その病院の経営母体,国公私立の別などによって多少異なるが,40〜50%となっているのが一般的であろう.したがって,病院経費のうち最も大きな比率を占める金食い虫(人員)を最低限に抑えることが,経営の効率化につながる近道ということになる.

医療・病院管理用語ミニ辞典

〔病院管理〕看護単位/〔産婦人科治療〕産婦人科のレセプト

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.175 - P.175

 ある一定の場所や施設での看護を担当する看護職員集団を看護単位mursing unitといい,看護組織の要素として1つのまとまりを成している.
 一般的には,病院の診療組織上の物理的な一区画を指す言葉である「病棟」とほとんど同義に用いられている.構造上は1つの病棟であるが,そのなかに互いに交流しない独立した2つの看護職員集団がある場合には,1病棟2看護単位という考え方がなされる.

統計のページ

アメリカの医療費統計①

著者: 新村和哉

ページ範囲:P.176 - P.178

 今回はアメリカの医療費統計を概観する.アメリカの国民医療費は1986年において4,582億ドル(1ドル=140円として64兆1500億円)であり,国民1人当たり医療費は1,837ドル(257,200円)である.GNP比としては10.9%になっており,周知の通りこれは世界で最も高い水準である(表1).

病院管理トピックス

〔手術室〕手術室における新人看護婦の教育/〔クリニカルエンジニアリング〕機器管理とクリニカルエンジニアリング/〔図書〕看護文献の探し方(2)/〔病院労働〕労働界の再編成とその影響

著者: 岩本昌子

ページ範囲:P.179 - P.184

 近年,医学の進歩に伴い,手術対象範囲の拡大や,複雑かつ高度な手術症例の増加がみられる.
 手術室看護の目的は,“周手術期を通して安全な手術環境を整え,手術がスムースに挙行でき,早期社会復帰のため,患者の個別性を考慮した看護ケアを実施することができる”ことである.この目的を達成するため,また医学の進歩に対応するための手術室看護婦の業務はより高度で専門的なものが要求され,現任教育が重要になってくる.今回は,当手術室における新人教育の現状と今後の課題を述べてみたい.

時評

老人保健施設を考える

著者: 矢島嶺

ページ範囲:P.185 - P.185

 日本の高齢化社会の医療・福祉で最大の問題点は,病院医療が,老化を伴う成人病に効率的・合理的に対応できないことにある.合わせて治療医療からケアへの変換が,医療費削減の波と,家族内介護の危機,在宅医療システムの未整備と相まって,矛盾を噴出させている.
 加えて,日本の医療・福祉の後進性が,このところ先進国のそれと比較されるに及んで,顕著になってきている.山の奥に作られた老人ホーム,目の玉の飛び出るほど高額の有料老人ホーム,それに老健施設である.ひと口に言って,その後進性の特徴は何であるか.あえて私見を述べたい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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