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文献詳細

雑誌文献

病院49巻2号

1990年02月発行

文献概要

味わいエッセー 出会い

落語

著者: 桂前治1 中島英雄1

所属機関: 1中央群馬脳神経外科病院

ページ範囲:P.158 - P.158

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 私が落語と出会ったのは小学校3年生の時で,詳細は省略させていただきますが,とにかく私の家で当時二ツ目の“桂伸治”師匠が落語勉強会を始めたのであります.私はただひたすら笑いました(エッ?小学校3年生で落語が解ったのかって?そうあの方の落語は「人情噺」はないし「廓噺」もない,ただ単純な熊さん,八っつあんの話だけでしたから大変分かり易いものでした).世の中にこんな面白いものがあったのだろうかと抱腹絶倒.たちまち傾倒して行きましたねェ.例のローレンツの“imprinting”というやつでしょうか.未だ脳細胞が150億個全部揃っていて神経線維も四方八方にnet-workを形成している最中でしたから,師匠の噺や仕草を片端から覚えてしまった(今この頃の才能があればなぁー).
 次には人前で演りたくなってしまって……演りましたねェ.クラスのお誕生日会なるもので,友達はみんなお歌やお遊戯をしているのに,私独り「エーお笑いを一席」とやっていた.受けましたねェ.友達はダメですよ程度が低いから分からない.参観の父兄,先生方に受けちゃった.そりゃそうだわね,小学生が「エー吉原というところは花魁てえものがおりまして……」なんて演っているんだもの.でも当人は勘違いしましてネ.「もしかして僕は落語の天才じゃないかしら」なんて,早速師匠に弟子入りを申し込んだ.「師匠!僕噺家になりたいんです」.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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