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雑誌目次

雑誌文献

病院49巻4号

1990年04月発行

雑誌目次

特集 在宅ケアと病院

在宅ケアにおける病院の役割

著者: 三宅貴夫

ページ範囲:P.292 - P.296

在宅ケアについて
在宅ケアとは
 昨今,医療の分野でも福祉の分野でも「在宅ケア」が盛んに語られている・医療保険行政においても,診療報酬に「在宅療養料」を新たに設けて「在宅医療」を推進する政策がとられ,老人福祉行政においても,ホームヘルパーを増員し,老人ホームでのデイサービス事業およびショートステイを大幅に拡充して「在宅福祉」を推進しようとしている.このような国の政策を背景に,これまでにない勢いで,自治体,医療機関,老人福祉施設が「在宅医療」や「在宅福祉」に取り組むようになっている.「在宅医療」も「在宅福祉」も共に「在宅ケア」の範疇に含まれるものであろうが,ここで「在宅ケア」とは何かを改めて問い直しておきたい.
 まず「在宅ケア」の「在宅」であるが,病院や福祉施設に対峙する生活空間と捉えられ,多くの場合,ケアを受ける患者または障害者の「自宅」を意味している.さらにわが国では,そうした患者らを日常的に介護する家族が同居していることが「在宅」の前提条件となっていることが多い.「一人暮らし老人」という例外はあるが,「在宅」とは「介護家族が同居している患者らの居住する家」と捉えてよかろう.

在宅ケアをめぐる経済的側面—医療機関とのかかわり

著者: 杉山孝博

ページ範囲:P.297 - P.302

はじめに
 厚生省統計情報部がまとめた昭和62年の医療施設調査によると,9,841病院中訪問看護を実施していたのは1,423病院で,14.5%となっている.この数字は,昭和60年の日本看護協会による調査結果(4,108病院中350病院が実施し,比率は8.5%)よりも高くなっており,病院による在宅ケアの取り組みが確実に拡大していることを示している.
 昭和57年に成立した老人保健法や昭和62年6月の国民医療総合対策本部中間報告など,国の施策として在宅ケアを重視していく考え方が打ち出されているが,特に昭和63年4月の社会保険診療報酬の改定では,「在宅療養」が独立した部として扱われることになった.

介護ゼジネスからみた在宅ケア

著者: 岡本茂雄 ,   福原宏章

ページ範囲:P.303 - P.308

在宅介護ビジネスへの当社の取り組み
はじめに
 介護ビジネスのなかにも,多くの分野が存在する.我々が手がけているのは介護用品の分野であり,在宅療養者,介護者に対して,介護用品のいわばソフト付き販売を事業としている.
 ここでは,我々のビジネスの特徴をまず述べ,つぎに事業の推移,さらに病院と介護ビジネスの関わりを述べていくことにする.

家族の立場から在宅ケアに望むこと

著者: 藤原房子

ページ範囲:P.309 - P.312

在宅療養の増える背景
 病人がどこで療養をするかという問題は,何よりもまず病人自身の安心感や快適さを念頭に置きながら,病気の治療や回復を優先して考えるべきだが,そうはいっても病人を取り巻く医療の供給側の事情や,家族・家庭の事情,国の経済をはじめ病院の財政,家計の都合など,せちがらい条件がさまざまに絡んでくるという現実がある.
 「社会的入院」という言葉に象徴されるように,昨今は家庭の事情で入院を余儀なくされるケースが増えている.高齢者を世話する家族にとっては,老いた親が老人ホームで暮らしていると言うよりは病院にいると言ったほうが,親戚や近所の手前かっこうがいい,といった事情なども働いて,入院期間が長期化する傾向が注目されるようになった.これは昔から無いわけではなかったが,家庭の恥とひたかくしにしていた.近年はそれが隠しようもなく,さまざまな事情で顕在化している.

在宅ケアの交差点—国際的動向からみた在宅ケア

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.313 - P.316

在宅ケアの潮流
 「高齢者保険福祉10か年戦略」(いわゆるゴールドプラン)や診療報酬改定で示された在宅ケア重視の方向は,高く評価することができる.また,医療法改正の方向を示した「21世紀をめざした今後の医療供給体制の在り方」(平成2年1月19日)のなかで示された在宅医療推進の方向や,「介護対策検討会報告」(平成元年12月14日)のなかの「どこでも,いつでも,的確で質の良いサービスを,安心して,気軽に受けられるようにする」という介護供給体制の基本方向は,在宅ケアの前進として歓迎することができる.
 ゴールドプランは,福祉施設の整備とともに,在宅福祉対策の緊急整備として,ホームヘルパー10万人,ショートステイ5万床,デイサービス・センターおよび在宅介護支援センター各1万個所を平成11年までに整備するとともに,「ねたきり老人ゼロ作戦」を強力に展開することを中心的課題としたものである.

〔対談〕在宅ケアの将来像

著者: 村瀬敏郎 ,   河北博文

ページ範囲:P.317 - P.322

 河北 本日は,「在宅ケアの将来像」というテーマで,日本医師会の村瀬先生とお話し合いさせていただきたいと思います.昨年秋に発表された「介護対策検討会」の報告書には,在宅ケアあるいは在宅介護の基本的な考え方として,「介護を受ける人が,可能な限りこれまでの生活を続けることができるようにする」ということが書かれています.これまで生活してきた町並み,あるいは多くの知人がいる生活圏のなかで,特に高齢者が今後どういう生活をしていくかが問われる時代になってきたことを裏づける指摘です.
 そういう時代にあっては,物質的な豊かさだけでなく,精神的な生き甲斐が求められます.医療についても量から質への転換の必要性がいわれていますが,そんな状況のなかで,21世紀へ向けて,在宅ケアはどのように展開されていくのか,先生のお考えを伺いたいと思います.

グラフ

地域医療の確立に向けて—田野町国民健康保険病院

ページ範囲:P.283 - P.288

 「国保の直診施設ですから,住民の健康を守ることが第一です.そのためには他の先駆的な国保病院と同じように,診断,治療のみならず町民の疾病の予防のための保健活動からリハビリテーションまで積極的に行わなければなりません.」と病院医療の基本的姿勢を語る谷口院長は田野町国民健康保険病院の9代目の院長だ.
 田野町国保病院は昭和23年に田野村直営診療所として開設された.昭和28年には施設の拡充を図り一般病床30床,結核病床12床の国保病院として再出発した.しかし,医師の充足がままならず,院長も7代目までは1〜2年で交代,長年赤字経営が続き町の財政をも圧迫,昭和45年には病院存続か廃止かの瀬戸際に立たされ,田全体が大揺れに揺れた.谷口院長はその渦中の昭和47年に「幽霊屋敷のようだった」本院に赴任した.建物はもちろん医療機器も昭和20〜30年代のもので,ほとんど更新されていなかったという.「手術場の無影灯も固定式で,手術台を移動して手術をするような状況」だつたという.

病院管理学の成長を求めて 順天堂大学医学部教授・病院管理学 川北祐幸氏

著者: 尾崎恭輔

ページ範囲:P.290 - P.290

 川北祐幸順天堂大学教授は,病院管理学会の第二世代の教授で,吉田幸雄,島内武文,守屋博,永沢滋,今村栄一,橋本寿三男の先生方の後を継いだ世代で,私も彼も病院管理研修所で研修を受けました.
 たまたま守屋博先生が順天堂大学医学部に招かれて病院管理の実務をおやりになる時に,彼は守屋先生について勉強され,今日の大成をみました.あとで守屋先生が体が不自由になられた時の師弟の情愛は,傍目にも美しいものでありました.

主張

医療における「選択」と「調和」

著者:

ページ範囲:P.291 - P.291

 平成2年となり,いよいよ21世紀に向かっての準備と共に,20世紀の仕上げの段階に入ったという感が強くなってきた.振り返れば1989年—大いなる昭和から平成に移行した我が国でも,昭和天皇をはじめ,その時代の顔であった多くの人々が亡くなり,交代が行われた.一方,国際情勢を見れば,「冷戦は終わった」という米ソ首脳の共同会見での発表には極めて大きな感動をおぼえた.会見での2人の笑顔が大変印象的で,それがすべてを物語っていた.その場では,歴史的な必然性によることが強調されたが,特に時代の流れを的確に捉えたゴルバチョフ大統領の勇気と見識には,絶大なる拍手を送ることを惜しむものではない.この歴史的出来事が確認された時に生きているということに,実に深い感慨を持ったものである.
 最近の東欧諸国の激変は,すべて,それぞれの国民の要求による動きであり,自由と公開への期待がどのように大きいか感じさせられ,また現代の経済社会の比重がいかに重いものか認識させられた.東西冷戦の象徴であったベルリンの壁が取り壊され,20数年前のプラハの春が再評価され,共産党一党政治を脱して複数政党が認められるという東欧諸国の動きの一方で,1992年にはEC共同体が確立して,経済的には国境が消え去ることになる.

検証・日本医療の論点(最終回)

看護婦の給与と診療報酬は80年代に改善されたか?

著者: 二木立

ページ範囲:P.323 - P.328

●はじめに
 最近,全国的に看護婦不足が再燃している.それの直接的原因が,医療法第一次改正・地域医療計画により誘発された「駆け込み増床」であることは良く知られている.しかし,その背後に,看護婦の厳しい労働条件と低い給与水準があることを見落としてはならない.看護婦不足を真に解消するためには,単に看護婦養成数を増やすだけでなく,看護婦の労働条件と給与を大幅に改善することが不可欠である.
 看護婦・看護職員の労働条件の変化については,日本看護協会1,2)や労働組合(医労連)3)が詳しい調査を行っている.またその就業構造・就業率の変化については優れた研究がみられる4,5)が,看護婦給与の推移の実証的検討は意外に少ない.そこで,小論では,1980年代の看護婦給与と看護関係の診療報酬の変化を,1970年代の変化と比較しつつ,検討する.

実践・病院のマネージメント・7

病院のサービスについて(2)—コミュニケーションの重要性

著者: 井手道雄

ページ範囲:P.329 - P.332

 前章で,病院のサービスについて述べ,病院が提供するサービスは,大は製品,市場戦略的な考え方から,小は接遇についてまで,まだまだ満足すべきものではなく,今後一層努力して改善しなければならないことを述べた.また,病院は地域社会に対する組織としての業績と,その評価が必要になっていることも併せて強調した.
 そこで本章では,今後激しく変化していくであろう病院を取り巻く環境下で,環境の変化に迅速に対応しながら,病院が地域社会に対して医療というサービスを提供する上で基本的に重要である病院の理念や,長期・短期の方針を,いかにして病院各職員へ迅速かつ正しい内容で伝え,価値ある目標として職員を喚起するかという,病院職員への伝達(コミュニケーション)について述べることにする.

建築と設備・48

自治医科大学附属大宮医療センター

著者: 長塚弘

ページ範囲:P.333 - P.338

■はじめに
 自治医科大学附属大宮医療センターは,昭和47年4月栃木県に開学した学校法人自治医科大学の付属施設として大宮市に設置されたものである.
 その建学の精神に則って地域における医療への貢献と,へき地等の地域医療に従事する医師に対する生涯教育の確立を計ること,などを目的とし設置されたセンターである.

医療従事者のための患者学

“生”への希求(その1)

著者: 木村登紀子

ページ範囲:P.339 - P.343

 2年余りの間,細々と連載してきた本シリーズも,いよいよ最終段階である.本号と次号では,まず,「どんな患者も“生”をこそ希望している」,「人間は,相互により良い“生”を求めている」という視点で,患者や家族,あるいは患者(家族)と医療従事者の関係を捉える.そして,人間が希求する“生”とは,その中身が何なのかを問うことを通して,患者学の中軸となる課題を模索し,本シリーズの締めくくりとしたい.
 なお,この「“生”への希求」は,先に3回にわたり考察した“喪失”すなわち「生きることへの問いかけ」,「共にあゆむ」,「超えて生きる」とともに,本シリーズの第5部を構成している(全体の構想図については,「病院」48巻6号に記載).この第5部では,医療の場を,「人間の“生きる場”」として捉え,主として人間学的視点から,患者およびその家族の特質について考察を進めている.喪失に際して患者や家族が直面する心理的問題は多種多様であるが,その中で,「人間としてのあり方の根本問題に関わる問い」にことさら焦点を絞ったのは,人間学的視点を中心に置いたからである.

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

長寿社会と病院

著者: 山口昇

ページ範囲:P.344 - P.344

 人生80年という本格的な長寿社会を迎えて,地域のニーズが多様化し,医療の質の転換が叫ばれている.従来の病院は,“病気”の治療に専念し,“病人”をみる医療に欠けていたきらいがあったように思われる.これからの高齢社会では,治療医学のみでなく,予防医学からアフターケアまでをも含む,幅広い医療が必要とされるのである.
 国は昭和58年老人保健法を施行したが,その内容をみると,健康管理からリハビリ等の後療法までを含む間口の広い包括的なものとなっている.私は,いわゆる包括医療とは,保健,医療,後療法,場合によっては福祉との連携をも意味する,と理解しているが,今日のような高齢社会では,保健・医療・福祉の連携が必要なのは当然のことであろう.

病院管理の現場から 看護最前線

今,大切にしていること

著者: 棚田秀子

ページ範囲:P.345 - P.345

 公立の看護学校の専任教員を経て,公立病院の主任・婦長,そしてカムバックした看護学校の教務主任として,約20年勤務した公務員生活に終止符を打ったのは,昨年の6月であった.そして翌7月から,縁あって民間病院(一般・精神611床)の看護部長に転任することとなり,戸惑いながらも,周囲の状況がみえてきた今日この頃である.
 「居心地のよい看護学校から転任した真意は何?」とよく人に尋ねられるが,私はその度に,「学生に看護のあるべき論を語ってきたからには,自分の言動に責任をとる生き方を選択してもよいのではないか」と答えてきた.もっとも,それがいかに大変なことであるかは覚悟のうえであったし,その具体化に少しの自信があったわけでもない.ただ,看護職員の看護観と大筋において一致したところで,自分の看護観に基づく看護が実践できるような条件づくりをすることが看護管理者の大きな役割だと考えれば,間違いなくやり甲斐のある仕事である.そんな思いが「公」から「民」への転任を私に決断させたのである.

医療・病院管理用語ミニ辞典

〔病院管理〕老人保健施設/〔産婦人科医療〕産婦人科のレセプト(2)

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.346 - P.346

 昭和61年12月に老人保健法の改正が行われ,一部負担金と加入者按分率の引き上げ,ならびに老人保健施設の創設が決まった.この老人保健施設は,寝たきり老人等に医療と生活の両面のサービスを供給するもので,老人病院と特別養護老人ホームの中間的な施設として位置づけられた.現在,全国で約200の老人保健施設が開設されているが,平成10年の利用者は25〜30万人と予測され,同施設の急増が見込まれている.
 老人保健施設の人員配置は,現在のところ,入所者100人規模で常勤医師1人,看護婦と准看護婦8人,介護職員20人,相談指導員1人,理学療法士または作業療法士1人,他に栄養士,調理員,事務員,薬剤師等が決められている.

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

高まる予防医学への関心と疑心

著者: 村上実

ページ範囲:P.347 - P.347

新たなシミュレーションゲームの行方
ホテル業界で予防医学への関心が非常な高まりをみせている.非常というのは,常識的な枠を超えているということで,その理由がなんであれ,これは注目すべき出来事といえる.なぜ,いまホテル業界がこぞって予防医学への関心を示すのか?
 確かに,都市ホテルではエクササイズ・サロンやスポーツクラブが何百万円という入会金をとっても一向にその人気に陰りをみせないのは“サムシングエルス”ともいえる何かがある訳であろう.美味しいフランス料理もビンテージワインも際限無く享受していればオーバーカロリーとなり,結果的には病院のお世話になることになる.自然,飲食へのチェック機能が自発的に働きカロリー消化型のスポーツマインドが台頭することになる.

GROUPING & NETWORKING

木朝会—札幌の若手病院経営者の勉強会

著者: 西澤寛俊

ページ範囲:P.348 - P.349

 札幌には現在約270の病院があり,私的病院は230前後である.その中で開設者が50歳未満の病院は70〜80ほどであろう.病院開設の理由は個々に違えど,自分達が医師として教育を受け十分な臨床経験を積んだ上で,良い医療を提供し地域医療に貢献したいとの気持は共通であろう.しかしながら,われわれは医学は学んだが,医療学は十分に教育を受けていない.また,経営者でありながら,経営学,管理学等も素入である.われわれは医師として毎日診療を行いながら,病院経営には常に非常な不安をもっている.良き地域医療を行うためには病院の経営基盤の安定は最低必要条件である.そのためにわれわれは医療,経営,管理等を勉強し,また広く社会情勢,医療環境,経営環境に適応し,人間としての成長も望まれる.このような背景のもとで,各先生方は諸団体や研究会で,または個人的に勉強していると思われるが,札幌の病院経営者(医師)で経験の浅い30〜40代の先生方が,直面している多数の問題を中心とした意見交換の場が欲しいとの事から,昭和62年7月に有志が集まり発起人会を開いたのが木朝会の始まりである.当日は8人の発起人の他に東京都私立病院会青年部会代表幹事の河北博文先生にも出席して頂き,青年部会の主旨,活動内容を伺い,参考にさせて頂いた.

統計のページ

アメリカの医療費統計②

著者: 新村和哉

ページ範囲:P.350 - P.352

1.高い入院医療費
 1986年におけるアメリカの入院医療費の総額は約1,409億ドル(1ドル=140円として約19兆7,300億円)である.同年における日本の国民医療費は,入院,入院外,歯科,薬局調剤を合わせた総額で17兆690億円であり,アメリカの入院医療費だけで日本の国民医療費全体を上回っていることになる.日本の入院医療費は,同年において7兆4,838億円であり,アメリカの入院医療費はこの約2.6倍である.
 もっとも,日本とアメリカの入院医療費はその範囲が異なるため,比較には注意を要する.第一に,アメリカの入院医療費はホスピタルフィーのみであり,ドクターフィーを含んでいない.日本ではこの二者が分かれていないため,医師の取り分も入院医療費に含まれている.第二に,アメリカの入院医療費は急性病院のそれであり,慢性病院やナーシングホームの費用は含まれていない.いっぽう,日本の病院は長期入院患者を多く抱えており,そのケアに要する費用も入院医療費として含まれている.

研究と報告

エチレンオキサイドガス滅菌の取り扱いに関する一考察

著者: 北山悦子

ページ範囲:P.353 - P.355

はじめに
 当院中央材料部においては,エチレンオキサイドガス(以下,EOガス)滅菌を連日行っている.EOガス滅菌はあらゆる医療用材料(以下,医材)の滅菌に適応されて優れた滅菌効果をもっ反面,毒性を有しており,これまでにも医材の残留EOガス,作業者の曝露量が問題とされてきた.
 従来,皮膚粘膜と接触する医材は滅菌後48時間の強制エアレーション(残留ガス強制除去)装置により処理したあと使用可能,血液と接触する医材は48時間の強制エアレーションにより処理したあとも,安全に使用できる段階にはないとされ,そのように取り扱われてきた.しかし,その測定方法はEO残留インジケーターによるものであり,判定は肉眼的に行われるので,確信できるものではなかった.

厚生行政を読む

在日外国人の医療(下)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.356 - P.357

 スイス人のある作家が,「われわれは労働力を受け入れたつもりだけれども,やってきたのは紛れもない人間だった」ということを書いている.つまり,文化をもち,家族をもち,そして人権をもつ,そういう人々を結局受け入れなければならなかったのだ,というわけである.
 生身の人間であるから,当然医療も必要になろう.そこで今回は,医療現場の実態や医療費の問題について触れ,今後の方向を考えてみたい.

病院管理トピックス

〔クリニカルエンジニアリング〕世界のクリニカルエンジニアリング—その現状と背景/病院組織のなかの労働組合

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.358 - P.360

◆世界のCE
 わが国のクリニカルエンジニアリング(CE)は,公的には,今始まったばかりであるが,米国では,すでに1970年代の終わりから1980年代の始めにかけて病院のME機器の総合管理を目的とした「病院内CE部門」が各地に生まれ,その後爆発的に広がり,現在では,全米で数百床以上の病院では,ごく普通の病院内1部門として定着している.
 これに呼応する形で,北欧を中心とした欧州でも,内容的な違いや普及度の差はあるが,この10年の問にCEが医療のなかに「市民権」を得るまでに成長してきている.

時評

日本型ノーマライゼーションを営む

著者: 矢島嶺

ページ範囲:P.361 - P.361

 最近,北欧福祉政策のレポートを見る機会が多く,「ノーマライゼーション」なる用語が目につく.
 その意味するところは,障害をかかえた人が,そのハンディのあるままに,自分の地域で普通の人々の中で,好きなように暮らすための制度や環境整備を指しているようだ.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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