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雑誌目次

雑誌文献

病院49巻6号

1990年06月発行

雑誌目次

特集 診療報酬請求もれゼロ作戦

診療報酬体系はどう変わってきたか

著者: 松浦十四郎

ページ範囲:P.468 - P.472

診療報酬点数の変遷
 わが国の診療報酬体系の変遷は大きく3つに分けられる.すなわち,第1期は戦前,第2期は戦後の昭和33年まで,第3期は昭和33年の改定以降で現在までである.
 第1期は昭和2年に健康保険が実施されたことに始まる.これは日本医師会(以下,医師会と略す)の一括請負方式であった.

診療報酬請求もれはなぜ起こるか—請求もれの実態とその防止対策

著者: 加藤雄二 ,   谷口正和

ページ範囲:P.473 - P.478

請求もれを起こすもの
起こるべくして起こる請求もれ
 「医療事業の運営に当たり,収益性を目的としてはならない」という考えはいかにも空虚である.
 「診療に際して,経済性や保険のことはいちいち考えてはいられない」とはよくいわれることではあるが,本則論からいえば単なる逃げである.つまり,医療を行うに当たり,必然的な要素についての認識がないことを吐露しているに過ぎない.

〈解説〉医師・看護婦のための保険請求(もれ防止)マニュアル

著者: 船津浩

ページ範囲:P.479 - P.484

 診療報酬の請求ほど複雑なものは他に類を見ない.それは複雑な医療行為を細分化し,その各々に診療報酬を定め,いわゆる出来高払いであるためである.したがって,診療報酬請求の責任が,本来病院長にあるもので,その請求担当部門である医事部門にあるとはいえ,医療現場にある,医師,看護婦の協力がなければ,医療行為のすべてを診療報酬請求に反映させることはできない.
 診療行為の診療報酬請求への反映が完全ではなかった場合に,不完全の部分,つまり診療報酬請求とされなかった医療行為は,まったくの無駄となり,ひいては,医師,看護婦等の評価を,医療機関として自ら削減しているとも言える.ましてや現在の健康保険法では,医療行為について完全に評価しているとは言えない.完全に評価されていない中での請求もれがあるとすれば,差は倍となってくるであろう.

請求もれ発見法—わが病院ではこうしている

著者: 大西正利 ,   時任純孝 ,   加藤昭 ,   石坂恵介 ,   松下雅人 ,   桑原好雄 ,   佐々木八重子 ,   田中豊 ,   中村厚夫 ,   村上啓二 ,   野口照義 ,   大江唯之

ページ範囲:P.485 - P.500

河北総合病院(351床,特定医療法人,総合病院)
 請求もれの実態調査という意味からは,請求終了の形態であるレセプトと請求発生源であるカルテなり伝票との突き合わせがまず考えられる.この方法は基本的な調査という意味からは地味で根気が要る作業ではあるが,その派手さの無い分だけ確実な方法と言える.しかしながらそこから浮かび上がってくる実態は,つまりカルテそのものの記載不備なり伝票そのものの設計ミスであったり項口設定ミスであることが往々にしてある.とはいえこの調査は決して無駄ではなく,カルテというものがもともと極めて記載不備であることを理解し,またいくら作成当初は用意周到と思われた伝票であっても見直しすることによりまだまだ不備であったことに気がつく.これらの発見を再認識するという意味からは有効な方法であると言える.
 カルテの記載が不備である可能性が高く,伝票そのものにも欠陥があるとするなら,表題でいう「請求もれゼロ作戦」の展開のためには,それ以前の状態にまで立ち返るということになる.すなわち診療報酬の源である診療そのものの実態、に迫ってみるということである.

医事業務(レセプト業務)委託の場合のチェック体制

著者: 中野隆男

ページ範囲:P.501 - P.503

 基本に戻って,このテーマを考えてみる.それには5W1Hで捉えなおしてみるのが一番わかりやすいので,それに沿って論をすすめる.

コンピュータに不満もありましょうが—プログラム以前に明確な事務規定を

著者: 西山孝之

ページ範囲:P.504 - P.506

診療報酬点数表の例
—解釈しながら大量事務ができるのだろうか?
 診療報酬請求は一種の事務である.事務ならある程度の教育を受けたら,誰もが同様に処理できる筈であるが,請求もれが常に問題となる.診療報酬点数表の難しさは世間の定評となっているが,その実態は直接の関係者以外には,意外なほど知られていない.知られないこと自体が,問題解決に至らない要因のひとつと思われるが,その具体例をまずは表1に見ていただきたい.
 これは特定薬剤治療管理料に関しての部分である.所定点数が330点のほか,800点,100分の50で165点,2,000点加算で2,330点,300点加算で660点と,5種類が条件によって区分される.この算定が実際にどの程度出現するかは知らないが,算定した場合には,その点数の算定根拠をレセプトで明らかにする必要があろうが,レセプト記載要領には,この例も多くの場合のひとつであるが,格別の指定はない.

グラフ

医療と福祉機能連携の“壮大なる実験” 小山田記念温泉病院 小山田老人保健施設

ページ範囲:P.459 - P.464

 三重県四日市市郊外・小山田地区.東に伊勢湾の広がりを望み,西に鈴鹿の山なみが迫る丘陵地に,社会福祉法人青山里会(川村耕造理事長)が小山田特別養護老人ホームを開設したのが1974年.医師による老人福祉の実践として全国的な注目を集めることになったが,川村理事長は,「医の原点は福祉にあり」とする自らの信念をつぎつぎに形にし,同一敷地内に医療施設と福祉施設を併せもつ,今日の「小山田施設群」を実現していった.
 現在,施設群を構成しているのは,医療法人社団主体会・小山田記念温泉病院(330床),2つの特別養護老人ホーム(一般特養200床,痴呆性老人専用100床),A型,B型軽費老人ホーム(各50床),身体障害者療護施設「小山田苑」(60床),厚生省のモデル事業として始まった老人保健施設(100床),デイサービスセンター,四日市福祉学院(本年4月開校),地域交流ホームなどで,さらに近い将来の開設を目指して,在宅介護支援センター,ケアハウスの構想が着々と進められている.

患者の信望を集める学究的な臨床家 第二十九回全国自治体病院学会長・宮城県立成人病センター院長 庄司忠實氏

著者: 的場直矢

ページ範囲:P.466 - P.466

 宮城県立成人病センターの庄司忠實院長は,東北大学昭和28年卒業で,私の一級下でした.学生の頃から顔は知っていましたが,交誼を頂くようになったのは,昭和35年,私が花巻病院の佐藤進外科医長(現院長)の外遊の留守番として派遣された時からです.庄司君は胃腸科医長として,患者さんの絶大な信望を集めていました.私は単身赴任で,時には自宅まで押しかけて,奥さんの手料理を頂いたりしました.当時は上部消化管出血に対して,内視鏡的止血法やH2ブロッカーなどの薬剤のない時代でしたから,姑息的治療で止血しないとすぐに外科に送られたものでした.それまでの経験では,吐血患者の出血部位が確認されないまま外科に回ることも少なくないので,術中,出血部を探すのに大変苦労することもありました.ところが庄司君は透視や胃カメラで粘り強く出血部を見つけて送ってくれるので,外科医にとって大変有難い存在でした.
 胃カメラといえは,私が花巻に行って間もなく,庄司君が見つけた胃カルチノイドという組織標本を見せられよした.ちょうど私が花巻に行く直前に仙台で先輩に見せてもらった胃グロームス腫瘍に酷似しているので再検討をおすすめしたところ,病理学者の同意が得られました.庄司君は早速邦文と英文で報告し,私も共著者として名前を連ねて頂く光栄に浴しました.この症例は私が仙台で見たものより早くペーパーになったので,胃グロームス腫瘍の本邦第1例になったそうです.

主張

診療報酬改定と病院経営

著者:

ページ範囲:P.467 - P.467

 病院経営に大きな影響を与える診療報酬の改定が4月1日より実施された.今回改定の重点は,処方料・看護料・在宅医療に置かれており,長期入院の医学管理料を据え置き,老健施設への配分を強化している.その方向は評価に値するものと言える.更に,特例許可病院と癌末期治療病院に定額払いの制度を選択可能にしたことは,将来に向けての機能的分類化の一里塚とも考えられるが,個々の病院はその真意を充分検討する必要があろう.しかし,その一方で,薬価基準が大幅に引き下げられ,正味の値上がりは平均わずか1パーセント強である.特に汎用薬品の値下げ率が高く,その影響は大きいと覚悟しなければならない.
 最近は,ほぼ2年に1回の診療報酬の改定が通例になっているが,病院の医業費用のほぼ50パーセントが人件費であることを考えると,最低,人事院勧告による公的病院職員の賃上げ相当分が診療報酬のアップによって保証されなければ,日本経済の好況を背景とした求人難は,医療法の求める病院の定員確保に暗い影を落とし,特に看護職員・介護職員の充足は困難になっている.医療法に定める人員確保を可能にするという観点からも,診療報酬の在り方に検討を加えてほしかった.

海外医療事情 アメリカ合衆国

DRGで考慮されない緊急入院 Prospective payments to hospitals:Should emergency admissions have higher rates?

著者: 濃沼信夫

ページ範囲:P.478 - P.478

 アメリカで,医療費抑制策の切り札として導入された,メディケア入院患者に対する定額見込み払い方式(PPS)は今年で7年目に入り,様々の角度からその評価が行われつつある.入院した患者集団は474種類の診断群(DRG)のいずれかに分類され,同じDRGの患者にはほぼ同じ医療資源が消費される,というのがPPSのコンセプトである.したがってDRGは,年齢などの患者属性と,重症度,診療の難易度,サービスの程度など臨床上の特性とを最大限考慮した分類となっている.
 しかし,これには患者の入院時の状態について格別の配慮はなされていない.同じ疾病でも緊急で入院した場合は,そうでない場合に比べてより多くのコストがかかっているに違いない.緊急入院の場合は,患者に関する情報量が少なく,医師のとり得る手段は限られている.患者の症状は重く,副傷病や合併症を有していることも多かろう.また,病院側が外来での事前検査など,入院医療費節減の経営手腕を発揮する余地もないからである.

建築と設備・50

吉備高原総合リハビリテーションセンター

著者: 伊部宏

ページ範囲:P.507 - P.512

■「保健福祉のむら」の中核施設として
 人と自然のふれあう21世紀の新しいまちづくりとして,岡山市北部の丘陵地に着々と整備が進められている吉備高原都市一.その中の「保健福祉のむら」の中核施設として,吉備高原総合リハビリテーションセンターは労働省を設置主体に,1987年6月建設,完成をみた.
 吉備高原都市内には当時すでに福祉型工場や居住施設と合わせて授産所などが活発な活動を展開しており,このセンターの完成を機に“人間尊重,福祉優先”を基本理念として1995年に人口3万人を目標とする新都市の中で,健常者と障害者が生活空間を共有し,地域住民とのふれ合いの中で社会復帰を目指す理想的な環境づくりが行われている.

医療・病院管理用語ミニ辞典

〔病院管理〕在宅ケア/〔産婦人科治療〕検体検査(1)

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.513 - P.513

 わが国では,高齢化社会の到来に直面して,医療費の有効利用・節減ならびに患者の生活面の質に配慮するなどの観点から,在宅医療や在宅福祉を包含した在宅ケアが盛んに語られている.いま厚生省は,種々の在宅療養料の引き上げや新設で在宅医療を,またホームヘルパーの増員や医療機関・福祉施設でのデイケアの拡充などで在宅福祉を強力に推進しようとしている.
 在宅ケアの「在宅」という言葉は,医療機関や福祉施設に対峙する生活空間として,患者や障害者の自宅を指して用いられる.わが国の在宅ケアは,基本的には患者や障害者を介護する家族が同居していることが不可欠となっているので,1人暮らし老人は例外として,在宅とは介護する家族が同居している患者や障害者の居住する家と理解してよい.

わが病院の患者サービス

大阪労災病院

著者: 伊藤篤

ページ範囲:P.514 - P.515

◇一般病院から“ソアミック”へ
 医療は医科学を技術とするが,患者に対するおもいやりの心が根底になければならない.
 本院の開設は昭和37年4月,当時にしては斬新な,冷暖房完備された500床の病院としてスタートしたが,昭和50年半ばになってこの周辺は一変した.堺泉北臨海工業地帯の造設を始めとして,阪神高速道路,中央環状線と主幹道路の完成,地下鉄線中百舌鳥開通,更には平成5年泉南沖国際新空港開設が予定されており,この地域のめまぐるしい変遷は,地域医療の意識変革をも余儀なくさせた.堺市の人口80数万を含め,大和川以南の大阪南部300万人の医療拠点としての気運がたかまってきたのである.当時の第3代塩田憲三院長はそれをいちはやく察知され,手狭になった外来ならびに給食部門,更には老朽化した手術棟の改築,増加の一途を辿る心疾患などへの対応をはかるべくCCUまたICUの設置など,昭和59年来5カ年計画として増改築を意図された.そして平成元年762床が完成,南大阪地区における医療センターとしてのニーズに応えた施設に生まれ変わった.

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

医大あれこれ

著者: 寺田守

ページ範囲:P.516 - P.516

 このところ,中央の病院諸団体の会合に出席することが多く,月の後半に5,6回は上京.その上,地元の役員会,審議会等々……で,まる1日病院に居れるのは月に数日しかない.とある日,今日はゆっくり病院の仕事をと思った矢先,「九州から電話です」と.「寺田先生,病院という雑誌知っとりますナ……ああ籾井ですヨ」という独特の九州弁で,この辛口エッセーの執筆を押しつけられた始末.籾井院長は全自病の第1回欧米医療視察団で1か月朝夕共にした仲間,断る訳にもいかない.さて,承諾した迄は良かったが,正直,読んだこともない(申し訳ないが)“辛口エッセー”を戸棚から取り出し,読みに入った.何れも名士ぞろいのメンバー,途端にユーウツな1日となってしまった.数日後,医学書院より重ねての依頼,最早,逃げ隠れするもかなわずと,筆を執った始末.どうせのことなら,日頃思っていることを歯に衣着せず書くことにした.先ずは無礼の段ひらにご容赦を願っておこう.
 医科大学のこと.中でも医学生の卒後研修と教授殿のあり方である.

病院管理の現場から 看護最前線

継続看護と看護記録

著者: 板橋玲子

ページ範囲:P.517 - P.517

 前回(2月号)は,当院における看護管理の概要を述べさせていただいた.そのなかでも触れたように,当院看護局の目的は,「地域の住民のために最良の看護サービスを提供すること」である.これを具現化する1つの手段として,私は常々,看護計画と看護記録の充実を図らなければならない,と考えていた.それというのも,8年前のままの経時的記録では,どうしても医師の指示を中心とした記録になりがちで,優れた看護が行われても記録に現れてこないからである.それだけにとどまらず,無計画な看護をうける患者側としては,余分な規制を強いられることにもなりかねない.常に患者の立場にたって看護が展開されて,初めて看護の効果があるというものであろう.
 そんな考え方に立ってPOSの導入を決めたのは1982年の春だった.まず最初に,婦長,主任全員を数回にわたってPOS研修会に派遣し,次いで,各セクションから委員を選出,婦長を委員長とした.そして,毎月1回の委員会を重ね,年に一度は,教育委員会との合同学習会をもってPOS的思考に基づく事例検討会を行ってきた.

病院運営の合理化を求めて

物品の供給

著者: 安田尚之

ページ範囲:P.518 - P.518

 病院で使用する物品には多くの種類があり,日常的に院内各部署に供給されるものは膨大な数にのぼる.大ざっぱに分類しても,①薬品,②血液,③診療材料,④検査関係,⑤放射線関係,⑥給食材料,⑦寝具・リネン関係,⑧消耗品,⑨帳票類,⑩用品関係,など多くの項目にわたり,それぞれに大小様々な物品があるから,その管理はいきおい複雑にならざるを得ない.
 これらの物品は,各病棟・外来など院内のあらゆる部署から物品請求伝票(注文伝票)により購買部門または倉庫部門に請求され,資材課ないし用度課などの購買部門が,院内各部署からの要求や在庫をみて,取引業者に発注して納品を受け,請求先の担当者が,物品を受け取りに行くシステムを採っているところが普通であろう.あるいは,搬送システムを採用している病院では,病棟・外来等からの請求に基づき,搬送機を使って請求先へ物品を送る方法を採っていることと思う.

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

医師過剰を考える

著者: 中山英明

ページ範囲:P.519 - P.519

ラッシュのイメージは医師とゴルフ場
 ラッシュという言葉がカタカナで定着したのは戦後の通勤ラッシュに端を発したと思われるが,身の回りでの最近の話題のうちラッシュに縁のあるものに医師の過剰とゴルフ場の新設がある.手許の雑誌の「開業医は生き残れるか」という一文が目に止まった.内容は医師の過剰,開業医の在り方,病診連携の推進を説いたものであるが,なかでも医学部入学定員の削減は早くて6年先にその効果が現れるという気の遠い話で,一県一医大設置を実現した当時の役人の先見の無さやら,それを担いだ政治家の無定見が今頃になって悔まれるのである.ベビーブームの影響から他学部では定員増について検討を重ねている時,ひとり医学部が定員減を打ち出しているのは,滑稽を通り越してむしろ哀れである.ラッシュという語感に渋滞(つめ込み)や焦燥感を伴うのは時間感覚のせいだろうか.

厚生行政を読む

医療法改正(中)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.520 - P.521

 終盤(?)に入っていささかもたついた感の医療法改正の動きであったが,5月10日の「医療法の一部を改正する法律案要綱」の医療審議会への諮問を皮切りに,国会周辺が慌ただしくなってきている.もとより医療提供体制の抜本改革を目指して進められていた作業であったが,蓋を開けてみれば,「何だ,大したことないじゃないか」というのが,多くの有識者の率直な反応のようである.医療提供体制は人間生活の一部として長い年月をかけて発展してきたものであり,人の生命に直結しているものでもあるので,簡単に変革できるものではないのかもしれない.

特別企画 「高齢者保健福祉推進10か年戦略」にどう対応するか・1

資料 高齢者保健福祉推進10か年戦略(平成11年度までの10か年の目標)(いわゆる「ゴールドプラン」)/一般病院とゴールドプラン

ページ範囲:P.522 - P.525

 我が国は,いまや平均寿命80年という世界最長寿国になり,21世紀には国民の約4人に1人が65歳以上の高齢化社会となるが,このような高齢化社会を国民が健康で生きがいをもち安心して生涯を過ごせるような明るい活力のある長寿・福祉社会としなければならない.このため,消費税導入の趣旨を踏まえ,高齢者の保健福祉の分野における公共サービスの基盤整備を進めることとし,在宅福祉,施設福祉等の事業について,今世紀中に実現を図るべき10か年の目標を掲げ,これらの事業の強力な推進を図ることとする.

統計のページ

フランスの医療費統計②

著者: 中島誠

ページ範囲:P.526 - P.527

1.フランスにおける医療費の概況
 フランスにおいても,人口の高齢化や医療技術の進歩,医療関係者の増加等によって,医療費が急増している(表1〜3,図1).そして,その抑制は,今後増加が見込まれる要介護老人の処遇とともに,医療行政の大きな課題となっている.
 フランスの医療保険制度は,入院については現物給付制(疾病保険初級金庫から医療機関に直接償還される),外来については償還制を採用している.具体的には,患者は,入院の場合,入院日額の20%か定額負担1日当たり27フラン(1988年1月1日現在)のどちらか多い方の額を入院施設に支払えばよく,外来の場合は,一旦全額を医療機関に納めた後,疾病保険初級金庫に償還の申請を行うこととなる.

GROUPING & NETWORKING

福山医療問題懇話会について

著者: 大田浩右

ページ範囲:P.528 - P.529

 昭和61年9月,全日本病院協会学会が,広島県病院協会の河村会長が学会会長を務められ広島の地で開催されました.その学会で「民間医療の活力」を大きなテーマとしたシンポジウムがあり,そのシンポジスト6名の内1名に私が選ばれました.ほとんど事後承諾という格好で私の方に連絡があり,急きょ考えをまとめて学会に臨みました.その時,シンポジストで来られた方々がかの有名な東京都私立病院会青年部会の方々でした.この時が私と青年部会との出会いです.
 学会も終わり一息入れた頃「病院管理研究所の小山でございます.」という電話がありました.病院管理研究所のと言われましてもなんの事かわからずトンチンカンな返事をしていましたが,「厚生省の病院管理研究所の小山でございます.」と言われ,「ハハア厚生省の方か.」という程度の知識でした.これが,かの有名な小山秀夫先生との出会いの始まりです.

病院管理トピックス

[クリニカルエンジニアリング]臨床工学技士の誕生とわが国のクリニカルエンジニアリング/[病院労働]病院の労働組合への期待

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.530 - P.532

 昭和62年5月「臨床工学技士法」が国会を通過し,ここに「臨床工学技士」という,新たな医療職種が誕生した.平成元年度までに2回の国家試験が行われ,約4,000人の臨床工学技士が誕生している.
 3年制の養成学校も全国に11校できており,毎年600人程度の卒業生を出していくので,遠からず1万人の大台に達しよう.

研究と報告

当院における診療録永久保存の現況

著者: 佐藤太一郎 ,   吉田力三 ,   石川好文 ,   広瀬武 ,   小浜美智子 ,   永冶弘美 ,   秋田幸彦

ページ範囲:P.533 - P.536

 診療録の保管については法的に期限が定められているが,永久保存への過程として長期保存のため努力している施設は多数に上るものと思われる.われわれは以前から診療録の永久保存を目指してきたが,時代の変遷とともに,その整理方法も変化してきた。ここに30年間の蓄積をまとめて報告し,諸賢のご批判を仰ぎたい.

時評

在宅終末医療が家庭不和をもたらした例

著者: 矢島嶺

ページ範囲:P.537 - P.537

 地域に在宅医療を支援するシステムが備わっていないにもかかわらず,在宅医療が強調されすぎている現今である.この背景には老人医療費削減という目的がある.実際は在宅医療システムの整備が遅れているために,老人の「社会的入院」が増大していると考えられる.
 終末を控えた老人たちの落ち着く先が定まらず点々と病院を入退院し,最後に,在宅医療ができそうもない我が家に戻ってくる老人が最近は多い.その結果,まず弱い老人自身にしわよせがくる.さらに老人を支えている家族と兄弟,親戚との間に,癒し難い不和をもたらす.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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