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雑誌目次

雑誌文献

病院49巻7号

1990年07月発行

雑誌目次

特集 在院日数の短縮と退院計画

病床の有効利用と在院日数の管理

著者: 大道久

ページ範囲:P.556 - P.560

はじめに
 改めて述べるまでもなく,病床は最も基本的な医療資源であり,その有効な利用が強く求められる時代となりつつある.既に医療計画の実施によって,地域における病床数は一定の範囲に制限を受けており,長期入院の是正という言われ方での今後の方向づけが明確に示されるに至っている.
 このような状況にもかかわらず,これまでの展開においては,必ずしもそれが在院日数の短縮化に直接的な影響を及ぼしているわけではないように見える.ただし,特3類基準看護の要件として,病棟単位で平均在院日数20日の規定が設けられて,その取得のために診療科の組み合わせや病床運用上のノウハウ等のやや実務的な議論が行われ,その一定の普及が認められることは1つの成果であろう.しかし,患者の症状を抜きにしてより手厚い看護体制を導入した矛盾は拭い切れず,むしろ,実質的な施設間の看護格差の助長を促したのではないかと心配される.

統計諸表からみた高齢者入院医療の現状

著者: 亀山八郎

ページ範囲:P.561 - P.564

はじめに
 「国民皆保険」が実現したのが昭和36年.わが国の医療保険制度は,少なくとも昭和50年代前半までは,その間の高度経済成長に支えられながら,現物給付出来高払いという支払い方式の下に,誰でもが,どこででも,いつでも,必要な医療が受けられるという体制の確立を目指し,制度の整備・拡充と併せて,数次にわたる給付率の引き上げ,老人医療の無料化(昭和48年)などの措置がとられてきた.
 一方では,急速に進む人口の高齢化,疾病構造の変化,日進月歩する医学・医術の進歩,これに伴う高額医療機器や新薬の導入,生活水準の向上による健康意識の高まり,経済変動に伴う診療報酬の引き上げなどは,当然のこととして,国民医療費の増嵩につながった.この間における国民医療費の増嵩を財源負担という角度から眺めてみると,患者負担割合の減少分を埋め合わせする格好で公費負担のウエイトが増大する結果を招来したことがわかる.

在院日数の分析方法と患者分類

著者: 梅里良正

ページ範囲:P.565 - P.569

在院日数分析の視点
 医学の進歩はそれまで全く未知であった疾病の病理を次々と解明し,新たな診断・治療の方法を見出し,医療における科学性を急速に高めてきた.このような医科学に裏打ちされた疾病の診療においては,提供される医療内容は自ずから一定の範囲の類似性を持つことが期待され,必要と考えられる入院期間についても,ある程度の範囲内でコンセンサスを得ることが可能であろうと考えられる.
 三方,科学的に完全には解明されていない疾病においては,発現する症状を緩和したり,病巣を外科的に摘出するなど,患者の個々の病態に応じて最善と考えられる医療提供がなされる訳であるが,この場合においても,発現する症状そのものが疾病により類似していたり,術後の管理における医療提供の類似性など,患者個々に全く異なる医療が提供されている訳ではない.むしろ,同一の患者の病態に対して提供される医療には,現在の医療レベルなりの類似性が存在すると考えるほうが自然であろう.

退院時要約システムによるSISの構築

著者: 石塚隆男

ページ範囲:P.570 - P.576

はじめに
 近年,組織における経営資源として従前からのヒト,モノ,カネに加えで情報の重要性が大きくクローズアップされている.それに伴い,組織における情報システムの位置づけ・役割も大きく変わりつつあり,単に業務の効率化・合理化・省力化等を目的としたシステム化から組織が保有する情報を経営戦略に積極的に活用する動きが見られるようになった.このように,情報システムの戦略的な活用を意図した戦略的情報システム(Strategic Information System;SIS)が最近注目を集めている.
 さて,医学・医療の領域においても情報システム化やデータベース化がひととおり試みられ,費用対効果の大きいシステムはそれなりに運用に供されているのが現状である.とりわけ,病院情報システムにおいては数年前より情報発生源入力や部門別サブシステムの統合化が実施され,業務システムとして一応の成果をあげてきたといえよう.もちろん,情報技術の進歩により今まで予想もしなかったようなコンピュータの使われ方は今後も大いに期待され,一方,現実には手作業の代替手段として医事会計,および,その他の若干の業務にようやくコンピュータを導入する施設が少なからずあることも否定できない.

[座談会]何が在院日数の短縮を阻んでいるのか?

著者: 桑島齊三 ,   服部悟 ,   古畑正 ,   竹内實

ページ範囲:P.577 - P.584

 竹内 今日はお忙しいところお集まりいただき有り難うございます.この座談会では「何が在院日数の短縮を阻んでいるのか」というテーマで,先生方に議論をしていただきたいと思います.
 わが国の在院日数の長さをめぐっては,いろいろな見解があり得ると思いますが,その長いことがわが国の医療に様々な影響を与えているのも事実かと思います.これからの高齢化社会を考えると,行政としては今のうちに何とかしなければ,という強い思いがあるのかもしれませんが,逆に病院の立場からすれば,在院日数を短縮させたいからといって,やたらに患者さんを退院させるわけには当然いきません.

グラフ

島内完結型の高度医療を目指す—兵庫県立淡路病院

ページ範囲:P.547 - P.552

 兵庫県立淡路病院は地域の中核病院としての機能を充実するために,昨年新病棟を完成した.また今春,6年間院長を務められた松浦覚前院長が兵庫県立成人病センターに栄転,松尾武文現院長が4代目院長として後を継ぎ,「信頼と愛情で島民と結ばれる島内完結型の高度医療」の確立に向けて邁進している.
 淡路島唯一の公立病院である兵庫県立淡路病院が開設されたのは昭和31年4月.島民の医療に対する不安を解消し,島内の患者の診療は島内の病院でという島民の悲願に応えて新設された.以降,「淡路の医療は淡路の中で」を旗印に,県立病院として島民の信頼を集めた地域の中核病院としての基盤づくりがなされた.

プライマリ・ケアのモデル病院づくりを推進する 国立東京第2病院院長 岡本健氏

著者: 神崎仁

ページ範囲:P.554 - P.554

 岡本院長は平成元年に産業医科大学耳鼻咽喉科学教授より,国立東京第2病院(以下東2病院)の院長に就任されました.産業医大に行かれる前は東2病院の耳鼻咽喉科医長として活躍されていたので,いわば古巣に戻られたという感じです.東2病院時代には感覚器疾患を専門に取扱う病院としての基礎作りに努力され,産業医大では情報管理部,視聴覚教育,共同利用研究施設などの運営に中心的な役割を果さ下れました.また第4回産業医大国際シンポジウム「航空・宇宙労働における産業医学」の事務局長を果さ下れました.先見性に秀でている秘密は,ご経歴からも分かるように緻密な情報収集力と分析力にあるのではないかと思います.日本の医療の将来展望にも深い洞察をされ,病院長として誠に適任な方であると思います.東2病院は生涯教育,臨床研究推進のための高次診療機能をもつた総合診療施設として,また同時にプライマリ・ケア診療,教育,研究の中核病院として期待されておりますが,その期待に応えるべく,岡本院長は21世紀の医療を目指す病院の牽引車として,着々と実現に向かって構想を練られていることでしょう.
 岡本院長は耳鼻咽喉科学会でも重要な役割を果たされております.院長職と両方を担当することは,普通の人にはでさないことですが,岡本院長はそれが可能な稀な方だと思っております.

主張

医療計画の評価と見直し

著者:

ページ範囲:P.555 - P.555

 わが国の医療の現状について,厚生省は,「21世紀をめざした今後の医療供給体制の在り方」(1月19日)において,①世界最長寿国の達成,②国民の医療需要の多様化,③量的確保の達成,と分析している.このような現状分析からして,今後の医療の基本的考え方については,①成熟社会にふさわしい医療制度の構築,②より良いサービスの提供,③保健・医療・福祉の連係,④国等の責務,国民の理解と自覚,を強調する.なかんずく,病院医療についての具体的方向性は,すでに策定された各都道府県での二次医療圏ごとの保健医療計画の着実な実施・推進を図ることとしている.
 しかし,筆者が通覧する限りでは,各都道府県の保健医療計画は,各々の地域特性を滲ませながら策定されたものとはなっておらず,ほとんどが厚生省のガイドラインの域を脱していないのではないかとさえ思われる.各都道府県の保健医療計画がこのような現状と思われるふしからも,「今後の医療供給体制の在り方」のなかで敢えて強調せざるを得なかった厚生省の立場も理解できる.果たして,各都道府県の反応は如何なものであったであろうか.

特別企画 「高齢者保健福祉推進10か年戦略」にどう対応するか・2

老人病院とゴールドプラン/医療経済から見たゴールドプラン

著者: 漆原彰

ページ範囲:P.585 - P.592

 世界一の高齢国になる10年先を見据えたこの「戦略」について語ることはなかなか難しいことである.この「戦略」は高齢者の保健と福祉の領域で,公共サービスの基盤整備を図ることを目標に掲げたもので,その根底には保健および福祉の各施策の実施主体を国,県レベルから市町村に下ろして,それぞれの地域の特殊性を踏まえ現実に即して進めていこうという考え方がある.それぞれの地域の特性を生かした在宅福祉,施設福祉,地域福祉などの事業について官民をあげて強力に推進しようとするものであるが,全体的なトーンは「在宅」であり,それぞれの地域で在宅福祉支援のためのネットワークをどう構築するのかが強調されている.これはヨーロッパ諸国など先進高齢国で進められてきた福祉施設への収容中心の失敗を他山の石ともしている.さらに今年度中に予定されている医療法の改定および老人保健法の見直しにおいて,医療機関の機能がどう見直されるかということと大いに関連していると思われる.
 では,この「戦略」に医療機関がどのようにアプローチし,関与できるかを考えてみたい.当然のことながら,この「戦略」は福祉施設や行政主体に各種の具体策が進められようが,これらの活動を進めるに当たっては,対象が高齢者であることから背後から支援するものの一つとして医療のかかわりが絶対に必要とされる.

味わいエッセー 出会い

“ドゥツェン”

著者: 疋島一徳

ページ範囲:P.593 - P.593

 “ドゥツェン”ついにduzenドゥツェンが来た.
 1987年10月2日,ドイツ,マインツのでき事であった.私,自治医大第1期生は卒後9年間のへき地医療勤務を終え,男のロマンの地をドイツ“遊学”に求めた.

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

自家用車通勤医師は孤独な一人社長

著者: 松浦鎭

ページ範囲:P.594 - P.594

 がん病院に一臨床医として奉職して久しくなる.都市型と地方型というか,違った二つのタイプの病院に勤務してきた経験をもとに,その両型の比較を交えながら,通勤医師にまつわる医療情景の寸評をしてみる.

病院管理の現場から 医事課窓口から見えるもの

在宅療養と老人保健がおもしろい

著者: 佐藤俊一

ページ範囲:P.595 - P.595

90.4.改正のトピックス
 4月1日から2年ぶりに診療報酬の改正が行われた.そのメニューは多岐におよぶが,ここでは,特に注目したい改正点の内容を紹介しながら,今回の改正を現在から見る視点と活用方法について述べてみたい.
 まず,診療報酬点数表は,自分の病院の役割を具現化し,公的保健から収益として取り入れるためのルールである.自院の機能を点数表から読み取り,現在の医療・福祉の実践のあり方を考えるのはもちろんのことだが,今回の改正でより必要となったのは,連携する病院の役割・機能を点数表から読み取っておくことである.お付き合いする老人病院が,以下に紹介するような老人介護強化病院なのか,付き添い看護を要する病院なのかで,患者さんが必要とする経済条件,その病院に期待する機能も変わってこよう.

建築と設備・51

北里研究所メディカルセンター病院

著者: 金光健 ,   高田哲

ページ範囲:P.596 - P.602

■メディカルセンター構想の第一期事業
 破傷風免疫体の発見により有名な北里柴三郎博士が創設した北里研究所(社団法人)の創立75周年記念事業として「北里メディカルセンター」が計画された.その第1期事業として平成元年4月に病院がオープンした.今後,研究製造棟,看護学校,運動施設,住居棟などの建設が計画されており,臨床・研究・教育の面をすべて包含したメディカルセンターを形成する予定である.
 研究所が母体という特質から臨床研究面での力のいれ方は一般の病院と大きく異なるところであり,第1期工事でも臨床研究を実践するバイオメディカル棟が病院に併設されている.

特別寄稿

看護システムと医療管理(上)

著者: 宇都由美子 ,   熊本一朗 ,   朝倉哲彦

ページ範囲:P.603 - P.607

はじめに
 鹿児島大学医学部附属病院が,病院の近代化と患者サービスの充実・発展を期して,大型汎用コンピュータを導入し新しい病院運営の開発に着手して以来,すでに6年余りの歳月が経過した.本院では,診療現場において医師・看護婦らが端末を用い,発生源で情報の入出力を行う独自の運用形態をオーダリングシステムとよび,それによる病院全体におよぶトータルなシステム化を鹿児島大学総合病院情報システム(Total Hospital Information System of Kagoshima University),通称(愛称) THINKと称している.
 オーダリングシステムによる総合病院情報システムの開発・導入は今でこそ珍しくなくなったが,鹿児島大学がシステム開発に着手し始めた1983年頃は,一部の人々から「自殺行為」と懸念されるほど大きな危険を伴う冒険的行為であった.当時の病院におけるコンピュータ利用は医事会計を中心とした限られたものであったが,オーダリングシステムに類する総合病院情報システムの開発に先駆的に取り組んでいた病院がなかったわけではない.しかし,そのほとんどが,病院の新規開設や新病院建設の機会を利用してシステム導入を図ったもので,本院のように,既存の古い建物と伝統的病院運営が存在していたところに,新しいコンピュータシステムを導入した例は珍しかった.

ルポ&インタビュー 病院アレコレ見聞録

高知県西端で地域包括医療体制の確立に奮闘—大月町国民健康保険大月病院

著者: 夕部富三

ページ範囲:P.608 - P.611

 大月町国民健康保険病院は高知県の西端の大月町にある25床の病院である.夕部富三院長をはじめ医師5名は自治医科大学の卒業生,および自治医大で研修した医師である.また,常勤の歯科医師1名がいる.同一敷地内に病院と健康管理センターがあり,医療と連携した保健活動を行っている.本院は昭和60年に有床診療所として開設され,62年に病院に昇格した.有床診療所時代の初代所長および初代院長は高知県立中央病院の副院長をされていた塩見文俊医師,現在の夕部院長は2代目である.
 大月町は中村市から車で約60分,宿毛市と土佐清水市との間にある人口約8,800人の漁業と農業を中心とした町である.昭和40年代には1万人を数えた人口も徐々に減少してきたが,最近では横ばいである.また,65歳以上の高齢者は20%弱となっている.

厚生行政を読む

医療法改正(下)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.612 - P.613

 医療法改正に関する話題を連載している間に,政府の動きが急激に進展し,医療法改正案は国会審議の場へと移されることとなった.本稿が世に出る頃には法案審議は終了しているかもしれないし,審議未了で廃案(継続審議)になっているかもしれない.
 大方の予想として,この改正案が否決されることはないであろうとされている.改正の趣旨(良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保する)に対して異論を唱えることは勇気のいることである.

統計のページ

フランスの医療費統計③

著者: 中島誠

ページ範囲:P.614 - P.615

1.被用者疾病保険全国金庫
 フランスの社会保険は,国民連帯と当事者による自主管理という二大理念の下,職業別に制度が分立しており,被用者疾病保険全国金庫(CNAMTS)は,民間商工業被用者を主な対象とする一般制度の疾病保険制度(出産保険,廃疾保険,死亡保険,労災・職業病保険も含む)を管理運営する公法人で,1986年現在,全国民の83.5%をカバーしている.そして下部機関として16か所の地方金庫及び129か所の初級金庫を有している(図1,表1).
 疾病保険金庫の主な役割は,保険診療に関する医療関係団体との協約締結とその運用の他,被保険者の登録や保険給付の現実の支給などである.なお,保険料の徴収は,社会保険機関中央機構(ACOSS)とその下部組織である全国102か所の社会保険・家族手当保険料徴収連合(URS-SAF)によって,統一して行われている.

研究と報告

医療行為数値の観察に管理図法を導入した試み

著者: 三宅裕子

ページ範囲:P.616 - P.619

はじめに
 わが国の医療では,医療行為を評価するための指標となる数値をもたない.そのため,自病院の医療行為数値の観察には,前年同月の数値と比較するか,Pontonの指標と比較して検討する方法がとられている.しかしながら,前者の方法は単に数値の比較のみにとどまり,また後者は米国の指標で,国情の異なるわが国でそのまま使用するのは必ずしも適当ではない.
 これらの方法以外に,院内指標をもつ方法,同一地域の他病院の数値と比較する方法などが考えられるが,相当量の予備データをもっていないと院内指標は求めにくいし,同一地域の病院で医療行為の数値を算出しているところが少ない現状から,他病院と比較することも難しい.

病院運営の合理化を求めて

ハウスキーピング

著者: 安田尚之

ページ範囲:P.620 - P.620

 “ハウスキーピング”とは,本来,家事,家政,家計といった意味をもつ言葉で,ハウスキーパーという言葉は,一般に,家事を司る人,事務所や住宅などの管理人,主婦に代って単身赴任者などに食事の支度や掃除・洗濯などの家事サービスを行う人の意味で使われている.
 しかし,病院におけるハウスキーピングの内容はさらに幅広く,したがって,院内組織上の存在も大きなものとなる.病院によって多少の違いはあろうが,病院のハウスキーピング部門は一般に,清掃管理,建物の維持管理(補修・修繕),寝具・リネン管理,職員の被服(ユニフォーム)管理,病院内外の消毒などの業務を担当する.また,組織的には,庶務部門に所属していたり,保清部門として独立していたり,あるいは看護部門,施設部門に所属していたり,院長の直轄下下にあったり,その病院の規模,経営母体,院長の考え方などによって,ハウスキーピング部門の位置づけも様々であろう.

医療・病院管理用語ミニ辞典

〔病院管理〕公的医療機関,私的医療機関/〔救急医療〕カウンターショツク

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.621 - P.621

 医療法第31条において,「公的医療機関」とは,「開設者が,①都道府県,市町村,または一部事務組合,②日赤,③済生会,④厚生連,⑤北海道社会福祉事業協会,⑥国民健康保険団体連合会等」の医療機関としている.また,同法第7条の二において,公的な性格をもつ病院の適正配置をはかる目的で,開設・増床の規制対象として,上記病院の他,国家公務員等共済組合など各種共済組合法,健康保険法,国民健康保険法,船員保険法,厚生年金保険法などに基づき,社会保険団体が開設したものを加えている.この他,厚生省,文部省,労働福祉事業団などの「国立」医療機関がある.
 したがって,「公的医療機関」とは,狭義には医療法第31条の規定によるものであるが,広義には,開設者が公的機関という意味で,第7条の二に規定された機関に国立を加えたものを指すのが適当であろう.またこれを「国公立」医療機関といってもよい.なお,特に地方自治体の「一部事務組合」病院に「公立」を冠して用いられており,狭義と広義の使い分けがある.

病院管理トピックス

[病院経営]意思決定会計と病院経営①/[医療社会事業]アイデンティティ/[リハビリテーション]医療の場で働く言語治療士(ST)をとりまく状況

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.622 - P.624

 病院を取り巻く経済環境が厳しくなっている.そうした中で,過剰な設備投資や意思決定の誤りによって病院が倒産する事態も起こっている.実際,「当院はいま,全身CTスキャンを導入すべきかどうか?また,導入するとしたら,A社のものがよいのか,それともB社のものがよいのか?また,それは買い取りが有利なのかリースの方が有利なのか?」といった経営の基本構造にかかわる長期的な問題で悩んでいる病院は多い.
 しかし,これまではどちらかというと,新規に病院を建設したり,医療機器を購入したりする時に経営者の直感や経験に基づいて意思決定をしてきた病院が多かった.だが,これからは科学的な情報に基づいた意思決定が重要になってくる.

時評

階梯をはずされた青年医師

著者: 箕輪良行

ページ範囲:P.625 - P.625

 この数年の間気になっているが,だれも大声で語らないことがある.特に医界の大御所たちは口を閉ざして語らない.一言でいうと,昭和50年以降に卒業した青年医師たちは近い将来,深刻な失業,ポスト不足の危機にさらされるであろう.
 医学と医療の進歩と国民の健康水準の上昇に見合った医師数の確保のために,全国に1県1医大が設置された.過疎地域や一部の領域を除けば,新設医大をはじめ医学部を巣立った青年医師がいま巷にあふれている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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