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文献概要
特集 救急医療体制の問題点と将来像
精神科救急医療体制の現状と展望
著者: 江畑敬介1
所属機関: 1東京都立松沢病院精神科診療部
ページ範囲:P.672 - P.675
文献購入ページに移動精神科における「救急」の定義
精神科救急の対象とする「救急」事態を定義することは,身体救急の対象とする「救急」事態を定義することよりはるかに困難である.その理由として,次のようなことが考えられる.まず第1に,臨床精神科医の対象とする「精神障害」自体の概念が必ずしも明確ではないことである.第2に,それぞれの人びとがその人生行路において体験する精神的危機状況一般が精神科救急の対象としての「救急」事態と考えて良いかどうか問題であることである.米国のG.カプランの危機理論に展開される精神的危機は,次のように定義されている.「危機的状況に陥り,それから逃れることもできず,それまで使い慣れた問題解決手段によっても解決することができずに心理的均衡を失った事態」としている.これは,かなり広範な日常的心理状態をも含む定義である.このように定義された精神的危機を精神科救急の対象とすることがわが国の文化土壌に適合するかどうかは十分に検討すべき課題である。第3に,精神科診断が患者の主観的体験に大きく依拠しているために,「救急」事態の判断もまた患者の主観的体験に依拠せざるを得ない面のあることである.第4に,社会的要因が「救急」事態の発現ないし事例化に大きく関与していることである.すなわち「救急」事態の発現の様態と頻度は,社会文化状況と密接な関連をもつと考えられるので,「救急」事態を普遍的に概念化することが困難となる.
精神科救急の対象とする「救急」事態を定義することは,身体救急の対象とする「救急」事態を定義することよりはるかに困難である.その理由として,次のようなことが考えられる.まず第1に,臨床精神科医の対象とする「精神障害」自体の概念が必ずしも明確ではないことである.第2に,それぞれの人びとがその人生行路において体験する精神的危機状況一般が精神科救急の対象としての「救急」事態と考えて良いかどうか問題であることである.米国のG.カプランの危機理論に展開される精神的危機は,次のように定義されている.「危機的状況に陥り,それから逃れることもできず,それまで使い慣れた問題解決手段によっても解決することができずに心理的均衡を失った事態」としている.これは,かなり広範な日常的心理状態をも含む定義である.このように定義された精神的危機を精神科救急の対象とすることがわが国の文化土壌に適合するかどうかは十分に検討すべき課題である。第3に,精神科診断が患者の主観的体験に大きく依拠しているために,「救急」事態の判断もまた患者の主観的体験に依拠せざるを得ない面のあることである.第4に,社会的要因が「救急」事態の発現ないし事例化に大きく関与していることである.すなわち「救急」事態の発現の様態と頻度は,社会文化状況と密接な関連をもつと考えられるので,「救急」事態を普遍的に概念化することが困難となる.
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