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雑誌目次

雑誌文献

病院50巻2号

1991年02月発行

雑誌目次

特集 変革する病院経営とトップマネジメント

変革する病院経営とトップマネジメント

著者: 岩﨑榮

ページ範囲:P.106 - P.109

 『医療機関の経営は,院長の意向に左右されることが多いが,院長が経営についての感覚を欠いている場合であっても,最近までは高度経済成長に対応して診療報酬の改訂が行われてきたこと,医師や医療機関の数も現在に比べれば少なかったことなどにより,医療機関は十分運営を続けていくことができた.しかし,現在は,このような条件は大きく変化しており,医業の経営者は,経営に十分な配慮を行い,優れた経営センスを発揮することが求められるようになってきている.』——これは,昭和62年9月24日の『医業経営の近代化・安定化に関する懇談会』(厚生省)報告書の一部からのものである.
 医業経営を取り巻く状況は,近年の疾病構造の変化が医学・医術の進歩,医療に対する国民の期待の変化,医療サービスの質の向上,医療資源ことに看護婦不足,医業収入の伸びの低下などの影響により大きく変容してきている.

〔てい談〕変化に対応できる経営者とは

著者: 星和夫 ,   三枝匡 ,   河北博文

ページ範囲:P.110 - P.119

病院をとりまく環境の変化
 河北 お忙しい中をありがとうございます.本日は「変革する病院経営とトップマネジメント」というテーマで鼎談させていただきます.
 青梅市立総合病院院長の星さんと,(株)三枝匡事務所の三枝さんにおいでいただきました.まず最初に星さんのほうから,いまの病院とのかかわりなど自己紹介を兼ねてお願いできればと存じます.

3つのパラドックスとこれからの病院経営

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.120 - P.123

病院と一般企業
 今日,日本の産業界は絶頂期にある.生産性,製品の品質,国際競争力どれをとっても世界の上位の水準に達している企業は多い.
 これに対して,日本の医療および医療界はどうだろう.この評価はいろいろと分かれる.野戦病院時代からみれば,医療供給体制,医療技術,医学研究は随分発展したとして,日本の医療を高く評価する主張があるかと思うと,他方で,現場の医療サービスの質や個々の病院の経営資源はまだまだ貧弱だとして改善の必要を訴える主張もある.

変化に対応できる病院経営とは

著者: 竹本吉夫 ,   丹野清喜 ,   山口昇 ,   武田隆男 ,   川村耕造 ,   中山耕作 ,   亀田俊忠

ページ範囲:P.124 - P.137

変化には変化だ
 当院は開設されて今年で77年目を迎える.
 これまでに3たび居を変えているが,いずれも内的・外的環境の激変に積極的に対応すべく,移転新築というスクラップ・アンド・ビルドの荒療治を断行したためである.私は8代目の院長として2回目の荒療治を担当して24年になるが,病院の現状からみて構造的にも機能的にもとうに限界をすぎており,3回目の荒療治が急務という厳しい事態に陥っている.まさしく“企業が繁栄を謳歌できる期間は平均して約30年”という感が強い.環境の激変期,そして時代の大きな変革期においては,変化の先行きを見定め,その変化に柔軟かつ適切,しかも創造的に対応していかねばならない.

グラフ

病院の医療機能と福祉の連結—済生会中津医療福祉センター

ページ範囲:P.97 - P.102

 医療と福祉の連携が強調されている.大阪府済生会中津病院は,この精神を現実化するために医療施設,福祉施設を1か所にまとめ,昨年3月,大都市における医療福祉施設のセンター構想に基づく済生会中津医療福祉センターとなった.現在,ソフト面での医療と福祉のより緊密な連携を目指している.

医療法人大道会大道病院・ボバース記念病院理事長 大道學氏

著者: 行天良雄

ページ範囲:P.104 - P.104

 まるで中世貴族の館を思わせるような入口を入ると,実に明るい大道先生の部屋に通された.従業員の応接のよさが,病院の重苦しさを全く感じさせない.
 凡て,激動の時代であったとはいえ,S.29年の開院からS.32年大道病院へ,そしてS57年ボバース記念病院へと,実に先見性に富んだ展開をされている.

主張

民間病院の経営

著者:

ページ範囲:P.105 - P.105

 各民間病院においては,平成2年度の決算見込みもほぼ予測が可能となり,来年度の事業計画・収支予算の細部についての検討が開始されていることであろう.平成2年度は社会保険診療報酬が改定されたが,大部分の民間病院においては,実質的には若干の増収傾向であるにも拘らず経費の大幅な増加となり,経営を維持することさえ困難となってきていると思われる.最近の民間病院における低迷した経営状況は,将来に対する経営不安を増大させており,我が国医療を支えてきた民間病院としての存続さえ否定されかねない状況である.ついてはこのような環境下における民間病院の経営状況について述べてみたい.
 我が国民間病院は,自由開業医体制下における出来高払い診療報酬のもとに経営基盤を整備し運営を行ってきた.この自由開業医体制における出来高払い診療報酬は,民間病院としての自主・独立の精神を生じさせ,地域における医療機関等相互の経営的牽制を行いつつ,地域医療機関として独立し,かつ均衡のとれた医療サービスを可能としていた.

GROUPING & NETWORKING

東海青年医会の現状

著者: 伊藤伸一

ページ範囲:P.138 - P.139

 東海青年医会は昭和61年3月に発足準備を開始し,昭和63年6月に正式に発足した.
 当会の設立目的は,私的病院の若手経営者が互いに連携を深め,病院経営の諸問題に関して相互に研鑽啓発しあい,また変化の激しい医療情勢をいち早く認識する事によって,それぞれの医療機関としての社会的役割を正しく認識し,地域医療に対する貢献度をより高める事にある.

厚生行政を読む

超人手不足の時代

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.140 - P.141

はじめに
 平成3年度国家予算案がまとまり,来年度のこの国は,およそ70兆円の予算規模で運営される予定である.このうち社会保障関係費は12兆円を占めるが,たった12兆円(国民1人当たり10万円)でこの国の社会保障が成り立つはずはない,医療保険制度や年金保険制度等の諸々の制度を併せ,社会保障のための経費はおよそ50兆円といったところか.
 話を医療給付費に絞ると,その規模はおよそ20兆円(国民所得の6%弱)となるであろう.20兆円という数字は生活実感とはかけ離れた数字ではあるが,所詮これはNTTの総売上高の3倍強でしかない.NTT傘下に従業する人口と医療従事者数とを比較すれば,1人当たりの予算規模は比較にならないくらい異なっている.1人当たりの予算規模の違いは,一般論として,平均賃金の差となって表れてくるものであり,NTTをはじめ大企業の給与条件が医療従事者の給与条件よりはるかに恵まれているであろうことは想像に難くない.

勤務医からの発言

どうなるのか看護婦不足

著者: 亀井克典

ページ範囲:P.144 - P.144

 看護婦不足が深刻となっている.年度初めに辛うじて定数を確保しても,年度内に退職者が相次ぎ,補充がままならない.残った病棟看護婦は月10回以上の夜勤を強いられることすらある.
 現代の内科診療は,明らかに慢性期疾患および高齢者のケアに主眼が移ってきている.これに対応するには,医師自身の診療技術の向上と相俟って,看護職,MSWなどの質の向上とチーム・アプローチがますます重要になってきている.看護職の職場が不安定で荒れた状態では,医師としても片腕をもがれたような状態で診療に当たらざるを得ない.看護婦不足の問題は,地域医療のレベル・アップを願う医師にとっても,重大な問題である.

建築と設備・58

佐世保市立総合病院

著者: 梶原正樹 ,   林一公

ページ範囲:P.145 - P.151

■移転開院までの経緯
 佐世保市立総合病院は,昭和9年(1934年)の市立実費診療所の開設が始まりである.昭和14年(1939年)の増改築時に佐世保市立市民病院と改称した.第2次世界大戦後の昭和21年(1946年)旧海軍の海仁会病院を買収し,佐世保市立市民病院として再発足し,旧市民病院は北分院に改称.
 昭和47年(1972年)に北病院(旧北分院)を統合し,佐世保市立総合病院に改称し,この名称が今日までに至っている.この時の所在地は同市島地町で佐世保川東岸であった.

事例 医療施設間連携

病診連携20年の経験から

著者: 柏木政伸

ページ範囲:P.152 - P.155

はじめに
 地域医療における医療施設間の機能分担と連携は,しきりにその重要性が叫ばれているにもかかわらず,遅々として進んでいないように見える.もちろん,地域によっては,自己完結的な医療の不効率を認識して様々な形の連携を模索する動きがあるが,真の機能分担・連携を実現するためには,前提条件として,情報公開をめぐる問題や,財政や制度面での制約,経営問題などの調整が不可欠であろう.
 これからの自治体病院は,医療資源の有効活用を実現するため,先頭に立って病診・病病連携を進め,更に保健・福祉の分野でも,住民の期待に応えなければならない立場にある.それだけに,地域社会における医療施設がお互いにその機能を分担して,住民の幅広いニーズに的確に応えていくことが早急に求められているのである.

研究と報告

当院の医療用酸素保険請求率について

著者: 早崎孝則 ,   高桑勇次 ,   岩城洋一 ,   森健 ,   山本貞博

ページ範囲:P.157 - P.163

 医療用酸素の保険請求価算定方法の改正を機会に,当院における過去2年間の酸素の保険請求量と購入量を比較し,請求量がマイナスとなる差異発生の諸原因を究明し,今後の酸素の保険請求についての適正化を図るべく検討を加えた.

火災に関するマニュアルの作成とその運用結果について

著者: 村山国男 ,   田﨑和子 ,   澁谷統寿 ,   田渕純宏

ページ範囲:P.164 - P.167

 医療の現場に勤務する医師や看護婦にとっては,病院における災害(事故を含む,以下同じ)とは,おおむね医療行為中に発生する大小の災害のことであって,自然災害や火災への認識は極めて低いといえよう.それは専門職としての本来の業務内容から考えると当然のことと言えるが,患者対策などの病院管理上から考えるとき,自然災害や火災についての対策も,これと同様に重要であることは言をまたない.
 この報告のモデル施設である国立療養所川棚病院(以下「当院」という)の場合,他の病院に比べて,収容患者の看護介助度,生活の不自由度が高く,災害時,特に火災時の対応が心配されてきた.年2回実施している消防訓練にしても,現場の実情に疎い事務部門が,消防署への対応のために義務的に行っていたきらいもあり,現に看護部門職員へのアンケート調査によれば約80%の職員が効果がないとしている.われわれは,このような認識のもとに,職員の防災意識の高揚を図ることを目的として,①「火災に関するマニュアル」の作成と,マニュアルに基づいた訓練を行い,②職員の火災への意識づけが,どの程度行われたかを計る目的でアンケート調査を行った.

統計のページ

自治体病院の運営管理状況の推移(2)

著者: 米田啓二

ページ範囲:P.168 - P.170

3.外来予約の状況
 外来患者の予約(時刻まで指定)の状況をみると,「全部の科で行っている」「大部分(半分以上の科)で行っている」ところは,昭和46年には都道府県立では3.3%に当たる6病院(前者のみ),市町村立では3.1%に当たる18病院,0.5%に当たる3病院,全体では3.2%に当たる24病院,0.3%に当たる3病院に過ぎなかった.しかし平成2年の現在では,都道府県立では20.5%に当たる45病院,7.3%に当たる16病院,市町村立では3.0%に当たる22病院,5.1%に当たる37病院,全体では7.1%に当たる67病院,5.6%に当たる53病院と大幅に伸びている.都道府県立の全部の科で予約制としているところが多いのは,がん,小児科の専門病院が増加したことも一因である(表1).
 平成2年の外来予約の状況について,都道府県立,市町村立別に,また,病床規模別にみた場合,「一部の科で行っている」ところも多く,特に市町村立,中でも中規模の200〜299床,300〜399床,400〜499床が多い(表2).

病院管理トピックス

〔外来運営〕病院外来運営の新しい考え方/〔リハビリテーション〕私立病院とリハビリテーション—整形外科の立場から/〔放射線〕誰が放射線部を運営すべきか

著者: 穀山聡子

ページ範囲:P.171 - P.173

 ヘルスケア・システムの改善は,病院外来の役割・運営を変えることなしには難しい.過去40〜50年の急激な社会・科学技術の変化は,医療の場においては治療中心,病院は病気が重くなったら入院するところ,という形になって現れた.治療中心ということは,予防の側面や,治らない人,障害をもって生活する人へのケアが見落とされてきたということである.このような状況のなかで,外来看護婦は診療補助,受付,事務,機器・薬品・物品の管理などを主業務としてきた.
 看護婦の配置も,濃厚な治療をする病棟中心で,外来には特定の看護婦を配置せず,毎日,各病棟から何人かの看護婦が診療時間帯にきて外来の作業をするだけで充分,という極論まで過去にはあった.病棟の看護婦に病気休暇,特別休暇が出ると外来の看護婦でそれを調整することもしばしば行われてきた.

〔病院管理〕病院組織/〔産婦人科医療〕病理学的検査法

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.174 - P.174

 社会の組織は,軍隊や警察などの強制的組織,一般営利企業の功利的組織ならびに公共サービス業の規範的組織の3つに分類されるが,病院組織は規範的組織に属し,命令もきかず,営利も追求しない「……べきだ」の組織であるといえる.
 病院組織は,病院本来の目的である医療に直結している組織をライン部門,これ以外の組織であるスタッフ部門の2つに大別される.ライン部門には,内科,外科,産婦人科,眼科などの診療科や診断・治療部門の医師集団と外来や病棟などの看護婦集団が属している.スタッフ部門は,ライン部門だけを対象にサービスを行うライン・スタッフ(薬剤部門,栄養部門,手術部門,中央滅菌材料部門,輸血部門,診療録管理部門,放射線部門,臨床検査部門,ME部門,医療社会事業部門,メディカルフォトセンター,病院ハウスキーピングなど),病院全体の部門にサービスを行うサービス・スタッフ(事務部門や電算部門など),病院長を補佐し,病院全体の企画・管理・調整などを行う副院長集団の組織をゼネラル・スタッフといって,3つに分けられる.

時評

国保病院の地域医療離れ

著者: 矢島嶺

ページ範囲:P.175 - P.175

 国保病院の基本的任務は言うまでもなく,その町村の住民全体の「健康」に責任を持つことであろう.最近,「健康」の意味は長寿化,人権感覚,民主主義の進行,医療技術の発達と相まって非常に多様に深化拡大され解釈されてきている.この広がってきている「健康」を,自分の属している町村の特定多数の人々に可能な限り支援するのが国保病院の任務だと思うが,現在の国保病院を外から見る限り,病院内にこもり,こじんまりと「健康」の一部を扱っているように見える.「なんで病院から出て地域の人々の“健康”を守らなければいかんのですか?」と言わんばかりである.
 日赤,厚生連,あるいは高次医療を担当する病院ならばいざ知らず,税金で運営されており,税金を納めている人々の顔が特定できそうな地域に建てられている国保病院が,地域医療の水準を落とし,地域離れを起こしている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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