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雑誌目次

雑誌文献

病院50巻4号

1991年04月発行

雑誌目次

特集 中小病院の明日を拓く

中小民間病院の活路を求めて

著者: 高橋順一郎 ,   天本宏 ,   大脇潔 ,   勝木道夫 ,   中澤明子 ,   大田浩右 ,   横倉義武 ,   高野正博

ページ範囲:P.282 - P.299

愛心メモリアル病院(71床)
「患者中心」の医療の試み
はじめに
 「中小民間病院の活路を求めて」という題で原稿の執筆依頼を受けた.中小民間病院は不利とされているが,民間病院であるが故に,公的病院たとえば市立病院の赤字補填を市財政から受けるといったことは全くなく,患者さんからの収入のみで賄わなければならない状況である.職員の給料も公的病院より高くしなければ,診療に必要な職員にも事欠く状態である.この窮地において活路を求めてゆくのであるが,非常に困難な問題であると考える.結論を先に述べると,「患者中心」を方針として運営することに尽きる.理由は,患者さんからの収入以外全くないからである.どうしても大病院にはできない患者中心の方法は何か,ということである.
 その方法を次に列挙してみる.

中小病院のネットワーク

著者: 石田貞治 ,   沢柳太

ページ範囲:P.300 - P.305

神奈川県病院協同組合の事業活動
はじめに
 「中小病院のネットワーク」というテーマで,神奈川県病院協同組合の事業等に関して執筆を求められたが,筆者は組合の事務局長の職を退いて数年あまり経ち,今はその立場ではないとお断りしたが,重ねての依頼でお引き受けすることにした.
 その関係から,筆者が在職した昭和34年の組合創立時から,昭和58年に後任者に引き継ぐまでの約23年間の経過と事業の概要,組合事業を介しての病院間のネットワークづくりの経験を中心に報告する.また,その間の職務を通じて得た経験を踏まえて,協同組合の組織的条件と事業活動等について私見を述べ,民間中小病院のサバイバル対策の一環としての協同組合を論じてみる.

医師会病院と中小病院

著者: 松岡克己

ページ範囲:P.306 - P.308

医師会病院設立の理念
 現在,全国に70余りある医師会病院は,それぞれ設立の経緯や,運営形態,機能も異なるので一律には論じられない.ここでは鹿児島市医師会病院の立場で考えてみたい.
 鹿児島市医師会病院は,昭和59年6月,全会員の醵金により設立され,現在,病床数255床(ICU,CCU,救急ベッドを含む),診療科目は内科,神経内科,消化器科,循環器科,呼吸器科,外科,産婦人科,小児科,麻酔科,放射線科および病理部である.

公的中小病院の存在意義

著者: 横内正典 ,   谷川高

ページ範囲:P.309 - P.314

創意と工夫が生かされる病院
はじめに
 科学技術の目ざましい発達に伴い,医学の進歩も日進月歩でとどまる所を知らぬかのようである.それにつれ,医学の専門分化が進み,生体肝移植や,脳死の問題をクリアできぬままの心臓移植を初め,医療問題がマスコミに取り上げられることが多く,患者も高機能重装備の病院へと向かうのも人間の気持ちとしてよく理解できることである.また,生活レベルの向上により,人々の関心も,物から心へ,そして健康へと大きな変化が起こっている現状である.それが病院の診療の質ばかりでなく,入院の生活空間の快適性にまで及んでいる.更にまた,急速に高齢化社会を迎え,老後の生活に対する不安も強く,人々の医療に対する要求はますます多岐に渡ってきている.
 このような情勢のもと,公的中小医療機関の存在意義について考えることは,時宜を得たものと思われる.そこで先ず,当院の現状を報告し,本題についての私見を述べたい.

[座談会]中小民間病院の未来を語る

著者: 木村佑介 ,   富田恭弘 ,   竹内實

ページ範囲:P.315 - P.320

中小民間病院の成り立ち
 竹内 本日は,「中小民間病院の未来を語る」ということで,今大きな転換期に立たされている民間病院の現状を考えながら,その将来像を探ってみたいと思います.
 まず中小病院とは何ぞや,ということが問題になりますが,これには何の定義もありません.例えば300床以下とすると,日本の病院の85%が入りますから,ほとんど全部が中小病院ということになります.そこで,とりあえず今日の座談会では,全国の病院の60%が入り,ほぼ半分の病床数を占めることになる150床以下の病院を中小病院と考えたいと思います.

グラフ

「思いやりの心」を基調に質の向上を図る—医療法人医仁会武田総合病院 武田病院グループ

ページ範囲:P.273 - P.278

 武田病院グループは本年で創業30周年を迎えるが,そのスタートはグループの武田道子副理事長の夜間診療所の開設に発する下現在は医仁会武田総合病院,武田病院,木津屋橋武田病院,医仁会老人保健施設「白寿」,武田病院健診センター,医仁会武田総合病院リハビリテーションセンターの6施設,ベッド数が合計1,000床,職員数も1,000名も越えるまでに発展した.
 グループでは“Lovely medicine”をモットーに大学病院レベルの医療技術と地域住民の医療ニーズに対応できる機能という二つの特色を備えた民間病院づくりを進めてきた.各施設はそれぞれ機能的に特徴を持っているが,グループでは健康づくり・予防医学からアフターケアまでトータルケアに視点を据えた多角的な運営を行っている.

第41回日本病院学会会長を代行される 医療法人大雄会理事長 伊藤研氏

著者: 諸橋芳夫

ページ範囲:P.280 - P.280

天下に飛翔する大雄会
 総合大雄会病院,大雄会第一病院,大雄会一宮看護専門学校,大雄会医科学研究所,大雄会第二医科研究所を統括される医療法人大雄会は東海地方のみならず,天下にその名を轟かせている.この理事長伊藤研先生の尊父,郡二先生が大正13年に全国に先駆けて放射線専門の岩田内科医院を開設されたのがこの病院の始まりである.
 研先生は昭和43年に理事長兼院長に就任されるや,驚くべきファイトとスピードで上記のごとき大病院および附属施設を建設された.その構想,施設,設備の何れの点からみても公立,公的に勝るものばかりである.CT,MRI,体外衝撃波腎結石破砕器にしても何れの病院よりも早く且つ世界第一流のものを購入された.その先見の明には敬服する他はない.私は昨秋,創立満20周年を迎えた新築の看護専門学校,近くオープンする老人保健施設などを拝見したが,何れも素晴らしいものである.

主張

医療における「公正」と「公平」

著者:

ページ範囲:P.281 - P.281

 「公正」と「公平」という言葉がある.英語を当てれば公平とはequalityであり,一律に平に等しいということであろう.片や公正とはfairであり,正しく判断,評価,対応されているかどうかである.
 医療を簡潔に定義して,「医学の社会的適用」と言うことがあるが,自然科学としての医学を社会に応じて用いることである.社会は変化するものであるので医療も当然その変化に応じて変わるべきであるが,果たしてそのようになっているのであろうか.

研究と報告

効率的資源配分の観点からみた医薬分業—費用便益分析による医薬分業・ICカード・集中情報処理システムの比較

著者: 田中滋 ,   根本正樹

ページ範囲:P.321 - P.326

問題意識
 医薬分業は—もし適切に行われるならば—よりよい投薬システムにとって効果的な道筋であることは間違いない.医薬分業の利点を整理すると次の4点に集約できると思われる.
 1)薬歴管理に基づく薬物治療

建築と設備・60

高砂市民病院

著者: 三村澄夫

ページ範囲:P.327 - P.332

■設計の理念
 高砂市民病院は昭和40年の開設以来20年余りを経過し,建築及び設備面での老朽化,狭山盗化が進み,医療の高度化,患者サービスの充実,安全性等,現代社会のニーズに対応することが困難になったため,新しく敷地を求め全面新築移転することになった.
 病院建築を計画するうえでの基本として,合理的で機能的な部門構成,将来の成長と変化に備えた施設計画,経済性,安全性の検討等々はいうまでもなく重要な要素であるが,特に今後の病院建築のありかたを考えるとき,患者本位の病院づくりと,高度医療に対応する機能性の2点を最重要課題とした.

事例 医療施設間連携

病診連携の現状と課題—仙台オープン病院

著者: 富永忠弘

ページ範囲:P.333 - P.337

はじめに
 もともとは医師会用語であった「病診連携」なる言葉も近ごろは一般のマス・メディアにまで散見されるようになってきた.これはこの問題が独り我々医界の関心事たるに止まらず,これからの望ましい医療のあり方として,心ある一般市民の注目をも集めつつあるからでもあろう.
 しかし理想・建前論としての「病診連携」の社会用語化とは裏腹に,その進行は必ずしも円滑ではないように見受けられる.事実,病診連携を進める具体策として最近厚生省が打ち出した「地域医療連携施設の指定」の進め方をめぐり,一部の地域では病診間の主導権争いのごたごたさえ起こっているのは皮肉なことである.

精神科医療 総合病院の窓から・1

いま,なぜ総合病院か

著者: 広田伊蘇夫

ページ範囲:P.338 - P.339

[記すにあたって]
 筆者はまず,大学病院,総合病院精神科に在籍し,その後,長期にわたり単科精神病院に身をおき,今,再び総合病院に戻っている.振り返るに,すでに30年を越える年月である.この間の記憶を跡ってみると,他の専門科領域と同様に,精神科医療のフロントもまた,変化の波に洗われてきたとの感が強い.たとえば思いつくままに,いくつかの疾患の変貌について記してみると,かつてその生物学的な原因,症状,経過,転帰,および解剖所見があきらかであり,それ故にこれをモデルとして精神障害を考えようとする時代をもっていた進行麻痺はすでにほぼ姿を消し,たとえばその昔,筆者自身の手で発熱療法を行った患者が,後遺症としての痴呆を前景にして,わずかに外来診療に現われるだけのものとなっている(ただ,老人痴呆とはいささか色彩の異なるこの痴呆は,筆者にとって臨床的関心の強いものではあるが).そしてまた,なによりも精神科医療の主役でありつつも,時としてみせる華々しい興奮のために,医療者を悩ましつづけ,精神科医療を他の専門科領域から疎外させる一因でもあったとみられる精神分裂病の症状は,すでに多くの人々が指摘するように,原因はなお謎に包まれてはいるものの,確実に軽症化の方向を跡ってきている.

GROUPING & NETWORKING

京都の現状—柔軟なネットワークによる意識改革

著者: 児玉博行

ページ範囲:P.340 - P.341

◆古い組織は変化に対応できない
 近年の医療を取り巻く環境の急速な変化と共に,医療界内部においてもこのような変化に対応すべく新しい動きが活発化しつつある.このような現象は一般社会ではごく普通の事であろうが,医療界においても例外ではない.時代の転換期においてはさまざまな現象が引き起こされ,従来からの組織体制でこの変化に対応するのは非常に困難である.高齢化社会の到来と共に,既存の組織の主要メンバーも高齢化が避けられず,時代を経るにつれて考え方も徐々に硬直化し,柔軟な姿勢で新しい時代に臨むのはなかなか難しいのかもしれない.
 医療を取り巻く環境は,昭和56年の薬価基準切り下げ以降,第1次医療法改正,老人保健法改正,第2次医療法改正へと急激な変化をみせている.このような変化に対応しながら,これからの時代をリードする積極姿勢をとれるのは,やはり旧態依然とした意識から脱皮した若手の医師ではないだろうか.

厚生行政を読む

パワーシフト(上)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.342 - P.343

パワーシフト時代の幕開け
 1970年に『未来の衝撃』で,1980年に『第三の波』で,その鋭い社会分析眼が話題となったアルビン・トフラーが1990年には『パワーシフト』を発表した.人間社会のあらゆる分野に存在している権力構造が,今後,短期間で大きく変化してゆくであろうことを述べた本であり,その例示として医師の権力の衰退について言及している.
 医療においては,医師が知的独占を続けている間は医師に権力が集中しているが,医学的知識を患者たちが身に付け始めることにより,医師は神の座を滑り落ちてきている.

統計のページ

税務統計からみた医療費負担

著者: 岡本悦司

ページ範囲:P.344 - P.345

1.直接給付VS間接給付
 医療費の保障といえば,保険や公費からの直接給付が主体だが,医療費控除という税制を通じた間接給付というべきものも存在する.
 昭和63年度の国民医療費18兆7,554億円の87.6%,16兆4,381億円が保険や公費からの直接給付であった.それに対して所得税・住民税の医療費控除を通じた間接給付はわずか581億円に過ぎない(申告所得税による推計額.源泉所得税も含めればその何倍にもなるであろうが,源泉所得税の医療費控除に関する統計は無い).税制による間接給付は,現物給付ができず,医療ニードに迅速に対応できない,といった点において直接給付に決定的に劣る.しかし,保険や公費にっきまとうモラルリスクを排除でき,社会コストが少なくてすみ,患者の自立を助長する,といった利点もある.

病院管理トピックス

[外来運営]外来における保健婦活動/[放射線]放射線部登場の経緯/[リハビリテーション]これからのリハビリテーション

著者: 氏家悦子

ページ範囲:P.346 - P.349

 疾病構造の変化,疾病の治療法,管理技術の進歩,そして個々の患者の生活ニーズの多様化などによって,外来で治療を受ける患者の幅が広がってきている.急性期を病院のベッドの上で過ごした患者の多くは,疾病や障害を抱えながら在宅療養へと移っていき,外来看護とその延長線上の在宅看護の場でケアを受けることになる.
 個々の患者を観るとき,外来では,症状の観察はもとより,服薬・食事療法など治療に関する行動がすべて患者に任されることになるため,治療に対する動機づけや適切な日常生活指導が患者の実行力の鍵となる.家族や社会背景などを含めて患者像を十分把握した上で,指導内容を一緒に検討して理解を得るようにすれば,適切な療養行動へとつながり,治療効果にも大きく反映されるはずだからである.

医療・病院管理用語ミニ辞典

[救急医療]心膜(嚢)穿刺/[産婦人科医療]微生物学的検査,超音波検査

著者: 中江純夫

ページ範囲:P.350 - P.350

 健康保険診療報酬点数表では心膜穿刺と記載されているが,心嚢穿刺という医学用語が一般に用いられているので,ここでは後者で統一する.
 心臓を覆っている心膜と心臓との間には,ある程度の腔が存在し,種々の原因や病気により,この腔に液体(血液・漏出液・浸出液)や空気が貯留する.主な原因としては,①心臓外傷,②心筋梗塞による心自由壁破裂,③心膜・心筋炎,④心臓腫瘍(原発性・転移性),⑤上行大動脈瘤心嚢内破裂,⑥開心術後出血,⑦医原性損傷(心嚢内注射,心臓カテーテルによる穿孔,心マッサージ)などが挙げられる.

時評

国保診療所医師の生活と意見(その1)

著者: 矢島嶺

ページ範囲:P.351 - P.351

 長野県には医療過疎地が点在していて,国保直診の診療所が約40か所ある.そこで働く医者は30〜40歳代が多く,それなりのロマンを抱いて都会の病院からやって来る.
 病院の勤務医生活に見切りをつけ田舎へ来たからには,皆それなりの理由を持っている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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