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雑誌目次

雑誌文献

病院50巻7号

1991年07月発行

雑誌目次

特集 新しい長期療養サービス

入院医療管理料制度の導入と展開

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.554 - P.557

はじめに
 平成2年4月の老人診療報酬点数の改定によって「特例許可老人病院入院医療管理料」が新設された.老人医療,特に老人病院については,これまで各方面から様々な議論がなされてきたが,医療管理料の導入は,老人医療の1つの転換を意味する重要な制度であるとともに,壮大な実験でもある.
 この制度が導入された直後から,老人病院の間で,何らかの連絡会を開催する機運が高まり,老人の専門医療を考える会(天本宏会長)が中心となって入院医療管理料導入病院連絡会が組織され,ワークショップを継続的に開催することになった.これまで2回実施(第1回:平成2年12月15,16日,第2回:平成3年2月16,17日)され,その際,筆者はコーディネーターとして参加した.

療養型病床群の役割と運用の考え方

著者: 大道久

ページ範囲:P.558 - P.562

はじめに
 「療養型病床群」が,人口の高齢化に伴う医療需要の著しい量的・質的変化を受けて導入されようとしていることは明らかである.急速な高齢化の進展が医療に及ぼす影響は様々な側面から捉えられるが,施設機能の観点からは,入院に占める高齢患者の著しい増加,入院期間の長期化,必要とするサービス内容の変化等についてまず見ておく必要があろう.
 表1は,患者調査等の資料により,病院および有床診療所の入院患者数の推移を,年齢階層別に,現在の入院受療率が変わらないものとして以前に筆者が推計したものである1).1985年を起点としているが,その後も概ねこれに沿って推移しており,現在でも参考になる.この表からも読みとれるように,既に43%程度に達している老年人口層の入院患者は,今後も増加し続けて,2000年で半数を越え,更に20年後にほぼ3分の2に達する.

介護力強化病院の現状とその運用効果

著者: 新木一弘

ページ範囲:P.563 - P.567

老人病院制度の経緯
 「老人病院」は特例許可老人病院と特例許可外老人病院の総称として用いられている.これは,昭和58年医療法の改正により創設された制度であり,概要は老人慢性疾患患者を多く収容する病院にあっては,それにふさわしい介護職員を配置する基準を特例として認めるものであり,診療報酬上も一般病院とは別の体系になっている.
 これらは,老人の慢性疾患患者を主として収容する病棟であって,老人にふさわしい人員を配置(入院患者4人当たり看護婦・准看護婦が1人以上,入院患者8人当たり介護職員が1人以上)としており,通常の医療法の標準よりも(入院患者4人当たり看護婦・准看護婦が1人以上)介護力が上回っている.また,老人慢性疾患とは,概ね65歳以上のものが罹患している疾患であって手術を要する状態や急性期を除いた慢性的な経過をとっている状態にある疾患であり,このような状態となる可能性の高い疾患としては,例えば高血圧症,糖尿病,貧血,痴呆,慢性気管支炎,慢性関節リウマチなどがあげられる.

介護力強化病院の運営経験から

著者: 木下毅 ,   渡辺庸一

ページ範囲:P.568 - P.574

人件費への配慮を望む
医療管理料導入に伴う変化
 平成2年5月から特例許可老人病院入院医療管理料IIを導入した.老人特例1類看護からの変更で,看護・介護者の数はすでに充足されており,山口県では実績1か月が承認要件となっていたので,あまり問題もなく認められた.実績期間が短かったので,承認に当たっての経済的負担がなくて良かったが,おむつ代等の自己負担分については細かく原価計算が要求され,その分しか認められず,厳しい面があった.
 保険請求事務はずいぶん楽になった.198床の病院の請求事務が1人でできるし,レセプト点検も今までの3分の1位の時間で済むようになり,医師の負担も減った.検査のため,あるいはちょっとした投薬のために病名をつけることもなくなり,ほとんどの例で5病名以下となった.平成2年4月の診療報酬改定で介護力強化が評価されるらしいとの情報を得て介護者をできるだけ雇用していたので良かったが,思っていたより広い範囲でマルメられてしまったので,新入事務員があまって少々困ったりもした.

長期療養のための看護・介護体制をどう整備するか

著者: 戸金隆三

ページ範囲:P.575 - P.578

はじめに
 あと30年後には,世界に類をみない高齢化社会のピークを迎える我が国であるが,すでに老人人口の増加と,それに伴う傷病・障害老人数も確実に増え始めており,早急に我が国の風土に合った,老人を対象とする長期療養体制を整備する必要性が叫ばれている.
 成人の急性期疾患は,治療が主体となり,短期間に治癒して社会復帰することが一般的で,看護も医療介助が中心となる.しかし,老人の場合は,急性期疾患のみならず,他の臓器疾患を有していることが多く,また,高齢化それ自体が生理的変化,精神面の低下等を来たしており,複雑な病態が形成されている.この病態を一元的に説明することは困難であり,また老人は一度床に臥すと回復までに長い期間を要するため,入院も長期になりやすい.そこで,身体的・精神的に患者がもっている残存機能を低下させず維持するために,医療機関にも長期療養にふさわしい看護・介護体制のソフト,ハード両面からの整備が必要である.

老人病院と老健施設・特養ホームの患者・入所者のニーズ調査

著者: 寺崎仁

ページ範囲:P.579 - P.584

はじめに
 我が国は,諸外国に例をみない規模とスピードで,超高齢化社会を迎えようとしている.とりわけ痴呆や寝たきりなど,重度の介護を必要とする高齢者の増加が著しいと予測されており,それら要介護老人への対応・対策が急がれている.
 現在我が国では,寝たきり老人など重度の介護を必要とする高齢者の主な療養施設として,病院,老人保健施設(以下「老健」)および特別養護老人ホーム(以下「特養」)などがある.そして,それぞれの施設には社会から求められている機能や役割に違いがあり,対象とすべき患者や入所者もまた異なる状況に置かれた人々であるということになっている.それに伴って,それぞれの施設は1床当たりの面積など施設・設備の基準や給付の財源も異なれば,療養・介護費用の支払制度や,利用者に課せられる負担の程度にも相違があり,これら施設の利用の実態がそれぞれの目的に適う形で行われているのかどうかという観点から,その妥当性に関しての検討が行われる必要があるものと思われる.

[座談会]長期療養サービスのあり方をめぐって

著者: 伊藤雅治 ,   漆原彰 ,   島内節 ,   竹内實

ページ範囲:P.585 - P.593

 竹内 今日は,「長期療養サービスのあり方をめぐって」ということで,行政のお立場から厚生省老人保健課長の伊藤先生,臨床現場からのご発言ということで大宮共立病院の漆原先生,それから,看護のお立場と同時に研究者の目で長期療養のあり方を見ておられる島内先生にご出席いただいて,近い将来の超高齢化社会を射程に入れながら,医療・福祉の両面にわたる長期療養サービスのあり方について,色々な角度からお話をしていただければと思います.
 最初に漆原先生から,長期療養サービスの現状をどうご覧になっておられるのか,その辺のお話から…

グラフ

変貌する農村と共に歩んだ半世紀—秋田県厚生連・山本組合総合病院

ページ範囲:P.545 - P.550

 秋田県厚生連は,傘下に9病院(4,627床)を抱え,文字通り,秋田県の医療の中核を担っている.そのなかにあって県北部11万の住民の保健・医療を半世紀以上にわたって分担してさたのが山本組合総合病院である.
 山本組合総合病院の歴史は,戦争の足音が東北の農村にも確実に影を落とし始めていた昭和8年に遡る.そして,時代の変遷,農村の変貌とともに変わる住民のヘルスニーズを的確に捉えた保健医療活動を展開して半世紀,県内有数の高次機能を備えた総合病院に成長した.

外柔内剛の紳士 第30回全国自治体病院学会長 柴田淳一氏—旭川市立旭川病院長

著者: 三原茂

ページ範囲:P.552 - P.552

 全国自治体病院協議会の常務理事会で,柴田先生と初めて会議を共にしたのが昭和59年6月であった.やや小柄で大変柔利な印象の紳士であった.いつの会議でも意見をきちんと述べられるが,決して自説に固執されることはなかった.先生は全国自治体病院協議会の北海道支部長であり,また北海道医療審議会委員でもあるので,北海道の医療の実態をふまえて医療問題を語られることが多い.しかし視野の中にはいつも日本の医療があった.
 私が会長を務めた第28回全国自治体病院学会のシンポジウムで先生に「地域医療計画とこれからの医療」について意見を述べて頂いたが,その周到な準備と明快な論旨には敬服の他なかった.記念すべさ第30回学会に多くの期待が寄せられるのも当然であろう.

主張

病院職員確保の条件

著者:

ページ範囲:P.553 - P.553

 超人手不足時代の到来がいわれるなかで,その最も大きな打撃を受けつつあるのが,病院医療界である.なかんずく,看護婦不足は将来の病院の浮沈とも関わる重大問題となっている.厚生省は,平成元年末現在で,約80万2,000人の看護職員が就業していて,看護職員の不足状態が続いているという現状認識を持っている.そして,平成元年末に策定された「高齢者保健福祉推進十か年戦略」や労働時間短縮等に伴う看護需要の増加も勘案する必要があるとして,平成元年5月に策定した看護職員需給見通しの見直し作業を着手したといわれる.
 看護職員の確保については,施設の設置場所,規模,設立主体,施設機能,労働条件,などなど種々の要件によって差が生じるもののようである.

事例 医療施設間連携

亀田総合病院における広域連携

著者: 亀田俊忠

ページ範囲:P.594 - P.596

 南房総鴨川に位置する亀田総合病院は,南房地域の基幹病院としてあらゆる領域において終末医療を提供する役割を担っている.当院の機能は,救急医療と各専門的医療の両輪に支えられており,それぞれが相乗的に作用しているといえる.
 1985年に指定を受けた救命救急センターでは,救急専任スタッフの即応体制に加え,すべての専門領域における医療チームを待機させ,24時間,365日あらゆる医療要請に応えている.そして,この医療資源を有効に生かすためには施設間の連携が不可欠であり,当院では様々な形態の連携に積極的に取り組み,実績を重ねてきた.

勤務医からの発言

医学文献の扱い方

著者: 佐々木春喜

ページ範囲:P.597 - P.597

 医学部を卒業し内科を専攻する者にとって,目指すのは内科専門医であろう.卒後すぐに,専門にとらわれず内科全般の研修を目的とするためにも,患者のプロトコールを作成し,その症例についてtextbookを読み,更に最近の文献を検討すれば,5年後には内科専門医の試験に合格できるはずである.内科専門医の資格を取ったあとは,それぞれ,リサーチを専攻する人,更に臨床診療を続け専門分野を目指す人などに分かれていく.最近,専門分化による弊害が指摘されているが,実際どのような解決方法があるか具体的な提言はなされていないように思う.
 このような弊害の原因として,卒後年数が長くなるのに比例して,医師の一般的医学知識が時代遅れになる(JAMA 255;501)ことが考えられる.糖尿病性網膜症の新生血管に光凝固が有効なことを確実に証明した研究が発表された18か月後に,医者がこの研究を知っているか調査した結果がある.それによると,この研究に関する質問に対して,内科医の46%,開業医の28%しか正解できなかった(JAMA 241:2622).

研究と報告

CAPDバッグ頻回時間指定配送

著者: 近森正昭

ページ範囲:P.599 - P.601

はじめに
 末期腎不全の治療法の1つに,在宅自己腹膜灌流(以下,CAPDと略す)がある.1.5Lから2Lの透析液を腹膜内へ1日4回貯留させて透析を行うものである.
 透析液が1日6Lから8Lと大量に必要なため患者宅への配送が行われているが,配送方法として一般的なのが,工場から運送会社が宅配するシステムである.ある地方ブロックでは,工場から卸に集荷して卸が宅配を行っており,一部の地方ではメーカーの販売会社が宅配しているところもある.

精神科医療 総合病院の窓から・4

—20世紀初期—Johns Hopkins病院の人々

著者: 広田伊蘇夫

ページ範囲:P.602 - P.603

William Oslerと精神科医療
 アメリカで総合病院に併設された第2の精神科施設がHenry Phipps精神科クリニックだったことは,既に記した.この施設をかねて念願していたひとりにWilliam Oslerがいた.Oslerについては,聖路加看護大学長・日野原重明氏によって,既にその事跡の精細な紹介があり,わが国でもよく知られている.1892年に出版されたOslerの『開業医および医学生のための内科学の原理と実践』は実に16版(1947年)を重ね,現在のCecilやHarrisonの内科書が出るまでは,世界で最も広く読まれた内科教科書だったという.
 1889年,時に40歳のOslerは,ボルモチアに赴き,Johns Hopkins病院の内科主任となっている.やがて,創設者J.Hopkinsの遺言に従い,この病院を中核とした医学校の設立に尽力し,1893年,開校とともに内科学教授に就任している.1905年,55歳に達したOslerはこの職を辞し,招聘されてイギリスに渡り,オックスフォード大学の欽定教授となる.Oslerはこの時,J.Hopkin大学の医学生,教職員に対し,現役引退ともいえる「定年の時期」と題する講演を行っている.日野原氏の訳書『平静の心』にはその全文の紹介がある.

統計のページ

国保統計からみた再審査の状況

著者: 岡本悦司

ページ範囲:P.604 - P.606

過去5年間の推移
1.再審査減点の状況
 平成元年度の減点総額は国保,社保合わせて約253億点,平均給付率を8割とすると,保険者が支払いを拒絶した診療報酬の総額は優に2,000億円を越える.国民医療費20兆円の約1%に当たる額である.
 減点には審査委員会による査定と,再審査による過誤整理とがある.支払基金は両者を区分した点数は公表していないが,国保統計は区分して公表しており,それによると再審査による過誤整理点数は審査委員会による減点額の倍以上あることがわかる(表1).

建築と設備・63

財団法人東京都保健医療公社東部地域病院

著者: 影山諒

ページ範囲:P.607 - P.612

はじめに
 東部地域病院の建設計画は,1982(昭和57)年12月,東京都長期計画「マイタウン東京21世紀をめざして」のなかで「都立病院の整備と新病院(地域病院)」として発表されたもので,当初は,①区東部地域病院,②多摩南部地域病院の2つの病院を建設する計画であった.
 21名の学識経験者から成る東京都病院構想懇談会は,1989(昭和59)年10月,鈴木都知事に報告書を提出し,そのなかで「地域病院」の基本的あり方を諮問した.病院の建設計画はこの基本理念を軸として進められることになった.その基本理念とは次の5項目である.

連載 今,なぜ戦後医療技術史か・1【新連載】

ハイテク医療への関心のたかまりとその背景

著者: 上林茂暢

ページ範囲:P.613 - P.617

はじめに
 新しい医療技術の出現とその動向に国民の大きな期待と関心が寄せられるのは,いつの時代でも変わりがない.コレラなどの急性感染症から結核と,第二次大戦敗戦直後にいたるまでの医療の中心課題だった感染症との闘いをみてもこの点は明らかであろう.
 治療といっても,解熱,鎮痛など対症療法の域をこえたものはきわめて少ない.安静・栄養を保ち自然治癒をまたねばならなかった.その間隙をぬい,今日では到底考えられないような治療法が提唱されては消えていった.その中には医学界の主導権を握ってきたものも少なくない.無力感と苦い思いを繰り返してきただけに,ストレプトマイシンの登場に際し,逆に当初懐疑的な医師さえ見られた.いずれにせよ,そこには患者・国民の医療技術への強い願いが投影されていたといえよう.

わが病院の患者サービス

大分県立病院—外来調剤待ち時間を大幅に短縮

著者: 嶋崎晃次

ページ範囲:P.618 - P.619

 ベッド数610床,外来患者数平均790/日,入限患者数590,外来処方箋枚数483/日(調剤件数1,031),入院処方箋枚数149/日(件数281),医師65名,看護部343名,薬剤部員14名(薬剤師11名,助手3名).以上が当院および当院薬剤部の概要である.
 従来から,外来患者の苦情の第一が薬剤部に寄せられ,とりわけ長い待ち時間に苦情が集中していた.薬剤部職員は待ち時間短縮を長年のテーマとして取り組んできたし,病院管理部からも短縮化の要望が出されていた.

厚生行政を読む

救急救命士法(下)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.620 - P.621

 今回は,救急救命士に求められている知識・技能(第34条)と業務(第4章)を中心に逐条解釈を試みることとする.医療に携わる職種は,医師,歯科医師,薬剤師,看護婦……と数多いのだが,また1つ新しい職種が仲間入りしたわけである.近代医療は医師だけで行えるものではなく,量的にも質的にも高まりつつある医療需要に対応するため,専門的職種を設けることによって医師の負担を軽くし,医師の指示の下で分業体制が整えられてきたのがこれまでの歴史であったが,「救急救命士」は少しわけが違う.「分業」体制であれば,医師に薬や看護などの専門知識が少々欠けていても何となく許されている(医師=オーケストラ指揮者論)が,救急救命については,医師はその知識と技能を失ってはならない.部分的とはいえ,このたび,医師の強力な「ライバル」が誕生したわけである.

病院管理トピックス

[集中治療]ICUにおける看護婦の教育/[薬剤]TDM(薬剤治療モニタリング)/[病院経営]意思決定会計と病院経営

著者: 田島桂子

ページ範囲:P.622 - P.625

 ICUには,他の病棟と比較して,多くの医療機器類が整備され,救急患者を含む重症患者が収容される.したがって,機器類に囲まれた環境のなかで患者の生活を整えながら,全身状態を観節したり,救急・急変時に対応したり,抵抗力の著しく低下した患者の啓染を予防することが,ICUに勤務する看護婦の主要な業務となる.
 特殊な環境下に置かれる患者や家族の苦痛・不安も一通りではない.精神面のケアの善し悪しが患者の予後を左右することもあるだけに,ICUの看護婦には,優れた対人関係能力も要求される.

医療・病院管理用語ミニ辞典

[病院管理]パーキンソンの法則/[産婦人科医療]生体検査,診断穿刺・検体採取

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.626 - P.626

 C.N.パーキンソンは行政管理学ともいうべき分野で特異な研究を行った.ヨーク大学,ケンブリッジ大学,ロンドン大学で学んだあと,ブランデル,ダートマス,リバプールなどの大学で講義を行い,1957年,ロンドンのエコノミスト誌に「パーキンソンの法則」を著して全世界の注目を浴びた.
 この法則は,「仕事が(特に事務の場合)求める時間の需要は弾力的であって,実際に行わなければならない仕事の量と,それに割り当てられるべき人員数の間にはほとんど関係がない」というものである.

時評

ヘリコプター搬送と医師添乗

著者: 箕輪良行

ページ範囲:P.627 - P.627

 救急救命士の創設というハードルが政治的な追い風もあったのか一気に越えられた.病院前搬送というと医学的に扱われることが少なく医療の外という感が強かったが,今回はDOAの救命率で欧米(20%前後)に比べて,わが国が極めて低い(数%)というデータが説得力になったと聞いて,救急隊はじめ救急医療の現場に携わる医療人にとっては報われた思いであろう.実際には欧米レベルの蘇生率を確保するとしたら住民への心肺蘇生術の普及が最も大切だといわれているが,救急医療の底上げの第一歩として救急救命士の今後の活躍に期待したい.
 さて救急患者のヘリコプター搬送もこの領域で長い間懸案事項になっている.これにはヘリの運用,設備や器材,スタッフ,収容施設などの諸問題があるが,医師の添乗に関していくつかの知見を紹介し意見を述べたい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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