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雑誌目次

雑誌文献

病院50巻9号

1991年09月発行

雑誌目次

特集 病院が好きになる

病院のここが嫌い

著者: 南砂 ,   北嶋孝 ,   宮澤令幸 ,   山口祐司 ,   波平恵美子

ページ範囲:P.746 - P.750

病院に真の豊かさと潤いを
 大方の人と同様,私も病院は好きではない.特に大病院にかかるのはなるべく避けたいと思っている.ただでさえ健康で,その必要もないのだが,訴えは少ない方ではないので,医者に尋きたいことや自分の健康でチェックしておきたいことなどは始終あり,そんな時は,都心のある小さな病院を行きつけにしている.
 都心の,外来中心のこの病院は,大方は予約が守られていて待つことも少ないし,人の洪水ということはまずないのが有り難い.しかも,急患はお断りというのでもなく,ほどほどに融通もきくし,何より評価したいのはいろいろなことが患者本位に配慮されていることだ.

[事例]病院のイメージアップ作戦

著者: 三浦聡雄 ,   安藤高夫 ,   佐々木啓和 ,   鎌田實 ,   黒澤正憲 ,   大島紀玖夫 ,   大江唯之 ,   三上勝利 ,   堀内弘雄 ,   高尾武男 ,   古川ひろ子 ,   野尻義雄 ,   井手義雄

ページ範囲:P.751 - P.763

みさと健和病院病院祭
 みさと健和病院の病院祭は,1984年10月,開院1周年記念の祝賀行事として始まった.昨年の第7回に到るまで毎年開催され,だんだん充実してきた.
 期間は1週間で,患者,職員,地域住民の誰でも参加できる.病院内の展示,講演やシンポジウムなど多様な企画がある.最後の日曜日に病院前駐車場で大規模なバザールと演芸広場をやって打ち上げというパターンになっている.

地域社会との交流を

著者: 若月俊一

ページ範囲:P.764 - P.768

 地域社会との交流をスムーズに発展させていくには,まず病院自身の姿勢が問われねばなるまい,まず過去の私ども自身のあり方を庶民はどう受けとっていたか.その反省の中から私どもの今後の正しい方針が打ち出されてくるのではあるまいか.その中から当然,交流の問題も出てくる.

病院のイメージアップ戦略

著者: 上原征彦

ページ範囲:P.769 - P.772

経営戦略を明らかにすること
 病院に限らず,経営体のイメージアップを図るためには,多かれ少なかれ,その経営戦略を明確にしておかなければならない.ここでいう経営戦略の明確化とは,その経営体がどのような環境領域で生きていくのか(例えば,ねらうべき市場領域をどこに求めるのか),どのような経営資源を生かしていくのか(例えば,どのようなヒト,モノ,カネ,ノウハウをどのように活用していくのか),などといったことを決めることである.
 イメージアップ戦略とは,少なくとも自己表現をその基軸に据えるものである.しかも,経営体の自己表現は,その経営戦略に基礎を置くべきものであり,これと乖離した自己表現はほとんど意味をもち得ない.

職員は病院が好きなのか

著者: 針谷達志

ページ範囲:P.773 - P.775

はじめに
 患者の大病院指向,専門医指向が指摘されて久しいが,病院は,本来,その規模にかかわらず患者の選択に耐えうるサービスを提供することが必要である.そして,そのためには,まず,職員として就職したい病院,さらに職員が患者のために一体感をもって喜んで働くことができる病院であることが必要である.
 我が国は,現在,深刻な人手不足で働くものの売り手市場といわれる.病院では,ここ数年,特に看護部門職員の不足が叫ばれているが,病院によっては,職員充足難は医師,コ-メディカル部門職員,事務職員等,ほとんどすべての部門にかかわる問題となっている.

グラフ

老人病院に求められる「サービスの質」とは—第3次増築を完了,新たな展開を目指す青梅慶友病院

ページ範囲:P.729 - P.734

 青梅慶友病院は,老人を「寝かせきり」にしない病院,質の高いサービスを提供する病院として,首都圏では評判が高い.また,一般の人たちの間に「お金持ちの人が入る老人病院」という見方があることも事実である.これがいわゆる「お世話料」,保険外負担の高さを指していることは言うまでもない.
 こういった一種のブランドイメージは病院経営にも様々な影響を及ぼしている.例えば昨今の看護婦不足の中でも当院にはそれほどの逼迫感はない,良心的な老人病院というイメージがある程度定着したせいか,地方の病院で勤めていた若い看護婦の就職希望が増えてきているという.病院見学者も平均して1日8件と多い.これは新設のハイテク病院のように,医療関係者の見学という意味ではない,そのほとんどが自分の親の入院を考えている家族の見学だ.入院を決意する家族にしてみれば,親を単なる「老人病院」に入院させるのではなく,「青梅慶友病院」に入院させるのだという意識が強いのではないだろうか,「老人病院の陰惨なイメージを少しでも払拭し,また少しでも人生の晩年を安心して過こせる場を作りたかった」という大塚宣夫院長のねらいは見事に的中したといえるだろう.

「第20回日本病院設備学会」と「‘91病院設備機器展」の会長を務める 東京大学医学部附属病院中央医療情報部教授 開原成允氏

著者: 大道久

ページ範囲:P.736 - P.736

 我が国の医療情報学の草分け的存在として開原先生が名を成しておられることは申し上げるまてもないか,もうひとつ,今後の病院のあり方に心を砕く病院人としての顔があることを是非ご紹介しなくてはならない.とりわけ,大学病院の制度的な位置付けに関する論議において,その取りまとめに果たした功績は,知る人ぞ知るところである.
 その開原先生が,この10月30日からの第20回日本病院設備学会および'91病院設備機器展の会長を務められる.それぞれ「情報と流通」,ならびに「情報化社会における憩いとゆとり」というテーマで,関連のシンポジウムや企画展示が予定されている.日頃から欧米各国の病院を見て回られて,我が国の病院の立ち遅れを強く感じておられる先生が,設備機器展の特別企画に対して「アトリウムと街なみを持つ病院」という課題を与えられたことは,これからの病院が最も必要としていることを端的に指摘した,誠に適切な問題設定であると言わざるを得ない.

主張

診療報酬の見直しと今後の医療

著者:

ページ範囲:P.737 - P.737

 診療報酬体系の見直しへ向けた動きが急である.中医協の小委員会における基本問題の検討を始めとして,医師会や病院団体にも研究会が設置されて,それぞれの立場からの作業が進んでいるという.いずれも従来の医療費改定の方式が限界に来たことを共通の認識として,社会保険給付のあり方にまで踏み込んだ見直しを図る方向にあることが注目される.これからの診療報酬のあり方を考えるには多くの論点があり,そのどれをとっても深刻な議論を必要とする.ここではいくつかの視点を示して今後の方向を探っておきたい.
 我が国の医療は,高齢化に伴う福祉ニーズにも対応して,その立ち遅れを補う役割を担ってきたが,今後の高齢者の処遇は,生活支援と社会福祉を統合した観点から見直されなければならない.既に中間施設として老人保健施設が普及しつつあるが,より明確な位置づけの下に長期療養サービス体系の確立が求められている.この部分の診療報酬(むしろ療養費と呼ばれるべきものである)は,長期ケアのあり方を踏まえて支払いがなされなければならない.すなわち,高齢者が必要としている介護を基礎として,QOLの観点からの環境整備と支援サービスを可能とする方向が追求されるべきであろう.

今日の視点

[対談]医療政策とは何か—研究者は語る

著者: 田中滋 ,   池上直己

ページ範囲:P.738 - P.745

 最近,「日本の医療政策は民間病院をつぶすつもりか」とか「厚生省はあっても医療政策はない」など,医療政策という言葉がよく聞かれる.では,医療政策とは本来的に何を意味し,何を対象として語られるものなのか.また,欧米ではこの領域でどのような研究が行われているのだろうか.今回は医療政策をご研究の専門領域の1つとされているシニカル派の池上氏と楽観派の田中氏に医療政策の意味すること,研究領域としての医療政策などについて語り合っていただいた.

わが病院の患者サービス

掛川市立総合病院—院内郵便局のオープン

著者: 柴田昌雄

ページ範囲:P.776 - P.776

はじめに
 病院における患者サービスについては,各種の具体的方策がある.私は対象的にみて,大きく2つに分けられると考える.すなわち,①入院および外来患者のみを対象とするサービス,②患者を含めて,その家族(付き添い)および病院職員を対象とするサービスである.例えば,①に当たるものには入院必需品や病人用衛生器材,消耗品の販売などがあるし,②にはレストラン,喫茶室などの運営があげられる.これらのサービスはほとんどの病院で実施されているが,私は更なる患者サービスとしてどのようなものが最もよいかを考えて,郵便局の開設を決意した.以下,開設に至るまでの経緯と現状について述べることにする.

建築と設備・65

テキサス・メディカル・センター

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.777 - P.783

はじめに
 限られた時間でアメリカの病院の最先端,あるいはアメリカの病院のもっともそれらしい側面を見たいという方に,筆者はヒューストンのテキサス・メディカル・センターをお薦めすることにしている.そこには大学病院・総合病院をはじめ心臓やがんの専門病院からホスピスにいたるまで,ほとんどすべての種類の医療施設が集まっているからである.広大なアメリカをあちこち忙しく飛びまわらなくても,ここに何日か滞在するだけでいろいろな形の施設をひとわたり見ることができ,しかも数々の示唆が得られるはずだ.
 筆者は昨年,ひさびさにここを訪れて,また新しく学ぶところが多かったので,これを機にテキサス・メディカル・センターについてやや詳しく紹介しておきたいと思う.

事例 医療施設間連携

病診連携でスタート—済生会日田病院

著者: 小金丸道彦

ページ範囲:P.784 - P.787

病院設立の経緯
 日田市は大分県の北西部,福岡県境の日田盆地にあって,漢学者で威宜園を開いた広瀬淡窓はもちろん,天領の町,水郷,小京郎,日田杉などで知られている.この日田市と医療圏を同じくする日田郡や玖珠郡を合わせた日田玖珠広域圏(以下,広域)の人口は約12万もありながら,高度医療を行う中核病院がなかったため,高度医療については久留米や福岡など圏外医療機関への依存度が高く,中核的医療機関の設置は地域住民の20年来の悲願であった.
 このような状況下で,一時,医師会立病院の構想も具体化したが,県の調停もあって,昭和61年7月,社団法人目田郡市医師会(以下,医師会)と社会福祉法人恩賜財団済生会(以下,済生会)との基本協定,そして昭和63年1月,大分県,広域および済生会との基本協定(三者協定)が締結され,大分県済生会日田病院(以下,病院)の設立が決まり,平成2年10月1日,開院の運びとなった.

精神科医療 総合病院の窓から・6

総合病院精神科の患者動態

著者: 広田伊蘇夫

ページ範囲:P.788 - P.789

量的側面から
 これまで,主としてアメリカにおける総合病院精神科のあゆみを簡単に紹介してきた.今回は精神科への診察依頼について,その統計資料を概覧してみよう.総合病院において,精神科が提供し得る役割を検討する上では欠くことはできまい,とみるからである.この場合,まず精神科への診察依頼の頻度が問題となるわけだが,この点に関して一般的傾向とみなし得る資料は案外と少ない.これにはいくつかの理由もあるわけで,例えば病院の規模(大きくなれば,それだけ他の専門分野との連携は希薄化する),精神科病床があるかないか(なければ,精神症状の激しい症例は転院させざるを得ない).更には脳外科,心臓外科などの高度医療部門が設置されているかどうか(これらの部門では一過性の精神症状の発現が比較的多い)などによって,おのずとその頻度が異なってくることとなる.
 であるにせよ,比較的多くの報告を検討したLipowskiのまとめからすると,総合病院において,精神科への診察依頼は全入院者の4〜13%,平均9%というのが,いささか古い資料ながら1966年までの実態とみることができそうである.これをわが国でみると,Lipowskiのまとめるような資料はなお乏しく,間接的にその実態を推定せざるを得ないものが多い.そのいくつかを紹介してみよう.

統計のページ

レセプト統計からみた入院時医学管理料の状況

著者: 岡本悦司

ページ範囲:P.790 - P.791

レセプト統計について
 レセプト統計とは,正しくは「社会保険診療行為別調査」と呼び,毎月6月審査分のレセプトを対象に抽出調査が行われる.結果は報告書として公刊され,近年では磁気テープとしても販売されている.医療経済実態調査とならんで,2年ごとの点数表改定の重要な基礎資料とされていることは周知の通り.一国の診療内容の調査としては世界にも例のない,包括的かつ網羅的なものである.
 平成元年度版報告書は上下2分冊,900ページにのぼる膨大なものだが,そこから入院時医学管理料についてみてみよう.

研究と報告

小児病院における看護職員数と患者の看護度調査—小児総合医療施設協議会の調査結果から

著者: 小池淳子 ,   中野博行 ,   長畑正道

ページ範囲:P.792 - P.797

はじめに
 看護管理者の業務の大きなものに,看護業務量に見合う看護要員の算定がある.看護婦の最低必要数は,一般的には健康保険法の基準看護で規定されているが,小児専門の医療施設では,特2類,特3類であっても,実態は看護業務量が膨大すぎて規定の人員で患者に満足のいく看護を提供することはできない.
 看護婦の適数配置を行うためには,まず業務量を知ることが必要となる.看護婦の業務量に最も大きく作用する要因は,患者数以上に,重症者の質と比率および未熟児,新生児,乳児の比率であると思われる.業務量調査には種々の方法が用いられているが,最も簡便で一般的なものは,厚生省・日本看護協会が使用しているもので,患者の観察度と生活の自由度を尺度として重症度と比率をみる方法がある.しかしこの方法は,簡便である反面,基準が大まかで調査者の判断により区分けがかなり違ってくる場合がある.そこで,観察度の判定を,簡単で,かつより客観的にするために,患者の症状や特殊な治療状況を同時に調査してみた.患者の特殊状況と看護度の比較,看護婦数との関係などを分析したので報告する.

勤務医からの発言

救急医療の現場から

著者: 伊良部徳次

ページ範囲:P.799 - P.799

 昨今の厚生省・自治省の救命救急医療にかける意気込みには,従来のお役所仕事的な対応とは異なる熱意が感じられる.「救急救命士法」を極めて短期間で成立させたことでも両省の決意の程がうかがわれる.
 しかしながら,システム化されて初めて能率的な効果を発揮するのが,救急医療の特徴であることもまた事実である.今日まで,地域の救急医療は一部の医療施設の献身的なヒューマニズムに支えられてきたといっても過言ではない.一方で,社会の変容とともに医療を支えるマンパワーの思考あるいは行動形態も大きく変わりつつある.このような環境のなかで,応用医学としての救急医療について,システムと人材育成の面から真剣に議論すべき時期に来ていると考えられる.

厚生行政を読む

脳死と臓器移植(中)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.800 - P.801

 脳死を認めるか認めないか,世論の反応は真っ二つである.脳死臨調でも脳死を認めることは時期尚早であると報告しているが,流れとしては認めるための手続きをしているようにとれる.脳死が認められ病院が脳死判定を行うようになると,個々の病院で対応しなければならない問題が沢山でてくることが予想される.今回は脳死が認められた場合の病院としての対応について検討を行ってみた.
 脳死臨調の議論より想定される家族(脳死判定を受ける患者の家族)からの疑問と,考えられる対策についてここでは検討を行う.臓器提供は患者本人の意志であることが基本なので,脳死判定と臓器提供については,生前に本人の了解がとられているものとする.

病院管理トピックス

[集中治療]Computerized ICU/[薬剤]どんな時にTDMを行うと有効か/[病院経営]意思決定会計と病院経営⑧

著者: 藤本泰俊

ページ範囲:P.802 - P.805

 ICUにおける治療看護では,バイタルサインをはじめ様々な生体情報を集中的に管理して,患者の状態を把握する必要がある.医療および科学技術の進歩に伴って,監視を要する,あるいは監視が可能なパラメータはますます増加する傾向にある.これらの患者データを有機的に結合して有効利用するために,コンピュータを使って管理したりデータベース化したりして,ICUを機能的に運営するcomputerized ICUシステムが普及しつつある.

医療・病院管理用語ミニ辞典

[病院管理]M & A(合併と買収)/[産婦人科医療]注射

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.806 - P.806

 Merger and Acquisition(合併と買収)の意味である.1980年代のアメリカでは超大型企業の合併や買収が盛んに行われたが,わが国でも同様に進行している.
 資本主義企業においては,企業間の競争が不可欠である.新商品の開発,品質の改良,価格引き下げ,サービスの改善・向上などを行って市場を拡大し,利益をあげて大規模化する.この競争の過程において同種産業の吸収合併を行い,資本力によって他企業を買収し,資本の集中が進行する.

時評

博士号の地盤沈下

著者: 箕輪良行

ページ範囲:P.807 - P.807

 学位重視から専門医志向へという風潮は医学医療における変化のひとつの現れである.
 お花の免状とか足の裏の飯粒のようなものと言われて久しいが,月給が1号俸アップするぐらいを除けば学位は実際にほとんど役立たない.もちろん名刺を飾る肩書きとしての価値や,教授職や重要ポストを云々するさいの要件であることは周知のとおりだ.したがって学位の存在意義をここで述べるつもりはない.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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