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雑誌目次

雑誌文献

病院51巻1号

1992年01月発行

雑誌目次

特集 高齢社会と子どもの医療

高齢社会と子ども

著者: 坂東眞理子 ,   高塩純子

ページ範囲:P.18 - P.23

 高齢者が増えるなかで,数少ない子どもは愛情を注がれ,十分すぎる世話を受けて育つ.彼らが直面する高齢社会の課題を概観してみよう.

健やかな子ども社会の実現に向けて

著者: 小林和弘

ページ範囲:P.24 - P.28

はじめに
 最近の合計特殊出生率の低下傾向等を背景にして,子どもあるいは子育てが社会的な関心を呼び,クローズアップして取り上げられることが多い.従来ややもすると高齢者問題が脚光を浴び,強調されていたことからみると,やっと子どもの問題が肩を並べて議論されるようになったとの思いが深い.
 「子どもの問題はすべての人の共通のテーマであり,また,人類全体の問題」といわれ,「子どもは人類の未来であり,子育ては未来社会の設計という人類がなしうる最も創造的な営みである」〔平成2年1月「これからの家庭と子育てに関する懇談会」(座長・木村尚三郎東京大学名誉教授)のむすびより〕という観点からみると,むしろ遅すぎたぐらいといえる.

小児総合医療施設からみた小児医療の現状と今後の課題

著者: 長畑正道

ページ範囲:P.29 - P.33

 高齢化社会を迎え,次代を担う小児が心身ともに健やかに生まれ育つための環境づくりが大きな課題となって来ている.こういった環境づくりの1つの柱として小児の医療問題,特に小児総合医療施設(いわゆる小児病院)のあり方が改めて問われることになる.そこで,わが国の小児病院の設立の経緯にも触れながら,小児医療の展望を小児病院という窓を通して述べることにする.

障害児・登校拒否児の叫びをききとろう

著者: 黒岩秩子

ページ範囲:P.34 - P.37

 私が保育所で2歳児クラスの担任をしていた時のこと,元気にとびまわる武君の動きに目を細めながらお母さんが語ってくれた.
 「武が生まれた時,どういうわけか乳をほとんど飲まない子で,どこか奇形があるのだろうからこのままにしておきましょうと先生にいわれて,私はオロオロ泣いていたら,看護婦さんが,『先生に大きい病院を紹介してと願ってみたら?』といってくれたので,やっとこの子の命が助かって‥‥」

[てい談]小児医療における病院の役割

著者: 小林登 ,   坂上正道 ,   村瀬雄二

ページ範囲:P.38 - P.46

小児医療システムの現状をどう評価するか
 村瀬 高齢社会の進展が急な今日,老人問題にスポットが当てられているわけですが,その一方で,わが国の子どもの医療は本当にうまくいっているのかが問われるべき状況にあるのではないかと思います.というのは,一部では乳児死亡率が世界一低いということで,子どもの医療にはあまり大きな問題はないんだというような風潮があって,小児医療の問題はどうも隅のほうに押しやられている.また,女性が一生に産む子どもの数はどんどん減って今年は1.53人,小児科医にとっても構造不況のような状況があります.そういうことで,この座談会では,日本の小児医療は本当にうまくいっているのか,ということをまず考えてみたいと思います.もしそうでないとしたら,何をどのように変えていったら良いのか,その辺の問題が今日の議論の主題になろうかと思います.
 そこで,先生方は日本の小児医療システムの現状をどう評価されているか,まず坂上先生から周産期医療システムについてのお考えをお聞かせ下さい.

グラフ

地域社会にしっかり根を張る病院づくり—市立砺波総合病院

ページ範囲:P.9 - P.14

 12月初旬,チューリップ栽培と庄川の清流で名高い富山県・砺波市を訪れた.冬支度を急く砺波平野は一面黄土色に染められ,遠く雪をいただいた立山連峰が夕日をうけて,まばゆいばかりに輝いていたのが印象的だった.
 こうして地方都市をあちこち取材して歩いていると,「身近にこんな病院をもっている住民はさぞかし安心だろうな」と思わず感じてしまうことがままあるものである.市立砺波総合病院も外来者にそんな第一印象を与えてくれる病院の1つだ.それというのも,高度先進医療から針灸・漢方の東洋医学,在宅医療に至るまで幅広い医療機能を保持して地域住民の医療ニーズに対応しているからであり,「地域住民に親しまれ信頼される病院づくり」の理念がしつかり定着して,地域社会と一体となった,きめの細かい活動が続けられているからだ.

国立病院長のニューリーダー 全国国立病院長協議会会長・国立栃木病院長 齋藤和雄氏

著者: 岡崎通

ページ範囲:P.16 - P.16

 齋藤和雄先生は1991年4月から全国国立病院長協議会会長としてご活躍中.広い額と,優しいが時にきらりと光る眼は鋭い.しかし,微笑と明るい雰囲気はまさに小児科のお医者さん.多士済済の幹賢会を,巧みな話術とソフトムードで問題の核心を突いてリードされる.
 先生は埼玉県生まれ,東京育ちの慶應ボーイ.まだ戦後の混乱期,だが学問を渇望し,良き伝統が生きていた当時に学生,医局生活を送られた.そのことが背骨になっているのではないだろうか.

主張

施設間機能連携の意味するもの

著者:

ページ範囲:P.17 - P.17

 医療法改正論議の焦点となりながら,一般の理解を得られなかったのが,病院の体系的分類と施設問機能連携の問題であろう.特定機能病院と一般病院を分類し,一般病院の中に療養型病床群を創設しようという試み自体は,医療提供側の論理からすれば真っ当なことである.その試みを,病院の急性型,慢性型への移行過程での類型化の1つの方法というように前向きに考えれば,機能別類型化による紹介制を促進するものとして期待できるからである.しかし,受療側にとってのメリットはあるのかとなると,自由受診の抑制ではないかという反発となってくる.事実,直接,大学病院を受診できないとして不安と不満の声が高まっている.
 その一方で,大学病院では,そんな期待されるほど,アクセスの良い医療サービスが行われてきたのであろうかという疑問も無いではないし,高度医療がなされてきたのかという問題提起もある.

特別企画 民間病院経営者に聞く

90年代の病院経営—私はこう見る

著者: 橋本洋一 ,   太田茂樹 ,   瀬戸泰士 ,   市川尚 ,   石山紘 ,   中西泉 ,   花岡和明 ,   中島明彦 ,   小林武彦 ,   河野稔彦 ,   児玉博行 ,   川合清毅 ,   加納繁照 ,   吉田寛 ,   荒尾素次 ,   手束昭胤 ,   細木秀美 ,   高木寛之 ,   西島英利

ページ範囲:P.47 - P.67

 医療法改正案に示されている医療の理念は,これから21世紀に至る90年代の病院経営に強力なインパクトを与えるであろう内容を含んでいる.高齢・少子社会の到来は医療供給のあり方に確実に変化をもたらすはすで,わが国の医療界が大きな曲がり角に立っているのは周知の事実である.
全国の民間病院経営者は,この曲がり角をどのように曲がりきろうとしているのか,90年代の病院経営の展望をたずねた.(本誌)

精神科医療 総合病院の窓から・10

老人痴呆—その見立ての歴史

著者: 広田伊蘇夫

ページ範囲:P.68 - P.69

 新しい年を迎え,前回のつづきとして,「老い」の問題を,なかんずく最近,総合病院精神科でしばしば出会う「老人痴呆」の見立ての歴史を辿ってみることにする.

看護管理の目・1

看護ヒューマンパワーの無駄使いをしない管理

著者: 川嶋みどり

ページ範囲:P.70 - P.71

はじめに
 病院の運営にとって,支障を来たす程の看護婦不足が話題になったこの1年であった.総婦長ならずとも出身校を訪問したり,地区割で責任範囲が決められている学校を訪ね歩き,何故こんなことまでしなければならないのかと,嘆く婦長の話も随分聞いている.就職が決定してからの当の本人に渡す支度金の額と,リクルートに飛び歩く資金や広告料を合わせると馬鹿にならない額になるだろう.
 新年度,定員を満たして発足できれば大出来で,量的には欠員のまま,それでも現状維持ができれば恵まれているという施設も多いという.努力の結果,多少増えたとしても,高齢化,重症化による高看護度患者の増加を思えば焼け石に水といってよいだろう.

MSWの相談窓口から

患者の背後の問題に迫る

著者: 小松智世美

ページ範囲:P.72 - P.72

患者との出会い
「——女性が欲しい.できれば看護婦.あなたは理想的——などといっては,周囲の人達のひんしゅくを買っている患者ですが,社会的地位も名誉もあり,会社をいくつも経営しているお金持ちで75歳.本気なのか冗談なのか分からないけれど,時折見せる孤独な表情は老いのせいばかりではなさそう.糖尿病が進んで入院したが,どことなく荒んだ暮らしぶりがうかがえて……この患者には,看護接遇をこえた,社会生活者としての人間的かかわりが必要と思えます」
 常に真摯な態度で患者に向き合う病棟主任看護婦から,ソーシャルワーカーは患者Hさんについて相談を受けた.Hさんが病院に求めているのは,血糖値が下がることだけではないのかもしれない,と考えたワーカーは,早速,Hさんに連絡をとった.

建築と設備・69

大阪府立母子保健総合医療センター

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.73 - P.78

母と子の一貫医療をめざして
 このセンターは,母性の妊娠から出産までと,子供の胎児期から新生児・乳幼児期にいたる全過程を通じての保健と医療を総合的に行うことを目的とした施設で,特に一般の医療機関では対応の難しいケースを担当する高機能の専門病院である.産科専門の施設は少数ながら昔からあったし,最近,小児専門病院も大分増えたが,周産期医療と小児医療とを統合した一貫施設としては,わが国ではここが初めてであろう.
 しかも,研究所を併設し,予防や治療についてまだ解明されていない母子に関わる疾病の研究も進められている.

病院管理用語解説

人口/医療法人

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.79 - P.79

 人間の数を意味するが,一般にはある地域における住民の数を表す言葉として用いられる.
 人口は男女別,年齢別,職業・産業別などの構成をもつが,これをある時点でとらえた場合を人口静態といい,出生,死亡,流入,流出あるいは婚姻,離婚といった人口の移動をみる場合を人口動態という.

事例 医療設備間連携

船橋市立医療センターにおける病診連携—病院のオープン化とその活性化

著者: 佐藤裕俊 ,   小沢俊 ,   奥山武雄 ,   近藤宣雄 ,   山中義忠 ,   矢走英夫 ,   栗原宣夫

ページ範囲:P.80 - P.85

はじめに
 近年の医学の進歩には目覚ましいものがあるが,それに伴い,医療技術が高度化・細分化されつつある.病院勤務医はもちろんのこと,開業医もその対応に迫られ,病診連携はますます重要性を増している.当院は,開院以来,千葉県船橋市における中核的基幹病院としての役割を果たしてきた.また同時に,市医師会員に開かれた開放型病院として病診連携を推進し,今日に至っている.開院以来8年を経過して病診連携も定着し,開放型病床の運営システムも船橋方式として全国的に注目を浴びるようになった.そこで今回は,その実績を中心に,当院におけるオープンシステムの現状を紹介する.

病院経営Q&A・1

病院長のリーダーシップ

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.86 - P.87

 Q 「院長にリーダーシップが欠けているため職員がついていかない」「院長として経営方針をどう確立したらよいのか,さらには,トップマネジメントとしてリーダーシップをどう発揮したらよいのか分からない」という悩み・相談が増えている.病院管理者のマネージメントスタイルやリーダーシップはどうあればいいのだろう.

統計のページ

病院看護職による保健相談・指導(1)—実施体制と看護職員

著者: 菊池令子

ページ範囲:P.88 - P.89

はじめに
 慢性疾患患者の療養生活を支える上で,看護職の行う相談・指導が注目されてきている.日本看護協会では,看護職による保健相談・指導の保険点数化を要望していく上での基礎データを得るために「病院看護職による保健相談に関する調査」を行い,その実態を把握した.
 慢性疾患患者の相談・指導を主業務とする部署を有する可能性が高い558病院に調査票を郵送し,139病院から回答を得た(発送調査票数558票に対する回収率は24.9%).調査実施は1990年1月である.

厚生行政展望

介護機器の開発

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.90 - P.91

 既に言い古されてはいるが,わが国は21世紀初頭には人口の4人に1人以上が65歳以上という超高齢社会を迎える.特に,高齢者のみの世帯(一人暮らしや夫婦のみ)は既に高齢者のいる世帯の3割に達しており,核家族化が進行するなか,今後ますます増加することが予想されている.介護者自身の年齢について,約4割が60歳以上であるというデータもあり,高齢者が高齢者を介護するという事例も増えていくことは想像に難くない.さらに,障害者も重介護を必要とする者の割合が高まっている.
 これに備えるために,厚生省では,平成2年度から開始した高齢者保健福祉推進十か年戦略等に基づき在宅福祉・施設福祉対策を実施していくとともに,保健医療・福祉マンパワー対策本部の中間報告(平成3年3月18日)を出し,看護婦をはじめとする保健医療・福祉マンパワーの確保に取り組んでいる.しかし,一方で近年の出生率の低下により,今後は若年労働者の確保が一層困難になることも予想されている.そこで家族の介護者はもとより,福祉業務従事者の負担の軽減を図り,高齢者,障害者に対するサービス内容をより充実させていくためにも,現在,介護機器を積極的に研究開発・普及することが緊急の課題となっている.

病院管理フォーラム

[臨床検査]検査の外注を考える/[人事・労務]看護婦募集あれこれ—看護婦採用に“心”をこめて

著者: 高橋正雄

ページ範囲:P.92 - P.93

 わが国の国民医療費は,平成3年度(推計)で21兆7,200億円となった.この国民医療費にしめる外注検査の割合は,どのようになっているのであろうか.1986年度における国民医療費および社会医療行為別調査によると,この年度の検査料は,1兆8,605億円だった.国民所得の伸びで,今年はおそらく2兆円を突破しているものと思われる.国民医療費にしめる検査料の割合は10.9%であった.このうち検体検査は64%をしめている.金額にしておよそ1兆2,000億円である.
 この検体検査外注の受け皿となっている衛生検査所は,全国800個所を越え,(社)日本衛生検査所協会加盟の各社は東京都の39社,北海道の34社をはじめ,439社(1989年)に達し,これがひしめき合い,しのぎを削る1兆円産業の実態である.

病院アメニティの改善・1

病院アメニティ改善の視点

著者: 小滝一正

ページ範囲:P.94 - P.95

はじめに
 病院におけるアメニティに関する論議は,ここ数年非常に活発になってきた.この「病院」誌でも何回となく取り上げられているし,平成2年10月の第28回日本病院管理学会のメインテーマは「患者のアメニティと病院管理」であった.そこでは医療管理,環境整備,人間関係の3つの観点からワークショップが開催されて,議論が沸いた.
 「病院」誌で病院アメニティの改善事例などを掲載する新しい連載が始まるというので,まずは総論的に病院におけるアメニティを考える際の視点について述べてみたい.この連載に病院現場でのきめこまやかな改善事例が豊富に紹介されて,病院アメニティの向上が図られることを期待したい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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