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雑誌目次

雑誌文献

病院51巻11号

1992年11月発行

雑誌目次

特集 民間病院の承継はどうなる

相続税の仕組みと対策

著者: 長隆

ページ範囲:P.974 - P.982

平成4年1月1日以降の相続のポイント
1)相続税の計算の仕組み
 病院経営者が死亡した場合に課税される相続税の計算の仕組みは図1に要約されます.個人開設と法人開設いずれの場合も,遺産(注1)の種類が異なるだけで計算方法は同様です.設備法人は,遺産の内訳に株式が加算されることになります.財団医療法人,持分の定めのない医療法人は相続人に財産権がありませんので相続税は課税されません.特定医療法人も相続税非課税となります.

これからの医療法人制度

著者: 田中重代

ページ範囲:P.983 - P.987

はじめに
 どのような制度や仕組みも,それが誕生するための社会的な背景や環境があり,その時点での合目的性をもち,その効果を期待して創設されている.
 したがって,時の経過や社会環境の変遷に伴って,不適合部分が目立ったり,整合性を欠きがちな事態になることがあっても,やむをえない場合がある.それはまたそれに応じた法改正などにより,修正,補正して,合目的性を維持して存続させるため,常に見直しが行われていくことが必要である.

特定の医療法人の現況

著者: 井手義雄

ページ範囲:P.988 - P.991

はじめに
 近年の医療費抑制策に伴う種々の厚生行政の変革は,民間医療機関における基本的な経営基盤を大きく揺るがしている.また現状における将来展望の不透明さは,多くの民間医療機関にとって今後も事業を継続すべきか否かの重大な関心事となっている.
 特にわが国民問医療機関の中心である医療法人においては,病院の経営悪化とともに,個々の医療法人における事業承継の問題,またバブル経済に伴う土地価格の急騰,さらには法人設立以来の内部留保の増大等,出資持分に対する相続問題等が複雑に絡んで混沌としているのが現実である.

承継について私はこう考える

著者: 岡山清 ,   竹本範彦 ,   中西泉

ページ範囲:P.992 - P.996

病院承継に魅力を持たせよ
我が国の医療の現状
 医療費抑制に名を借りた良質な医療という錦の御旗のもとに,民間病院の縮小政策は,月日を経るにつれて類型別の機能分類という姿でその全貌が次第に見えて来た感じだ.第二次医療法が去る6月17日の国会で通過したので,霧の中の実態がこの秋頃から明らかになるであろう.真っ先に手をつけられるのが,老人特例許可外病院の特別重点指導であり,ペナルティーを科せられた病院は数カ月足らずで閉鎖を余儀なくされるかも知れない.一般病院も基準看護を持たないところや低いところは,何らかの変身を遂げない限り,経済的な誘導によって経営を維持して行くことは早晩不可能になる.そして現在厚生省の意図する変革は,これから先,そのスピードが益々加速されるであろうと思われる.
 また一方では当局の望む医療費の総枠を決めるための壮大な実験がなされているようである.特にこの4月の改定はそれを如実に物語っている.厚生省には申し訳なく乱暴な言い方かも知れないが,診療側の意向も約束もほとんど無視され,ちょうど適当な餅の大きさを造るために延ばしたり,縮めたり,一部をちょん切ったり,くっつけたりしているのと同様に見える.

[座談会]民間病院の存続は可能か

著者: 千葉兼三 ,   安藤高夫 ,   中西泉 ,   竹内實

ページ範囲:P.997 - P.1004

 竹内 お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございました.「民間病院の存続は可能か」というテーマで座談会をしたいと思います.
 民間病院ですから,多かれ少なかれ土地・建物等,あるいは資産を個人が出して始めた病院ですので,当然代がかわるときに承継問題が出てくる.存続ができなくて,すでに廃業してしまった病院も少なくないということです.いまの世の中で,ずっと民間病院として継続できるかどうかという大きな問題に関してご意見をいただきたいと思います.

グラフ

難治性がん診療・研究の拠点—緩和ケア病棟も併設して国立がんセンター東病院が始動

ページ範囲:P.965 - P.970

 前号の「国立南和歌山病院」に引き続き,国立医療施設統合の第1号として動きはじめた「国立がんセンター東病院」(阿部薫院長)を紹介する.
 国立がんセンター東病院は都心から30km,首都圏のベッドタウンとして人口が増えつづけている下葉県柏市に位置している.常磐高速道路の柏インターを出て5分の距離にあり,車の渋滞のない深夜などは,築地の国立がんセンターから首都高速,常磐高速と乗り継いでほぼ30分で東病院に到着する.広大な米軍柏通信基地跡地に設立されただけあって敷地面積は約8万m2と,病院敷地の狭隘化に悩む都心の病院経営者にはうらやましいくらいの広さ.しかも同じく基地跡地を利用して現在千葉県が造成中の「柏の葉公園」(1995年完成時45万m2)に隣接しており,今日都市生活者にとっては最も贅沢なアメニティである自然にも恵まれている.病院設計ではこの環境をうまく利川して,最上階の9階には患者のための展望風呂を設けるなど,ちょっとした遊び心も加味された.自然の採光と空間を生かしたエントランスホールをはじめ,全体的にゆったりとしたスペース配分がなされており,これまで機能一点張りで来た国立病院のイメージを覆そうとする意欲が感じられる.

地域医療に献身,多くの賞を受賞 国保直営総合病院君津中央病院 唐木清一院長

著者: 山口昇

ページ範囲:P.972 - P.972

 私と唐木先生とのお付き合いはかれこれ10年近くになる.先生は当時から千葉県直診協会の役員として,いろいろと協会の世話をしておられた.
 先生は昭和28年千葉医科大学を卒業されて第1外科教室へ入局.その後君津病院の外科医長として赴任され,以来地域の中核病院としての今日の君津中央病院をつくり上げられた.一方では地域医療にも熱心で,君津郡市地域医療協議会をはじめ千葉県直診協会の役員など数多くの役職についておられる.このような功績により,厚生大臣表彰,読売医療功労賞など数多くの賞を受賞された.当然といえば当然のことである.

主張

新しい病院経営計画が必要

著者:

ページ範囲:P.973 - P.973

 平成3年6月に行われた中医協の医療経済実態調査の結果が発表された.その概況は平成元年6月に行われた前回調査と比較して医業収入の伸びを大きく上回る医業費用の増加により,医業収支差額が著しく減少しているという結果であった.無床診療所,有床診療所,公私を問わず一般病院,精神病院のすべての施設の平均値の悪化を示すものである.おそらくかなりの病院が赤字転落を余儀なくされ,公的病院の一部は更に他会計に依存せざるをえない状況が推測される.病院経営の悪化の原因は医業収入の約半分を占める人件費の上昇が第一であろうが,人件費,医療材料費以外の経費の伸びも見逃せない要因である.
 この調査の結果を受けて本年4月の診療報酬の改定が行われた.この改定で果たして病院の経営が上向きになるかどうかの判断には今しばらくの期間が必要であるが,今回改定の重点は人員確保に置かれている点を考えると当然改定による増収のほとんどは人件費改定に回ると覚悟しなければなるまい.医業経営の安定のためにはもちろん診療報酬上の手当が最も望まれるところであるが,国の社会保障費,保険財源には自ずと限界があることを理解する必要がありそうである.特に病院経営の健全化を目指すためには経営計画の再検討が必要でなかろうか.

研究と報告

中小民間病院の自己評価—手術症例の在院日数からの検討

著者: 小野隆男 ,   石田貞治 ,   青木政雄 ,   小野肇 ,   大野勝之 ,   宮山信三 ,   広瀬忠次 ,   高橋博義 ,   中野浩 ,   金潤吉 ,   木村一雄

ページ範囲:P.1005 - P.1009

はじめに
 病床の効率的な運用・管理を示す指標として,最近在院日数が取り沙汰されており,その長短がその病院の機能や性格を反映するものと言われている.
 今回,当院外科における手術症例について在院目数を検討し,その在院日数の妥当性,病院の機能およびその地域における位置づけについての自己評価を試みたので報告する.

特別寄稿

老人外来医療における学際的総合評価—Michigan大学Turner Clinicでの方法

著者: キャンベルルース ,   前田満寿美

ページ範囲:P.1010 - P.1015

はじめに
 ターナー老人医療クリニックは,ミシガン大学メディカルセンターの一部門として約2,500人の患者に外来診療を提供している.ここでの診療には,多面的に患者を把握するために学際的チームによる専門的総合評価方法(multidisciplinary assess-ment procedure)が採用されており,プライマリーケアの中で長期的な患者のフォローアップや患者のニーズの変化に応じた治療計画の調整が可能になっている.専門的総合評価は,入院,外来において,病弱な老人や重複障害のある老人を包括的に評価することを目指し,地域での在宅療養の継続を支援し,時期尚早な施設入所を防ぐことに役立ってきた.しかし外来診療所こそ,一般老人には健康教育や健康増進を,慢性障害をもつ老人には医療ケアと社会的支援を,より重度の障害をもつ老人には評価と治療を提供できる理想的な場である(Martin et al 1985).ターナーでは地域に出張して行う広範囲な活動に力を入れており,訓練を受けたボランティアや大学生の援助を受けながら,地域の諸機関と密接な連携をとっている.このように,クリニックの機能は単に評価と治療に終わらず,地域における対象老人患者の発見やケース・マネジメント,サポートネットワークづくりへと拡大されている.

建築と設備・79

マーストリヒト大学病院

著者: 長澤泰

ページ範囲:P.1016 - P.1023

 ECの経済・通貨統合を進める欧州連合条約で名が知られたマーストリヒトに新しい大学病院が出現した.

看護管理の目・10

診療介助業務の見直しと医師との関係

著者: 川嶋みどり

ページ範囲:P.1024 - P.1025

 「看護婦等の人材確保の促進に関する法律」が,さきの第123回国会で成立した.その円滑で実益のある実施を期待したい.先ずは人材確保のための教育の充実は論をまたないとして,確保した人材の有効な活用,離職防止などの努力は今後ますます重要となろう.それと並行して,病院等で看護婦が行っている業務を再検討し,看護婦自身が納得できる専門的業務に専念するための対策が必要である.
 国レベルでも,平成3年度に看護業務改善検討会が発足.続いて本年8月からは,看護業務見直し改善に関する事業によって,医療機関のモデル事業を実施し,実証的検討を始めたという.委託対象となった8病院では,目下その取り組みに御苦労されているに違いない.

厚生行政展望

医療法改正による診療科名の追加

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.1026 - P.1027

広告できる診療科名
 7月の医療法改正を受け,厚生省の医道審議会は9月3日に,厚生大臣からの諮問である「医業・歯科医業の診療科名」について,「当面は現行の33診療科名を政令で定めることが適当」と答申した.また、新たな診療科名の追加を含む今後の診療科名のあり方については,医道審議会に専門委員会を設置し,そこで審議することを決めた.
 改正された医療法では,従来,医療法で規定されていた医業・歯科医業の診療科名が,「医学医術に関する学術団体および医道審議会の意見を聞いて政令で定める」こととなった.

病院経営Q&A・11

病院関係法令

著者: 白髪昌世

ページ範囲:P.1028 - P.1029

Q 「当院では開院以来,病理解剖を行った際の組織および臓器を保存しているのであるが,病院内での保管スペースの関係もあり,古いものあるいは目的が終了したものなどについては順次処分をしようと計画しているのであるが,法令上なにか特別な手続きを必要とするのであろうか.また,これに関連する法令ではどのように考えられているのであろうか.」

MSWの相談窓口から

外国人の医療をめぐって

著者: 高橋紀夫

ページ範囲:P.1030 - P.1030

 例年になく暑い日が続いた8月下旬のある日,E・Tさん(25歳)が医療相談室にやってきた.彼はたどたどしい日本語で,「赤ちゃん,今日退院する.お金は?」と指で丸をつくって私に聞いた.入院費を清算してから退院するよう,看護婦に言われたらしい.「いまお金持っているの?」「ない」「それじゃ払えないね.お金のことは社長さんと相談するから今日は払わずに帰ってもいいよ.看護婦さんにも私から言っておくから大丈夫.わかった?」「うん」彼はボリビア人,といっても二世だから少しは日本語が話せる.私は人柄のよさそうなE・Tさんと連れ立って,産科病棟まで赤ちゃんを見に出かけた.母親に抱かれた赤ちゃんはかわいい顔をして眠っていた.
 奥さんのI・Fさんは富山県出身の日本人.E・Tさんが横浜で働いていた時に知り合い結婚したが,まだ入籍しておらず,住民票は富山においたままであった.

病院管理フォーラム

[臨床検査]業務の制限と範囲の拡大

著者: 高橋正雄

ページ範囲:P.1032 - P.1032

検査は有資格者で
 臨床検査の業務は,患者の体液や排泄物を検査する検体検査(6種目)と,直接人体を対象とする生理学的検査(8種目)に分類される.
 臨床検査技師,衛生検査技師等に関する法律(以下臨衛技法と略称)が昭和33年にはじめて制定されたとき,この検体検査は直接人体に触れることのない,危険の少ない行為であることから,「医行為とは解釈されない」(厚生省国会答弁)ものとされ,名称独占にとどまり,業務制限法に至らなかった.

[人事・労務]研究活動助成で意識の高揚を—職員研究助成制度

著者: 関根茂

ページ範囲:P.1033 - P.1033

 最近の社会環境は凄まじい勢いで変化・進歩を続けている.それは,昨日までは当たり前のことであったようなことが,次の日には当たり前ではなくなっているようなものである.それは,医療を取り巻く環境・技術においても同様で,日進月歩のごとく変化し続けている.
 医療の中での患者サービスの向上に関することがここ数年来特に叫ばれているが,その患者サービスの内容も今,大きく変わろうとしてきている.しかし,患者に対してより高度な技術と,適切な医療を提供することが大前提であることは変わりはない.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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