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雑誌目次

雑誌文献

病院51巻12号

1992年12月発行

雑誌目次

特集 第2次医療法改正のインパクト

第2次医療法改正までの歩み—21世紀の医療供給体制をめぐる動きとその焦点

著者: 高木安雄

ページ範囲:P.1058 - P.1063

なぜ医療法改正は難しいのか
医療における需要と供給のバランス問題
 第2次医療法改正がようやく成立した.平成2年5月の国会提出以来2年1か月かかっているが,前回の第1次医療法改正が2年9か月もかかって成立したことを考えれば,関係者の合意形成はそれでも早くなっている.21世紀の高齢化社会を迎えて,医療供給体制の改革の必要性がより浸透している結果といえよう.
 もっとも,ようやく成立した医療法改正も,特定機能病院などに関する政省令の具体的な詰めの段階で大学病院などの抵抗に会い,すんなりとは施行できないでいる.それだけこの法律は,厚生省にとって難物なのである.

特定機能病院と紹介外来

著者: 濃沼信夫

ページ範囲:P.1064 - P.1067

はじめに
 施設機能の体系化と病診連携の推進は,量から質の時代に入ったわが国の喫緊の医療政策課題となっているが,難渋のうえ本年6月に成立した第2次医療法改正を契機に,これらの実現に向けた動きが活発化している.厚生省の来年度概算要求には,特定機能病院医療連携推進事業,療養型病床群整備の補助などが計上され,10月未には医療審議会で改正医療法に係る政省令案の骨子が固まり,また,改正医療法を経済面から支える来春の診療報酬改定の作業も大詰めを迎えている.さらに,今回は検討がなされなかった,特定機能病院と療養型病床群の中間に位置する医療施設について,その体系化を進める第3次医療法改正が準備されようとしている.
 今回の医療法の改正案ならびに政省令案の審議の過程で,特に議論が多かったのは特定機能病院の有する高度医療の概念とこれの承認要件,とりわけ患者紹介率の水準であった.そこで,本稿では,施設機能の体系化と病診連携の推進に不可欠の要素である患者紹介のメリット,デメリットのバランスシート,また,特定機能病院に想定されている大学病院を巡る課題と改革の展望について,私共の実施した調査の結果を交えながら若干の考察を行う.

療養型病床群への転換はどうなるか

著者: 中佳一

ページ範囲:P.1068 - P.1071

はじめに
 平成4年6月現行医療法の改正が国会承認成立し,1年間の政令・省令の準備期間を経て1年後に施行されることになった.改正内容については御承知のとおりであるが「病院の類別」は概念のみである.
 3か月位の作業にて9月頃までには「療養型病床群」についても明確な規定原案が出る予定である.私に与えられた命題は「療養型病床群への転換はどうなるか」である.

広告と医療—規制緩和に向けての病院の対応を考える

著者: 亀田俊忠

ページ範囲:P.1072 - P.1074

はじめに
 このたび病院等の施設内外における医業等に係る掲示,および広告の見直しが盛り込まれた第2次医療法改正法案が成立し,われわれは医療と広告,あるいは医療の情報公開といったさまざまな課題と今後どう取り組むべきかという問題に直面している.

医療法改正と理念規定

著者: 長𠮷洋司

ページ範囲:P.1075 - P.1078

医療法改正の概要・意義
 平成2年5月25日,第118国会に提出されて以来,2年余の継続審議を経て,「医療法の一部を改正する法律」(平成4年法律第89号)は平成4年5月19日,先の第123国会において衆議院で一部修正,附則追加・附帯決議を付し可決,6月19日参議院にて附帯決議を付し可決・成立した.
 第1次医療法改正(昭和60年12月)における附則・附帯決議を受けて検討された,国民医療総合対策本部の「中間報告」(昭和62年6月),「21世紀をめざした今後の医療供給体制の在り方」(平成2年1月,健康政策局)等の指摘・要請に対応するものとして検討・準備され,今回成立した医療法改正の主要事項は次の通りである.

次期改正に望む

著者: 丹野清喜 ,   秀嶋宏 ,   本多徳児 ,   河﨑茂 ,   清成正智 ,   武下浩

ページ範囲:P.1079 - P.1088

日本病院会
 本稿を執筆された丹野先生は9月18日,日本病院会広報委員会の席上で倒れられ,20日午前0時15分入院先の慶応義塾大学医学部附属病院にて逝去されました.死因は脳卒中でした.本稿の差し出し月日は9月14日になっておりますので,亡くなられる直前に脱稿されたものと拝察されます.
 先生のご冥福を心よりお祈りいたします.

[インタビュー]医療法改正と医師—厚生省健康政策局計画課 伊藤雅治課長に聞く

著者: 紀伊國献三 ,   伊藤雅治

ページ範囲:P.1089 - P.1095

 紀伊國 長年の懸案であった医療法が改正されました.特定機能病院,療養型病床群,広告規制の緩和,業務委託などが議論になったわけですが,今回の改正は医師にも大きなインパクトを与えたのではないかと思います.法改正に伴って現在医療審議会で政令,省令についての検討が進められていますが,本日はその責任者のお1人である伊藤計画課長にお越しいただきました.医療法改正と医師というテーマを中心にざっくばらんにおうかがいしようと考えております.
 6回の国会を経て医療法がようやく改正されたわけですが,やはりそれだけの必要性があったとお考えですか.

特集資料 改正医療法に係る政令,省令及び告示案要綱

ページ範囲:P.1096 - P.1100

第1 趣旨
 医療法の一部を改正する法律(平成4年法律第89号)第2条を円滑に施行し,良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保するため,特定機能病院に関する事項,療養型病床群に関する事項,病院,診療所等の業務委託に関する事項,医業等に係る掲示及び広告に関する事項等につき,政令,厚生省令等の規定の整備を行うこと.

グラフ

「やさしく温かい医療」を追求—香川県・三豊総合病院

ページ範囲:P.1049 - P.1054

 三豊総合病院は香川県の西の端,愛媛県境の豊浜町にある.豊浜町は高松市から約50km,瀬戸大橋から30 kmほどの距離にある瀬戸内海沿岸の農山漁村的風情を残した町である.
 「この地元で生まれ地元で亡くなっていく人たちの健康を守るために,この地域の基幹病院として医療を担っていくことが基本的な方針です.そのためには,地域の人たちにやさしく温かい医療,地域の人たちが満足できる医療を提供することが目標」と,今井正信院長は一部事務組合立の公立病院である三豊総合病院の基本的な方針を開陳する.

1992年エイボン女性大賞を受賞 東札幌病院看護部長・副院長 石垣靖子さん

著者: 山崎章郎

ページ範囲:P.1056 - P.1056

 「美しい」「清楚な」「清々しい」「りりしい」「優しい」「しなやかな」…….
 今年度のエイボン女性大賞にも選はれ,副院長としての役職もこなす石垣さんを評する形容詞を思いつくままに挙げてみた.まだまだ挙げられるが字数が足りなくなりそうなので途中でやめることにする.

主張

看護副院長のすすめ

著者:

ページ範囲:P.1057 - P.1057

 今年を振り返って病院界には多くの出来事があった.その大きなトピックとして「看護の年」だったといえる.4月の診療報酬改定に見られる看護重視,病院機能の中核としての看護の位置づけをはじめ,人材確保法の制定,看護大学設立ブーム,参議院選挙での看護候補の当選などがニュースとなったが,それと並んで,看護出身の病院副院長制も話題となった.東札幌病院や聖路加国際病院の例が好意的にとりあげられた.
 むしろこれまで組織上の正式な位置づけがなされなかったことが不思議である.病院職員の中で最大の職種である看護婦を統活するばかりでなく,病院の直接患者サービスの最大の量を占める看護が他の職場部門といかに組織的に協力するかを考えても,病院の経営組織に当然入るべきであった.それが何故いまニュースになるのであろうか.

研究と報告

看護補助者業務の集中化について—業務を円滑に移譲するための方策

著者: 阿部廣介

ページ範囲:P.1101 - P.1103

はじめに
 近年,よりよい看護を行うため業務の見直しが行われ,看護業務に含まれていた採血は臨床検査技師に,IVHの薬液の配合は薬剤師に,配膳下膳は給食部門に,また間接看護は補助者に委譲することが進められている.当院でも補助者を病棟に配置したが予想に反し看護婦との協調に欠け勤務体制を根本的に見直さざるを得なかった.そこで搬送と物品材料の取扱い業務の集中化を行ったところ円滑に業務を補助者に委譲することが出来たので報告する.

MSWの相談窓口から

病院と地域社会のあいだ—患者移動のアプローチ

著者: 沼尻香代子

ページ範囲:P.1104 - P.1104

 患者の退院問題は,病院ソーシャルワーク草創期からの課題であった.しかし現在は,「退院計画:Dis-charge Planning」という専門ソーシャルワークの新しい機能として重要な課題となってきた.それは,高齢者のベッド専有率との関係において,経営管理的側面における①医療保険制度からの制約による在院日数の短縮,②在宅医療促進による外来部門での重症患者のケア,③病院の機能別の規格化,④病院の老人施設化防止等,医療体制の変化や地域医療計画の中で変革を迫られている病院の状況に関係している.一方地域の側では,①退院後の生活にQOLを求める患者や家族の生活の質的変化,②大都会や都市化地域での,地価高騰による住宅問題,③住民の流動化,近隣関係の稀薄化により孤立して暮らす高齢世帯や単身者等,地域の連帯的な人間関係から疎外された人々や地域構造の問題があり,社会的入院が増加している状況との相関関係の中で突出してきたものである.
 従って,医師から退院の許可が出されても,自宅へ退院するのが困難な患者が急増し,保険制度の監視下にあるからといって,病院が,一方的に退院をすすめれば,人権問題に発展する危険すら含んでいる.

建築と設備・80

病院内感染と設備

著者: 古橋正吉 ,   辻野純徳

ページ範囲:P.1105 - P.1111

医療側から
はじめに
 病院内感染の発生率は,内外ともに数%を下らないのが現状である.
 医療が高度に発達し,診断,治療の進歩により患者は多くの恩恵を受けている反面で,なお院内感染の危険がつきまとうのは何故であろうか.理由の1つには病院内の特有な微生物汚染環境の存在が挙げられよう.これは感染患者(入院,外来),医療職員,医療機器,建築設備などに目に見えない微生物汚染が相互にかかわり合って汚染源となり,感染経路を成立させるものと考えられる.

事例 医療施設間連携

千葉市における病診連携の現況と課題—病院・医師会それぞれの立場から

著者: 村上和 ,   藤森宗徳 ,   木下昌

ページ範囲:P.1112 - P.1115

千葉市立海浜病院
病診連携の経緯と現状
 千葉市立海浜病院は千葉市の西部,東京湾にのぞみ,幕張メッセの隣りに位置している.1967年(昭和42年)千葉県第2次総合5か年計画によって,千葉市の中心部より東京寄りの東京湾が埋め立てられ,海浜ニュータウン(人口約15万人)の建設が計画された.その計画の一環として地域総合医療センター構想が生まれ,千葉市が建設することとなった.
 病院の運営については,公設民営,公設公営の論議のあと,千葉市立とすることに落着き建設に着手,1984年(昭和59年)10月開院した.病床は301床,診療科は内科(循環器科,消化器科,呼吸器科),小児科(小児科,新生児科),外科(外科,心臓血管外科),整形外科,産婦人科,耳鼻いんこう科,眼科,麻酔科である.

厚生行政展望

改正医療法と特定機能病院

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.1116 - P.1117

 10月21日に厚生省医療審議会は良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保するために,特定機能病院に関する事項,療養型病床群に関する事項,病院,診療所等の業務委託に関する事項,医業等に係る掲示および広告に関する事項等について答申を行った.これを受け,中医協診療報酬小委員会では10月30日に次回診療報酬点数の改定の課題についての議論が行われた.今回は次回診療報酬点数改定の目玉である特定機能病院について検討する.

病院経営Q&A・12

病院の在庫管理

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.1118 - P.1120

Q よく「在庫は金利」だと言われるがどういうことだろう.あるいは,医薬品,診療材料等の物品を合理的に管理するには,どんなことに気をつけなければならないのか.

看護管理用語解説

勤務体制

著者: 高橋美智

ページ範囲:P.1122 - P.1123

 24時間365日継続して看護サービスを提供するため,医療機関で働く看護職員は交替で勤務にあたっている.例えば24時間を継続するためには「3交替制」,365日を継続するためには「代休制」などを採用しているが,こうした勤務形態を「勤務体制」と称している.勤務形態には様々な方式があるが,そのいずれの方式を採用するかは設置者が決定する.ただし決定するにあたっては,労働基準法(国立機関の場合は人事院規則),人事院勧告,医療保険制度(基準看護),雇用契約(就業規制)などの制約を受ける.代表的な勤務形態を以下に取り上げ説明する.

病院管理フォーラム

[臨床検査]生涯教育研修制度スタート

著者: 高橋正雄

ページ範囲:P.1124 - P.1125

職業的良心と自覚の発露
 病院管理フォーラムの「臨床検査」を本年1月から12回にわたり連載し,はや1年が経過した.
 その要旨の多くは,臨床検査技師が医療チームの一員としてスタンスをどう広げ,ステイタスをいかに高めるか,そのために必要な関係法規の足らざるところを指摘し,同時に,臨床検査技師自身がかかえる課題を,どう克服したらいいかについて述べてきた.

[環境整備]繊維製品の管理とリネンセンター

著者: 酢屋ユリ子

ページ範囲:P.1126 - P.1126

 病院で使用する被服などの繊維製品には,患者さんと職員の被服(ユニフォームを含む),寝具類(基準寝具,職員,外来者用),医療用リネン類,タオル類,おしぼり,おむつ類(以下リネン類という)等がある.
 繊維製品の規格は標準化(JIS規格)されているものもあるが,病院の特性から,安全性や衛生,機能性,居住性などが求められ,その結果病院特有のオリジナル仕様が多い.

[栄養]改正医寮法への対応

著者: 中村丁次

ページ範囲:P.1127 - P.1127

管理栄養士が位置づけられる
 今回の医療法改正案は,平成2年5月,第118回通常国会に提出され,その後,継続審議を経て平成4年6月19日,第123回国会において可決成立し,7月1日に公布された.その後,医療審議会は,各種基準等の項目について審議し,「改正医療法に関わる政令,省令及び告示案要網」として,10月21日に厚生大臣に答申したのである.
 今回の政省令では,「5.特定機能病院が有しなければならない人員について,次の事項を厚生省令で規定すること」とされ,医師,歯科医師,薬剤師,看護婦及び准看護婦の員数規定の次に「(5)管理栄養士の員数は,1を下回ってはならないこと」と明記された.いわば,医療法に初めて,管理栄養士が位置づけられたのである.これは大きな成果である.

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「病院」 第51巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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