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雑誌目次

雑誌文献

病院51巻4号

1992年04月発行

雑誌目次

特集 看護業務のスリム化

看護職員の現状と「看護業務検討会」の発足

著者: 大井田隆

ページ範囲:P.298 - P.299

はじめに
 我が国は21世紀には4人に1人が65歳以上の高齢者という超高齢化社会を迎えようとしている.このように本格的な高齢化が進展する中で高齢者の医療に対する看護の需要が増大しつつある.そのサービスの担い手であるマンパワーの果たす役割はますます重要なものとなっており,量・質にわたる一層の充実が求められている.

看護業務見直しの戦略とその実践

著者: 新道幸恵 ,   森道子 ,   西野薫 ,   車田桂子

ページ範囲:P.300 - P.304

はじめに
 近年の医療・看護を取り巻く社会現象は,複雑多岐にわたってきている.それらの現象は,大学の医学部附属病院という特殊な臨床からみているせいか,医療看護に少なからぬ影響を与えており,特に看護部門には大きな変革が迫られているといっても過言ではないように思われる.
 例えば,人口の高齢化現象や独居老人や老人世帯の増加は,入院患者の高齢化や家族支援が皆無か僅少な老人患者の増加につながり,臨床における看護量の増大や役割の変化をもたらしている.また,悪性新生物や循環器疾患等の増加という疾病構造の変化は,高度医療の需要の増大へとつながっている.これらのことは,一層の看護量の増大と看護の役割の変化をもたらしている.

看護勤務体制の見直し

著者: 伊藤硏

ページ範囲:P.305 - P.311

なぜ2交替制の導入を考えたか
時代にそぐわない勤務体制
 医療に関しては,昭和23年に発足した医療法がほとんど当時の姿のままであり,医療の現実にそぐわなくなっていることは周知の通りである.昭和36年の国民皆保険に始まった医療需要の増加は昭和48年の老人医療費の無料化を契機に一段と拍車がかかることになり,さらに医療の進歩に伴う急速な医療内容の変化と相まって,現在の医療法では対応できにくい問題が頻発している.
 このような医療需要の増加と,来るべき21世紀の高齢化社会に向けて,政府は医療供給体制の改革に取り組みつつあり,その第1弾が昭和60年12月に行われた医療法の改正であったとみることができるだろう.改正の内容は,人口割で先進諸国に比べて過剰な病院病床が問題にされ,医療を量から質へと転換することが必要との立場から,地域医療計画による都道府県ごとの医療圏の設定と医療圏ごとの病院病床の量的規制を骨子としたものであった.そのため一部で駆け込み増床が発生し,この一過性の急激な病床増が看護職員需要増の一因であると言われている.

院内他部門との業務分担の調整—八つの従来業務を他部門に委譲して

著者: 山崎絆

ページ範囲:P.312 - P.316

はじめに
 数年前より看護婦不足が深刻になり,看護婦の求人と定着について検討されてきている.しかし,労働人口の減少に直結する若年人口の減少という事情もあり,看護婦の絶対数不足が明らかになるにつれ次の課題として,看護業務と要員の見直しが必要となってきた.
 看護業務については次の2点に分けて考えることが必要である.

コンピュータを導入して

著者: 坂井靖子

ページ範囲:P.317 - P.320

 滋賀医科大学医学部附属病院では1989年より統合医療情報ネットワークシステムSHiNE (Shiga uni-versity of medical science Hospi-tal Information Network sys-tem)が稼働しています.当初より看護部門のコンピュータ利用の目的を,直接的な患者サービスや,看護業務の省力化,看護管理業務の効率化に役立つこととしました.
 システムを構築して3年目を迎えていますが,その経験と評価の一端を紹介します.

薬剤業務改善による直接看護業務の充実

著者: 南部増男

ページ範囲:P.321 - P.326

はじめに
 病院における診療業務は年々,医療の高度化により多様化を極めている.
 当院においても各部署とも業務の増加に伴う情報処理の繁雑化,複雑化等,諸問題をかかえていた.薬剤部においても部内の業務処理に加えて,他部署に係わる広範囲な業務があり,それらに対する正確性,迅速性等の要求がなされてきた.これらへの対応として機械化による業務の効率化,合理化を検討した結果,コンピュータ導入以外には,現状を打開することができないと判断し,院内各部署とも効果をもたらすシステムとしてトータルオーダシステムの採用に踏み切った.

申し送りに患者の参加するウォーキング・カンファレンスをとりいれて

著者: 河津美知子 ,   稲田基子

ページ範囲:P.327 - P.329

はじめに
 申し送りは各勤務帯の引き継ぎを通して,患者の問題を共有することで看護日標の立案に役立て,必要な看護援助を行うために有効であるといわれてきた.しかし,看護のマンパワー不足が進行するなかで看護業務のスリム化が追求されてきている.看護業務の中でその占める割合と内容で特に改善が求められているのが申し送りと看護記録である.
 当法人では申し送りに患者の参加するウォーキング・カンファレンスをとりいれて申し送りを短縮し,看護記録も改善することができたので報告する.総合病院松江生協病院と特例許可老人病院である松江生協リハビリテーション病院の2つの病院の取り組みを紹介するが,急性期病棟でも慢性期病棟でも有効であった.

看護助手が行う看護“補助”業務について考える

著者: 岸本まき子

ページ範囲:P.330 - P.334

はじめに
 今,看護婦不足は深刻な社会問題として各方面で取り上げられている.しかし具体的な解決策は打ち出されていないような気がする.高齢社会の到来に備えて,まためざましく発展変革する医療の重要な役割を担う看護職のこれからのあるべき姿について,もっと検討を加え,抜本的な改善をする必要がある.即ち,現在看護婦の置かれている立場が,時代の進展に伴って,社会的,経済的,労務管理的な見地から妥当なものであるかどうか再検討すべきである.
 その中でも最優先に手をつけたいのが,業務改善である.厚生省で看護業務検討委員会を発足させこの問題に取り組んでいることは喜ばしい限りで,是非好ましい答申を期待している.看護業務のスリム化について筆者も少なからず関心を抱いている1人であるが1),今回は外注委託と看護業務,特に看護補助者の委託外注の経験から,現状と今後の展望について述べる.

[てい談]見直しから実行へ—看護業務はどこまで整理できるか

著者: 西垣克 ,   青木孝子 ,   村上美好

ページ範囲:P.335 - P.342

 本誌 従来から看護業務の整理ということが言われつづけてきました.業務調査などもいろんな施設で行われてきておりましたが,いざ実行となると正直なところその進捗状況ははかばかしいものではなかった.その理由についてはこれから出てくると思いますので,ひとまずおいておくとして,看護婦不足が社会問題化してきたことから,「看護業務のスリム化」に絶好の追い風が吹きはじめました.つまり,これまでしたくてもできなかったことが,逆に待った無しの課題になってきた.そこで本号のような特集を組んだわけですが,一部には「看護業務をスリム化するのはいいけれど,それで本当に看護は充実するのか」という疑問の声もあるようです.
 西垣先生は『看護』の10月号(第43巻11号,日本看護協会出版会発行)の「手放したい業務」という特集の中で,そのことについて述べておられます.西垣先生の問題提起を端緒にこのお話し合いを進めていただきたいと思います.あの論文(「手放したい業務」の考え方—まず本来の看護業務の充実から)を書かれた意図はどの辺にあったのでしょうか.

グラフ

歴史の重みと先見性が織りなす施設づくり—社会福祉法人白十字会鹿島白十字施設群

ページ範囲:P.289 - P.294

 社会福祉法人白十字会(福士逸壽理事長,本部・東京)がわが国の保健・医療・福祉の領域で果たしてさた先駆的役割について,ここで多くを語る必要はあるまい.法人の出発は明治44(1910)年.林止(とどむ)医師ら18人のクリスチャン医師が,当時猛威を振るっていた「結核」の撲滅を目的として幅広い活動を始め,その後80余年,文字通り,「奉仕の精神に貫かれた伝統」を今日まで積み重ねてさたのである.
 長期にわたる活動を支えたのが,「援護を必要とする者にはやさしいいたわりを,更正を必要とする者には支えを,その独立心を損なうことなく,正常な社会人として生活でさるように援助する」という基本理念であり,その理念を実現するために,診療活動に止まらない多彩な事業を展開していった.そんな歴史の重みの上に今日あるのが,白十字総合病院を中心とする茨城県の鹿島白十字施設群(総合病院,保育園,特別養護老人ホーム,看護専門学校,成人病検診センター,老人保健施設)であり,東京白十字病院を中心とした施設群である.

頼り甲斐のある人 (財)救急振興財団常務理事・救急救命中央研修所長 七野護氏

著者: 谷修一

ページ範囲:P.296 - P.296

 七野さんとは昭和46年以来の付さ合いである.当時,七野さんは大阪空港検疫所の支所長から厚生省の防疫課に異動されてきた.七野さんは容貌魁偉の大男ではあるが,人柄は温厚で,部下の面倒見もよく,頼り甲斐のある上司であった.その頃社会問題になっていた種痘や三種混合ワクチンの副作用問題について,その対策や事後の処理に追われる毎日であったが,お互い若かったその当時のことは,顔を合わせると今でも時々話題になる.
 救急振興財団と救急救命中央研修所は,救急救命士法に基づき全国の救急隊員を対象として教育訓練を行い,救急救命士の養成を行うものであり,医療界はもとより,自治体関係者からも救急医療体制の一層の充実のために,一日も早い養成が期待されている.

主張

病院医療の診療報酬を考える

著者:

ページ範囲:P.297 - P.297

 診療報酬体系の見直し論議が進行している.既に多くの論点が出されているが,改めて病院に対する医療費の支払について,しっかりとした考え方に基づいた対応が取られる必要があると考える.現行の診療報酬の原点は,医師の行う診療行為に対する社会的な対価として設定されたものであり,基本的には医師の専門的技術料の体系と考えられる.現実には薬価差などの物の流れに伴う収益があり,また検査やX線,調剤,理学療法等,関連の職種に対する対価と見倣し得る部分もあり,現行の診療報酬体系の位置付けと解釈は必ずしも明快にはできない.
 病院の中心的機能である入院医療については,入院時基本診療料として,室料,寝具,給食料,看護料,入院時医学管理料等が設定されているが,例えば現在深刻な議論の対象になっている看護料は,これだけで入院看護業務の原価を充足するものではなく,他の十数項目の診療行為の報酬に看護の対価が含まれているとされる.事実,厳しい条件下で看護婦を確保し,より高い基準を取ったとしても報われず,むしろ基準を取らないほうが経営を利するとも言われる.このような実態は,現在の体系においては医師の診療行為の1つに入院医療というものがあり,その実施のために補填されるべき報酬として前記の各項目が設定されていると見られなくもない.

特別記事

北海道医師会における看護職員需給調査(中間報告)から

著者: 北海道医師会看護職員需給調査専門委員会

ページ範囲:P.343 - P.345

はじめに
 北海道医師会会員が所属する全医療機関(大学病院,公的病院,私的病院,有床診療所,無床診療所)を対象とした本調査の中間報告を元にその骨子を報告する.

インタビュー

日本病院管理学会初代理事長 川北祐幸氏に聞く

著者:

ページ範囲:P.346 - P.348

 日本病院管理学会は「病院管理の純粋に学問的な発展」を目的として昭和38年(1963年)に設立され,昭和55年(1980年)2月には76番目の日本医学会分科会学会として認められた.現在,本学会には医師や看護婦など医療専門職をはじめ経済,建築など専門領域を越えた研究者や実務家などが参加しており,学際的学会としてその特徴がある.現在の会員は約800名.学会誌『病院管理』を年4回発行,毎月学会月例会を開催している.先に学会会則を改正,本年1月より理事長制が敷かれたが,これは学会の発展へのワンステップといえよう.そこで,初代理事長に就任された川北祐幸氏(順天堂大学病院管理学客員教援)に学会の今後の方向などをお伺いした.

建築と設備・72

横浜市立市民病院

著者: 栗木森

ページ範囲:P.349 - P.354

再整備前の姿と計画実施までの経過
 横浜市立市民病院は200床の病院として芦原建築設計研究所が設計を担当し,昭和35年10月に1部42床4科で開院,39年,192床11科の総合病院と救急指定病院の認可を受けた.
 しかし,急激な人口増加と医療需要の増大に対応するため,40年に早くも200床の増床と外来診療棟を約2倍にする計画に基づき大規模拡張工事に着手し,45年,399床13科の病院に成長した.その後アイソトープ棟増築(45年),身障者センター(41年),がん検診センター(55年)等,施設の拡充や,開連施設の増築が続き,当研究所は20年間に9次にあたって設計,監理を続けてきた.

事例 医療施設間連携

プライマリ・ケアの質の向上を支える—宗像医師会病院における病診連携

著者: 草場公宏

ページ範囲:P.355 - P.360

はじめに
 私どもがかつて経験したことの無い高齢化社会を迎えた今日,わが国の医療事情がいろいろな面で大きな転換期に立たされていることに異論は無いであろうが,現実にどう対応すべきかとなると,対象があまりにも多岐にわたるため具体的なコンセンサスが得にくい面がある.このような情勢の中で,歴史的にわが国医療の基本的な部分を担ってきた日本医師会が今後も牽引車としての役割を果たさなければならないことは当然であり,これからの地域医療体系を構築していく上で地域医師会に求められる責任も,また大なるものがあろう.
 日医では,現在,医師生涯教育の方策について検討が進められており,その柱の1つに病診連携が挙げられているが成果は必ずしも十分とはいえない.今回は医師会病院を設立した地域医師会が,医師会活動の大きな柱の1つとして医師会病院を中心に据えながら,会員間のネットワークを含めての病診連携,あるいは病病連携を軸に地域における包括的保健医療供給体系を構築していく上でどのような方向の模索が可能であるか,また,そこでの問題点は何かといった点を中心に私どものささやかな試みを紹介し,ご批判を仰ぎたい.従って本稿ではいわゆる「病診連携」の意味を単に医師生涯教育の見地からのみ取り上げたものでないことを予めご了承いただきたい.

看護管理用語解説

看護組織

著者: 草刈淳子

ページ範囲:P.361 - P.361

 看護を提供するための組織が日本で最初に成立したのは,日本赤十字病院(明治19年創立,同20年改称)においてである.その病院規則(明治29年制定)の第9条に,各部局の設置が明記され,治療部の職員として,医員や調剤員とならんで,「看護婦取締—副看護婦取締—看護婦長—看護婦」の職員が示されている.
 戦後,GHQの強力な指導の下で看護婦による看護管理の思想が導入され,昭和24年の「病院勤務看護婦業務指針」では,「総看護婦長—副総看護婦長—看護婦長—主任看護婦—看護婦」という組織形態が初めて示された.

厚生行政展望

診療報酬点数改定(総論)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.362 - P.363

 4月1日より,診療報酬点数改定が行われた.昨年末の座談会「コーヒーブレイク」(第51巻13号pp.1086-1091参照)の時点では,バブル経済崩壊のため国家税収がかなり落込んでいるので,一般会計からの点数改定用財源の確保はかなり難しいと考えられていた.従来の点数改定は薬価の引下げを財源にしていたが,看護婦確保対策が叫ばれている中で十分な対策を行うためには財源をどのように確保するかが焦点であった.今回は健康保険法の改正により国庫補助率の引下げで1,300億円を確保するという大蔵省も医師会も喜ぶという大変奇抜な方法により厚生省は財源を確保した.
 今回の改定は昭和56年以来の大幅改定で看護料の大幅アップと人員配置基準を設けた指導の強化,診察料・指導料のアップと慢性疾患指導管理料の廃止,総合病院における初診・再診の各科算定の見直し,手術料の大幅アップと5,000円以下の特定治療材料の包括化,処置料のアップとガーゼなどの衛生材料の包括化など,今まで懸案となっていたことを点数アップと抱き合せで解決していく姿勢が色濃くうかがわれる改定になった.

精神科医療 総合病院の窓から・13

業深きもの—精神科医の仕事

著者: 広田伊蘇夫

ページ範囲:P.364 - P.365

ある賀状によせて
 この新年,「精神科医という仕事はなんと業の深きことか,としみじみ考える.つらいことだなァと.自信の不足ではない」と記された賀状をいただいた.すでに喜寿に近く,精神科医として50年,この間,精神分裂病の双生児研究や,精神医学の著名な古典の共訳などで活躍され,今なお週2日,ひとりひとりの患者を丹念に診察しつづけておられる,わが心の師からの便りである.詩人,茨木のり子さんにならえば,「ひとのこころの湖水,その深浅に,立ちどまり耳を澄ます,ひとり耳そばだてる」こと50年,「頼りない生牡蠣の様な感受性」と「震える弱いアンテナ」をもって,病む者の声を受けとめつづけた果てに,精神科医という仕事の業の深さ,つらさを賀状に托されたものと私には映る.気負いとてなく,ひたすらに重い便りである.
 そもそもの話,精神科医としてのありようを,岡倉天心の『茶の本』のなかの一章にこと寄せて教えていただいたのはこの師だった.その要旨を記してみる.

病院経営Q&A・4

院内コミュニケーション

著者: 白髪昌世

ページ範囲:P.366 - P.367

Q 「当院は組織が固定化しており,古い体質の弊害が出てきているが,人間関係面の障害があって改革が進まない」「当院は開設以来40余年のあいだ人事異動も少なく,各セクションも個人的レベルで専門家となることによって組織が固定化し,時代・社会環境の変化に順応できず,組織をいかした業務活動および推進ができない」といった悩みや問題に関する質問が増えている.病院組織の中でコミュニケーションはどのように行えばよいのであろうか.

統計のページ

病院看護職による保健相談・指導(4)—患者からの評価

著者: 菊池令子

ページ範囲:P.368 - P.369

 4月からの診療報酬改定では,「在宅療養指導料」100点が新設された.これは「在宅療養指導管理を受けている外来通院患者に対し,一定の要件の下で,保健婦または看護婦が個別に療養等の指導を行った場合に」算定されるものである(施設承認制).
 看護職の指導料の点数化に先立ち日本看護協会では,「療養相談に関するアンケート」調査を実施した(1990年6月〜8月).看護職による相談・指導を患者がどのように評価しているかを明らかにすることが目的である.看護職による療養相談・指導を受けた通院患者188名(9病院)に対し,本会調査研究室職員が面接調査した.調査協力を得た9病院は,この3回報告してきた「病院看護職による保健相談に関する調査」に回答した東京近郊の病院である.

看護管理の目・4

看護管理者に求められる経済感覚

著者: 川嶋みどり

ページ範囲:P.370 - P.371

マクロな視点からの問題提起を
 「あなたの病院の1ベッド当りの収入は1か月どのくらい?」「外来患者1人1日当りの点数は?」などと質問しても,答えて下さる看護管理者は稀である.それは,企業秘密だから話せないというのではなく,本当に御存じない方が多いのである.また,「レセプトって何ですか?そんなの見たことがないわ」といわれる婦長さんもおられた.ふつうの看護婦が,基本看護料や基準看護料について,全く無関心であっても不思議ではない.看護婦の世界では古くから「金銭のことを口に出すのは恥」とされてきた歴史もある.
 しかし,看護問題が大きくクローズアップされてきている今,精神主義的なあるべき論とは別れを告げ,経済的基盤に立脚した問題解決方法を世に問うことは急務であると思う.看護職員確保のための立法措置も現実のものとなってきた.もちろん法律ですべてが解決するとは思わない.だが少なくとも,労働条件の改善や給与の引き上げを,各施設の努力や労使間の交渉に待つのではなく,安定した労働条件を長期的に築いていくための法的な裏づけという意味で評価できるのではないだろうか.期待して見守りたいと思う.

病院管理フォーラム

[薬剤]薬剤師の病棟活動(3)/[栄養]診療報酬改定で栄養業務は新時代に/[臨床検査]臨床検査技師と“センセイ”/[環境整備]ベッドセンター

著者: 近藤元三

ページ範囲:P.372 - P.375

 病棟活動について2回にわたり解説してきた.要約すれば,病院薬剤師の業務の中心が,調剤から病棟活動に変化しているということである.そしてこの傾向は,昭和63年4月の診療報酬改定で誕生した施設基準業務(200点業務)により,さらに強くなっている.
 今回は,病棟活動の現状の問題点と,その未来について述べる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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