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雑誌目次

雑誌文献

病院51巻5号

1992年05月発行

雑誌目次

特集 こんな勤務医はいらない

[座談会]こんな勤務医が欲しい—病院が期待する勤務医とは

著者: 伊賀六一 ,   桑名昭治 ,   坪川孝志 ,   竹内實

ページ範囲:P.394 - P.401

 竹内 本日は,お忙しいなかをご足労いただき有り難うございました.平成2年10月現在の日本の医師総数は約25万人,そのうち病院に勤務する医師が半分以上の15万人弱ということです.しかし,医学生の勤務医志向は一段と高まっているということですから,勤務医の比率はますます高まるはずです.そこで今日の座談会では,公的病院のお立場から伊賀先生,民間病院のお立場から桑名先生,そして送り出す大学側の代表として坪川先生のご出席をいただいて,勤務医を実際に使っている病院の立場から,勤務医がどうあってほしいか,また送り出す側から,病院に対する率直な注文をつけていただければと思います.
 病院の経営にとって,勤務医がしっかりしているか否かは,非常に大きなインパクトを与えると思うのですけれども,伊賀先生,まずその辺のところからお話しいただきましょうか.

勤務医と病院管理者のあいだ

著者: 柴田淳一 ,   本宿尚 ,   廣田耕三

ページ範囲:P.402 - P.408

病院管理者のみた勤務医像
 平成元年12月31日現在のわが国の届出医師は20万人を超え,その後も1年に実質7,000人余が新たに診療業務に参入している.
 これら医療施設従事者のうち約32%が病院や診療所の開設者であり,医育機関以外の病院勤務者が約40%,診療所勤務者が約6%,医育機関附属病院勤務者は約18%で,総数の3分の2が勤務医である.30代,40代の若い医師は勤務医志向が強く,さらに勤務医の比率が増加している.

勤務医として勤めたくなる病院とは

著者: 会田敏光 ,   佐藤信二 ,   牧野浩充 ,   矢嶋聰 ,   池袋信義

ページ範囲:P.409 - P.414

研修医として勤務したい病院
 われわれの教室はチーフレジデント制をとっており,人により若干異なるが,約6年間で研修を終了し,研修最終年は,チーフレジデントとして大学病院の病棟のすべてのマネージメントを行い,若い研修医の指導も行う.それが終了して専門医試験を受けるシステムとなっている.その6年間の間に約3〜4の研修病院をまわることになる.
 研修病院の選択は,自分の希望を研修医師会に提出し,話し合いで決定される.医局長は,研修病院と研修医師会の仲介役という立場にあり,それぞれの希望,あるいは不満を聞くことになる.研修医師会では,やはり,研修病院の人気,不人気があり,人気のある病院には希望者が集まり,逆に不人気の病院には希望者がいないため,医局長が調整に乗り出すことになる.ここでは,そのような研修システムをとる脳神経外科であるという少し変わった立場からということを,あらかじめ断っておいて,私が見た「研修医が勤務したい病院」,そして研修医から研修病院に希望することについて述べてみたい.

勤務医の条件

著者: 山根至二

ページ範囲:P.415 - P.417

 およそ医師になったものの動機として考えられるものは,大別して2つに別れるのではあるまいか.その1は収入ないし社会的地位の問題であり,他は名医になりたい群であろう.米国では,医師になった動機と聞けば,“it's money.”という返事が大半という.名医になりたいという表現は適切でないかもしれないが,十分な設備があり,難しい疾患が集まる大病院に勤務を志望される医師の心中は,努力し勉強して自分の腕を磨きたいということではあるまいか.人道的・倫理的見地から僻地を志願される医師たちもあるが,この人たちも良医を志しているといえよう.
 勤務医を求める病院側としては,当然,上記のことを前提としているわけである.病院には病院としての理念があり,それに添って努力していただける医師を募集せざるを得ない.医師過剰時代と数字のうえからは騒がれても,全国的に見れば病院側が自由に医師を選択できる状態にあるとは言えないが,病院管理者としての内心に差はあるまい.

わが国における医師の就業形態の推移と勤務医の将来

著者: 星野桂子

ページ範囲:P.418 - P.424

はじめに
 わが国で免許を取得した医師が,どのような施設でどのような仕事をし,職業生活を全うするかについての資料はほとんど無い.最近は勤務医志向が強くなっているとか,患者だけでなく医師にも病院志向,それも大きな病院を好む傾向があるなど,それとなく囁かれたりする.しかし,若い医師が実際どのようなところで何をしたいのか,実現可能性についてどう考えているのかは必ずしも明らかではない.
 医療は医師が興味を持っていることや挑戦してみたいことを実現するためだけの場というわけではなく,社会的経済的文化的環境のなかで形づくられる活動の場である.患者との関係,さらには患者を取り巻く家族や社会との関係で,医師や医療従事者の役割が決まってくる.戦後の混乱状態から今日まで,経済的社会的環境はある面で大きく変わってきたように思われる.疾病と急性・慢性の感染症が減少し,高齢者が増え,医療施設を利用する高齢者も増えた.かつては家族の役割であった加齢に伴う各種の障害や異常・変調を手当し,日常生活上の介護をすることも広い意味での医療に対する期待になってきている.

医学生からみた医師の将来イメージ—医学生の卒後進路調査から

著者: 寺崎仁

ページ範囲:P.425 - P.430

はじめに
 今月号の特集テーマは,「こんな勤務医はいらない」と伺っておりますが,随分と刺激的なタイトルをお選びになったものだと感心しております.いよいよ医師も選別される時代に入ったのかと,ある種の感慨を覚えるのは私ひとりだけではありますまい.と言いますのも,医師数の過剰時代の到来が言われ始めてから,もう既に久しい年月が経過しており,その間私どもは学生に「患者に選ばれる医師」になることの大切さを言い続けて来ました.
 しかし,今に到るまで医師を取り巻く環境は,まだまだ医師の側の売り手市場で,医療を受ける患者のニーズはさておき,「寄らば大樹のかげ」と言いますか,「大学の医局に居れば何とかなる」式の考えが簡単には改まる風潮になく,狼少年のたとえにあるように,「狼が来る」と学生や友人に言い続けた1人として,「ほらやっぱり来た!」と言えるような時代になったものだと思えるからです.

グラフ

ホスピタリティ豊かな環境で良質の医療の提供を目指す—医療法人松波総合病院

ページ範囲:P.385 - P.390

 「私どもは民間病院の生き残る道として,地域の中核病院として,比較的大きい病院で高度の医療を総合的に住民に提供していく方向を選択しました.そこで住民のニーズに応えるために最新の医療機器を整備しなければならないのですが,旧病院の敷地は狭くて苦慮していました.そこにタイミングよく,現在地約1万平米を購入できることになり,新築移転したのです.」と松波院長は本院新設までの経緯を語る.
 松波総合病院は岐阜市の南郊外,人口2万2千人の笠松町にある.

第30回日本病院管理学会会長 琉球大学地域医療研究センター 鈴木信教授

著者: 岡本健

ページ範囲:P.392 - P.392

 小柄で童顔の,笑顔がまたとくに印象的な慶應ボーイが,国立東京第二病院にインターンとして登場したのは昭和33年,今からもう33年も前の事.前度は母校の内科学教室に入局するが,翌年には再び国立東京第二病院の内科に勤務することとなる.
 真面目で努力家の彼は忙しい臨床の傍ら病院で研究を続け,昭和40年には学位を取得する.昭和45年にはオーストラリア政府の招聘により王立メルボルン病院心臓科に留学,日本人として当時オーストラリアでの彼の活躍は,原地の新聞に大きく報道された.昭和51年琉球大学に最後の新設医科大学が設立されることとなり,その準備のため琉球大学保健学部の助教授として沖縄に出発する.昭和56年琉球大学医学部が正式に認められるや最初地域医療部の助教授として,さらに2年後には教授として,昭和63年よりは地域医療研究センター長となり地域医療部の部長を兼任する.

主張

社会保険診療報酬改定の流れを読もう

著者:

ページ範囲:P.393 - P.393

 社会保険診療報酬の改定が行われた.今回の改定は,良質な医療の効率的な供給という考え方を基本に,医療機関の機能を評価して行われたという.確かに最近10年間は,薬価基準の引き下げを原資とした小幅な改定が多かった.それに比して,今回の改定の流れは全く変わったことを認識しなければならない.すなわち,従来は出来高評価のみで診療内容による差はなかったものが,今回の改定では,常勤医師数により入院医学管理料に差をつけたり,看護や給食の質によって点数加算をしている.つまり,同じ診療行為でも,内容により異なる評価をすることになったのである.外来患者数を入院点数に関与させたのも初めてのことである.その一方で,定数超過入院対策の強化,標準欠落病院の率の引き上げ,特例許可外老人病院の廃止等の措置は,入院医療の質のボトムアップを狙ったものであろう.
 この改定が医業収益の増加に結びつく医療機関も多いだろうが,慢性の長期入院患者を抱えた上,人手をなかなか確保できない病院は据え置きもしくは減収になってしまうことも事実である.少なからぬ民間病院がこの範疇に入ることも間違いない.しかし,新診療報酬体系が動き始めた現在,病院は,所与の条件の下で経営を確立していくしかない.行政当局には,地域の実態を踏まえた,民間病院が新しい体制に軟着陸できるような環境作りを求めたい.

特別寄稿

病院組織と人間関係—組織において互いに活かされあう人と人の関係とは

著者: 佐藤俊一

ページ範囲:P.431 - P.435

はじめに
 地域のニーズに対応するために,将来の病院像を描くために,各病院において大いなる模索がなされているのが昨今の現状である.その際に,大きな影響を与えているのが,病院の現場でメンバーがどのように仕事に対して取り組んでいるか,勤労意欲はどうなのかといった組織風土に基づくことである.特に,各部署において,管理者-部下との人間関係,ベテラン-中間層-新人などの人間関係がどのようになっているかで,病院の方向づけをしていく時に,その対応は大きく変わってこよう.
 例えば,病院のトップが今回の診療報酬の改定に対応するために,適温・適時給食の実施を決めたとする.栄養科の方も,「もちろん,そうした対応が必要だ」と考えていた.両者の考えが一致していれば,計画を立てて,実行に移せば良いだけなのだが,実際には,事はそう簡単に運ばないのが現実である.院長や事務長と栄養科長が,何のために適温・適時給食を行おうとするのか相互に確認する必要がある.単に,診療報酬のためだけに「明日からやれ」といったものでは,変更への現場の動機づけは弱いものになってしまう.そこでは,自院の患者給食に対する考えの共有が必要である.また,具体的に適時の給食に移行していくために,看護部の協力が必要不可欠となる.そのコーディネートは誰がするのか等の問題も出てくる.

精神科医療 総合病院の窓から・14

精神科医療における“感性の覚醒”

著者: 広田伊蘇失

ページ範囲:P.436 - P.437

 今回をもって,連載「精神科医療・総合病院の窓から」を閉じさせていただく.最後にまとめとして幾つかの間題に触れてみたい.最終回の次号では,金子仁郎先生(阪大名誉教授),飛島井望先生(都立墨東病院)のご参加を得て,「総合病院と精神科医療」をめぐる今日的課題について話し合うことにする.

看護管理の目・5

看護管理と主婦のセンス

著者: 川嶋みどり

ページ範囲:P.438 - P.439

 「病院の病室のあのムーッとした淀んだ空気,一種独特の匂い,何とかならないのでしょうかねえ」
 1 患者より

建築と設備・73

オーストラリア・ニュージーランドの病院

著者: 小滝一正

ページ範囲:P.441 - P.446

はじめに
 日本病院建築協会恒例の海外病院建築視察団と一緒に,昨年11月に14日間にわたってオーストラリア,ニュージーランドを訪問する機会を得た.両国については観光情報が多い割合には,病院建築に関する情報が少なかった.オーストラリアは,臓器移植技術が日本の新聞に報道されるくらいに医療先進国であり,ニュージーランドは北欧に勝る福祉国家として知られており,ともに南半球の先進国であることはいうまでもない.そこで,両国の病院建築やその背景に学ぼうと出かけたわけである.
 視察は,狭い意味での病院に限らず,様々な医療関連施設を見ることを旨とした.見学した施設のうちから興味あるものについて報告したい.

研究と報告

中国における医療従事者の行動文化に関する基本的特徴—その基礎的研究

著者: 李矢禾 ,   張宝庫

ページ範囲:P.447 - P.452

はじめに
 行動文化は人の行動によって形成される価値観,信念,規則と習慣などを指していうが,歴史と自然,社会的環境条件ならびに職業,教育等の因子の差,また異なる民族,異なる国家,ひいては異なる職業などによっても特有の行動文化が形成されている.
 したがって,比較的効率の良い管理効果を得るためには,個々の行動文化に応じた特異的な管理方式の導入が必要である.そしてこのことは,職業上の管理実践において,すでに多くの国家で証明されている.このため行動管理を目的として,日増しに行動文化の研究が重視されるようになってきた.

事例 医療施設間連携

5周年を迎えた市立長浜病院の開放型病棟—病診連携のひとつの試み

著者: 秋山泰高 ,   上松貞彦

ページ範囲:P.453 - P.457

はじめに
 市立長浜病院(以下,当院)の開放型病棟の運営は,1987(昭和62)年2月,県の正式認可が下りて開始され,早くも満5年が過ぎた.5周年記念行事中に本誌から開放病棟についての原稿依頼があったので,開設までの経過および運営5年間の反省と将来への展望を述べる。

厚生行政展望

診療報酬点数改定—各論・総合病院について

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.458 - P.459

はじめに
 今回の診療報酬点数表の改定で病院に影響が出た項目として,「総合病院」の初診科・再診料算定ルールの変更がある.「総合病院」が各科ごとに算定できた初診料・再診料が算定できなくなったのである.このことに対して日本病院会や全日本病院協会は一斉に反発している.今回の措置は,「総合病院」の現場を知らないもののやり方であると病院関係団体は批判しているようであるが,果たしてそうであろうか.
 厚生省は現場を知らないからこのようなことをしたと批判するのは簡単である.しかし,それだけでは診療報酬点数改定の本質をとらえることはできないので,今回は「総合病院」における初診料・再診料の各科ごとの算定廃止を分析してみる.

病院経営Q&A・5

動機づけ

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.460 - P.461

Q 「病院の経営状況が悪化しているのに,やる気のない職員が多い」「診療技術は優秀でも経営のことを考えてくれないスタッフが多いので,病院経営についての動機づけをしたい」という相談を受けることが少なくない.スタッフに「やる気を起こさせる=動機づける」には,どのような方法があるのであろうか.

病院管理フォーラム

[臨床検査]病院組織図の見直し(その1)/[薬剤]特殊製剤—消毒薬の傾向/[人事・労務]昇任資格試験で管理・監督者任用へ

著者: 高橋正雄

ページ範囲:P.462 - P.465

はじめに
 どこの病院でも組織規定,組織細則,あるいはこれに準じたものがある.この規定や細則は組織の細目や業務の分掌について必要な事項を定めているもので,病院組織もこれによって定められている.
 この病院組織図なるものは,病院が医療を遂行していく目的達成のために,個々の職員や諸々の専門職能集団に,専門分化された役割を明確にし,その業務を統合・調整する仕組みを一目瞭然に示したものである.分かりやすくいえば,病院検査室がどこと繋がり,誰と結ばれ,どのような経路を通って指揮・命令が伝達されるか,あるいは,その権限・責任の所在や軽重にまで係わってくる.これによって,その個人や集団のスタンスやグレードまで,いうなれば,その病院における臨床検査技師の地位や身分まで,およその判断材料が得られるものである.

MSWの相談窓口から

施設まわり

著者: 高橋紀夫

ページ範囲:P.466 - P.466

 毎年,12月30日か31日に,町内の福祉施設をひと回りすることにしている.この習慣はもう20年以上続いている.自分の手を経て,老人ホームや救護施設,精神薄弱者(児)施設に入所している人が大勢いるからである.こうした人達のほとんどは,心ならずも施設の中で正月を迎えなければならないのだ.せめて1年間の無沙汰を詫び,健康を喜び合い,来年に夢を繋ぎたいからである.そうすることが自分の責務だと思っている.
 昨年の暮れも30日に恒例の施設まわりを行った.

病院管理用語解説

指数と変化率/室料差額

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.467 - P.467

 患者数や医業収益の年あるいは月別の変化をみるのに,実数では分かりにくいので,指数とか変化率で表す.
 指数は特定の年を基準にとり,その年を100としたときの各年の比率を求めたものである.すなわち,最近5年間の一般病床数について指数をつくると次のようになる.

病院アメニティの改善・5

アメニティ改善への取り組み—青森市民病院

著者: 阿部廣介

ページ範囲:P.468 - P.469

 青森市民病院は,一般病床538床,18診療科で昭和62年新築落成した.新築に当たり,入院患者の生活環境の改善には種々工夫を重ね,患者用図書室,患者用浴室,動線短縮・騒音防止型病棟,患者用食堂,面会室,喫煙コーナー,下着類乾燥室などを設置した.そのうち主な2〜3について述べる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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