主張
社会保険診療報酬改定の流れを読もう
著者:
所属機関:
ページ範囲:P.393 - P.393
文献購入ページに移動
社会保険診療報酬の改定が行われた.今回の改定は,良質な医療の効率的な供給という考え方を基本に,医療機関の機能を評価して行われたという.確かに最近10年間は,薬価基準の引き下げを原資とした小幅な改定が多かった.それに比して,今回の改定の流れは全く変わったことを認識しなければならない.すなわち,従来は出来高評価のみで診療内容による差はなかったものが,今回の改定では,常勤医師数により入院医学管理料に差をつけたり,看護や給食の質によって点数加算をしている.つまり,同じ診療行為でも,内容により異なる評価をすることになったのである.外来患者数を入院点数に関与させたのも初めてのことである.その一方で,定数超過入院対策の強化,標準欠落病院の率の引き上げ,特例許可外老人病院の廃止等の措置は,入院医療の質のボトムアップを狙ったものであろう.
この改定が医業収益の増加に結びつく医療機関も多いだろうが,慢性の長期入院患者を抱えた上,人手をなかなか確保できない病院は据え置きもしくは減収になってしまうことも事実である.少なからぬ民間病院がこの範疇に入ることも間違いない.しかし,新診療報酬体系が動き始めた現在,病院は,所与の条件の下で経営を確立していくしかない.行政当局には,地域の実態を踏まえた,民間病院が新しい体制に軟着陸できるような環境作りを求めたい.