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雑誌目次

雑誌文献

病院51巻6号

1992年06月発行

雑誌目次

特集 保健・医療・福祉複合体

住民の自発性を重視した「涌谷町町民医療福祉センター」の具体的取り組みと課題

著者: 前沢政次

ページ範囲:P.488 - P.491

はじめに
 「保健・医療・福祉の連携」,さらには,「保健・医療・福祉の統合」は最近耳にする新しい言葉である.従来よりこれら三部門はそれぞれ独立して営まれてきた.なぜ今これらの連携が叫ばれているのだろうか.
 我々の施設は「保健・医療・福祉の連携と統合」を課題にして取り組んできた.その中で特に住民の主体性を重視してきた.実際の取り組みを踏まえて,この問題に対する我々の考えを述べたい.

ヘルスケア・コミュニティづくりを目指して—「長岡医療と福祉の里」の理念と実践

著者: 田宮崇

ページ範囲:P.492 - P.496

田宮病院から「長岡医療と福祉の里」へ
 所在地の新潟県長岡市は人口18万余,新潟市に次いで県内二番目,上越新幹線で東京より約1時間半で到着する.新幹線に加えて,JR上越線,信越線の両線が通り,関越,北越両高速道の分岐点であって,交通,物流の要地である.また,夏の花火と,近郊では良寛の遺跡で有名である.
 信濃川をはさんで,東側は旧くからの市街地であり,西側は以前,田園地帯であったが,近年急激に人口が集中して,新市街を形成しつつあり,「長岡医療と福祉の里」の所在地もその大部分が西側に展開している.

上牧温泉における保健・医療・福祉多角化構想の実践と今後の課題

著者: 北爪銀象

ページ範囲:P.497 - P.500

高齢福祉社会にふさわしい国民保養温泉づくり
 「上牧温泉健康の里づくり」構想は,昭和41年(1966年),入内島金一(後の医療法人高徳会理事長)が上牧温泉所在のホテル上牧荘とその周辺地区を入手し,ホテル経営を始めたことに端を発する.
 従来の温泉利用は観光とのかかわりが中心で,その時限りの客の対応に終わっているのが通例である.しかし,このようなありふれた形の利用をあきたらなく思っていた入内島は,奥利根の優れた自然環境と温泉資源を活用して地域ぐるみの再開発ができないかと考え,高齢福祉社会にふさわしい国民保養温泉づくりをもくろみたのである.

健康増進施設「南大阪ファンクス」に取り組んで

著者: 内藤景岳

ページ範囲:P.501 - P.504

はじめに
 厚生省が昭和53年に「第1次国民健康づくり」対策を打ち出した前後にシティースポーツ施設が乱立し,この施設自体が昭和50年代前半の低迷期からやっと抜け出した昭和54年頃のヨガブームもいつの間にか消滅,若い女性の人気を捕えたジャズダンスも一時的なものに終わり,次に現れた「エアロビクスエクササイズ」と呼ばれる有酸素運動が普及した.
 これが全国的なブームの先鞭をつけ,当初は見向きもしなかった行政は厚生省管轄として,昭和62年「アクティブ'80ヘルフプラン」として第2次国民健康づくり対策を打ち出した.

医師会として老人保健施設に取り組んで

著者: 渋谷一誠 ,   丹野三男 ,   益田勝児 ,   堀田康哉

ページ範囲:P.505 - P.508

はじめに
 平成4年1月1日発表の厚生省統計情報部の人口動態統計を見ると,高齢化問題と密接に絡む合計特殊出生率は1.53と,戦後最低を記録した.世界最低の乳児死亡率が維持され,高齢化に伴う老人死亡率が増加傾向にあるものの,人口の高齢化は加速度的に進行しており,世代間の扶養形態が著しく変化しつつあることと相まって,21世紀における医療を含めた社会保障システムには新たな変革が求められている.
 特に核家族化並びに就業主婦の増加によるライフスタイルの変化は,家庭内介護力を低下させ,要扶養または要介護高齢者の処遇が社会問題化する大きな要因となっている.

福祉の立場から考える保健・医療・福祉の連携

著者: 山本茂夫

ページ範囲:P.509 - P.512

福祉サービスの立ち遅れが招いた入院介護の偏重
2020年には高齢者の病床占有率が97%に!?
 昨年12月28日,厚生省から平成2年の患者調査の結果が公表された.それによると,調査日に全国の医療機関に入院していた患者は158万1,000人と推計され,そのうち65歳以上の高齢者は69万4,000人であり,入院患者全体に占める割合は46%に達し,精神病院や診療所を除いた一般病院では52%と半数を超えている.
 これは前回調査の3.5%アップであり,過去20年間で若者が半減した一方,高齢者は4倍以上に急増した結果もたらされたものである.

形よりも実質を重んじたい保健・医療・福祉の連携—保健所の立場から

著者: 櫃本真一

ページ範囲:P.513 - P.516

はじめに
 近年,脳卒中などによる寝たきりや痴呆の増加,それに伴う医療費の急増など,高齢化社会が深刻視されることとなり,疾病の1次2次予防は無論のこと,3次予防や在宅医療の推進に,国をあげて取り組まざるをえない状況を迎えた.差し迫った問題であるがゆえ仕方がないのかも知れないが,本来の福祉から考えると,寝たきりや痴呆対策に,少々片寄っており,行き過ぎの感もある.とは言え,これを契機に,保健・医療・福祉の連携が叫ばれるようになったことは,この現況がもたらした利点と言えよう.今まで各機関それぞれが,自分たちにとって都合の良い運営をしてきたことが,重なりの無駄や漏れを生じる原因になっていたのではないか.そしてそのことが,結果的に住民に犠牲を払わせてはいなかったかを確認する必要がある.
 当然ではあるが,保健・医療・福祉の連携そのものが目的ではなく,住民サービスの充実を通して,住民の心身両面の健康レベルの向上を図ることが目的であり,連携は手段である.住民にとっては,保健・医療・福祉の連携などどうでもよいことであり,連携が自然のうちにとられ,連携という言葉そのものが必要でなくなることを最終的目標に置きたい.

[インタビュー]聖隷福祉事業団にみる保健・医療・福祉複合体の歩み—長谷川力理事長に聞く

著者: 長谷川力 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.517 - P.524

転がり込んできた結核患者
 紀伊國 聖隷福祉事業団の年譜(表1)を拝見しますと,結核患者の収容保護事業が発端となって,現在の大きな聖隷福祉事業団に発展されたわけですが,簡単にこれまでの歩みと,保健・医療・福祉に複合的に取り組んでこられたねらいといったものについて伺わせてください.
 長谷川 私が理事長になって11年過ぎましたが,私は前理事長が切り拓いてきた道の延長線上をそのまま歩いているだけですから,この事業がどのようにしてこれまで発展してきたかについては,前理事長の時代からのことをお話ししなければなりません.

グラフ

病院新時代の幕開けとなるか—新聖路加国際病院が開院

ページ範囲:P.479 - P.484

新病院が投げかけた波紋
 「ところで,新しい聖路加はご覧になりました」—首都圏の病院関係者の間でこんな会話が最近しばしば交わされている.4月25日の開院式の日には4大紙がこぞって取り上げる有り様で,ちょっとした新聖路加国際病院フィーバーの感さえある.1つの病院の開院がこれだけマスコミをにぎわすのは病院界にとってみれば,まさに前代未聞の事態.全室個室,正確にいえばシングルケアユニットの採用をはじめとする,患者中心の設計思想が社会に与えたインパクトがいかに強かったかがうかがえる.1床当たりの建築面積が110m2,感染管理を徹底させた設計・設備と物品管理システム,医療ガスおよび吸引装置を各室と(災害発生時の対応として)共有スペースに設置,照明を間接照明で統一,産科に導入されたLDR(Labor Delivery Recovery)室,完全予約制を基本にした外来部門(予約外の患者のためには独立した当日外来walk-in clinicがある),日帰り手術用に設けられた3室のday surgery room等々と,新病院の特徴をあげれば枚挙に暇がない.
 また,聖加路の開院を待っていたかのように,4月から実施された社会保険診療報酬の改定では,室料差額を全病床数の50%まで認める,予約外来を優遇するなど,アメニティ向上への取り組みを評価する内容が盛り込まれた.そのあまりのタイミングのよさに,聖路加のための改定かと陰口をたたく人もいたくらいだ.

第5代全日本病院協会会長に就任 秀嶋病院院長 秀嶋宏氏

著者: 早川大府

ページ範囲:P.486 - P.486

 秀嶋宏先生は故田蒔孝正先生の急逝の後,平成4年1月23日全日本病院協会理事会にて満場一致で,第5代会長に選出されました.先生は大正15年寅年の生まれ.慈愛に溢れるが一端急あらば千里を走ると言われる虎の如く,周囲への細やかな心遣いと大胆な行動力を併せ持った方です.昭和35年に秀嶋医院を開設(同40年に病院に改組),以来外科系,特に救急医療に邁進され,東京消防庁消防総監感謝状を3回拝受しておられます.また,昭和62年6月には,救急患者治療3万5,000人,人工呼吸例2,500回を達成され,毎目新聞に取り上げられたこともあります.その豊富なご経験から,私ども若輩に「ハイテクよりハイタッチ.手をとって脈をみて,患者と医者が心を通わせなければならない」と常日頃教示されています.
 全日本病院協会においては昭和51年常任理事,平成元年副会長に就かれ,大任を果してこられました.この間,日本の医療のあり方を絶えず追求され,特に民間病院の向上発展に力を尽くされました.これらの功績により,平成3年には藍授褒章を受章されました.

主張

病院と地域とのつながり

著者:

ページ範囲:P.487 - P.487

 富山県に新しくできたオール個室の老人保健施設を見学する機会があった.老人福祉センター,デイサービスセンターを含めて約30億円を投じた町立の施設は,入口のアトリウム,ベッドやトイレ,家具までが特別にデザインされた個室,雨の日の散歩にも使えるゆったりした廊下,車椅子で入浴できるチェアバスなど,せせこましい病院を見慣れた目には驚きの連続であった.病院は治療の場だからとの言い訳はもはや通用しなくなりつつある.
 しかしそれらハード面での先取りにも増して驚かされたのは,人口7,500の町のこの施設に600人ものボランティアが登録していることであった.もちろん実際の活動の詳細はわからないが,いかに町の主体による施設の強みがあるとはいえ,地域による地域のためのサポート体制づくりは決して不可能ではないと感じられた.

建築と設備・74

院内搬送システム

著者: 辻野純徳 ,   小室克夫 ,   三村澄夫 ,   松浦覺

ページ範囲:P.525 - P.531

歴史と現在
 病院が高機能化し,専門化と総合化を目指す中で,合理化,経済性の追求が絶えず行われてきた.カルテなど医療情報の中央化やサービス部門の中央化と統合は急速に進み,それを支える物品の管理と供給のシステム化および搬送の機械化が急務とされてきた.現在SPD (Supply Pro-cessing and Distribution)と呼ばれる方式は,1960年代に米国の病院で数々の合理化を実現してきたGor-den A.Friesenの提唱によるものである.そして1969年には米国のフェアファックス病院でアムスカーと呼ぶ無人搬送車が,'70年にはカナダのイートビコーク総合病院でACT(オーバーヘッドコンベア)など大規模な搬送設備が導入された.また,’72年7月の米国の建築誌にHer-man Miller's Co-Struc Systemが「10年の研究の成果として実用化」と紹介され,それぞれ注目を集めた.
 欧米に遅れること20年,1960年頃からわが国でも気送管やベルトコンベアの導入が始まった.しかし病院全体のシステムとしての積極的導入までにはもう少しの時間が必要で,原素行先生の提唱による中央滅菌材料室の確立が浸透し,サービスの中央化が促進されたことが引き金となった.

実践・病院のマネージメント・13

共通の価値観について

著者: 井手道雄

ページ範囲:P.532 - P.535

 前回(本誌第50巻第10号)はDonabedianの考え方を紹介し,ホスピタル・マーケティングを推進する目的と医療の質の向上を図る目的は共通しており,マーケティングを進めて行く上では,患者のニーズやウォンツに十分配慮しながら,それぞれの病院の力に応じたセグメンテーションを図ることが今後の病院のマネージメントでは重要であることを示した.
 病院だけに限らず,多くの組織,企業の発展過程を振り返ってみると,一定の量的拡大と充足が終わると必ず質的な競争に移っている.そして,質的な向上に失敗し,環境の変化への適切な対応を誤った企業や組織の多くは衰退している.

現代病院長論

新任病院長1年間のチャレンジから—1 餠を絵に描く

著者: 古川俊之

ページ範囲:P.536 - P.541

 国立医療・病院管理研究所では毎年定期的に「管理者研修会」を開いている.病院長,事務長,総婦長,薬局長をそれぞれ受講対象にした4つのコースがあり,本稿は1990年10月1〜5日に行われた院長研修コースの一部「院長論」の講演速記をもとに演者が加筆修正したものである.
 小誌では「現代病院長論」と題して,その講演の中から古川俊之・国立大阪病院院長,瀬戸山元一・鳥取県立中央病院院長(前舞鶴市立舞鶴市民病院院長)による院長論を連載でお届けする.今回はその第1回目として古川俊之院長にご登場いただくが,誌面の関係で3回に分けて掲載することになるので,予めご了承いただきたい.

特別記事

[てい談]総合病院と精神科医療

著者: 金子仁郎 ,   飛鳥井望 ,   広田伊蘇夫

ページ範囲:P.542 - P.549

 小誌では第50巻4号から前号までの14回にわたり,広田伊蘇夫氏による連載「精神科医療—総合病院の窓から」をお届けしてきた.本欄はその総括の意味を込めての鼎談.なぜ,総合病院の中に精神科が必要なのか,連載の趣旨を認識していただければ幸いである.

厚生行政展望

診療報酬点数改定—各論・病院と診療所の連携

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.550 - P.551

 今回の改定では患者の大病院指向是正のために,病院における外来診察料の削減および診療所の外来機能の強化が行われた.言い換えれば病院経営の外来依存をあきらめてもらうための大幅な外来診療点数の削減である.病院および診療所の機能・特質に応じた評価を行うという理由で行われた,甲表病院の初診料・再診療の引き下げ,総合病院における初診料・再診料の各科毎算定の廃止,200床以上の病院における特定疾患療養指導料の算定不可等の施策がその主な内容である.
 一方,診療所は病院との連携強化が唱われ,診察料および指導料の大幅なアップがなされた.診療所の外来機能を強化するために診療情報提供料や開放型病院共同指導料等の点数もあわせてアップされた.しかし,このような方法で病院と診療所の連携強化は果たしてうまくいくのであろうか.今回は診療報酬における病院と診療所の連携に関する項目について問題点を明らかにすると共に,今後の在り方について検討を行う.

病院経営Q&A・6

院内教育

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.552 - P.553

Q 「事務職員の教育体制を整備したいが,何か良い方法はないか」「医師をはじめとする医療従事者の学会出張,研修会の参加等はどうも個別対応的になりがちで,その成果が病院にフィードバックされにくい.なんとかシステム化したいのだが」「人材育成および指導の仕方等について,一賃した院内教育,研修制度を確立したい」という趣旨の質問が多い.院内教育システムについて,どのように考えたらよいのであろうか.

病院アメニティの改善・6

沖縄県・ハートライフ病院—全室個室の新棟を加え,病床利用率も向上

著者: 天願勇

ページ範囲:P.554 - P.555

アメニティに対する考え方
 人生の質(QOL)は,日常生活を営む居住空間の質(衣食住環境の整備)と快適な時間の積であり,活動範囲が制限された患者にとって,安心して療養できる空間と雰囲気は特に重要である.外来・入院にかかわらず,患者が受ける不快は健常人の数倍にも増幅されるもので,ハード・ソフト両面でのホスピタリィはきめ細かく配慮する必要がある.病院建築におけるアメニティは,ゆったりした空間をとり,心身機能の衰えた患者の立場に立ってハード面を整備し,病院での日常生活の質を高めることが最も大切である.
 病室のベッドの高さ,トイレや窓の敷居の高さ,調度品,ドアなど,きめ細かい工夫を必要とする.また,そこで働く人々にとっては,ストレスが少なく,喜々として患者の援助ができ,結果的に患者の自律を促すことができれば理想的である.私たちの病院は一言で言えば,「外来はホテルサービスを目指し,病室は寝室兼書斎」として活用できるようにした.平均的日本人の家庭環境に近付けるより,むしろリゾートホテルの感覚を追求した.患者は家庭に居るよりもくつろいだ気分で,心機一転して療養に専念できるように心がけた.

統計のページ

「1991年病院における訪問看護実態調査」より—[1]訪問看護と診療報酬

著者: 岩下清子

ページ範囲:P.556 - P.558

はじめに
 医療機関が行う訪問看護に,はじめて医療保険が適用されたのが1983年,それから9年が経過した.この間支払対象となる訪問看護の範囲が広がるとともに,1件当たりの単位が漸次高くなり,それに応じて訪問看護を実施する医療機関は年々増えて来た.
 また今年の4月には,医療機関から独立した訪問看護ステーションに対し,老人診療報酬が支払われるしくみがスタートした.

MSWの相談窓口から

今あらためて医療社会事業について

著者: 沼尻香代子

ページ範囲:P.559 - P.559

 MSWと略称されているMedicalSocial Workは,「医療社会事業」と訳されていたが,最近は「医療ソーシャルワーク」として定着してきている.これは誤って用いられている「医療相談」とは異なる社会福祉の一専門分野である.
 わが国で伝統的に使われてきた用語「社会事業」は,1950年,「社会福祉」と改められた.「社会福祉とは,国家扶助を受けている者,身体障害者,児童,その他援護育成を要する者が自立して,その能力を発揮できるよう,必要な生活指導,更生指導,その他援護育成を行うことである」と定義され,1951年には,社会事業法においても社会事業という語が改正され,社会福祉事業となった.更に,「社会福祉」の原語であるSocial Welfareは,目的概念や制度体系として用いられ,「社会事業」の原語のSocial Workは,社会福祉遂行の実践方法を表す語として定着し,現在に至っている.従って,医療社会事業ないし医療ソーシャルワークは,社会福祉の実践技術を表す語として使われている訳である.

病院管理フォーラム

[環境整備]院内感染症と汚染管理/[臨床検査]病院組織図の見直し(その2)/[栄養]必要なNSTの組織化/[薬剤]特殊製剤—保険制度の弊害

著者: 酢屋ユリ子

ページ範囲:P.560 - P.564

 院内感染症の問題は,病院関係者にとっては永遠の課題である.病院内外で繰り返し議論され,様々な検討がなされ,それぞれの病院が対応に腐心しても,残念ながら院内感染症が根絶されることはない.しかし,根絶できないまでも,感染を最小限に抑えるための考え方や技術,また,そのための衛生基準や管理基準を,病院の医療レベルや進歩に対応させて,絶えず見直していくことは,医療機関としての義務である.

看護管理用語解説

基準看護

著者: 高橋美智

ページ範囲:P.565 - P.565

 「基準看護」とは,健康保険法第43条の9第2項の規定に基づき,療養に要する費用の額の算定方法として定められている看護に関する基準で,規定の基準を満たし,病院の開設者が所在地の都道府県知事に対して一定様式に基づく申請書を提出し,実地調査を含む審査を受け,承認を得れば社会保険診療における入院料に一定額の看護料が加算されて支払われる制度である.
 加算対象には看護のほか,給食,寝具設備があり,それぞれに基準が設けられ,「基準給食」「基準寝具設備」と称され,個別に加算が認められている.根底には,入院料に一定額の加算を認めることにより,入院患者に対し一定の入院サービスの確保および向上を図ろうという考え方がある.3基準をあわせて「基準入院サービス」という.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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