icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院51巻9号

1992年09月発行

雑誌目次

特集 ストックからフローへ—総合的物品管理システムをめざして

最近の病院物流システムの考え方

著者: 中野明

ページ範囲:P.782 - P.787

はじめに
 最近目にしたわが国のある医療機器メーカーが出している,病院物品管理システム設計のパンフレットの中に,「看護は,患者の不安と恐怖を取り除きますが,良い物品管理システムは,看護婦さんの不安と憂欝を取り除きます」とあった.また受託業務として,SPDを前提とした「物品管理ソフトウエアの設計,情報・運用等ソフトウエアとのコーディネート,建築等ハードウエアへのソフトウエアからの提言,ソフトウエアに基づいたハードウエアの開発」などが挙げられていた.このことは,病院においても,管理運営に関するソフトウエアの重要性が,認識されるようになってきたことを物語るものであろう.
 しかし,これらの内容は,病院の搬送システム設計に関連して,機会がある度に,筆者がここ10年来言い続けてきたことであり,今になって,このことに病院関係者の関心が集まり出したのが,最近の病院の経営状態の悪化がもたらした産物だとすれば,本来の主旨からいえば手放しで喜ばべることではないのかもしれない.

総合的な院内物品管理とそのシステム化の課題

著者: 三田村清幸

ページ範囲:P.788 - P.793

はじめに
 近年,病院内におけるいわゆる「物品」の流れを改善,または再構築する動きが顕著である.これには,人材不足,薬価差の是正化など,様々な理由が挙げられるであろうが,最大の理由は病院経営の適正化・効率化を前提に「物品」の購入,在庫負担を見直すという点である.病院内では多種多様の物品が,多数の部署で,診療行為および診療支援業務に供されており,医業費用に占める物品費は30%以上もの比率に及んでいる(表1,図1).しかし,病院というサービス業の中でも特殊な業務を行っている所で,これら多種類の「物品」の流通改善を計画しようとする場合,現在の流通業界で広く採用されている物流システムには参考にすべき点も多いが,半面なじまない面も多く存在する.また,病院経営者も診療分野の範囲外という理由から,これまでこの面での研究・開発を怠って来たように見受けられる.最近では数々の病院で物品管理の導入が報告されているが,日本の病院全体で見た場合,管理手法ならびに実業務的には未だ手探りの状態というのが現実であろう.
 本稿では総合医療コンサルティングの一環として,今まで取り組んで来た事例から,病院内の総合的な物品管理とそのシステム化の課題について考える.

病院の物流管理における医療情報システムの役割

著者: 酒井順哉

ページ範囲:P.794 - P.799

はじめに
 近年,日用雑貨や宅配などを中心とする物流は,バーコードとPOS(販売時点情報管理システム:point of sale)の導入によって急速な発展を遂げた.特に,導入効果として,製造元と小売店(スーパーマーケットやコンビニエンス・ストアなど)との受発注の省力化・簡素化や売り上げ・在庫・商品管理の飛躍的向上などが挙げられる.
 国立大学病院においても診療の質的充実を図るだけでなく,病院経営の向上を目的とした院内物流管理システム導入の重要性が認識されてきている.

総合的物品管理供給システムの運用

著者: 幅田芳弘

ページ範囲:P.800 - P.804

 横浜労災病院は,労働福祉事業団が設置運営する39番目の病院として,平成3年6月21日に開院した.病床数は650(建設規模は880-ICU,CCU, NICU, PICU,救急,合計48を含む).診療科目は21,建築延面積68,000m2,診療棟は地下1階,地上4階,病棟は地下1階,地上10階である.
 横浜労災病院における総合的物品管理供給システムの構想は,病院の建築計画が策定された昭和58年頃から始まり,昭和60年,基本設計が開始されるにおよび,本格的な検討に入り,建築,設備,備品を含む広い範囲での作業を,ハード的には設計事務所と関係機器メーカー,ソフト的には,医業コンサルタント会社,コンピュータメーカーなどとタイアップし,横浜労災病院開設準備スタッフが中心となって行い,システムの開発と構築に当たって来た.

中規模病院における物品管理

著者: 能嶋秀信

ページ範囲:P.805 - P.807

当院の概要
 当院は地域の病院として昭和23年に開発されて以来,経営主体を国保連合会から一部事務組合へと移行し,医療の進歩に即した施設の充実・診療規模の拡大などを遂次図りながら40年余を経過し,平成元年に移転新築を行い現在に至っている.
 当院は霊峰白山と日本海に臨む手取川扇状地にある松任市のほぼ中央に位置し,松任市・美川町・野々市町で構成される松任石川中央医療施設組合立の総合病院で,行政区域内人口は約11万人である.

院外物流情報ネットワーク(VAN)と院内物品管理

著者: 東條隆英

ページ範囲:P.808 - P.811

はじめに
 病院において使用されている物品は多種多様であり,医業費用に占める物品費は30%以上と大きな比率となっている.更に看護婦不足の昨今,物品を管理運営するための人的負担も大きく見逃せない.
 医療の質や患者サービスを向上させるとともに,病院内の人的・物的資源を有効に活用して,病院経営の近代化と体質を強化する目的で,部門別に管理されていた物品を病院全体で一元管理化する方向が顕著になっている.

手術部の物品管理とバーコードシステム

著者: 大久保憲

ページ範囲:P.812 - P.815

はじめに
 手術部はもとより,病院における診療の質的保証(quality assur-ance)が叫ばれている今日,ディスポーザブルの医療材料はますます日常の診療の中に取り入れられてきている.それは患者さんに対して常に清潔でかつ新しい材料,すなわち品質保証されたものを供給しようとする一つの現れである.しかしそのような医療材料の使用が多くなればなるほど病院の資金効率を悪化させ,経営をも圧迫しかねない.そしてさらに医療廃棄物の増加にもつながる.
 このような状況の中で,医療材料を適正に管理してゆくことは,健全な資金運用の面からも重要なことになってきている.

滋賀医科大学医学部附属病院総合医療情報ネットワークシステムにおける物流管理モジュール

著者: 富岡昌邦 ,   三四毅 ,   駒井洋 ,   松下修 ,   原田修 ,   白木俊男 ,   永田啓 ,   中木高夫 ,   櫻井律子

ページ範囲:P.816 - P.821

はじめに
 滋賀医科大学医学部附属病院では,平成2年7月より総合医療情報ネットワークシステム“Shiga uni-versity of medical science Hospi-tal Information NEtwork system/略称SHiNE”における看護周辺業務の合理化の一環として物流管理モジュールを稼働させた.
 このシステムは,会計課用度係・各看護単位・中央材料部の三者間を結び,医用物品(約4,000品目)および一般物品(事務用品・日用品が約600品目)を対象に,これらの物品が病院内を流通する過程で発生する様々な管理(購買管理・在庫管理・品質管理・使用管理)を統合して行うためのものである.

グラフ

総合的な健康福祉システムの構築を目指す—涌谷町町民医療福祉センター

ページ範囲:P.773 - P.778

 東北新幹線の古川駅から陸羽東線・石巻線と乗り換えると,沿腺は田園風景が広がっている.濃緑の「ひとめぼれ」が真夏の陽光に映えている.この付近一帯はひとめぼれの生産地.ジーゼルカーは途中いくつかの無人駅で停車しながら涌谷駅に30分ほどで到着する.
 涌谷町はこの地方の中心の町だ.人口は2万1千人.「わが町の病院が欲しい」というのが町民の20年来の願いであった.町民は総合病院を望んでいたが,1988年の秋に開設された涌谷町町民医療福祉センターは新しい形態の病院であった.すなわち,診断治療のみを行う病院ではなく,予防からリハビリテーションまでの保健・医療サービス,さらに福祉サービスも提供する地域保健・医療・福祉の拠点たる施設であった.

第47回国立病院療養所総合医学会会長 国立大阪病院院長 古川俊之氏

著者: 西三郎

ページ範囲:P.780 - P.780

 「勇気と自信を忘れないで」
 第47回国立病院療養所総合医学会会長ご苦労様.人物紹介をするのは,それなりの人がするのが慣例にもかかわらず,辛口所望とのことで身分をわさまえずに,一言述べさせて頂きます.お付き合いは阪大講師時代の医療情報学研究の頃からで,表面しかお付さ合いがなく,東大教授,次は,恩師の跡を次いで,国立大阪病院の院長にと,変わり身が早く,何を考えているのか,よくわからない方です.今もかも知れませんが,社会現象の解明に,大川に数学や難しい数式を武器にして取り組まれ,幾つかの業績を挙げています.詳細は理解でさなくとも,研究者として,関係なさそうなことを結び付けるという発想に,勇気ある人であるとともに親しみを感じ,長く付き合ってさました.研究と異なり,生さ物である国立病院を改革するのは,興味が在るでは済まされませんので,ご苦労なことです.
 国立病院・療養所は,その存在意義が問われている時代に,国立病院・療所養経営懇談会座長宮澤健一先生が言われた「院長の役割は,単に管理者としての立場だけでなく,経営者の立場をもっと前面に出すことか国民の信頼に答えていくことにもなる.……」(週刊社会保険,Vol.46,1697号,1992.7.12.p.10)では国立施設の責任者としては不十分で,古川先生もこの意見に同調されることでしょう.

主張

これからの病院の外来

著者:

ページ範囲:P.781 - P.781

 医療費が改定され,医療機関の機能と特質に応じた評価が必要ということで,診察料・指導料などの扱いに変更があり,病院の外来にも少なからぬ影響があった.医療法の改正論議においても,紹介外来のあり方が最大の論点の一つとなっている.ここで病院外来という古くて新しい問題について改めて考えておきたい.
 そもそも医療の原点は患者が医師を訪れることに始まり,その医師が診療の場を持って業をなし,これが自由開業制の流れを形づくって今日に至っている.診療の場と機能を拡大して病院とすることは決して難しいことではなかったから,我が国の病院の外来はきわめて自然に外来患者を受けて発展してきた.これは医師養成機関としての大学付属病院においても,また国公立,あるいはその他の公的病院においても,基本的には同様の形態で,外来機能を営んでいる.

現代病院長論

市立舞鶴市民病院院長10年の経験から—1 リーダー論・病院管理・医療理念

著者: 瀬戸山元一

ページ範囲:P.822 - P.828

 私は昭和45年京都大学を卒業し,病院長に就任致して今年でちょうど10年になります.私が病院長として何を考え,何を実践してきたかという経験を,多少の問題提起も含めお話します.

MSWの相談窓口から

あすなろ会

著者: 高橋紀夫

ページ範囲:P.829 - P.829

 6月下旬の午後6時はまだ明るい.精神科病棟前の紫陽花が夕日に映えて美しい.花の回りに見覚えある顔が集まってくる.退院者クラブ『あすなろ会』のメンバーである.『あすなろ会』は,昭和58年4月に発足して以来,毎月第2と第4の木曜日に開催され,今回で207回を数えている.参加者は多い時で20名,少ない時は10名程の小規模な会だが,若い人が多いだけに活気に満ちている.内容は会員の総意によって決められる.ある時はカレーライスを作ってみんなで食べたり,ある時は病気と上手に付き合う方法をドクターから聞いたり,またある時はカラオケ喫茶で歌ったり,といった具合である.この会を支えているのは2名の若い看護士であるが,その他に,病棟看護婦や医師,ソーシャルワーカー,作業療法士などが毎回2,3名ずつ交代で参加している.
 今回は若いA医師とワーカーの私が当番で,コーヒーとケーキを楽しみながら話し合いをすることになっている.男性7名,女性5名,職員8名,合計20名で病棟1階の集会室は満員になった.集まった退院者の顔には,入院中の患者さんには見られない輝きがある.ある者は弱電部品メーカーに,ある者は食品会社に,ある者は共同作業センターにと勤め先はまちまちだが,一様に長い闘病生活と決別して社会で頑張っている人達ばかりである.

建築と設備・77

霊安室

著者: 八木澤壮一 ,   寺田香 ,   津嘉山朝達 ,   能嶋秀信 ,   柴田昌雄

ページ範囲:P.830 - P.835

死に場所としての病院
 この7月1日の新聞で「サザエさん」の生みの親である長谷川町子さんの死が35日間伏せられていたことが報じられた.冠動脈硬化症による心不全のため,東京世田谷の自宅で息を引きとっていたのである.町子さんは同居していた姉の毬子さんに「家族による密葬と,納骨をすませるまでは,公表しないでほしい」との遺言をしておいたためであった.また2人の間に3つのことが約束されていた.それは70歳を過ぎたので具合が悪くなったら,①入院しない,②手術しないようにしてほしい,③もし亡くなったら密葬してほしいという内容であったという.
 現代の老いと病と病院との関わり,死ぬと形のみ派手な葬儀が多くなっていることに対する町子さんらしい強い姿勢がなんとも爽やかに感じた.本人の思いが実現したのに国民栄誉賞などは場違いであったのではとも思える.このことに関して,詩人の富岡多恵子さんが「老いと病いのちがい」(8月20日,朝日新聞)で,柔らかい,全体が緩慢に朽ちて行く「老い」と得体の知れない硬いモノで貫通され,寸断され,部分化される「医療」の恐怖を峻別した切り口に同感させられた.

事例 医療施設間連携

海津郡医師会病院—開院後1年9カ月目の現況

著者: 鬼束惇義

ページ範囲:P.836 - P.839

病院設立の経緯
 海津郡は岐阜県の南西部にあり,海津町,南濃町,平田町の3町からなる人口約42,000人の地域である.揖斐川,長良川,木曽川の3川が合流するところであり,愛知県,三重県と隣接している(図1).郡内には19の医療機関があったが,そのうち病院は産婦人科および精神科があるのみで,当地域の2次医療は郡外,県外の病院に依存せざるをえない状態であった.住民の意識調査では病院設置希望が毎年第1位であり,地域に病院を設立することは地域住民の永年の要望であった.昭和53年に海津郡医師会と3町長が病院設立について検討し,医師会病院構想が持ち上がった.そんな中,複数の企業から郡内に病院敷地の斡旋を行政側に求める事態も生じた.昭和56年4月より20名の医師会員全員により病院建設資金の積み立てを始め,医師会病院設立構想は2次医療圏策定などで加速度をつけて具体化した.昭和60年8月に医師会に病院建設委員会が発足し,土地取得をはじめ,全国各地の医師会病院の見学,病院運営の研究などを行って来た.病院設立までの過程は決して平担なものではなかったが,紆余曲折を経て平成2年7月2日,社団法人海津郡医師会病院(以下当病院)が開院の運びとなった.

病院経営Q&A・9

看護問題

著者: 星野桂子

ページ範囲:P.840 - P.841

Q 「看護婦・助産婦の不足で基準看護をとれない」,「有能な看護婦が来てくれない」,「労働条件を改善したくても看護婦が不足していて望むべくもない」など看護婦問題は病院管理上の最重要課題となっている.どうすれば看護婦を確保できるのであろうか,最も効果的な看護を行うためにはどのような体制にすれば良いのであろうか.

厚生行政展望

先端厚生科学技術の動向(下)—介護機器

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.842 - P.843

介護機器等研究開発推進会議
 7月3日に公表された「介護機器等研究開発推進会議報告書」は,今後開発を進めるべき具体的な機器を提案するとともに,厚生省が「介護機器等研究推進7カ年戦略」を策定し,今後介護機器の開発・普及に本格的に取り組む方針を示したものとして,大きく報道され,高い評価を受けている.
 厚生科学会議では,この問題の検討のために,幅広い分野の専門家からなる専門委員会として,「介護機器等研究開発推進会議」を組織し,平成3年12月から検討を進めていた.

看護管理の目・8

新人が育つまで

著者: 川嶋みどり

ページ範囲:P.844 - P.845

どんな考えを持って入職するか
 4月に入った新人たちが,夜勤の独り立ちができるようになって,新人研修の担当者は少しホッとされているのではないだろうか.昨今の看護婦不足は,管理上にもさまざまな影響を与えたが,新人の定着に関しても問題があるようである.
 せっかく入職を決意してくれた金の卵たちを手放すまいと,少々のことでは,黙って済ませてしまうことも少なくない.そのためかどうか,足腰が弱く,ちょっと耳触りのよくない言葉に出会うと,すぐに退職しそうな気配を恐れて,ますます言いたいことが言えない状況があるといった話もよく聞く.

病院アメニティの改善・8

鐘紡記念病院—顧客のニーズ拡大に対応したアメニティの追求

著者: 気賀俊夫

ページ範囲:P.846 - P.847

プロフィール
 神戸市兵庫区に位置し,明治40年,鐘紡兵庫工場の付属病院として開設した.戦後は,鐘紡創立100周年(1988年)記念事業の一環として増改築を行い,平成2年5月,鐘紡記念病院として新規オープンした.
 新病院建設に当たり,鐘紡株式会社の基本精神である,①愛と正義の人道主義,②科学的合理主義,③社会国家への奉仕を基盤とすると共に,イ)成人病,特にがんの診断治療への対応,ロ)地域医療への対応,ハ)総合インテリジェント化,ニ)ホスピタリティの充実を基本構想に織り込み,鐘紡各部門の協力を仰いだ.病床数は242床である.

病院管理フォーラム

[臨床検査]検査過誤と法的責任論(2)/[人事・労務]新人教育戦略

著者: 高橋正雄

ページ範囲:P.848 - P.850

信頼の分岐点
 臨床医が臨床検査技師に対して抱く「信頼の原則」について,前号で厚生省鹿内清三訟務専門官の解説を引用し,3点について触れたので,実態に即して詳述したい.
 すなわち,その第1は「臨床医は臨床検査技師としての適切な行動を期待している」ということである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?