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雑誌目次

雑誌文献

病院52巻1号

1993年01月発行

雑誌目次

特集 地域づくりのために病院に何ができるか

[てい談]地域づくりのために病院に何ができるか—豊かな地域社会を支援する視点から

著者: 今井澄 ,   浜村明徳 ,   河北博文

ページ範囲:P.18 - P.25

 河北 本日はお忙しいところをおいでいただきましてありがとうございました.
 参議院議員になられました今井先生は,諏訪中央病院の院長として,長年地域づくりとともに病院づくりをされてきたということから,浜村先生は,国立療養所長崎病院でリハビリテーションを中心にして地域でいろいろな活動をされているということで,きょうお話をいただきたいと思います.

これからの都市機能と病院

著者: 萩田秋雄

ページ範囲:P.26 - P.31

 「これからの都市機能と病院」という筆者に与えられたテーマについては,本来の都市のあり方と医療施設の関連の考察となるべきであろうが,本稿では近年の実際の都市計画につながる様々な事業や動向に即して考察することとしたい.また医療実践者でもなく,医療の本来あるべき姿,方向についても論じることは任を得ないと思うので,神奈川県医療計画や自治体の老人保健福祉計画,地域福祉計画等の医療施設に関連する地域計画に携わった立場からの考察とならざるをえないことをあらかじめ了解いただきたい.

高齢者向け住宅と生活サービスの接近の姿

著者: 五代正哉

ページ範囲:P.56 - P.62

 国民4人に1人が高齢者という超高齢社会を目前にひかえ,その準備が着々と進められている.特に平成元年の「高齢者保健福祉推進十か年戦略(通称ゴールドプラン)」の策定を皮切りに老人保健法,老人福祉法が改正され,その緊急性の高さから主として要介護高齢者を対象とする,老人保健施設,特別養護老人ホームなどの施設福祉や各種在宅福祉サービスの充実が急速に進展してきたことは周知である.しかしこれら要介護高齢者への施策に加え,高齢者の大半を占める健常な高齢者の生活の拠点となり,あくまでも自立した生活を支え続ける高齢者向け住宅の整備も併せて大切である.厚生省の予測によれば1985年に約928万世帯であった65歳以上の高齢者のいる世帯は,2015年には約1.9倍の約1,729万世帯のピークに達する.さらに注目すべきは核家族化の進展と相まって高齢者のみから構成される単身世帯,夫婦のみの世帯の合計が286万世帯から815万世帯と約2.8倍もの増加をみせることにあり,自立生活を支える高齢者の住まいの整備の重要性,緊急性が窺われる.
 図は厚生省,建設省の施策に基づき整備が進められている各種高齢者向け住宅,施設の体系を示している.今まで高齢者向け住宅は養護老人ホームや軽費老人ホームなど主として低所得者層を対象とした福祉行政の中で展開されてきた.

地域づくりの実践

ウェルパークヒルズ計画

著者: 冷牟田千年

ページ範囲:P.32 - P.35

敷地の概要
 計画地は北九州市八幡西区の南部と,中間市の東部に位置する住宅地の中心に所在し,敷地面積は約70,000m2(約21,000坪)で,うち約13,500m2(約4,000坪)が八幡西区で,残りが中間市である.
 周辺の人口構成は,計画地を中心に半径5km圏内では約25万人,半径10km圏内では約40万人であり,このエリアを施設の主なる利用者層と見込んでいる.

日南病院と地域づくり

著者: 安東良博

ページ範囲:P.36 - P.38

 日南町は,鳥取県の最西南端に位置し,島根県,広島県,岡山県の県境に接する中国山地にある.面積は県下39市町村最大の10%を占めるが,山林が90%を占め耕地は5.4%にしかすぎない.冬季の積雪期間が長く積雪量も多い.人口はかつては16,000人を越えたが平成3年10月1日時点で,8,242人と半減し高齢化率は27%となっている.人口ピラミッドはきのこ型を示し,過疎と高齢化の著しい町である.町民は様々な不安や悩みを抱いて生活しているが,その最大のものは老後の不安であろう.過疎と高齢化の2つのマイナスイメージで語られる地域こそ,心豊かな長寿社会をめざして,地域全体で努力することが必要になって来た.「心豊かな」とは高齢者のQOLが保障されているということであろう.人生の終わりをどのように生き,どのように死ぬか,換言すれば人間らしく生き,人間らしく死ぬことが保障されている社会が,心豊かな長寿社会といえる.高齢者が今まで暮らしてきた地域や家を捨てなくてもよいように安心して家庭生活ができるように,地域医療の充実は最も大切な課題である.人口過疎と高齢化のうえに,さらに地域医療過疎を加えてはならない.
 地域医療という場合,それは単なる地域の医療という意味ではなくて,地域住民の疾病予防,健康づくり,治療,リハビリ,在宅ケアなどのすべてを含んだ包括医療を意味する.

保健・医療・福祉を中心課題に据えたわが町づくり

著者: 斎藤貢

ページ範囲:P.40 - P.41

 五色町は,兵庫県の南部,淡路島の中央西海岸に位置し,人口約10,600人の過疎地域である.主な産業は農業で,水稲以外に畜産や施設園芸などの複合経営を行っている農家が多いが,零細な農業基盤を長期的視野でどう再構築していくかが大きな課題となっている.
 また,漁業はノリ,ワカメなどの栽培や沿岸漁業が中心であるが,いずれも若者の都市部への流出に伴う後継者不足が深刻な悩みとなっている.町では優良企業の誘致,住宅建設など若者定着のための施策を講じてきたが,人口の社会的減少に加え出生率の低下から自然減少も進行していた.一方,65歳以上の高齢人口は全人口の24.8%と高く,特に75歳以上の超高齢者人口が11%を越え,満100歳以上が105歳を最高齢に5名に達し,長寿の町,超高齢化社会が具現している.

六甲アイランドの街づくりと病院

著者: 伊藤安生

ページ範囲:P.42 - P.45

六甲アイランド病院のオープン
 神戸東灘の沖合を埋立てて造られた人工島「六甲アイランド」.その中央部では,21世紀に向けた民間活力を導入した街づくりが着々と進められている.その都市機能用地の第1次の開発事業は,住友信託銀行を代表とする民間事業者グループによって昭和61年に着手され,今年で8年目を迎える.
 「六甲アイランドCITY」と名付けられたこのニュータウンも,今では約3,000世帯の人々が暮らす街に発展した.今年中には第1次コンペ事業として4,000世帯,1.5万人の街づくりが完成する予定である.

最近の海外の病院の構造と機能

アメリカにおける病院構造の変化

著者: 中山茂樹

ページ範囲:P.46 - P.48

 アメリカの病院の構造に大きな変化がある.通院診療の拡充,外来手術の増加,さらにそれらを支えるホテルの隣接,メディカルモールという聞きなれない施設の出現,などが変化の現象としてすでに随所で紹介されているが,本稿はそれらを整理し,これらが生まれた背景,あるいは新しい型の医療施設相互の関係と経緯について見てみたい.
 変革の要因はやはり医療費の高騰が最大のものとしてあげられよう.かかる事態に対応すべく,上述したような現象が現れ,結果として病院の構造に変革がもたらされたものだ.

ヨーロッパ、カナダの病院

著者: 長澤泰

ページ範囲:P.49 - P.52

 当然ながら病院建築のコンセプトはその国の医療制度の影響を受ける.この点で自由主義国アメリカと社会主義的なヨーロッパとでは差異があらわれる.そしてカナダはヨーロッパとアメリカとの中間的な様相を見せる.
 このような背景のもとに,最近のヨーロッパとカナダの特色ある病院のいくつかを紹介しよう.

東南アジアの医療体制—タイを中心に

著者: 中島護

ページ範囲:P.53 - P.55

 最近特に経済発展が際立っているタイを中心に東南アジアの医療事情と病院の新しい動きについて若干の報告を行う.

グラフ

地域に密着した手作り医療を展開する—諏訪中央病院

ページ範囲:P.9 - P.14

病院の歴史
 諏訪中央病院は昭和25年,「ちの町国保直営諏訪中央病院」として,一般病床22床,診療科目8科でスタートした.昭和33年に茅野市,諏訪市,原村の組合立病院となった.その後,脳神経外科を開設し,昭和61年に現在の地に新病院を建設してから整形外科,泌尿器科,心臓血管外科を開設した.
 「医療・保健・福祉の連携のためには町中の狭いところでやるよりは,思いきって広大な敷地の用意できるところに移ったほうが良い」という市長の判断で,茅野駅から徒歩5分という街の中心部から,車で10分の郊外へ移転した.新病院は一般200床(うちICU 13床),診療科目は19科である.病院の東側には八ケ岳連峰が,西側には遠く日本アルプスの山々が見える.5階にある病院の展望食堂からは周囲360度が眺望できる.

第43回日本病院学会会長 岩手県立中央病院院長 小山田恵氏

著者: 本宿尚 ,   八木保

ページ範囲:P.16 - P.16

 先生にはじめてお目にかかったのは,福岡での日本医師会勤務医部会であった.当時より勤務医部会のリーダーとして確固たる信念と、卓越した理論,鋭い舌鋒で他を圧しておられた.
 もともと心臓外科の専門医として著名で,手術例も3,000例を越え,解離性大動脈瘤の手術法では国際的パテントもお持ちだとうかがっている.ご自分の専門領域から地区の心臓検診を手がけられたことが,昭和50年岩手県医師会勤務医部会の創設のきっかけとなった.

主張

外来機能の見直しを

著者:

ページ範囲:P.17 - P.17

 医療資源と医療費の適正な使用という観点から,近年における病院外来の患者増は看過できないとして,今年4月の医療費改定があったとみられる.
 外来受診患者数を見る限り,昭和40年と平成2年を比較すると,病院の外来受診数が1.5倍となっている一方,一般診療所のそれは3/4に減少している.ことに患者の病院集中傾向は300床以上の比較的大きな病院において著しい.しかも,診療所機能の分析からは,診療所外来で受診する疾患で病院のそれより高いものは,感冒とアレルギー性鼻炎だけであり,胃炎とか高血圧といった日常ありふれたプライマリケアレベルにある対象疾患でさえも病院に受診している実態が示されている.

建築と設備・81

東京歯科大学市川総合病院

著者: 神代豊 ,   郡明宏

ページ範囲:P.63 - P.69

 東京歯科大学市川総合病院は,地域住民に対する質の高い医療の提供と歯科医学生に対するホールボディ教育を目指し,昭和21年に開設された.その後,昭和47年には,264床の病院となり,地域医療の中核を担う施設として発展をしてきた.近年,周辺地域の人口急増による医療需要の増大や医療を取り巻く環境の変化,ニーズの多様化に対し,増改築を繰り返して対応してきたが,敷地の問題からも限界に達したため,昭和61年,既存病院から約200m離れた大学グランドへ新病院を建設移転する計画に着手した.
 計画に際し,新病院の在るべき姿を求めて,病院スタッフとの討議が重ねられ,イメージキーワードとして「ホテル」を共通のボキャブラリーとした.気持ちの安らぐ空間,快適なサービス,明快な動線計画,効率的なマネージメント等,優れたホテルの持つ特性との共通点を見いだそうと計画を進めた.

厚生行政展望

—コーヒーブレーク—新春拡大座談会'93—今年の厚生行政を展望する

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.70 - P.74

 司会(編集部) 昨年は医療法の改正という画期的な事があった年でした.今年はそれを受けて4月には診療報酬の改定が予定されております.医療法に対する評価やその後の動き,今年の診療報酬改定の予測などを中心に,93年の厚生行政を展望していただきます.

看護業務改善事例集

看護省力化機器を夜間看護業務に取り入れて—排泄に関する夜間看護業務の改善

著者: 岡部純子

ページ範囲:P.75 - P.77

 神奈川県立病院においても看護婦不足は深刻であった.県立8病院の主管課である,県衛生部県立病院総務課と総看護婦長が中心になって,看護婦確保定着対策が論じられた.日頃実践している看護業務を多角的に見直すことになった.システムの不備,医療機器の数の不足・管理体制,マンパワーの問題等が浮き彫りにされた.
 夜間勤務は看護婦にとって,避けて通れない問題である.しかし,1病棟当たり夜間2〜3人のナースでは,限界が生じていることが強調され,夜間勤務者の増員を要求した.しかし,各所での定数増を一度にはかるのは,至難の技である.そこでできるところから実施してゆくという行政の方針が示され,夜間看護業務の省力化機器の導入をはかることになった.

副院長考・1

国立病院の副院長の経験から

著者: 高橋隆一

ページ範囲:P.78 - P.79

 有能とはいえない副院長に「副院長考」の口火を切る原稿を依頼されたことは,きわめて皮肉なことである.しかし,前任の公的病院で1年の院長補佐,暫く間をおいて国立病院で4年半副院長として自分なりに考え,行動してきたことを反省する良い機会と思いあえて筆をとる次第である.
 病院によっては副院長が複数で役割分担がされていたり,副院長を置かずに数人の院長補佐がそれぞれの役割分担をしていたり,副院長または院長補佐などを全くおいていないなど,病院の設立母体,規模などによって多岐に亙っている.国立病院の場合には,「厚生省組織規程(厚生省令第30,昭和59年6月27日)」に,「国立病院に,副院長一人を置くことができる.副院長は,院長を助け,院長に事故があるときは,その職務を代理する」と記載されているのみで,それ以上の具体的記載はない.

病院管理フォーラム

[診療録管理]診療録管理部門の人と組織

著者: 木村明

ページ範囲:P.80 - P.81

 今月よりわが国の医療環境の中での診療録管理システム構築について,その基本となる事項を,(第1回)診療録管理部門の人と組織,(第2回)管理スペースとその業務,(第3回)診療録管理設備,施設,(第4回)画像診断記録の管理とデータ処理,(第5回)診療記録の情報化,(第6回)診療情報の精度管理をテーマに取り上げてみたい.

[臨床工学技士]血液透析

著者: 江良和雄

ページ範囲:P.82 - P.83

 わが国において血液透析(以下透析と略す)の技術的進歩は著しく,慢性腎不全に対してすでに確立した治療法とみなすことができる.透析が腎不全の治療法として定着する一方で,新たな問題点も生じている.維持透析の長期化に伴う高齢化,合併症,さらに患者増加に伴う社会的な問題点などが指摘されている.
 今回,これらのことを踏まえ,透析療法の現状と問題点を臨床工学技士の立場から述べてみたい.

[放射線]待ち時間に思いをはせて

著者: 宮内兼義

ページ範囲:P.84 - P.84

 今日は月曜日で,毎度のことながら他の曜日よりも撮影依頼が多かった.月曜日に撮影依頼が集中するのは,休み明けで外来が混むことと,週始めに定期的に依頼される入院患者の経過観察のための撮影が重なるからである.今日も,ご多分にもれず午前9時の時点で整形外科病棟から20枚近くのX線撮影依頼表が舞い込んで来た.
 いつもの月曜日だと,一般撮影要員として4人を当てているのに,今日に限って3人であり,「朝一番に撮影をお願いします」と言う他科からのポータブル撮影の依頼に1名を送り出したところだった.胸部撮影室にはすでに入院患者の胸部・腹部中心のX線撮影依頼表が並び始めていた.この日骨一般撮影室を担当しようと思っていた私にそれらの依頼表が重くのし掛かってきた.

麻酔医が往く・1

手術室を出た麻酔医

著者: 後明郁男

ページ範囲:P.85 - P.85

麻酔研修
 手術室での私の仕事は,麻酔の研修を希望する若手の医師を指導することである.短期間の麻酔研修を希望する人はたくさんいる.ずっと麻酔を専攻しようとなるとごく少ない.指導をしていて空しくなることもある.しかし,麻酔の基礎的技能(たとえば呼吸循環管理のいろは)は臨床医学を志すものにとっては必須の技能と信じているので,最近は麻酔科専従医の役割の一つだと思って割り切っている.高等数学を専修するものは少数でいいが,足し算引き算くらいは皆できねばならない.
 最初の2カ月くらいは,ほとんど付ききりである.その後は,患者さんがとくに問題となるような合併症をもっているとか,呼吸循環機能に大きな影響を与えそうな種類の手術を除けば,あまり口出しはしない.よほど奇妙きてれつな発想で麻酔計画を立てて,患者さんの安全に累を及ぼすと思えば,しっかりと注意するが,大体自由にさせる.ともかく,最近の研修医で困るのは,研修に入る前に十分参考書を読んで準備してくる者が少ないことである.修行の前には最小限の礼は尽くしてもらいたいものである.しかしそのぶん,教科書や参考書を度外視した,私などにはしたくともできない発想をするのがいて,その臨床応用の可能性に密かに思いを至し舌を巻くことが(ごく稀に)ある.後生畏るべし.

病院経営Q&A・13

病院のマネジメント

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.86 - P.88

 Q 「病院を取り巻く経済的環境が厳しくなっている中で,病院のマネジメントという発想が必要であるとされるが,病院のマネジメントとは何だろうか,」「病院管理者に求められる役割とは何だろうか.」

MSWの相談窓口から

「北の国から」’93冬—地域相談より

著者: 油谷香織

ページ範囲:P.89 - P.89

北海道の住みごこち
 新千歳空港——今日も,白銀の世界を求めるスキーヤーたちで,あふれている.そんなニュースが流れるたびに,「なぜわざわざ寒い所へ…」と,北海道で生まれ育った私は,つい冷めた目で見てしまう.
 しかし,聞くところによると,「豊かな自然に恵まれた北海道」は,観光地としてたいそう人気があるらしい.北海道は広い.道内をひとまわりしようと思ったら,いったい何日かかってしまうのだろう.私でさえ,行ったことのない所がたくさんあるのに….

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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