文献詳細
文献概要
麻酔医が往く・1
手術室を出た麻酔医
著者: 後明郁男1
所属機関: 1箕面市立病院麻酔科
ページ範囲:P.85 - P.85
文献購入ページに移動手術室での私の仕事は,麻酔の研修を希望する若手の医師を指導することである.短期間の麻酔研修を希望する人はたくさんいる.ずっと麻酔を専攻しようとなるとごく少ない.指導をしていて空しくなることもある.しかし,麻酔の基礎的技能(たとえば呼吸循環管理のいろは)は臨床医学を志すものにとっては必須の技能と信じているので,最近は麻酔科専従医の役割の一つだと思って割り切っている.高等数学を専修するものは少数でいいが,足し算引き算くらいは皆できねばならない.
最初の2カ月くらいは,ほとんど付ききりである.その後は,患者さんがとくに問題となるような合併症をもっているとか,呼吸循環機能に大きな影響を与えそうな種類の手術を除けば,あまり口出しはしない.よほど奇妙きてれつな発想で麻酔計画を立てて,患者さんの安全に累を及ぼすと思えば,しっかりと注意するが,大体自由にさせる.ともかく,最近の研修医で困るのは,研修に入る前に十分参考書を読んで準備してくる者が少ないことである.修行の前には最小限の礼は尽くしてもらいたいものである.しかしそのぶん,教科書や参考書を度外視した,私などにはしたくともできない発想をするのがいて,その臨床応用の可能性に密かに思いを至し舌を巻くことが(ごく稀に)ある.後生畏るべし.
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