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雑誌目次

雑誌文献

病院52巻10号

1993年10月発行

雑誌目次

特集 診療記録と情報管理

[インタビュー]病院情報システムは病院に何をもたらすか—情報化時代の新しい病院像を求めて

著者: 開原成允 ,   岩﨑榮

ページ範囲:P.856 - P.863

病院情報システムのわが国における発展過程
 岩崎 今月号の特集テーマが「診療記録と情報管理」ということでございますが,本日は開原教授がお見えになっておりますので,全体を府瞰する意味で,まず病院情報システムの現状について伺い,それが,診療記録と情報管理というテーマとどのように関係してくるのか,質疑応答のような形で話を進めさせていただきたいと考えております.
 現在,わが国の大半の病院は何らかの形で情報システムを導入していると思うのですが,医事会計に代表されるような病院管理情報システムは普及しているものの,診療情報システムについては積極的に導入してさまざまな可能性を追求している病院がある一方,導入には至っていない,あるいは導入を躊躇している病院も多いのではないかと私は認識しています.

診療記録の電子化—その現況と将来

著者: 里村洋一

ページ範囲:P.864 - P.868

不遇な診療録
期待と現実
 わが国の医療で,診療録が軽く見られているという批判が聞かれて久しい.米国での医療と診療録の管理を見て,その格差に危機を覚えた先達が,診療録管理学会の設立や,診療録管理士の養成に取り組んで,診療録の記述方法や管理技術の向上と,普及に乗り出したのは,既に20年以上も昔のことであるが,以来,特別に関心のある医療機関を除けば,この問題で,進歩があったとは言えない現状である.
 多くの中小病院では,病歴管理の専任者がいない.専用の倉庫スペースや管理機器がそなわっていない.

東海大学病院にみる診断録管理の実際

著者: 鈴木荘太郎

ページ範囲:P.869 - P.873

はじめに
 当院では1975年開院当初より,症歴情報管理に大型コンピュータが導入され,病名・症状・病理診断・臓器移植データなどのシステムが開発された1).本稿では診療録管理を中心に当院の病歴情報管理の現状と成果につき概略を述べ,今後の問題点について考察を試みた.

新聖路加国際病院の開院後1年、診療録管理業務はどう変わったか

著者: 鳥羽克子

ページ範囲:P.874 - P.877

はじめに
 聖路加国際病院は,1902年「受療者と共に歩む」というミッション・ホスピタル理念のもとにトイスラー院長により創設された.その精神を継承しつつ,更に「21世紀の医療」を目指して新たな船出をしたのは昨年(1992年)5月である.
 私ども診療記録管理士もこの病院の基本姿勢にそって,今まで築かれた業務をより豊かに発展させるにはどうすべきかを模索してきた.その結果が今日の姿である.

光ディスクを用いた電子ファイリングシステムの現況と将来展望

著者: 山内一信

ページ範囲:P.878 - P.881

はじめに
 光ディスクを用いた電子ファイリングシステム(光ディスクファイリングシステム)はイメージシステムとも呼ばれ,文書記録をコピー機と同じ感覚で複写し,その内容をイメージとして光ディスク内に蓄積する方法である.記憶容量が大容量ということで,市場に出た当初から,カルテ管理の有力なシステムになると注目されていたが1,2,3),13年を経過した現在もカルテ管理法として普及しているとは考えられない.
 この方法は一度,紙カルテに書かれたものを再入力することになるので,効率の面から必ずしも最良とは言えないし,いわゆる電子カルテを発展させれば光ディスクファイリングそのものは不要になるとの考え方もあって,この利用法についてはまだ定まった意見はない.しかし一方では電子カルテそのものも医療の現場で使うには問題点も多く,実用からはほど遠い状況にある.

市中病院におけるオーダリングシステムの運用と情報の活用—静岡県立総合病院の医療情報システム

著者: 鏑木恒男 ,   小島紘一 ,   中島俊明 ,   河原崎貴伯 ,   足立敏栄

ページ範囲:P.882 - P.887

本院トータルオーダリングシステムの概要
 現在の静岡県立総合病院は,昭和58年2月にそれまであった静岡県立中央病院(静岡市)と静岡県立富士見病院(清水市,結核療養所)とを統合する形で静岡市の県農業試験場跡地に建設開院した.開院時院長は三好秋馬先生である.
 診療科目は21科で,病室は一般600床,結核100床で,外来患者数は1,250〜1,300名/日である.静岡県の死亡率順位1〜3位の悪性腫瘍,脳血管障害,虚血性心疾患の制圧を主とした高度医療を行う目的で,検査,放射線・核医学の高度医療機器や集中治療室(ICU, CCU, RCU)が整備された.

市中病院におけるオーダリングシステムの運用と情報の活用—日鋼記念病院総合情報システムTHINK-1

著者: 西村昭男

ページ範囲:P.888 - P.891

はじめに
 “医療”という言葉は,個人,または,その集団に対する医学的実践,すなわち“医療行為”を略したものである.今日のように,医学の高度化と専門分化が急速に進展しているなかで,行為としての医療が成り立つためには,情報のシステム的管理と運用を欠かすことはできない.それだけ,“医療”は情報そのもの,すなわち一種の“情報処理活動”といわれる時代に向かっている.
 多数の専門性を異にする医師,薬剤師,看護職員,検査技師などによる「組織医療」を効率的に展開するために,コンピュータによる病院総合情報システムは画期的なものであり,その中心的な部分が,いわゆるオーダリングシステムである.

調査からみたトータルオーダリングシステム導入の現状と問題点

著者: 筧淳夫

ページ範囲:P.892 - P.894

 学生時代から研究の上で様々なアンケートの集計・分析にコンピュータを利用してきました.当時は大学の大型汎用機を利用していて,緑色の画面を前に手探り状態で利用を始め,時には突然システムがダウンしてしまい,その日1日の成果が一瞬のうちに消えてしまうこともあったものです.身の不幸を嘆きながらもう一度初めからプログラムを組むことが何度あったでしょうか.しかし,それでもアンケートの集計にコンピュータを利用することを止めませんでした.単にコンピュータ好きのオタクな学生だった訳ではありません.コンピュータを利用すると一度入力したデータを様々な角度から分析し,再集計を操り返すことができたからです(あまりにもあたりまえのことでしょうか).そのころ研究室には研究を補助するためにアルバイトの女の子も居ましたので,その娘に一言「これを数えて割合を出しておいて」と頼めば,それだけで結果が出てくるのですが,それを何度も繰り返すうちに,女の子の笑顔が消えて…….
 従って,自分で苦労しながらコンピュータに挑むのですが,コンピュータを利用して自分で分析をやるとなると,母数の決定,エラーデータの追跡など,それまで目につかなかったことが気になりはじめ(本来当然のことですが他人に仕事を頼むと気付かないことがあるものです),かえって今までより時間がかかってしまうこともありました.ただ,研究の精度が高まったことは間違いないようです.

ICD-9からICD-10へ

著者: 河合誠義

ページ範囲:P.895 - P.896

はじめに
 ICD (国際疾病分類)は,死因分類の国際的統一を図るため,1900年に初めて作成され,その後は約10年ごとに,医学の進展に伴う定期的な改訂が行われている.
 現行の分類は,1979年から使用されている第9回修正ICD (ICD-9)であり,傷病名を3桁および4桁の数字で分類している.

グラフ

開院以来70年間地域住民の信頼に応える—財団法人倉敷中央病院

ページ範囲:P.847 - P.852

倉敷中央病院と大原孫三郎
 倉敷中央病院の創設者は大原孫三郎である.倉敷紡績の社長であったが,社会問題や労働問題にも関心があり,キリスト教的人道主義に基づく様々の改革を行った.倉敷中央病院の創設もその中のひとつであるが,一般的には大原美術館の創設者として有名であろう.
 「平等,親切,最高の治療,最新の設備」という氏の方針に従って建設され,入院料に等級をつけず,付添人を置かず,寝具その他の備品を備え,見舞品の持ち込み,従業員に対する贈物を厳禁するという病院運営が行われたのが大正12年である.開院時は倉紡中央病院と称した.開院と同時に看護婦養成所も開設したが,以来看護婦養成の活動は現在まで続いている.現在,倉敷中央看護専門学校では150人の学生がいる.

癌研究所附属病院院長に就任 尾形悦郎氏

著者: 黒川清 ,   八木保

ページ範囲:P.854 - P.854

 昨年4月に東大を退官された尾形先生が,この7月から癌研附属病院の院長に就かれた.副院長として肩慣らししたあと,満を持してという表現がぴったりの登板である.
 尾形先生を一言で形容すると,臨床,研究,教育の3拍子,さらにマネジメントの分野まで加えれば,4拍子そろった希有の人(医師)と言えるだろう.しかも,それぞれの分野での実績は超一流,掛け値なしのスーパードクターである.先生が専門とされている内分泌学,とりわけカルシウム代謝の研究が国際的にも高く評価されていることは周知の通りであり,また,筑波大学から東大に移られてからは,今日の第4内科の隆盛を築かれ,教室からは世界に名の通ったきら星の研究者たちが輩出している.マネジメントで言えば骨代謝学会,内分泌学会,代謝学会,内科学会の会長を歴任されただけではなく,それぞれの学会で新機軸を打ち出し,よい前例を残された.さらに,東大分院長を3期6年勤め,紛争中の時代から体制の立て直しに獅子奮迅の活躍をされたことは,知る人ぞ知るところである.

主張

病院経営情報の効果的な運用を

著者:

ページ範囲:P.855 - P.855

 国民は,政治・経済の新しい変革を求めて細川政権を誕生させたが,景気回復の道筋は未だに全く見えてこない.結果を早急に期待すること自体が誤りであるかも知れないが,国民にとっては,この不況がいつまで続くのか,また政府はどのような対策を行うのかが最大の関心事ではなかろうか.
 病院の経営も同様である.ここ数年は,まさに構造上の不況業種の1つと思われるような経営を強いられている.

現代病院長論

公立病院の院長20年間の経験から病院経営の理念を考える

著者: 寺田守

ページ範囲:P.898 - P.902

 陶生病院が臨床研修指定病院に指定された15年ほど前に全国自治体病院協議会の院長セミナーで「院長論」という同じテーマで話したことがあります.現在は病院管理に携わって約20年ほどになりますが,当時は,院長になったばかりで,院長論とか病院経営について話すのはおこがましいと考え,当時,病院経営の「東海道四天王」と呼ばれていた4人の大先輩についてお話ししました.その4人というのは静岡済生会総合病院の岡本一夫先生,豊橋市民病院の森泰樹先生,それから私どもの初代院長の二宮恵一先生,大垣市民病院院長から大垣市長になられた森直之先生で,それぞれの院長のあり方論を紹介しました.今の私は毎年定年延長で1年刻みで辞令をいただいており,クラブの雇われママのようなものです.

ケース・レポート

差額ベッド規制緩和は病院経営にどう影響しているか—全国初の承認施設—公立陶生病院/全国初の民間承認施設—内田病院

著者: 西山郁夫 ,   内田英一

ページ範囲:P.903 - P.907

 診療報酬の改定は近年,2年毎に行われるのが定着しており,この内容が病院運営を大きく左右するだけに,我々の最大関心事になっている.改定のたびに,その内容を少しでも速く承知し,医療行政のめざすところ,保険医療の意図する方向を察知して,病院としてどう対応していくかを真剣に検討し,いち早く行動することが重要であると思っている.
 医療をとりまく状況はきびしさが増す一方であり,我々が頼みの綱としている診療報酬改定も要望する内容に毎回ほど遠く,いつも期待はずれに終っている.

トピックス

5年ぶりに改正された精神保健法

著者: 広田伊蘇夫

ページ範囲:P.908 - P.909

 1993年3月,精神保健対策の基本法,精神保健法が再改正された.前回改正時(1987年)の附則,つまり「法施行後,5年を目途として,必要があると認められたときには,再検討を加える」との規定にもとついた改正であった.そこで,ひとまず前回の法改正をふり返り,わが国の精神保健対策の基本方針などを紹介し,ついで今回の改正点,及びなお検討が期待されているいくつかの課題について簡単に触れてみたい.

建築と設備・90

アメリカの高齢者施設

著者: 長澤泰

ページ範囲:P.911 - P.915

はじめに
 1993年の2月初めに米国カリフォルニア州のロスアンジェルスを皮切に,アリゾナ州フェニックス,テキサス州のサンアントニオとカレッジステーション,そして再びカリフォルニア州のサンフランシスコと,米国の西海岸と南西部での高齢者施設を中心に見学する機会を得た.併行して医療施設も少なからず見学する結果になったが,保健・医療・福祉そして居住施設は,元来,切り離せない関係にあるものであり,常に,広い視点を保つことに役立った.

退院計画 病院に求められる新しい機能・3

退院計画におけるソーシャルワーク援助の実際—その過程と援助技術

著者: 髙田玲子

ページ範囲:P.916 - P.919

はじめに
 高齢化社会の到来による社会構造の変化と医療法改正による病院機能分化等の影響は入院期間の短縮化に拍車をかけ,退院促進がより早期から開始されることが求められるようになってきた.
 こうした現状の中でソーシャルワーカーも敏速に,質の高い援助をどのように提供するかが課題となっている.そこで実際に退院援助がどの様に展開されているか,特に介護を要する高齢者(要介護高齢者)の相談を中心にそのプロセスの中で起こる問題とその問題解決のためにソーシャルワーカーが用いる援助技術と関わりについて考察を試みた.

厚生行政展望

国際化時代に期待される病院の変化

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.920 - P.921

 8月末,東京で第8回日本国際保健医療学会総会が2日間にわたり盛況に開催された.参加者,発表者は全国の保健医療関係者であり,この分野に従事する人の間で国際協力への関心が高まってきていることが感じられた.総会プログラムは概略表の通り.だいたいの規模と傾向を読みとっていただくことができよう.
 新聞の政治面・経済面・社会面の傾向から容易に察することができるとおり,世は「国際化時代」に突入している.全国津々浦々,山間僻地に至るまで,国際的な話題が茶の間に侵略してきている時代なのである.しかしながら,こと病院に関しては,身近な国際問題は在日外国人の医療費踏み倒し問題くらいなもので,国際協力などよその国の話であって,どこ吹く風である.病院経営を考えると,赤字要因にさえ思える.医師や看護婦が「国際協力をしたい!」と申し出てきたら,その希望の芽を摘み取るよう動くのが標準的事務長さんである.やっとこさ確保した戦力が長期出張で欠員になることは理不尽であり,もってのほかなのである.

副院長考・8

経営管理部門に専念する事務長出身の副院長

著者: 広川敢

ページ範囲:P.922 - P.923

はじめに
 編集部から原稿の依頼を受けたが,正直いってあまり気の進まないテーマであり,お断わりしたいというのが本音である.しかし,「全国でも余り例のない事務長出身の副院長の立場から」書くようにとのお話であったので,なぜ事務長出身の副院長が少ないのか,考えるよい機会ではないかと思い直し,浅学菲才を顧みずお引き受けすることにした.

病院経営Q&A・21

待ち時間の解消法

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.924 - P.926

 Q 「当院に来て一番嫌なことは何ですか」というアンケート調査に対して,決まって上位に出てくるのが「待ち時間が長いこと」である.どうしたら,待ち時間を解消できるだろうか.

看護業務改善事例集

搬送カートの導入による注射薬準備業務の改善

著者: 島田陽子 ,   鈴木妙子 ,   高橋弘充 ,   中村礼子

ページ範囲:P.927 - P.929

はじめに
 病院において看護婦は様々な業務を担っているが,その中でも注射薬の準備は,時間がかかり,かつ清潔性や正確性が求められる業務のひとつである.輸液の準備は,病院によっても異なるが,医師のオーダー内容を確認し,オーダーに従って輸液ボトルや混注する薬品を薬品棚から取り出し,それらをオーダーと照合して混注し,輸液セットをボトルにつけるなどの一連の作業を伴う業務である.またこのほかに,病棟で多くの薬剤を蓄えておくため,毎日薬品を請求したり,使用期限のチェック,薬品棚の整理なども多くの時間を費やして行っている.狭い病棟やスタッフステーションの中で,薬品を置くための棚が広いスペースを占領していることも珍しくない.
 当院(表1)でも,このような状況の中で注射薬の準備が行われてきたが,薬剤師による服薬指導業務,いわゆる400点業務の導入を契機に,従来の方法(病棟毎に定数配置された薬品の中から看護婦が患者毎に輸液ボトルと混注する薬品を準備する方法)から,薬剤部で患者毎に準備した薬品を注射薬搬送カートを用いて各病棟に供給する方法に改められた.看護部と薬剤部との協力体制のもとでこの患者別注射薬供給方法が導入されたことによって,看護婦の注射薬準備に関わる業務が大幅に省略され,かつ薬品管理の向上が図られるようになった.当院におけるこのような変化の成果について報告する.

MSWの相談窓口から

大学病院で出会う児童虐待

著者: 法由美子

ページ範囲:P.930 - P.930

はじめに
 「子供のケガの様子がおかしい.虐待だと思う.親に会って話を聞いてほしい」と初めて医師から依頼された時の動揺はいまでも忘れられません.私がソーシャルワーカーとして児童虐待のケースにかかわり始めてから3年たち,8人の被虐待児と出会いました.ほとんどが乳幼児の身体的虐待で,過去17年の当院の調べでは救急で運ばれてきた被虐待児の転帰の半数は死亡でした.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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