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特集 病院の長期療養サービス 患者の重症化と入院の長期化
救急医学の立場からみた患者の重症化と入院の長期化
著者: 益子邦洋12
所属機関: 1日本医科大学救急医学科 2高度救命救急センター
ページ範囲:P.958 - P.961
文献購入ページに移動我が国における救急医療体制は,厚生省から昭和39年に発表された「救急告示病院等を定める省令」と,昭和52年に発表された「救急医療対策事業実施要綱」とにより,ほぼ完成をみて現在に至っている.24時間,365日ベースで救急患者に対応する救急告示病院と,これを補完する形での初期,二次,三次救急医療体制により,いつでも,どこでも,誰でも,病状に対応した救急医療サービスが受けられるようになったのである(図1).その結果として,従来の医療体系の下では到底救命しえなかったような重症救急患者が次々と救命されるようになり,我が国の医療福祉の向上に大きく寄与したことは広く認められているところである.しかしながら,頻死の重症患者が救命され,身体的かつ精神的に社会復帰していくためには,最新かつ高度の集中治療と,アフターケアに関するさまざまな領域の医療,そしてリハビリテーション医療とが有機的に結びついていることが必須であり,このプロセスにはそれ相当の期間を要することもまた事実である.また一方では,適切な初期救急医療により心肺蘇生に成功したとしても,脳虚血から脳死状態や植物状態に陥り,社会復帰など望むべくもない患者もまた数多く存在する.
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