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雑誌目次

雑誌文献

病院52巻4号

1993年04月発行

雑誌目次

特集 外来のあり方を問う—大病院志向の流れは変えられるか

特定機能病院における外来のあり方

著者: 大道久

ページ範囲:P.296 - P.298

はじめに
 医療法の改正により導入された特定機能病院と療養型病床群についての医療費も明らかとなり,新たな施設体系の具体的な運用の姿が定まった.今回の改正に関する論議のうちで最も問題になったもののひとつが,特定機能病院の紹介患者のあり方であった.改正後の政省令の論議は最後まで難航したものの,結局いわゆる紹介率を30%にまで高めるように努力することなどの規定で,一応の決着をみた.
 医療法上の扱いとして,特定機能病院が一定の水準の紹介外来患者を診ることと規定したことは,いくつかの問題を残しながらも,我が国の病院の外来のあり方に,制度上の方向を与えたことになったわけで,やはりその意義は大きいと言わなければならない.またその診療報酬において,紹介率30%を上回るものとそうでないものとの間に差をつけて対応したことは,この方向を誘導するうえで少なからぬ要因となることが予想される.ここでは,特定機能病院の外来のあり方について現段階で考えられることについて述べておきたい.

自らの理念に向けての病院経営を!—大規模総合病院の立場から

著者: 頼本節雄

ページ範囲:P.299 - P.301

当院における外来の現状
 当院は大正12年倉紡中央病院として創立,昭和9年財団法人に改組,財団法人倉敷中央病院と改称,今日に至っている.
 現勢は病床数1,220床(一般1,150床),外来21科・52診,職員数1,600人(医師170人・看護婦750人),患者数:外来2,161人/日・入院1,048人/日,年間医業収入200億円,総資産190億円といったところである.

紹介外来のみの診療を頑に守り続けて—開放型病院の立場から

著者: 富永忠弘

ページ範囲:P.302 - P.305

はじめに
 当仙台オープン病院は行政である仙台市と仙台市医師会との協力になる(財)仙台市医療センターが経営するいわゆる公設民営型病院で仙台市医師会病院に相当する.1976年2月診療を開始して今年で17年目を迎えた.1978年3月健康保険法の開放型病院の承認を受け,開院以来外来は仙台市医師会々員中の登録医を主とし,近隣医師会を含む他医療機関からの紹介患者のみに限定し,一般外来は行わない方針を貫き現在に至っている.
 この間,1986年に他医療機関紹介の2次・高次救急患者を主たる対象とする救急センターを併設し,1989年4月からは365日完全24時間体制に移行させている.2次以上を主眼とはするものの,最近の家庭医を持たない市民層の増加で,夜間・休日には紹介のない1次救急(急病)の患者も来院し,これらへの対応も人道上拒むことは出来ない.この救急直接来院者は非紹介患者であるから,広い意味での一般外来に相当することになる.

病診連携の実施で患者の流れに変化が—開業医として杉並地域医療システムに参加して

著者: 加藤毅

ページ範囲:P.306 - P.308

はじめに
 私は東京・杉並で内科・小児科を開業している.杉並区は人口約52万人,国公立病院がなく,19病院,88有床診療所,438無床診療所があり,医師会員はA会員462人,B会員133人,医師会未加入の医療機関数約80件と言われている.
 私の診療所は地下鉄丸の内線南阿佐谷駅に4分,JR阿佐谷駅に10分,財団法人河北総合病院(312床)に15分位の所にある.診療時間は午前9時より12時までと午後4時半より6時までで,木・土曜の午後と日曜・祝日は休診にしている.平日の午後の時間は往診,学校医,保健所健診,産業医,学術研究会,その他の会議等の参加に当てている.従業員は薬剤師1人(家内),正看護婦1人,事務員1人,パート事務(夜間)1人であったが,昨年9月より訪問看護専門看護婦に午後週3回,パートで来てもらっている(午後のみの半日で3人程度訪問)外来患者は平日平均60人,半日30人で1か月の請求明細書は約630件である.

病診の連携を阻むもの—若手開業医の立場から

著者: 新田國夫

ページ範囲:P.309 - P.312

なぜ大病院志向か
 医療は重度になればなるほど大病院集約型になるのが普通である.一般的には診療所から中小病院,大病院への患者の流れがある.患者の志向も同様にこのように向かう.
 一方,病院の構造的経常赤字が続いている.このような状況下では病院は自院に集まってきた患者の流れを一方的に維持しようとして,拡散したがらない経済原則が働く.原則は国公立病院においても同様である.しかもその多くは慢性的赤字に苦しんでおり,それゆえに経済原則が優先し,医療現場の従事者(医師,看護婦等)もその原則に従わざるを得なくなっている.その結果,国公立病院は地域住民の健康,医療に対して果たすべき役割を半ば放棄してしまっているようにみえる.民間病院においてはこの原則がさらに誇張され,病院が一体となって患者の集約維持を図ろうとする.

外来受診患者の動向—最近15年の統計から

著者: 信川益明 ,   高木泰 ,   原哲夫

ページ範囲:P.313 - P.317

 診療所の外来受診者が減少したのに対し,病院の受診者は増加してきており,特に病床規模の大きい病院の外来患者が増加していると言われている.
 そこで外来患者数の動向,その要因,診療所から病院ヘシフトしている外来患者の流れについて,外来患者に関するデータを調査,分析することにより検討した.

米国にみる入院から外来へのシフト

著者: 岡本悦司

ページ範囲:P.318 - P.321

 米国では,入院から外来へのシフトが一足先に進行している.1983年のDRG導入以来,病院の閉鎖・倒産が多発し,日本をはじめ世界の医療関係者に衝撃を与えた.
 アーサー&アンダーセン社とアメリカ医療経営者協会(ACHE)は,医療環境の変化に迅速に対応できるよう,5年程度の中期予測を共同で調査している.既に以下の2回の調査結果が公表され,その予測は高く評価されている.

[座談会]大病院志向の流れは変えられるか

著者: 篠崎英夫 ,   阿曽弘一 ,   小林之誠 ,   岩崎榮

ページ範囲:P.322 - P.329

大病院ではコモン・ディジーズの通院患者が増えている
 岩崎 本号の特集テーマは「外来のあり方を問う」というもので,「大病院志向の流れは変えられるか」というサブテーマがついております.きょうはこのサブテーマについて皆様にお話し合いいただきたいと考えました.
 もともとわが国の病院の発達形態,とりわけ民間病院のそれは,診療所から有床になり,有床から病院化していったという流れがみられます.つまり,病院のなかに入院と外来の両方の機能が併存してきたわけで,病院は入院機能を優先すべきだという建前論だけで一挙に病院から外来をなくしてしまうというのは,日本の病院の歴史的な発達史から言っても大変難しい問題だと思います.

グラフ

インテリジェント・ホスピタルを目指す—横浜労災病院

ページ範囲:P.287 - P.292

 横浜労災病院は全国で37番目の労災病院として平成3年6月に開院した.労働災害や職業病だけでなく,脳,循環器疾患などの専門的医療に取り組み,横浜市北東部の地域中核総合病院として地域医療にも貢献している.本院は21世紀の医療ニーズに応えるべく,コンピュータシステムを随所に導入し,ハイテク機器を駆使して高度先進医療を展開している.

常に笑顔で,暖かい住民中心の地域医療を—第33回全国国保地域医療学会会長 砂原町国民健康保険病院院長 小山昌正氏

著者: 森俊

ページ範囲:P.294 - P.294

 小山先生とのご縁は,北大の3年先輩で,昭和38年私の勤務地と同じ道南地域の砂原町国保病院長として赴任されて以来,30年近いものとなりました.
 当時本道の国保直診は,広域過疎に加えて医師不足による業務過重のために,組織化は全く進んでいない状況でした.

主張

長引く景気の停滞と病院経営

著者:

ページ範囲:P.295 - P.295

 景気の停滞が長引いている.政府による種々の景気浮揚対策にもかかわらず,一向に回復の兆しは見えてこない.民間の企業では役員賞与のカット,経費節減,在庫調整,配置転換,合理化等と企業経営の命運を賭けた大胆かつ強引なまでの対策が断行されている.それに比べると,医療業界は医療の変革期の真っただ中にあって“病院経営冬の時代”などと言われてはいるものの,その対応はまだまだ手緩いといった印象を免れない.
 さて,人口の高齢化に伴って生じてきた疾病構造の変化によって,社会保険診療報酬体系には様々なほころびが目立つようになってきた.一方では,国民皆保険が達成された昭和30年代と比べると国民の生活レベルは格段に向上してきており,医療におけるアメニティを求める声も強くなりつつある.

特別寄稿

淘汰の時代に入った民間病院

著者: 滝上宗次郎

ページ範囲:P.330 - P.333

経営環境の変化
1980年代を境に一変した経営環境
 どうすれば有利かという税務知識を,税務署は教えてくれない.税務の仕組みを熟知し,いかに活用するかは,納税者一人ひとりに任せられている.この2月の新聞に,延納という手段を知らず,当てにしていた土地が地価下落で売れず相続税を納められなかった人の事件が大きく報道された.同じことは病院の経営者にも当てはまる.
 病院の経営者は,同時に医師でもあるが,どちらの仕事も社会的に難度は著しく高い.本来両立するものではないし,医師の教育カリキュラムに経営学など皆無である.「医は仁術」と言われ,1970年代まで,経営者としての重荷は自ずと軽減されていた.

ふぉーらむ 民間病院はこれでよいのか・1

医療法改正と民間病院/民間病院に求められる機能と質

著者: 大道久

ページ範囲:P.334 - P.341

 医療法の第2次改正は上程後2年余を経てようやく成立し,政令および厚生省令が先日なんとかまとまりました.このフォーラムの導入として,改正の概要を簡単に紹介し,民間病院との関連から若干のコメントをしたいと思います.医療法改正の項目についてはご周知のことでしょうが,改めて確認しておきたいと思います.
 まず,改正の最大のポイントは施設機能の体系化ということです.すなわち,特定機能病院と療養型病床群という二つの病院制度を導入して,来年(1993年)4月以降にでも早々に運用を開始しようということです.次に理念規定として,医療制度の立場から今後の基本的な医療の考え方を明確にしています.3番目は老健施設を医療施設の一つと位置づけていること.4番目に業務の外部への委託に関して,医療法上に明確に規定したこと.それから医療法人の業務範囲の若干の拡大です.6番目に院内掲示および院外広告の問題です.これは医療機関の広告規制の緩和ということで議論されてきた項目で,具体的な方向が示されるまでにはもう少し時間がかかるでしょうが,一応筋道の方向だけはある程度明らかになっています.これに関連して標榜診療科名の扱いなどが改正されます.

建築と設備・84

兵庫県立リハビリテーション中央病院

著者: 黒田達雄

ページ範囲:P.343 - P.350

はじめに
 1969年リハビリ附属病院を中心とするリハビリセンターが開設されたが,その後の能力開発や評価・判定機能の充実などと共に,リハビリテーション概念の体系化が求められた.病院を中心とする医学リハだけでなく,職業的リハや社会的リハ機能が要求され,同時に情報・教育・研究部門とが有機的に機能してこそ,障害者の全人的回復がはかれるというコンセプトを確立したのは1974年頃であった.
 更に今回はこのリハセンターが,県下全域のリハサービスの中枢的役割を負うべく,各地域の中核的病院のリハビリ部門と連携し,リハビリ情報の収集と提供,リハビリ技術の支援,セラピスト等の人材養成などをめざす中枢としての位置付けに発展させてきた(図1).

看護業務改善事例集

看護業務改善が私たちにもたらしたもの

著者: 渡辺孝子

ページ範囲:P.351 - P.353

看護業務改善に取り組むまで
 私は今から3年前の平成2年に看護部長に任命された.看護婦不足の波が医療界,看護界を襲いはじめていた時であった.
 県立医療機関である私の病院の幹部職員への知事の辞令は,県衛生部長から授与されるが,辞令授与式で時の衛生部長が私には,「看護婦が定着できる職場作りに努力して下さい」と言われた.その時の緊張感に満ちた雰囲気を今でも鮮明に思い出すことができる.

厚生行政展望

診療報酬点数の改定(上)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.354 - P.355

はじめに
 中医協(中央社会保険医療協議会)は2月5日に4月1日からの診療報酬改定について諮問を受け,同日原案どおり答申した.今回の診療報酬改定は,「医療法で議論した医療制度を診療報酬点数で評価する画期的なものである」という意見と,「診療報酬点数のアップはなく,改定と言っても微調整である」という意見に分かれている.
 昨年7月の医療法改正により,「特定機能病院」及び「療養型病床群」が制度化されたことを受け,医療供給の体系化を図るために病院の機能に応じ診療報酬の評価が行われたが,「特定機能病院」と「療養型病床群」が表に出すぎているため,一般の医療機関にとっては一見縁の遠い改定となったように見える.今回は,特定機能病院を中心に検討を試みた.

病院経営Q&A・16

マーケティングの方法

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.356 - P.359

 Q 「診療圏を分析するためにはどんな資料が必要なのか.また,それを具体的にどう使えばよいのか」という質問に対して,具体的なマーケティングの方法を紹介する.

副院長考・3

院長の管理代行役を越えて病院の運営に当たる—岐路に立つ私立精神病院の経営

著者: 丸山弘毅

ページ範囲:P.360 - P.361

はじめに
 昭和62年精神衛生法が改正され精神医療は内容も形式も大幅に改められた.しかしあまりにも性急な大改革であったため医療の現場には今でも様々な困惑が残されている.その上平成3年の医療費改定により私立精神病院の多くが赤字経営に陥る予想外の打撃を受けた.
 私立精神病院の院長はほとんど法人の理事長を兼務しており経営と管理の最高責任者である.危機打開のための機構改革や転廃業などの対応を求められそうに思える.

病院管理フォーラム

[診療録管理]画像検査記録のデータ処理とその管理

著者: 木村明

ページ範囲:P.362 - P.363

 医療の普及による画像検査件数の増加,新しい診断法出現による多様化の結果,多くの病院でこれまでの慣習的管理方法に破綻をきたしその対策に苦慮している.
 また,患者中心の包括的医療の視点から継続診療,健康管理を実施するには患者個人別管理が必要であること,あるいは地域医療の視点から病病・病診連携推進の基本の1つとして画像検査情報の互換性を高める必要が生じてきたこと,更にこれまでの検査記録現物の管理からデジタル転換情報化データ管理の問題など画像検査記録管理はいま転換期にあり,医療関係者全体の発想の転換が求められている.

[臨床工学技士]ICUと臨床工学技士—モニタリングと機器管理

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.364 - P.365

ICUにおける臨床工学技士の役割
 臨床工学技士の業務は「呼吸・循環・代謝に関わる生命維持管理装置の操作および保守点検」である.
 ここで言う,生命維持管理装置とは,人工呼吸器,人工心肺,人工透析器などのいわゆる生命維持装置と,これを運転するのに必要なモニタリング装置,生体計測器,検体計測器,補助装置などの生命管理装置を意味する.これらを,医師の指示のもとに患者に適用し適正に運転および適正に保守していくのが臨床工学技士の役目である.

MSWの相談窓口から

緑のおばさんに関する一考察—ボランティアとMSW

著者: 室谷智子

ページ範囲:P.366 - P.366

街かどに緑のおばさん
 交差点を渡る黄色の旗を持った子供たちを見守る緑のおばさん.市民が交通戦争に自衛するべく街かどに現われたのは,いつごろだったろうか.幼な心に,どうして「緑のおじさん」とは言わないのか——男性諸氏は何をしているのか,とも思ったものだ.
 交差点に立つ行為も,市民が市民のために行う,いわば,よりよい街づくりのためのボランティア運動ともいえる.老人ホーム,美術館の案内,障害者の自立生活など暮らしとボランティア活動の接点が増えた現代である.そして,病院にも.

麻酔医が往く・4

人工呼吸器と麻酔医

著者: 後明郁男

ページ範囲:P.367 - P.367

人工呼吸器の普及で贅沢な悩みが
 全身麻酔をかけると,人は多かれ少なかれ呼吸機能が低下するので,全身麻酔中は呼吸を補助する必要がある.自発呼吸を温存して,マスクによる酸素供給程度で済ませられることもあるが,近年の全身麻酔では筋弛緩薬を併用するのが普通で,この場合,呼吸は完全に停止するから,フルに呼吸を補助しなければならない.つまり人工呼吸をする.人工呼吸が,日常臨床全般にわたって組み込まれているのは麻酔科だけだから,年季の入った麻酔医は人工呼吸管理の専門家でもある.
 15年程前までは,数百床規模の大病院でも人工呼吸器は数える程しかなく,したがって奪いあいの状態で,どの呼吸不全患者に装着して,どの患者には装着しないかが,しばしば倫理的問題や経済的問題もからんで深刻でした.私は,その時代を知っている最後の世代に属する.近年,わが国は豊かになり,人工呼吸器が広く普及し,私どものような中規模(300床)病院でも病棟用人工呼吸器が20台余りもあって,少なくとも上記のような悩みから解放されたことは同慶の至りである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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