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雑誌目次

雑誌文献

病院52巻6号

1993年06月発行

雑誌目次

特集 看護の質に何を期待するか

[座談会]マグネット・ホスピタルへの道

著者: 粟屋典子 ,   川島みどり ,   山崎絆 ,   大道久

ページ範囲:P.482 - P.490

米国の看護婦不足に端を発したマグネット・ホスピタルの探究
 大道 本日は「マグネット・ホスピタルへの道」というテーマでお話し合いいただくわけですが,最初にこのマグネット・ホスピタルという言葉のもつ意味をどのように受けとめられておられるのか,お三方それぞれにご意見を頂戴し,きょうの具体的な方向を探る入り口にさせていただきたいと思います.
 まず最初に,粟屋さんはこのマグネット・ホスピタルというものをどう受けとめていらっしゃるでしょうか.

病院管理者としての期待

高機能地域中核病院院長からみた看護の質とその評価

著者: 小山田恵

ページ範囲:P.491 - P.493

はじめに
 この数年日本の医療のなかで最も大きな問題としてとりあげられ論じられてきたのが,看護問題とりわけ看護婦不足についてのものであった.昨年医療法が改正されて病院の類型化が進められ,それぞれの類型によって必要な看護婦数が法的に決められ,看護要員の配置に応じた診療報酬が支払われる仕組みになった.また看護婦等人材確保法の制定によって看護婦の労働条件の改善,離職防止策の推進,養成機関の拡充と大学設置の促進等が国の施策として図られるようになったことは,40年間放置されてきたこの面での大きな改革であり,医療の発展を願う立場から心から歓迎したい.
 しかし現実は依然として深刻で,どこの医療機関でもとにかく看護婦という資格をもったものを1人でも多く確保することに精力を注ぎ,ナースハンティンググループといわれる人達が全国を駆けまわって看護婦の獲得,引き抜き合戦に明け暮れている.病院の運命を看護婦の数に賭けているというのが実状であって看護婦の質,看護の質等というとそれは贅沢だとのそしりをうけかねない.大病院,公的病院でも現在はまず数の確保が最大の課題である.高度医療を行っていくためには医療法や特3類,特2類といった基準の要員では医療行為そのものが遂行出来ないし,増員するためには定員法という枠があって,公務員削減という国,自治体の流れのなかで医療従事者だけを増員することは非常に難しい環境にある.

チーム医療に対応し得る看護組織の変革を—民間病院院長・短大学長の立場から

著者: 井手道雄

ページ範囲:P.494 - P.496

はじめに
 今後,病院を取りまく保健,医療,福祉環境は大きく,そして急速に変化していく.
 変化を促す要因としては経済成長の鈍化と医療費の高騰,人口構造の変化,疾病構造の変化,医学の進歩,価値観の変化,情報化や国際化などの多くの要因があげられるが,それらのインパクトは極めて大きく,今後の病院運営においては過去の踏襲から速やかに脱却した対応が望まれており,これは看護の分野でも同様である.

臨床医の立場から

「診療の補助」と「療養上の世話」—外科医として看護の質に期待するもの

著者: 有賀徹

ページ範囲:P.497 - P.499

はじめに
 医療の現場において提供される「医療の質」を論議するあたり,そのことを大きく2つの面でとらえておくことが必要と考える.まず第1に正味の医学的内容がどのようであるか,つまり現在の医学(サイエンスの一分野)の水準からみて充分に満足のいくものが提供されているかであり,もう1つがいわゆる患者の満足度に関する,例えば患者の人権への配慮はどうかとか食事の時間・選択のメニューはどのようであるか等々で,最近しばしば話題になっている面である.
 前者は医師を中心とした現場の総合力が問われ,今回のテーマに即して言えば,例えば看護スタッフが急性期において時々刻々と変化する患者の状態を観察し,医師に的確な情報を与え,治療に寄与すること等である.それに比べ,後者は広く病院施設全体の運営方針として言及されることが多く,職員の立ち居振る舞いや言葉使いに患者への心遺いがどれほど反映されているか等という問題も一般的にはこちらに属すると言えよう.

日本には看護の質を論じられる病院がいくつあるだろうか—循環器内科医がみた看護の現状と打開のための一私案

著者: 石村孝夫

ページ範囲:P.500 - P.501

 本稿の依頼を受け,正直なところ私は多少の戸惑いを感じた.というのはナース本来の業務について真の意味で「質の高い看護とは?」を論じることができるレベルの病院が日本に一体いくつあるか疑問だからである.ドクターの下請けとしてのナースではなく,ナースがドクターとまったく同一レベルで看護についてディスカッションできる病院は,極めて先進的な東京のごく一部の病院を除いては日本には存在しないのではなかろうか.看護の質を語る以前のレベル,すなわち病院のシステムに問題のある病院の方が多いように思われる.
 「いい(臨床につよい)ドクターのいるところにはいいナースが育つが,いいドクターのいないところにはいいナースは育たない」というのが私の持論である.日本の多くの病院は大学の“ジッツ”(傘下)病院として運営されており,昨日まで大学で研究に取り組んでいたドクターが,病院の臨床現場にまわってくる.そのドクターが卒後研修の中で本当によい臨床とは何かということを学んだことがなければ,大学病院での“ドクターの一方的主導型〜ナースは下請け”パターンの医療しか行われないことになる.「いい看護とは?」などということに興味をもっているドクターが果して周りにどの位いるか考えてみればよい.よい医療(看護も含めて)が行われるかどうかは,きれいな建物でも立派な設備でもなく,運営が如何にうまく行われているか,ひとえにシステム,ソフトウェアによる.

看護職として看護の質をどう考えるか

救急看護をモデルとした質向上への提言

著者: 高橋章子

ページ範囲:P.502 - P.505

はじめに
 日本看護協会の昨年3月の調査で,患者は入院に際して,優秀な医師がいる,看護婦などの人手が十分である,最新の医療機器が整っている,などを重視しており,また,看護の質的評価に戸惑うとの報告がある.
 また,看護協会は21世紀に向けた看護職の資質向上の方向として、研究,教育,臨床能力を備えた人材の育成を挙げている.そこで看護の質の評価というテーマについて,救命救急医療をモデルにして,臨床における,看護婦の個人または集団としての役割に視点をあてて,考えてみたい.

「患者中心」の理念の追求を通して—北里大学病院での実践と今後の課題

著者: 花井恵子

ページ範囲:P.506 - P.508

はじめに
 “看護”ほど,人間存在のすべてを包括的に考えている分野は他にはない.それほど我々人間にとっては身近で重要なことであるのにもかかわらず,わが国においては未だにその質について真剣に取り組むような体制を整えていない.
 社会的には,看護の質についての問題は,あたかも最近になって問われ始めたかのように見えるが,看護界においては,ずいぶん以前から言われてきていることであり,またその時代時代でその内容(求められる質)は変わってきている.たとえば近年のめざましい医療の進歩とともに,看護の内容もより専門的な知識や技術が求められるようになり,一方では我々自身も,従来の質では満足できなくなってきているということがある.そのような現状をふまえて,臨床看護婦の立場から,今までの体験も振り返りながら看護の質について考えてみたい.

失敗事例を通して老人看護の質を考える

著者: 川島和代

ページ範囲:P.509 - P.511

はじめに
 私は現在,開設5年目の80床の老人病院と昨年オープンしたばかりの併設の100床の老人保健施設で勤務している看護婦である.それ以前は金沢大学医療技術短期大学部の看護学科で助手として全国に先駆けて,(同校では平成3年のカリキュラム改正以前より老人看護学がカリキュラムに盛り込まれていた)老人看護の実習を6年間担当させていただいた.病院や地域に老人患者が多数を占める時代となってはいたが,老人看護教育の領域はまだ未知の領域だったことが記憶に新しい.
 こうして自分の看護の実践の場を,大半老人看護教育と老人医療の場に置いてきた.実習先の老人ホームや研修先の老人病院の看護は,総合病院と比較して看護者の量,質ともに大きな違いを感じ戸惑ったこともあった.一方,特別養護老人ホームの寮母職や老人病院の看護助手の方々が看護婦以上に細々と障害のある老人の介護にあたっていらっしゃる姿に看護の本来的な姿をだぶらせてみたこともあった.

看護を「買っていただく」立場から

著者: 村松静子

ページ範囲:P.512 - P.514

“はみ出し”ボランティアが選んだプロへの道
 今から十数年前のことである.夜の10時をまわった頃,ある病棟の一室で,がん末期患者に人工呼吸と心臓マッサージが施されていた.「もう,やめてください!」.必死に心臓マッサージを行っていた私の手は止まり,そのまま硬直してしまった.私の耳に入ったのは,家族の悲痛な叫びだったのである.救命とは何か看護とは何なのか,人間として生きるということは?——そのとき,私はさまざまなことについて考えさせられたのを覚えている.
 同じ頃,私は訪問看護のボランティアを始めた.「助けてください」の一言に,同情的に動いてしまった私は,思いも寄らぬ看護の魅力に取りつかれて行くことになる.本来,ボランティアというのは自分の余暇を活用して行うものと考えられるが,私は私生活のかなりの時間を強制的に訪問看護にあてるという間違いを起こしてしまった.休日でも夜間でも,必要なときはいっでも対応するというのが,私の訪問看護に対する根本的な考えである.そして,医学的・看護学的観点に立った確実な看護を提供することが,私の看護実践の理想的姿勢なのである.しかし実際には,時間の強制・拘束は私生活上実に苦しかった.始めてしまったからには途中で投げ出すこともできない.そんな私の心の葛藤とは裏腹に,看護婦である私に求められる事柄は,より多く,より深まって行ったのである.

看護組織の強化による質向上への取り組み

神戸市立中央市民病院にみる看護組織の強化策と将来構想

著者: 大町信子

ページ範囲:P.515 - P.518

はじめに
 平成2年に行った退院患者調査では当院を選んだ理由に,「設備が整っている」「医師が信頼できる」「最新の医療をしている」についで,「看護がゆき届いている」を561名中314名が選んでいる.看護は概ね市民の支持を得て発展してきたと自負したい.また,他病院から赴任された新しい医師は,ここの病院は看護婦がうるさい,医師の言うことを聞かないと看護婦の強さを強調される.事実看護部は組織的にみて他の部署に比べ量的には他を圧倒している.その反面,職位・権限といった面から見ると強いとはいえず,歯ぎしりすることもしばしばある.しかし,職位・権限に左右されない統合された組織的行動,風通しの良さ等もあわせもっている.
 今回,この看護組織の足腰の強さの所以を看護組織の歴史に探ると共に,新しい試みである看護部企画調査・業務改善担当者の働きとその影響,組織的将来構想と,さしあたって提供したいと考える看護の質について述べる.

小規模民間病院で院内教育の充実をめざす

著者: 菊地ツヤ子

ページ範囲:P.519 - P.521

特3類基準看護で在宅医療にも取り組む
 南大和病院(院長:池田貞雄)は,神奈川県大和市の南部に位置し,大和市のみならず,横浜,藤沢,綾瀬市等広範囲の人々が利用されております.内科,外科を主とした治療体系ですが,当院も昨今の医療ニーズにもれることなく,疾患は多臓器にわたり複雑化しています.昭和55年に診療所から病院に拡大されたことを機に,より一層の高度医療と地域のニーズに答えるべくサービスの充実に努力してきました.
 治療・診断分野においては,体外衝撃破砕装置やMRIの導入,夜間透析,夜間の外来診察等により,患者層はさらに広がりました.増大する高齢者対策としては,昭和63年から訪問看護を開始,昨年度からは老人保健施設も開設しました.

グラフ

21世紀に向けてのトータル医療の実現を図る—医療法人近森会近森病院・近森リハビリテーション病院

ページ範囲:P.473 - P.478

 近森会は今,若い息吹が渦巻いている.近森正幸理事長(近森病院院長)をはじめ石川リハビリ病院院長,川添管理部長とも戦後生まれである.近森理事長は2代目.数年前に前理事長から近森会を継承するとともにスタッフの若返りを図り,同時にハード面での整備を進めてきた.これにより,入院,外来部門の設備が整備され,急性期の医療からリハビリテーション,在宅医療の原点に正面から取り組む礎が確立された.
 近森病院は長年救急医療に積極的に取り組んできた.その前身は他の多くの民間病院同様,1946年に開院された近森外科医院に始まる.1951年には医療法人近森会近森病院となり,その後,交通事故などによる外傷患者の増加に対応すべく1964年に救急告示を受けた.現在,救急患者への対応の多さでは高知県内でもトップの医療機関となっている.

学会のスリム化に向けて 第48回国立病院療養所総合医学会長 国立療養所西札幌病院 前川隆院長

著者: 中山昇二 ,   八木保

ページ範囲:P.480 - P.480

 先生とお近づさになったのは,9年前院長連盟本部役員を仰せつかって以来である.その後平成2年,先生が院長連盟会長に就任され,副会長に私をご指名下さってからしばしばお目にかかり親しくさせていただいている.
 先生は札幌に生まれ,昭利29年北海道大学医学部卒業後外科を専攻され昭和49年国立療養所西札幌病院長に就かれ,国立の中でトップ級の病院を作られた.また昭和53年以来院長連盟の役員をされ,今,全国150か所の国立療養所のトップ・リーダーとしてご活躍中である.

主張

新しい時代に見合う看護教育の展開を

著者:

ページ範囲:P.481 - P.481

 看護婦不足が叫ばれる中,今年の看護婦(士)学校・養成所の入試を振り返ってみると,少なからず変化がうかがえる.バブル経済の崩壊による不況の波が幾分たりとも影響を与えたのかも知れない.昔から不況に強い看護職といわれていた所以と言いたいところだが,どうもこういった神話が通らなくなってきたようである.しかも今年から18歳人口の減少期を迎えたというのに,看護婦(士)学校・養成所の施設増や定数増が図られ,その門戸は全体として大幅に広がりをみせた.その上,3Kとまでいわれた看護職への志願者数の減少が危ぶまれ,そのため場合によっては定員割れも危惧された.
 しかしそういう中で,それなりの定数を確保できた背景に,若き世代の人々の価値観が大きく変容しつつあるのを見逃すことはできまい.それは例えば,「自分に生かす」ことを物差しにして学校を選ぶといった傾向に象徴されており,一般大学における心理学や社会福祉系への志願者増がそのことを物語っている.

ケース・レポート

看護業務の見直しと看護体制の検討

著者: 花井美恵子 ,   塩谷浩

ページ範囲:P.522 - P.524

 第2次医療法改正により特定機能病院と療養型病床群が誕生した.恐らく近い将来施設医療の体系化が更に図られることであろう.今回医療法改正で定められた療養型病床群においては,入院患者6に対し看護婦1と規定されたが,従来は老人病院と精神病院の特例以外すべて医療法上の規定は入院患者4人に看護婦1人であった.一方で診療報酬上では基準看護等で人員配置基準を定めていた.このように我が国の病院が多様化しつつあるのに伴い,それに対応する看護体制はどうあるべきか再検討の時期に来ていると思う.
 我が国の病院ではこれまで病棟業務のほとんどを看護職(看護婦,准看護婦)に委ねてきたが,そこには雑多な業務が混在しており,それらのすべてを看護婦が行わなければならないものかどうか検討の余地があるように思える.その病院(または病棟)における業務を分析し,より効率的に患者サービスを行えないものであろうか.このような趣旨で今回当院が取り組んでいる看護体制変更の試案を紹介するので,御批判を抑ぎたい.

特別寄稿

英国のナーシングホームにおけるケアのクオリティアシュアランス—監査の実際

著者: 荒井由美子 ,   岩崎榮

ページ範囲:P.525 - P.528

はじめに
 本稿の目的は,英国のナーシングホームにおけるケアのクオリティが,国家レベル,地区レベルで,また,日常レベルでいかにコントロールされているかを考察することにある.はじめに留意すべきは,英国におけるナーシングホームの言葉の定義である.日本語の老人ホームという言葉は,英語のレジデンシャルホームという言葉とナーシングホームという言葉の両方の意味を包含した形で用いられている.一般的に,レジデンシャルホームは,介護は必要であっても看護が必要でない入所者を対象とするのに対し,ナーシングホームは,看護婦によるケアが必要なより重症な入所者を対象としている.
 英国における65歳以上の人口の総人口に占める割合,つまり高齢者人口の比率は,1951年から1990年までの間に13%から23%に増加している1).65歳以上の者全体の医療および介護施設への入所者はわずか3%であるが,85歳から94歳の者では19%,95歳以上の者では51%にも達している2,3)

研究と報告

病院図書室のコンピュータ利用はどの程度普及しているか

著者: 野原千鶴 ,   奈良岡功

ページ範囲:P.529 - P.532

はじめに
 病院図書室は,病院における医療の質を維持,発展させるには不可欠な存在であるが,十分な設備,予算,マンパワーに恵まれているとはいえない現状である.そのような状況下でも,最近,業務の省力化を推進しようという図書室が散見されるようになってきた.近年のOA機器の普及に伴い,病院図書室にもコンピュータやワードプロセッサを設置し,オンライン文献検索やCD-ROM検索のみならず,図書室の業務の補助に利用したり,利用者が独自に利用するケースも増えてきている.
 この度病院図書室のOA化,特に図書室業務について,どの程度コンピュータ化が進んでいるかについてアンケート調査を実施した.今回の調査では,病院図書室研究会,近畿病院図書室協議会,北海道,福島,栃木,新潟,静岡,三重,島根,高知の8地区の病院図書室ネットワーク,さらに済生会病院グループの協力で283病院から回答を得た.

建築と設備・86

国立がんセンター東病院

著者: 岡本勉 ,   厚生省保健医療局国立病院部

ページ範囲:P.533 - P.538

背景
 近年,我が国の医療を取り巻く環境は大きく変化している.公私の医療機関が急速に整備された結果,その数やベッド数など医療の量的確保はほぼ達成している.今後はこの医療資源の効率的な活用を図りつつ,医療機関相互の機能分担と連携を強化していくことが重要になってきている.
 このような観点から国立病院・療養所については,その現状を見直し,我が国の医療機関における役割分担として,真に国立医療機関にふさわしい広域を対象にした高度または専門医療などを担っていくことが必要になってきている.

厚生行政展望

学会認定医の公認と広告をめぐって

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.539 - P.541

はじめに
 昨年の医療法改正を機会に診療科名の追加が検討されるようになり,日本医学会等の専門医療関係者から熱い期待が注がれている.学会による認定医の資格をもっている専門医(以下「認定医」)は外に向かって広告したいという希望をもっている.今回は,認定医制度について検討を行ってみる.

病院経営Q&A・17

適正人員の算出

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.542 - P.545

Q 「各部署からの要求に悩まされてる.適正な人員数をどうやって決めたらよいのか」

MSWの相談窓口から

親愛なる者へ—遺族の茶話会によせて

著者: 寺田香

ページ範囲:P.546 - P.546

ある再会
 「母子医療の手続のために区役所へ行ったんです.そしたら,窓口の方が『離婚ですか』って……」.握りしめた指先の爪が白くなっている.「離婚でもいいから,生きていて欲しかったのに……」.妻の目から大粒の涙が溢れてきた.春浅い日,妻の思いが独り言のように続く.「今度,夫の同僚の方々に集まっていただこうと思ってるんです.父親としてだけではなく,仕事にも一生懸命だった夫のことを,少しでも息子たちに伝えてもらいたいと思って……」.泣きはらした顔にわずかな笑みを戻し,妻は相談室を後にした.

看護業務改善事例集

公立富岡総合病院の「助勤」システム

著者: 青木孝子

ページ範囲:P.547 - P.549

はじめに
 1990年2月から全ての病棟で申し送りを廃止しての看護を行っている.それ以来,全国の病院から「申し送りをしないで看護ができるのか」「どのような方法で看護をしているのか」などと実際に見て聞いて確かめたいと見学者が絶えない.
 このような来院者と看護業務改善について意見交換をすると,異口同音に驚かれるのが,申し送り廃止と“助勤”システムである.「めずらしい」「どうして出来るのか」「うらやましい」と言われる.そこで当院の助勤システムを紹介したい.

老健Now・1

老健施設は日々進化している

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.550 - P.551

 老人保健施設は,1986年の老人保健法改正法で制度が創設され,88年4月から本格案施された.実施から丸5年,2度の老人保健施設療養費の改定を体験して,いよいよ6年目に突入し,約700施設,7万床を超えるまでに成長した.そこで,病院が経営している施設の中で,特徴的な施設を取り上げ,その施設の沿革や特徴,経営内容やケアの質などをレポートしたい.第1回目は「老健施設は日々進化している」と題して,制度全体の動向について述べたい.

副院長考・4

日頃思っていること—脳神経外科,単科の病院の立場から

著者: 川口進

ページ範囲:P.552 - P.553

 病院という一隻の大きな船を沈没,座礁させずに目的に向かって予定のコースを進むためには,熟練した舵とり,つまり船長が必要で,その周りに優秀な航海士や機関士そのた多くのスタッフの存在が必要となる.
 今日の日本の病院はちょうど荒波にもまれる船のようで,民間病院の65%が赤字を抱えているという調査結果がその一端を物語っている.病院長の姿勢がただちに病院の姿勢に反映する民間病院にあっては病院長の舵とりいかんで病院の沈没,座礁もありうるわけで,その病院長を補佐するのが副院長ということになり,その責任も重大であろう.

病院管理フォーラム

[診療録管理]診療記録の情報化

著者: 木村明

ページ範囲:P.554 - P.555

 情報化社会の到来により,病院機能を情報の視点から種々見直そうとする動きが盛んになっている.歴史的にみると診療情報は診療録としてその収集,処理,制御すべてを医師,看護婦,検査技師等の人力に依存してきた.
 そもそも診療録管理部門の誕生は,病院がその機能を拡大させた結果,増加してきた記録や情報の管理業務を代替させるものとして始まったものであった.人力で作成された現物の管理には,対象記録の増加に伴って管理部門の拡大と担当職員を増加させることが必要となり,現在では病院内に確固たる地位を占めることになった.これが欧米における病院の現状である.

[臨床工学技士]ICUにおける呼吸管理

著者: 原直哉

ページ範囲:P.556 - P.557

 最近の人工呼吸器は,マイクロプロセッサーを内蔵し,フィードバック系により流量または,圧を自動制御している.そのため最近の呼吸管理においては,自発呼吸を生かしたモード,たとえば,同期型間歇的強制換気(SIMV),プレッシャーサポート換気(PSV),強制分時換気(MMV),さらに持続的気道内陽圧(CPAP)などが頻用されている.以前は,回路内圧の推移を示すマノメーターと,呼気換気量のモニターしか備えていない機種が大半であったが,各種測定技術の進歩に伴ってモニター機能も充実し,人工呼吸器の作動状況だけでなく患者の病態をも監視することが可能となり,呼吸療法に関する知識やテクノロジーは,質,量ともに急速に増大してきた.したがって,その性能を十分に発揮させるためには,人工呼吸器の操作に必要な知識と訓練を積んだ臨床工学技士が必要となってきたのである.ここではまず人工呼吸器の保守・点検について述べ,次に呼吸療法業務について解説したい.

麻酔医が往く・6

ICUと麻酔医

著者: 後明郁男

ページ範囲:P.558 - P.558

ICUの虚像と実像
 ICUと言えば,ここ十年余りでずいぶん普及したものである.
 かつては限られた大病院や特殊な病院にしかなかった.今では,ちょっとした病院には,どこでもICUと称するスペースがある.斯く言う私たちの病院でも,平成8年度の運用開始を目指して,厚生省基準をクリアしたICUの開設準備を進めている.麻酔科がある施設では,ふっう麻酔科が運営の中核となっているようで,私たちのICUも麻酔医が主体で運営する予定である.

看護管理用語解説

看護における質の保証(Quaity Assurance)

著者: 草刈淳子

ページ範囲:P.559 - P.559

 「看護における質の保証」が日本で盛んにいわれるようになったのは,80年後半以降である。しかし,看護の評価は,すでにナイチンゲールによって,1858年に軍病院の入院患者の転帰や平均在院日数の病院統計によって示されている.
 医療の評価は,1917年に米国において病院認定合同委員会JCAH(Joint Commission on Accredita-tion of Hospitals)が結成され,「病院標準化運動」として始まった.1965年に連邦政府の医療保険として,65歳以上老人を対象としたメディケア法が導入されてから,医療費支払いの公正を期するため病院医療の質査定という意味で,現在のJCAHO(Joint Commission on Accredita-tion of Healthcare Organizations)による病院認定が重要視されてきた.この中に看護サービスと在宅ケアサービスについての基準が示されている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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