icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院52巻7号

1993年07月発行

雑誌目次

特集 病院のダウンサイジング

病院のダウンサイジングとは何か

著者: 濃沼信夫

ページ範囲:P.578 - P.581

 昨年7月に公布された医療法改正により,本年4月から特定機能病院と療養型病床群がスタートすることになった.改正医療法の実効化を目的に,診療報酬の改定が行われ,特定機能病院医療連携推進事業,インフォームド・コンセントの在り方検討会の設置,かかりつけ医の機能強化などが進められているが,最も注目されるのは,療養型病床群の整備促進のための「患者環境改善施設整備事業」であろう.これは,昨年度の補正予算から認められた新規事業で,病床数を10%以上削減して療養環境を改善した場合に,そのための増改築費用の一部が補助されるというものである.
 これは一般病床から療養型病床群への転換を要件とするものではないが,病床利用率の低い中小病院を中心に,療養型病床群整備に向けた動きが活発化しつつある.施設整備にかかる公私の格差が増大し,その費用負担について不公平感が高まっている折,私立大学助成と同じく,民間病院にも国の補助金が支出される道が開かれた意義は大きい.わが国の病床数の7割を占める民間病院は,私立大学と同じか,またはそれ以上の公共的役割を担っていると思われるからである.

我が国の今後の病院病床数のあり方と医療計画

著者: 遠藤明

ページ範囲:P.583 - P.590

 昭和60年12月の医療法改正において医療計画が医療法に位置づけられ,61年8月に施行されて,すでに7年が経過しようとしている.病床数に直接影響を与える必要的記載事項に限ってみれば,62年2月の神奈川県から平成元年3月の富山県までで全国の医療計画が出揃い,法第30条の3第8項に基づく5年ごとの見直しも,平成3年4月の岩手県,千葉県以降,平成5年4月1日現在28道府県で進められてきた(表1).
 本稿では,まず医療計画の概要と二次医療圏の現状を記述した後,ダウンサイジングについて今後の医療計画のあり方とも関連させて考察を加えたい.

最近の施設計画にみるダウンサイジングの方向

著者: 河口豊

ページ範囲:P.592 - P.597

背景
 我が国の医療施設が量的には欧米先進諸国に比肩するようになり,これからは量から質へ転換して行かなければならないといわれてから久しい.病院ベッド数を誇り,医療機器の高度化を競う傾向にあったことは否めない.受け手である患者に必要十分な医療サービスが提供されているか,の厳しい評価がなされずに走り続けた結果ともいえよう.医学関係学会でも話題は技術開発が中心のようであり,患者にどのような医療が必要十分で適切か,どのような医療は不必要で行うべきではないのかなどのチェック姿勢は馴染まないようである.現在あるとすれば診療報酬査定であろうか,それとても医療施設側と十分了解が成立しているわけではない.
 そのため,在宅医療サービスなどの機能が欠落していたこともあり,規模の大きいことが,また機能の高いことが目標となり,診療所から小病院,大病院と拡大してきた病院を賞賛しがちであったといえよう.医療に少しでも関係のある住民の多くを医療の枠の中に取り込み膨れ上がってしまった.その結果,実態は医療法に定めた最低限の職員数にも満たない病院を生み出し,ベッド間隔のほとんどない病室を持つ病院が未だに存在することとなったのである.これは第一次(1985年),第二次(1992年)医療法改正と進んだ要因の一側面であったろう.

病院のダウンサイジングの事例—病院の質的変化と病床減少/財団法人磐城済生会における病床のダウンサイジング/「らしさ」を出すためのダウンサイジング/東京銀座の救急中小病院/結核病棟を減床/私がダウンサイズしなかった理由

著者: 猪口雄二

ページ範囲:P.598 - P.606

当院のダウンサイジング
 病院のダウンサイジングの事例として当院の経験をここに述べたい.
 寿康会病院は昭和36年亡父が初代理事長となり,医療法人財団として東京都江東区に設立された.当時は近隣に病院がなく,大変患者数が多かったそうである.しかし数年後にはいくつかの病院が誕生し,この地ではバス停1つに1カ所というほど病院が立ち並んでいる.現在江東区の人口は39万人であり,高齢者比率は10%台,人口の5割が高層住宅に住んでいるという,いわゆる東京の下町ベッドタウンである.

[座談会]今なぜ病院のダウンサイジングか

著者: 竹田秀 ,   伊藤誠二 ,   今田寛睦 ,   竹内實

ページ範囲:P.607 - P.612

 竹内 世の中バブルの崩壊の後に,各企業でいろいろリストラが行われたり,あるいはいろいろなところでダウンサイジングが行われたのですが,病院がダウンサイジングという手法で小型化するとか,効率化するとかというのはどういう意味があるかということを掘り下げてみたいと思います.

グラフ

ぬくもりと思いやりのある医療をめざす 公立松任石川中央病院

ページ範囲:P.569 - P.574

新装なった病院
 公立松任石川中央病院は金沢平野の中央部,手取川扇状地の中央に位置している.JR金沢駅から北陸本線で大阪方面に向かって10分位の所に松任駅がある.駅から車で10分で病院に着く.
 松任(まっとう)という地名の由来はこうである.承平5年(935年)国司松木氏の勧めにより3つの村落が併合された際,「松木氏の意図に任せる」という意味で「松任」と命名されたという.江戸時代の女流俳人加賀千代女の出身地といったほうが分かりやすいだろうか.

21世紀に向けて,看護教育を考える人—厚生省看護研修研究センター所長 安住矩子さん

著者: 野口美和子

ページ範囲:P.576 - P.576

 「よく考えて」から,これが安住矩子さんの仕事の仕方のようである.
 1960年学生運動華やな時代に,私は安住さんと机を並べて学んでいた.私はクラス委員て級友をデモに誘う役であった.デモ参加の断わリ方には,いろいろあった.安住さんのは,「まだ,よく考えていないの」であった.また「ゴメンネ,もうちょっとよく考えさせて」ともいった.これはとてもめずらしい断り方だったので今でもよく覚えている.安住さんはいろんなことに関心を持っていて,人の話しなども,目をパチクリして聞いてくれる人だった.それで同意してくれているなと思っているとそうではなく,「よく考えて」いるのである.そして,人の意見やいきさつにこだわることなく自分の考えを持つ,そうなると,ちょっとやそっとでは考えを変えない.これが安住さんの素敵なところである.卒業後彼女と一緒に仕事をした人の話を統合すると,この行動傾向は一向に変わっていないようである.

主張

5つ星病院出でよ

著者:

ページ範囲:P.577 - P.577

 世紀末のせいか,グルメ番組花盛りである.人間の基本的欲求をくすぐるのか,お手軽であるのか知らないが,テレビにしろ,雑誌にしろグルメ情報が満ち溢れている.5つ星とかA級とか順位づけ情報が見られる.味とは主観的なものと思いながらも時に参考にしたくもなる.
 そういえば順位づけ情報が増えている.『暮しの手帖』は商品テストのパイオニアであり,購入者ばかりでなく,製造者にも役に立つ情報であった.最近はホテルのランキングが発表されたり,ワインの世界でも100点満点の順位づけが発表されている.情報化社会の申し子であろうか.

研究と報告

臨床医のためのコンピューターによる患者管理—中小民間病院の立場から

著者: 小野隆男 ,   高橋博義 ,   広瀬忠次 ,   高用茂 ,   金潤吉 ,   石田憲一郎

ページ範囲:P.613 - P.615

 市販の病院向けソフトは多くの場合,レセプト作成に主眼が置かれており,他には,検査システムなどの処理が多く,臨床医の日常業務の効率化を望めるものではない.
 臨床医としては,外来・入院のすべての患者を対象とする必要はなく,手術症例,内視鏡あるいは疾患別などの条件のもとに患者のデータを集積して,日常の診療や学会発表などに役立てるのが最適と思われる.

インタビュー

HIV感染者への医療者の対応—東京都立駒込病院 根岸昌功医長に聞く

著者: 編集室

ページ範囲:P.616 - P.621

 ■まず,HIV感染者への対応について都立病院としての基本的方針をお話しいただけますか.
 根岸 都立病院の場合には,都の衛生局の傘下で動いていますから,その考え方,意向のもとで動いています.ですから,駒込病院単独で動いているのではなく,都立病院という全体のわくの中で動いている部分と,それを越えた活動とがあります.これをどう位置づけるかが大変難しいところですが.

麻酔医が往く・7

薬剤部と麻酔医

著者: 後明郁男

ページ範囲:P.622 - P.622

 薬剤部と親しくお付合いさせていただくようになって,もう数年になる.薬剤部と麻酔科の付き合いのなれ初めは,共同でWHO方式がん落痛治療法の普及活動を始めたことである.
 私が箕面に赴任しておよそ10年になるが,地域に密着して診療活動をしている当院のような基幹的第一線病院が,診療活動の中心的施設であるとともに実質的に地域住民のがん死の看取りの施設であることに気づくのに,そう時間はかからなかった.当時,がんの終未期ケアやホスピス運動に対する関心が社会的に高まり始めていたが,ボランティアリズムとキリスト教文化を基盤としたホスピス運動がわが国でそう簡単に育つとは思えず,また家庭の介護力や住宅事情を考えると在宅がん終末期ケアも絵に描いた餅に思え,私たちの病院のような施設でのケア能力の向上こそがわが国のがん終未期ケア向上の鍵であると確信するに至った(これは今も変わっていない).ちょうどその頃,WHO方式が公表されて,すぐに飛びついたことはこのシリーズでも先に触れたが,WHO方式の良さはその簡便性(普遍性と言い換えてもよい)と高い有効性にある.ある組織全体のがん終末期ケア向上の支柱として活用できることにこそ,その真骨頂がある.

建築と設備・87

ホスピス3題

著者: 高野重文 ,   奥田順二 ,   岡本勉

ページ範囲:P.623 - P.629

時代の変化と設計
 十年来の検討を重ねて,1990年1月当ホスピスはオープンした.その2カ月後に緩和ケア制度が発足して,4番目の施設として承認された.
 新制度以前のホスピスの運営,先行する聖隷ホスピスと淀川キリスト教病院のような大病院と異なる小病院での運営の経済的不安と,たまたまの建設費上昇による厳しい条件下で,当施設は暗中摸索のうちに設計が進められた.

看護業務改善事例集

当院における看護業務改善のプロセスと成果—他部門との交渉ではタフになれ

著者: 鈴木小津江

ページ範囲:P.630 - P.632

当院の概略
 当院は1985年2月16日にオープンしたので,8年と少しの新しい病院である.
 発足の主旨は,研究学園地区の形成に伴う人口増に備えた救命救急を担うためであった.概略を表1に示す.

厚生行政展望

「診療報酬のあり方」日医報告書(上)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.633 - P.635

はじめに
 日本医師会は,4月20日に「診療報酬のあり方—21世紀に向けて」を発表した.この報告書は,医療保険制度および診療報酬体系の改革案を具体的に提示したものである.医療保険制度については,長期積立型医療保険制度や介護保険制度の創設について,また,診療報酬体系については,病院と診療所とを別建てとした診療報酬点数表を提案している.
 これは,厚生省保険局の業務全般に係わる提案であり,厚生省の関係者は気になるところである.今回は,日本医師会の報告書をもとに検討を試みる.

病院経営Q&A・18

動機づけ

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.636 - P.639

Q 「時々医師が何を考えているのかわからなくなる時があるが,医師とうまくつきあうにはどうしたらよいのか」「医療の仕事はどちらかというと地味で単調な仕事が多いが,こうした状況の中で,いかに職員のやる気を引き出せばよいのか」

病院管理フォーラム

[診療録管理]診療情報の精度管理の基本

著者: 木村明

ページ範囲:P.640 - P.641

 これまで5回,診療録管理実施に必要な条件,留意点,将来について述べてきたが,その基本は適切に管理することにより,診療録のより多面的な活用を期待することである.
 しかし,管理がいかに適切でも,対象の記録が医学的論理を保ったもので,内容に欠落,不備部分のない,記載者以外でも読解できる客観性を保つものでなければ利用されないことになる.最終回はこの問題を取り上げる.

[臨床工学技士]機器の中央管理

著者: 埋田辰夫

ページ範囲:P.642 - P.643

 医療機器の管理方法の一つとして中央で一括管理する方法がある.当院では病棟増築に合わせて,MEサービスセンター(以下センターと略す)を設け管理課用度係が機器の中央管理業務を担当している.センターを主に受け持っているのは1名の臨床工学技士である.今回,センターの開設経過,業務内容を述べる.また当病院職員のセンターに対するアンケート結果も報告する.

老健Now・2

老健施設は質が勝負

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.644 - P.645

 1988年4月の本格実施以降,老人保健施設は,おおむね順調に発展してきた.世間の評判もよく,一見して問題がないようにも思われるが,各施設を訪問してみると,試行錯誤の日々であることがわかる,多くの施設が,全体計画,施設建設,開設準備,開設という流れの中で,とまどいや不安を体験する.「経営は大丈夫か」「職員の教育は」「利用者は予定通り増えるのか]「果たして利用者を社会復帰させることができるのか」など不安はつきない.そして開設後は,計画ないし理想と現実とのギャップにとまどうことになるが,結局は,サービスの質が勝負になる.

病院アメニティの改善・9

明るい玄関棟を新築しイメージアップ—中島病院

著者: 中島洋一

ページ範囲:P.646 - P.647

 アメニティとは環境の中にいかに多くの自然を取り入れるかということであろう.しかし当院におけるアメニティの改善は,もっと切実な問題を出発点としている.
 昭和44年5月,中島外科胃腸科医院として出発し,昭和48年12月に医療法人洋友会中島病院と申請認可改称,外科・整形外科・胃腸科を中心とした外科系一般病院(許可病床56床)として順調に伸びて来た.

副院長考・5

病院管理運営面では扇の要—民間の研修指定病院の立場から

著者: 正木秀人

ページ範囲:P.648 - P.649

 わが九州厚生年金病院はいわゆる国立民営の,北九州市における中核病院として機能している総合病院である.設立は昭和30年3月1日で,575床を有している.
 病院の現況は,延べ床面積33,430m2で,診療科としては整形外科,外科(一般外科,消化器外科,心臓外科,呼吸器外科,小児外科),内科(循環器科,消化器科,血液科,老人病科等),皮膚科,泌尿器科,産婦人科,眼科,耳鼻咽喉科(気管食道科含む),小児科,精神科,神経内科,脳神経外科,放射線科,臨床病理検査科,健康診断部,理学診療科,歯科,麻酔科のほか,薬剤部,放射線室,中央検査室,手術室,中央材料室,リハビリテーション室,義肢室,医療社会事業部,栄養部,臨床心理室,中央写真室,病歴室,図書室を備えている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?