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雑誌目次

雑誌文献

病院52巻8号

1993年08月発行

雑誌目次

特集 いま病院トップに求められる能力とは

病院のトップはどのようにして選ばれるか

著者: 伊賀六一

ページ範囲:P.694 - P.696

はじめに
 今日の社会にあって病院医療に関する問題は枚挙に暇がありません.それらの問題の解決はすべてトップの在り方に大きく関わります.トップの人選こそが病院運営の根幹をなすと言っても過言ではありません.
 「病院のトップはどのようにして選ばれるか」というメカニズムを考察するに当たって,はじめに,その根底にある「組織とは何か」ということにひと言触れておく必要があると思います.組織とは人によって構成され,まさに「人」そのものと言えましょう.人選に際して「人」とは精神=考え方であるという理解を基本にすれば,人選を誤ることはなく,また逆に「人」を見抜く眼力が人選する側にも要求され,組織体の将来がそれにより左右されることになります.

チェーン病院では院長をどう評価しているか

著者: 中村哲夫

ページ範囲:P.697 - P.698

板橋中央総合病院グループ(IMG)の歴史と理念
 昭和31年板橋中央病院を開設し,昭和37年戸田中央病院(TMG),昭和39年上尾中央病院(AMG)に分離独立した.それぞれ昭和40〜50年にチェーン展開し,現在に至っている.展開パターンは,地域からの要請,経営委譲,金融機関の紹介等であった.
 板橋中央病院グループは“愛し愛される病院”をモットーに,地域住民,医療機関,医師会と密着した医療を目指している.医療人としての自覚を持つとともに,技術向上のための内部教育に励み,高度医療機器の導入による高度医療の実践を心掛けている.

病院経営の専門職を考える

著者: 大道久

ページ範囲:P.699 - P.701

問われる経営の専門性とその理念
 過日,経営に行き詰まった病院を買収した新経営陣が,強引な患者確保や保険診療で許容される得る限界の医療内容によって,再建の軌道に乗せたとされる過程のドキュンタリーがテレビ放映されて,医療界に波紋を投げかけた.医療の前で奇妙に従順な患者や,皆保険下で負担感が希薄化したまま急速に医療の経営環境が悪化することの問題点を明らかにしようとした制作意図とは裏腹に,論点を引き出そうとした事例の扱いに批判や議論が寄せられた.
 古びたX線装置の代わりに新たな画像診断装置が搬入されてこれまで行われなかった医療が唐突に開始され,地域医療の概念からはほど遠い遠隔の老人病院から高齢者が搬送されて改めて採血が行われ,透析患者の居宅に出向いて転院を勧誘する様子などが臆することなく描れた.批判の多くは,このような事例は例外的で,多くの病院は患者のために厳しい医療環境に必死に耐えているのであり,このような報道は国民に誤解を与えるというものであった.また,医療費抑制策が医療の荒廃を招きかねないほどに至っていることを国民に知ってもらうことは必要であるとする意見も聞かれた.

企業経営者の能力

著者: 奥村昭博

ページ範囲:P.702 - P.705

 企業経営者の本質とは何だろうか.飽くなき利益の追求者としてのまさに資本家としての姿もある.あるいは,社会貢献を掲げて理想を説く姿もある.また,人々の力を糾合して,組織を纏めあげ,経営を実行する姿もある.ちょうど人間に様々な顔が存在するのと全く同じように,企業経営者にも様々な顔がある.
 しかし,今日,多くの企業経営者はこれまでの経営のあり方に対して大きな挑戦を受けるようになった.これまでひたすら企業の成長に邁進することが経営者の責任であった.しかしここにきてこの一本調子の成長追求の経営スタイルに大きな批判が諸外国から起こったのである.

[てい談]変革期における経営者の決断

著者: 浅田栄一 ,   亀田俊忠 ,   井手義雄

ページ範囲:P.706 - P.713

 井手 バブル経済崩壊後のわが国経済は,構造的な複合不況の真っただ中にあり,企業ではトップの交替が相次いでおります.変革期における経営者の舵取りがいかに困難であるか,改めて経営者の責務というものを考えさせられるところです.
 医療業界でも昨年,社会診療報酬の改定と第2次医療法の改正が行われ,その内容は今後の医療業界の激変を暗示しているように思えます.

現代が求める病院管理者像

国立病院を運営する立場から

著者: 丸田和夫

ページ範囲:P.668 - P.669

国立病院部創設のねらい
 近年,医療の高度化への対応,経営環境の厳しさ,患者の病院・医療に対するニーズの多様化(アメニティー,インフォームドコンセント)等々,医療機関を取り巻く状況は大きく変化しており,総じて非常に厳しいものがある.例えば,経営についてみれば,民間医療機関の倒産を耳にする機会も少なくない.
 国立病院・療養所の経営・財政状況も他の医療機関同様,近年悪化の一途を辿って来ている.現在国立病院・療養所は全国で247施設あり,5万4,000人の職員が働いているが,歳入に占める一般会計からの繰入は約4分の1,約2,500億円に達している.また施設整備や医療機器購入にあてる財政投融資からの借入金残高も6,000億円を超えている.その原因として,疾病構造の変化などのほかに,国立病院事業の運営の仕組みや体制が「事業体としての経営」を適切に担保できるものとなっていなかったこと,職員に事業体としての認識が乏しかったことなどが考えられる.

都立病院を運営する立場から

著者: 樋口正明

ページ範囲:P.670 - P.672

都立病院の変遷と現況
 都立病院は,明治以降,伝染病院,精神病院等の単科病院として発足し,当時の社会で大きな役割を果たしてきた.その後,昭和の前半に市立の普通病院として診療を開始し,第2次大戦後の混乱期,復興期の中で伝染病医療,結核医療および入院助産を中心とした産科医療等を通して地域医療に貢献してきたところである.
 その後,医療需要の変化と医療技術の向上に伴い昭和50年にがんおよび感染症を中心とする新駒込病院が開設され,以後,総合病院の改築,神経系難病の専門医療を行う神経病院の新設がされてきた.

病院経営への融資を通して

著者: 古市圭治

ページ範囲:P.673 - P.675

 国の施策は,行政,財政,税政に大別されるが,社会福祉・医療事業団は福祉施設および病院・診療所等の設置に必要な資金の融資等,もっぱら財政金融面から福祉医療関係者の要請に応えて各種の事業を展開している.従って本誌のテーマである「病院管理者像」を云々する立場にはないが,近年管理者には従来にまして経営能力が求められていることから,当事業団の事業のうち医療経営に直接関係する医療貸付事業と経営診断・指導事業の最近の状況を通じて,これからの医療経営の方向についてふれてみたい.

病院管理者教育機関の立場から

著者: 北川定謙

ページ範囲:P.676 - P.678

国立医療・病院管理研究所の沿革と教育の概要
 我が国の病院管理研修のスタート
 私は病院管理者教育機関の立場からということになっているので,そもそも,当研究所は如何なる動機で設立されたかについて振り返るところから始めることとする.
 当研究所は昭和24年,病院管理研修所としてスタートしたのであるが,これは占領軍GHQの公衆衛生福祉部(PHW)の強い勧告によったものである.当時の文書によれば,①院長機能の不在および病院経営の実情についての無知識,②不十分な組織,拙劣な職員の活用,③不完全な衛生状態,④不完全な病歴,⑤不完全な備品の取り扱い,⑥不適切な麻薬の保管,⑦誤った診断および治療法,⑧診療会議および研究資料の不足等が挙げられている.

研究者の立場から

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.679 - P.681

診療と経営の分離
 病院のトップマネージメントのあり方として,院長以外にこれを補佐する専門経営者の必要性をあげ,さらには「診療と経営の分離」と称して,医師院長と専門経営者とによる分業の合理性を説く者もいる.
 後者については,近代企業の経営において,「資本と経営の分離」と「所有と管理の分離」が一般化し,所有者経営から経営や管理の専門家による経営者支配が一般的になっているという,近代経営の一般的動向を医業界に導入するのが正しいと考えているのであろう.

公私両方の病院長を経験して

著者: 廣田耕三

ページ範囲:P.682 - P.684

はじめに
 筆者は,昭和58年より平成2年末まで約7年半,熊本市立熊本市民病院長を勤めた後,平成3年より医療法人おもと会大浜第一病院長として勤務している.公立病院長の7年半に比べて,民間病院長の経験は2年余りに過ぎないので,両方を比較して論じる資格はないと自覚しているが,経験と言うより印象を含めて私なりの感想を述べたい.

国立病院看護部長経験者の目からみて

著者: 武藤美知

ページ範囲:P.685 - P.686

 看護部長として職責についた期間は長くはなかった.しかし辞令交付のその時,1枚の辞令はずっしりと重かった.看護部長の選び方はそれぞれの設置主体の事情もあって一律一様ではないが,全職員の60%以上をもつ部門のトップとなれば条件も厳しくなるのは当然であろう.
 国立医療機関(厚生省)の看護部長は厚生大臣が任命権者であって大臣発令の辞令が交付されることになっている.辞令に浮かぶ朱色の極印はまだ見ぬ陣地に向かう旗印にみえるのである.それは病院長自らの選考尺度で選んだり,昇格させたり出来ない仕組みになっていて国立病院・療養所の病院長は1枚の辞令を持って現われる看護部長と運命的な出会いをすることになる.胸のうちには病院長,医師,婦長たち,多くの看護婦との間に起こる人間関係に密かな自負と一抹の不安が去来する.

民間病院総婦長の目からみて

著者: 星野陽子

ページ範囲:P.687 - P.690

はじめに
 むずかしいテーマをいただいて,総婦長2年目の若輩な私は,悩んでしまった.でも,改めて病院の管理・運営を考え,整理する機会としてまとめてみたい.
 医療経営の危機が叫ばれている時代に,当病院は,地域の住民の医療要求に応えながら,規模を拡大・発展させつつここ何年か何とかプラスの収入となっている.また,看護婦不足が叫ばれる中,意欲がある看護婦がマグネット・ホスピタル(磁石のように集まってくるという意味だという)のように集まってきて,ここ数年ほとんど欠員が無い.規模は小さいながらその時々の困難な状況を住民と職員の創意を生かしながら,切り拓いて来たことにその一因があると思う.

民間病院事務長の立場から

著者: 田中熈

ページ範囲:P.691 - P.693

はじめに
 最近,多く耳にするようになった病院倒産の諸例を前に,改めて病院も企業である以上,当然のことながら継続・発展させなければならないものと思う.
 「Z旗高くかかげながら,自らの信念のまま,波間深く沈んで行く船体—病院」.映画の1シーンならそれなりに,かっこ良いですむかもしれないが,それぞれの病院を絶対にこうはさせないために,いま院長に何が求められているか,現代が求める病院管理者像とは何なのか,備えるべき条件とは…….

グラフ

公立病院としてのひとつあり方を示す—藤沢市民病院

ページ範囲:P.660 - P.665

 藤沢市民病院の院内を歩いていて感じるのは,一言でいえば「清潔な病院」という印象.それはとかく病院にあり勝ちな無機的な冷たい雰囲気とは別の「柔らかな清潔感」とでも言えるだろうか.開放的な湘南の明るい陽光が一役買っていることもあるだろうが,どうもそれだけではなさそうだ.
 藤沢市民病院が設立されたのは1971(昭和46)年,2次医療に重点を置く330床の総合病院としてスタート.1989年に200床の新館(西館)を増築,さらに設立後17年を経た本館(東館)を,躯体のみを残して大改修し,1991年より530床の“新生”藤沢市民病院として,再スタートした.

聖路加国際病院の看護部長・副院長に就任 井部俊子さん

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.666 - P.666

 私が聖路加国際病院の院長に就任してまず最初に手をつけたのは組織の大幅な変革であった.その最大の眼目が従来4人の医師で独占してきた副院長のポジションの1つに看護部門のトッブが就くようにしたことだった.病院職員の半数を占める大部隊=看護部を統率する人に経営にも参画してもらい,病院経営との整合性を図りながらケアの質を向上させてほしいと考えたからである.
 井部さんは聖路加看護大学を卒業後,聖路加国際病院に就職.聖路加看護大学大学院修士課程に学んだ2年の休職期間をはさんで18年間,臨床の第一線で活躍してきた.修士号を取得して内科の婦長を勤めたのち,日赤看護大学で教壇に立つという“他流試合”も経験している.これは,生え抜さの多い看護職の中で,聖路加の看護を相対的にみることができる強みにもなっている.

主張

医療への社会的投資

著者:

ページ範囲:P.667 - P.667

 昭和33年に整備された現在の診療報酬体系は,その後30数年を経て当時の原価を基礎にした体系からほど遠いものになってしまっている.診療報酬の内容を検討する場である中央社会保険医療協議会での議論は,主に,関係者の利害関係の調整に終始しているように思われ,さらに,国民生活に必要なだけの医療を支える経済的な財源は,残念ながら中医協とは離れて,国家財政との関連で超政治的に決定される仕組みが出来上がってしまった.
 これはまさに日本的行政機構の産物であり,責任の所在は誠に不明確になった.その結果,診療報酬は改定の都度の財源を配分しただけのものとなり,医療関係者の間には不必要な嫉妬や摩擦が生じるようになった.ただし,この結果というものは,日本社会の一般的産業経済の中で医業の自由開業制を維持しつつ公定料金である社会保険制度により医業の運営を行っていこうとすれば当然のことであるともいえる.

建築と設備・88

桐生厚生総合病院

著者: 前島滋 ,   栗山栄作

ページ範囲:P.715 - P.721

計画の経緯
 桐生厚生総合病院は桐生市と周辺の6か町村の医療事務組合によって設立され,群馬県南東部(東毛地区)の中核病院として機能している.
 今回の設計は,1960年現在地に建設された病院が,400床の規模にしては狭く1床当たりの面積が30m2に満たないことや,施設の老朽化が進んだこと,敷地面積に余裕がないため増床や増改築の要望に応えられないこと等から,1985年,高層病院とする内容の,3期にわたる全面改築という形で始められたものである.

退院計画 病院に求められる新しい機能・1

退院計画の概念と内容—米国での展開を中心に

著者: 手島陸久 ,   中谷陽明

ページ範囲:P.722 - P.725

はじめに
 疾病構造の変化に伴って,入院医療が終了した後も様々な治療・管理や介護を要するケースが増加している.近年では家族構造や意識の変化もあいまって,スムーズな退院が困難な例は高齢者を中心にますます増加しつつある.その一方で,病院は経営上の理由等から長期入院の防止や入院期間の短縮を迫られている.退院をめぐる問題は,多くの病院にとって今や重要課題となっている.
 こうした中で,近年「退院計画」あるいは‘Discharge Planning’という言葉をときおり見聞きするようになった.しかし,その概念や具体的内容について十分な説明のないまま使われている場合も多く,漠然としたイメージのみが先行しつつあるようにも感じられる.退院計画を病院に導入すれば長期入院問題はすべて解決するのではといった過剰な期待や,退院計画というのは患者を病院から追い出すための方策であるといった偏ったイメージも,一部には生じてきているように思われる.

麻酔医が往く・8

地域医療と麻酔医

著者: 後明郁男

ページ範囲:P.726 - P.726

チームで動くゆえの死角(?)
 病院(ここでは,地域の第一線病院を念頭において話を進めます)は地域住民の健康管理と疾病治療の施設であり,近年に至っては,住民の終末期ケアの施設の役割をも担っている.である以上,病院のスタッフはどの部署で働いていようと,その地域の医療の一翼を明確に担っているわけである.
 実はこの当たり前のことが,麻酔医には一寸見えにくい.

看護業務改善事例集

採尿蓄量比重測定装置を導入して

著者: 島田陽子 ,   鈴木妙子 ,   中村礼子

ページ範囲:P.727 - P.729

 入院患者の1日の蓄尿量を測定するという業務は,従来から時間のかかるものであった.この業務は単に尿量を測定するだけでなく,たまっている尿を捨てたり,蓄尿袋をかけ換えたり,蓄尿架台を掃除したりという作業を伴う.そのため,時間を要するだけでなく,たいへん汚い業務でもある.また,蓄尿のため,多くの病棟の汚物室やトイレは,蓄尿架台や蓄尿瓶が並び,患者は自分の蓄尿だけではなく,他の患者の蓄尿も目にしなくてはならない.加えて強い臭気も漂うため,多くの患者が不快感を抱き,決して快適な療養環境とは言えない状況である.
 ここ数年は不要な蓄尿をやめ“測尿”へという試みが行われていたが,それでも検体採取の必要性から蓄尿を行う患者は相当数にのぼる.

厚生行政展望

「診療報酬のあり方」日医報告書(下)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.730 - P.731

患者負担について
 日本医師会の報告書は,患者負担のあり方について慎重な表現をしている.患者負担の拡大は,患者の医療機関受療を抑制する恐れがあるからである.しかし,医師会としても医療費財源の確保の観点からある程度の患者負担の拡大はやむを得ないと考えているようである.
 報告書では,患者負担の拡大が認められる場合として,アメニティなどの快適さに関するものと選択を可能にするものをあげている.具体的には,給食費の一部負担について,食事の質に関して患者の選択の余地を高める場合に限って認める方向を打ち出している.しかし,現在,厚生省が検討しているものは,給食費の材料部分の患者負担であり,1日当たり1,000円から1,200円程度の患者負担が増加するのではないかと指摘されている.給食の材料費は600円から900円程度であり,それほど高くないのではと指摘される方がいると思われるが,これらの材料費・光熱費等は病院の収入になるので,自由診療と同様の税が適用されることになるのである.その結果,税の部分も患者に負担してもらうことになる.この点については一部に不合理を指摘する声もあり,まだまだ詰めが不十分だと考えられる.

病院経営Q&A・19

看護婦の引き止め戦略

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.732 - P.733

Q 「最近,本院は看護婦がやめで困っている.どうしたらやめていく看護婦を引き止めることができるのか」

老健Now・3

モデル老健施設の今

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.734 - P.735

 新しい制度を構築し,それを円滑に実施するためには,莫大なエネルギーが必要だ.1986年12月の老健法改正により,老健施設制度が創設された.制度の骨格は決まったが,具体的な施設基準や人員基準は未定で,全国10か所のモデル施設で実験してから決めることになった.なにも決まらない状態でモデル施設の選定作業が進んだが,最後的に7施設が指定された.この7施設は「モデル老健施設連絡協議会」を設立し,相互に施設を訪問するとともに,情報交換を積極的に行った.協議会の活動は,老健施設の諸基準の策定に情報を提供し,老健施設のイメージを国民に提供する結果となった.老健施設の今日の発展が,これから7施設の貢献によることは事実である,そこで今回は,モデル老健施設だった山口県下関市の青海荘を訪問した.

副院長考・6

政策医療の担い手としての国立精神療養所のあり方を考える

著者: 滝沢韶一

ページ範囲:P.736 - P.737

 そもそも医療がサービス業として第3次産業に属し,再生産に貢献していることは周知の事実である.その意味でも時代の変遷と共にその機能や形態等において変容が求められるのは自明のことであろう.しかしながら本来医の心は古今東西不変のものである.
 最近,国立病院(療養所を含めて)の在り方についての議論が活発となって来たが,その渦中にあるものの1人としていささかの所見を述べる機会が与えられたことを感謝したい.しかしすでに国立病院に関しては本誌1月号に高橋隆一先生(国立東京第二病院),精神病院については4月号で丸山弘毅先生(成増厚生病院)の立派な所論が展開されているのでここでは屋上屋を架する愚は出来るだけ避けたい.むしろ筆者自身の現場での体験を中心に,副院長としてどのような問題意識をもっているかについて述べてみたい.

病院管理フォーラム

[臨床工学技士]人工心肺技士の現状と問題点

著者: 武田正則

ページ範囲:P.738 - P.739

はじめに
 臨床工学技士の業務は,生命維持管理装置のすべての操作を要求され,範囲が広く,これらをすべて習得するには,大変な努力と経験が必要である.
 心臓手術のとき心臓と肺を一時的に停止しなければならない.その間は人工心肺装置により全身へ酸素化された血液を送り,生命を維持する.この心臓と肺の生命維持機能を代行する装置の操作も臨床工学技士の業務である.人工心肺装置を操作する技士は,呼吸・代謝・薬剤の知識,新技術の導入と経験が要求される.

看護管理用語解説

PPC(Progressive Patient Care)方式=段階的看護ケア方式

著者: 高橋美智

ページ範囲:P.740 - P.741

 第2次医療法の改正により,我が国においても医療の類型化が進展し始めた.こうした方式を目指した研究は,米国においてはすでに1950年代より始まっている.PPCはその初期に示されたひとつのモデルといえるものである.
 PPCといわれるものがどのようなもので,いつから始まったものであるか,またその利点,欠点は何かなどが広く我が国に紹介されたのは,1965年に翻訳出版された「新しい医療と看護方式—PPCの理念と実際(Elements of Progressive Patient Care)」(医学書院)による.

MSWの相談窓口から

北里大学病院総合相談部におけるMSW

著者: 堀越由紀子

ページ範囲:P.742 - P.742

 縦割り機構は行政の専売特許ではない.大学病院も似たり寄ったりである.たくさんの診療科と専門職の間で実は行政以上に縦割りが進み,医師を頂点とするヒエラルキーと縦の縛りの強い教育体系がこれを助長している.専門分化は高度医療遂行のためには必然とされ,診療各科や各部門は細分化する一方である.患者(や家族)はその結果,診察や検査,治療を受けるために院内のあちこちを歩き回り,いろいろな人に会い,同じようなことを聞かれ,そちこちの都合に合わせられるはめになる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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