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特集 新時代の病院像
新しい医療需要と病院の整備—健康転換概念による分析
著者: 長谷川敏彦
所属機関:
ページ範囲:P.25 - P.31
文献購入ページに移動いつの間にか日本は目標として来た欧米を追い抜いて世界一の健康実績を示すに至っている.最もよく使われる健康指標,平均寿命や乳児死亡はここ数年それぞれ世界最長と最低である.しかし成功は失敗の基,その実績故に世界中でそして人類史上で初めて30年後,4人に1人が65歳以上と最も多くの高齢者を抱える国となる.世界では東西冷戦構造が崩壊し,新たな体制が模索されており,日本社会も,国際化,情報化,価値観の多様化と,今大きな変動期にある.保健医療界も社会の一部であり変動を免れ得ない.疾病構造の変化によって需要が変化してゆくのは当然だが,技術の革新によって供給も変わっていかざるをえない.
近年,途上国を対象とする公衆衛生学者や人口学者の間で提唱され始めた健康転換(Health Transition)という概念は変化する保健医療の需要と供給を分析するには極めて有用である1).健康転換は,人口転換論を下敷としており,歴史の過程では「人口・疾病構造の変化」と「保健医療体制の変化」そして「社会・経済構造の変化」と3つの変化が相互に影響しながら段階的で構造的に転換をとげることを示したシステム概念である.
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