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文献詳細

雑誌文献

病院53巻12号

1994年12月発行

文献概要

特集 「病院死」を考える

閉じ込められた死—文化人類学から見た病院での死

著者: 内堀基光1

所属機関: 1一橋大学社会学部文化人類学

ページ範囲:P.1078 - P.1081

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人類と死
 ヒトとヒト以外の動物の境界に死という現象がある.というと,やや謎めいて聞こえるかもしれません.ですが,ここで言いたいことはきわめて明瞭なことです.すなわち,人間の死という現象はまさしく特権的な意味での社会的・文化的現象であって,この特殊性こそが人間の存在をその他の動物から質的に分かつごく少ない特性の1っだということであります.これについてまず考えてみましょう.
 ここ二三十年間になされた霊長類学のめざましい進歩によって,ヒトと高等類人猿のあいだの越えがたいとされてきた垣根は,その多くが取り払われてしまいました.チンパンジーがごく簡単なものながら道具を制作し使用することはすでによく知られているところですし,また彼らが,実際に人間的な音声を発するわけではないにしても,用意された記号や象徴を利用して言語的コミュニケーションをおこなう能力を獲得できることも明らかになってきました.また霊長類の社会について言えば,われわれがそれを語るとき,もっぱら擬人的な表現を用いて語っても何らおかしくはないほどに人間的なものです.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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