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特集 「病院死」を考える
できる限りの医療と無駄な医療
著者: 森岡恭彦1 酒井敬介2 豊島宏2
所属機関: 1東京大学日本赤十字社医療センター 2東京大学日本赤十字社医療センター外科
ページ範囲:P.1082 - P.1086
文献購入ページに移動近年,近代国家では社会保障制度とそれに伴う医療保険制度が整備されるにつれて,国民は誰もが医療の恩恵を享受しうるようになってきた.しかし,一方において医学の進歩とともに高額な医療機器や医薬品が利用されるようになり,さらに医療従事者の増加,人件費の高騰などによって医療費は上昇する傾向にあり,またわが国の如く急速に人口の高齢化のみられる社会では国民の総医療費の増加は著しく,国民がどこまでその負担に耐えられるのか懸念されるようになってきた.そして医療施設には経済上の制約が課せられ,患者に対して何をどの程度提供しうるのかが問題になってきている.
また平和で豊かな社会が続くにつれて,人々はただ寿命が伸びることだけでなく,生きている間の生活あるいは生命の質(quality of life)を問題とし,さらには如何に死すべきかといったこと(quality of death)に対しても希求を募らせてきて,助かる見込みのない患者の命をただ漫然と維持することへの疑問が提起されるようになってきた.
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