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雑誌目次

雑誌文献

病院53巻2号

1994年02月発行

雑誌目次

特集 病院栄養業務の質の向上を目指して

岐路に立つ病院給食

著者: 篠崎英夫

ページ範囲:P.114 - P.116

給食に関する診療報酬の経緯
 昭和33年に今日の診療報酬の体系の基礎となったいわゆる新医療費体系が導入された.基準給食も,このときに,病院給食の質的向上を目的として設けられている.
 当時の基準給食の主な承認基準は,原則として医療機関が自ら実施すること,必要な患者には適切な特別食が与えられていること,患者の病状に応じて必要とする栄養量が与えられていることであり,その基本的な考え方は現在と大きく変わらない.

これからの病院栄養士

著者: 立川倶子

ページ範囲:P.117 - P.120

はじめに
 病院栄養士は病院給食の歴史上かつてないほど重要な年として平成6年を迎えた.
 現行の病院栄養士をめぐる諸問題に対しての全国病院栄養士協議会の取り組みについて報告し,これからの病院栄養士についてその展望を述べたい.

わが国における病院栄養業務の問題点と将来

著者: 中村丁次

ページ範囲:P.121 - P.125

はじめに
 今,わが国の病院栄養業務は大きな転換期にある.おそらく,この変化は,近年にはない大きなものになることが予測される.
 1つは,医療に導入されたサービスの概念から来る変化である.病院は,衛生管理が徹底され治療効果のみを追求した消毒液臭い空間から,暖かいアメニティの考慮された生活の場としての空間への変化を求められている.当然,食事にもこのような配慮が要求され,治療のための食事という御旗だけでは機能しなくなってきている.

病院給食の採算を考える

著者: 足立香代子

ページ範囲:P.126 - P.129

はじめに
 患者の食事へのニーズは国民の生活水準の向上に伴い多様化し,より質の高いサービスが望まれている.が,しかし日本の医療経済はもとより病院経営はきわめて厳しい状況に置かれているので,ことは難しい.とはいうものの,こうした時期だけに医療機関側のこれまで以上の経営努力,とりわけ給食部門のマネージメントが求められているといえる.
 また,全国一律に支払われる診療報酬は多くの矛盾を含んでおり,病院給食の健全化への政策,もしくはなんらかの制度改正が必要であることも合わせて検討してみたい.

[実践報告・1]入院中のニーズにそった栄養療法—栄養をどのように摂ってもらうのか

著者: 中西靖子

ページ範囲:P.130 - P.133

はじめに
 合理化の手落ちともいえる「冷たい,まずい,早い」の3悪は,温かい食事は温かく,冷たい物は冷たく,夕食は夕食時間にといった,治療以前の,食事に関する基本的な感受性が鈍感になっていた結果である.
 「如何に摂ってもらうか,食べてもらうか」を真剣に考えれば,必然的に3悪の業務改善を優先することになる.もっとも,現在はかなり改善されてきているとはいえ,多くの栄養士が問題に対して対策を提案しても,経済面で止まっていたのも事実である.これが大きく動き出す1つのきっかけになったのが,平成4年4月の診療報酬の改定であった.

[実践報告・2]菜食主義に基づくユニークな病院給食と健康教育

著者: 米山貞治

ページ範囲:P.134 - P.136

当院の概要と給食の基本方針
 当院および栄養科の概要
 東京衛生病院は1929年,キリスト教プロテスタントの一派であるセブンスデーアドベンチスト教団によって設立されました.
 診療科目8(内科,外科,整形外科,小児科,産婦人科,歯科,理学療法科,麻酔科),病床数162(産科34,健康管理科10,末熟児5,内科62,外科30,小児科21),外来患者数月間延べ15,000前後,従業員数368(1993年10月現在)の病院です.

[実践報告・3]ターミナルケアの一つとしての食への援助を考える

著者: 荒川朱美

ページ範囲:P.137 - P.140

はじめに
 「医療の本質は優しさにある.この実践がもっともよく遂行される形態がターミナル・ケアであり,ホスピスはその象徴である」との理念のもとに,当院は医師,看護婦,薬剤師,ソーシャルワーカー,検査技師,栄養士,その他のメディカルスタッフがチームを組みターミナル・ケアに取り組んでいます.
 栄養課スタッフは管理栄養士3名,栄養士3名,栄養事務1名,調理師5名,調理員15名で診療部に属しています.当院の病床数は251床,内科3病棟,外科病棟,PCU病棟(Palliative Care Unit:緩和ケア病棟)の5病棟から成っており,各病棟専任の栄養士,調理師が医師の回診同行やカンファレンスの出席,病棟訪門を行う担当制をとっています.

[実践報告・4]温かいものを温かく、目の前で—病棟食堂方式を導入した知多市民病院

著者: 上原正美

ページ範囲:P.141 - P.144

はじめに
 病院給食は,医療の一環として位置付けられ,昭和25年に誕生した完全給食制度が8年後基準給食制度となり現在に至っているが,社会保険診療報酬の給食料を唯一の財源としている.今日多くの医療機関が経済的に窮地に追い込まれ,病院給食運営においても業務委託する医療機関が増加傾向にある.業務委託については一長一短である.あらゆる面で経費の節減は必要だが,患者サービスも欠くことができない.
 平成4年4月,特別管理給食加算が新設され保険点数10点は総給食収入の約5%(年間300床あたり約1,000万円)を占める.

[実践報告・5]職員給食も大切に—食養レストランを活用し、職員・地域住民の食生活改善に取り組む日鋼記念病院

著者: 大島重壽

ページ範囲:P.145 - P.148

はじめに
 日鋼記念病院は,JR室蘭本線母恋駅から徒歩5分の所にある.母恋駅は毎年「母の日」に記念乗車券を発売することで全国的に知られ,名勝「地球岬」への下車駅でもある.
 当院は職員数は868人(平成5年11月1日現在)で,救急医療24時間体制の室蘭・登別両市を中心とする中核的総合病院であり,「原点から考えなおす医療」をポリシーに掲げ,またいち早く病院総合情報システムの開発・導入を図り,地域の高度医療の中心的役割を担っている.一般病床は536床,平成5年の外来患者数は1日平均1,339名,緊急手術を含む手術件数は3,130件を数えた.

在宅医療チームの一員としての栄養士の役割—医師の立場から

著者: 髙添正和 ,   井上昇

ページ範囲:P.149 - P.152

はじめに
 医療における技術革新(イノベーション)は目ざましく,1993年には遺伝子治療がはじまり,DNA (デオキシリボ核酸)が薬剤とし臨床応用される日も近いと言われている.医療のハードな面でのqualityは飛躍的に向上しつつある.一方で,一般の人々は各個人の生活領域に意味と満足感を与える積極的な在り方,言い換えればqualityに強い関心を向けるようになり,「より人間らしい医療」が希求されるようになってきた.とりわけ慢性疾患の患者では,原疾患や医療内容について,患者自身がどういう主観的感情を抱いているかを,治療方法を計画実施し,評価する際に,考慮しなければならず,そのことが重要な要素になりつつある.従って患者のQuality of Life (QOL)を充分配慮した医療の実践が期待されており,その方策として在宅医療が注目されてきている.
 本稿では在宅経腸栄法の実践を通して,在宅医療における栄養士の役割について述べてみたい.

病院厨房システム構築のための留意点—使う側の立場から

著者: 太田喜久

ページ範囲:P.153 - P.157

はじめに
 病院における栄養管理の目的は,食事を通じて患者の疾病治療に貢献するものでなければならない.
 患者の食事に対する要求は年々強まってきている.いかに患者のQOL(Quality of Life)を高める食事を提供できるかが問題である.

新たな病院給食システムの構築を—「病院給食システムの設計管理指針」作成のねらいとその概要

著者: 宮川宗明

ページ範囲:P.158 - P.163

作成の動機と経過
 わが国病院給食の後進的性格と課 題—投薬的栄養管理志操と品質管 理の短絡
 病院給食は患者の自力回復を促すために,それぞれの病態に適切な栄養的供与を図ることを目的とした食事療法であることは言うまでもない.しかしわが国では,基準給食制度が発足した昭和30年代の当初から,献立を作る立場からの栄養所要量とその精度管理面が偏重される反面,患者の栄養摂取条件として最も大切な品質的管理が軽視され,過大な残飯実態に示される通り本来の食事療法に不適切な設営慣習が特徴的である.加えて昭和50年代の後半以降の経済的復興に伴う国民生活水準の向上とともに病院建築の急速な近代化にも拘らず,国内外食市場の豊かな展開を他所目に,独り病院給食のみが旧態依然としており,冷めたおしきせの献立と早すぎる給食時間帯という患者側軽視のサービス条件が改善されていない.以上の点から昨今では給食制度の在り方から見直す緊急性が指摘される事態にあることも当然と言えよう.

グラフ

竹田綜合病院にみる地域大型病院のリストラクチャリング

ページ範囲:P.105 - P.110

 福島県会津若松市にある竹田綜合病院は,25診療科,病床数1,209床を数えるわが国でも有数の大型民間病院である.ちなみに全国でも1,000床を越す大型総合病院は50に満たない.その半数以上は大学の付属病院で,民間病院はわずか8病院.さらに興味深いのは,この8つの民間病院のうち3つが福島県内にあるのだ.全国47都道府県を1,000床以上の大型総合病院の有無で分けると,持っているのが13,持たないのが34で,持たない道県が圧倒的に優勢なのにもかかわらず,である.どういうわけか,福島県では民間病院の活躍が目立っている.

第33回全国自治体病院学会会長 岡山市立市民病院院長 浅野健夫氏

著者: 近藤慶二 ,   八木保

ページ範囲:P.112 - P.112

 浅野先生は昭和30年岡山大学医学部の卒業で,インターン修了後同第2内科(平木教授)に入局,33年からは米国スローン・ケタリング癌研究所に留学し約2年間腫瘍酵素学を学び教室に帰っている.もっぱらアイソザイムについて癌診断面の研究をし,また胃の血流や膵疾患とアミラーゼの関係などで後輩の指導にもあたっていた.
 昭利42年岡山市民病院の内科部長,51年院長となり老朽化した病院を今のような立派な近代的な病院にした人でもある.

主張

雇用を吸収できる産業

著者:

ページ範囲:P.113 - P.113

 看護婦が不足していることが医療の現場だけの問題ではなく,社会問題として認識されはじめてからまだそれほど時間は経っていない.その後,看護婦(士),薬剤師等が医療の担い手として医師,歯科医師に加えて医療法に位置付けられたことは当然のことであり,更に,未だ不充分ではあるが3K,10Kともいわれてきた職場環境の改善や看護業務の見直しが図られ,その結果,多少なりともその不足感が緩和されてきたことは喜ばしいことである.ただ,看護婦の社会的地位の向上は長い間の懸案でありまだ当分時間はかかりそうである.また平成に入って生まれる子供の数が毎年120万人程であることを考えるとまだまだ問題は解決されたとは思えない.
 しかし,足りなかったのは何も看護職だけではなく,病院医療を運営していくために必要な人員は各職種にまたがりゆとりがあると言い難いことは,今日もそれほど変わってはいない.厚生省のマンパワー(人的資源)対策本部の報告によれば日本で現在医療と福祉をあわせて従事している人の数は約230万人であり,今後の急速な高齢化に伴い2001年にはこの数は350万人必要であるとされている.350万人という数字でさえ欧米に比べれば実に貧弱なものであるが,現在のこの数は我が国の総労働人口の約3.5パーセントに当たりそれに対してその生産規模は国内総生産対比約6.5パーセントに過ぎない.

医学ごよみ

2月—February 如月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.164 - P.164

 2月には米国の2人の偉大な大統領ワシントン(2月22日)とリンカーン(2月12日)が生まれている.今月は両日に関して稿を進めよう.

てい談 医療の座標軸を探る・2

医療保険制度を検討する

著者: 塙正男 ,   河北博文 ,   今井澄

ページ範囲:P.165 - P.170

□制度と社会とのギャップ
 塙 医療に対する患者の要求はすごくわがままなわけです.それは,移植の例でもわかるように,自分の子供だけは,自分の親だけは助けたいといったように.要求としてはそういうレベルで絶対出てくるわけです.これを社会的にどうまとめるかというレベルで考えないといけない.ジャーナリスティックなレベルでは,子供が死ねば,かわいそうだとか,お涙頂戴レベルの悲しい物語が必ず書けます,個人の人生には物語が必ずありますから.
 ところが組織医療をどう考えるかになると,それとは必ずしも一致しません.人の生命は地球より重い,といったフレーズを振り回して何とか息をつないできたけれど,日本社会はもうそれを許さないのではないでしょうか.

建築と設備・93

インテリアは医療の一環である—アメリカと日本の違いはどこから生まれる

著者: 町田ひろ子

ページ範囲:P.171 - P.176

アメリカの現状
身も心も委ねられる場所
 まず小さな事実に目を止めていただきたい.写真①のハイバックのソファーは,ホテルのロビーではなく病院の待ち合いに置かれているものである.これが何を意味するか?
 一度でも高熱や病んだ身体で病院に行った人ならひらめくだろう.日本の病院の固く背もたれも無い椅子で身の置き所もなく数十分,あるいは数時間を過ごす苦痛と疲労.そんな患者さんが,病んだ身も心も委ねられるソファーがこの写真である.

厚生行政展望

病院の近代化

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.177 - P.179

はじめに
 1月12日に厚生省の医療機関経営健全対策検討委員会は今後の病院の近代化と経営健全化について意見をまとめた.この検討会は昨年6月に実施した病院経営緊急状況調査を踏まえたものであり,赤字に悩む医療機関,特に民間病院の経営健全化対策を念頭においたものである.今回は,この検討委員会と病院経営緊急状況調査結果を基に検討を行うこととする.

病院管理フォーラム

[医療事務]レセプト電算処理システムの病院への展開

著者: 柳沢光徳

ページ範囲:P.180 - P.183

はじめに
 わが国における病院情報システムは,この10年程度の間に急速に普及し,今では大部分の病院において,何らかの形でコンピュータシステムを利用している状況である.特に,医事会計システムの普及率は非常に高く,その内でも医科の病院におけるレセプト作成事務の電算機利用率は約86%,レセプト件数にすると約95%にも達している(表1参照).
 しかしながら,これらのレセプトは依然として紙に打ち出されたもの(紙レセプト)であり,診療報酬請求事務の軽減及び迅速化という観点からみると,まだまだ改善の余地が多いと考えられる.

[病院の委託業務]医事業務

著者: 塚田慎吾

ページ範囲:P.184 - P.185

医事業務代行業
 医事代行業務の委託については,ある一定の部門だけを委託する部門委託と,すべてを委託する一括委託までと幅広い形態が存在している.
 また,契約方式も,請負契約と労働者派遣法による人材派遣契約の2種類があるが,医事業務については,筆者は請負契約のほうが適当であると考えている.

動き出した療養型病床群・2

東京都で初めて承認を受けた—社会福祉法人信愛病院

著者: 桑名斉

ページ範囲:P.186 - P.187

病院の概要
 信愛病院は昭和43年に結核から成人病医療への転換を図った.一方では要介護老人の増加を見越して特別養護老人ホームを開設した.
 その後,成人病センター,リハビリテーションセンターなどで脳血管疾患患者への対応を行い,昭和51年には院内ボランティアを導入,54年デイケアセンター併設,56年に在宅療養者に対して訪問看護を開始した.60年からは医学部学生の実習,61年から女子短大生ボランティア実習の受け入れを始め,平成3年からは市の介護ヘルパー実習も行っている.

老健Now・7

小規模老健施設の挑戦

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.188 - P.189

 平成5年12月15日,老人保健審議会は,老人保健制度の見直し意見をまとめ,厚相に提出した,この中で,大都市部や過疎地などの老健施設の整備促進のため「これらの地域においては,標準的な施設の近隣で一体的に運営される小規模な施設(いわゆる「分散型老人保健施設」)を導入することも必要である」と述べられている.具体的内容は,不明だが,この分散型老健施設という考え方は,大都市の困難な用地確保や人口規模の少ない町村への老健施設設置を促進させることになるであろう.問題は,小規模な分散型で,はたしで採算ベースに乗せることができるのかである.
 そこで今回は,既存の小規模老健施設の経営にスポットをあて,分散型施設の可能性を探ってみたい.

事務長の業務を考える・2

病院組織の活性化

著者: 頼本節雄

ページ範囲:P.190 - P.190

病院の人間的側面と事務長
 事業体が生産的側面と財務的側面の両面を有するが,それにとどまらないことについて述べたい.それはその事業体を支えるメンバーの心理的満足度の側面である.すなわち組識人としての彼の個人的目的の達成度如何の問題である.その程度が高ければ「活性化」されている組織,つまり良い組織と言えるのだろう.このような観点から私は何をしたか.
 まず「生産的側面と財務的側面の達成状況」を適時関係者すべてに伝達すること,すなわち各種会議,院内報等をもって当院のハードウエア,ソフトウエアおよびマンパワーの現状と変化,改善の見通しなどについて知らせ,それら資源の活用の成果としての患者サービスの状況をできるだけ具体的に知らせ,財務面の状況も毎月度概要を報告して,病院の状況と職員の実感とがなるべく一致するよう努力した.

MSWの相談窓口から

Aさんの退院をめぐって

著者: 前田景子

ページ範囲:P.191 - P.191

 60歳をすぎたAさんはがん末期の患者であり,最期の時を病棟で迎えようとしています.ソーシャルワーカー歴3年目の私に人との関わりを考えるきっかけを与えてくれたAさんのことをふりかえってみたいと思います.Aさんは去年の4月,悪性腫瘍で入院しました.手術のかいもなく病気は進行し,これ以上治療の効果は期待できないという状態でした.Aさんはげっそりと痩せており,持病の糖尿病のためにふらつきはありましたが,なんとか身の回りのことは自分で出来ました.そのため,医師や看護婦は「今でなければ家には帰れないだろう」「何とか自宅に帰せないものか」という動機から退院を検討し,Aさんに自宅に戻ることをすすめました.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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