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文献詳細

雑誌文献

病院53巻8号

1994年08月発行

特集 多様化時代の病院人事

中小病院苦闘の小史—医療法人啓信会における医師人事

著者: 中野進12 中野昌彦12

所属機関: 1医療法人啓信会 2京都四条病院

ページ範囲:P.748 - P.750

文献概要

 戦争後,食うや食わずの時代は,まともに医療のことなど考えられる状態ではなかった.それでも病気は存在した.もっとも現今とは異なり,貧困さが基盤にあるものが多かった.栄養失調,発疹チフスなどの層染症,貧血等々.だが,その王者はやはり結核であった.しかし,社会の安定,経済の復興,さらに抗結核薬の発明により,結核は1950年代に入るとその王座を奪われ,結核療養所は陰りをみせ,空床が目立ちはじめた.精神科疾患が向精神薬の発明もあり,社会からの隔離により治療へと転じ,次第に日の当たる場所となり,病床は結核にとって変わるようになった.この転換が,一段落したとき,経済成長がはじまり併行して自動車の増加,そして交通事故の激増へとつながる.このことは外科系救急病院の叢生期を暗示した.消化器外科医であった私はこれらの社会的背景のもとで,外傷の診療に興味を持ちはじめ,その途へと進んだ.その頃に生まれたのが京都四条病院であった(後述).
 10年たち,交通事故の増加は一段落し,内科系救急や時間外診療が社会的関心を呼びはじめた.狂乱物価,オイルショック,経済低成長を経験し,高齢化時代への突入となり,老年医学が浮上してきた.都心部は過疎化し,住民の効外への移行がはじまった.その時期に,私の関心とともに誕生したのが京都きづ川病院である.まもなく,政府の医療費抑制政策がはじまり,この2つの病院も苦難の途を歩みはじめた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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