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特集 「21世紀福祉ビジョン」と病院
社会保障の重点の変化と効率化
著者: 大谷強1
所属機関: 1川崎医療福祉大学
ページ範囲:P.30 - P.33
文献購入ページに移動1994年3月に厚生省の高齢社会福祉ビジョン懇談会から発表された「21世紀福祉ビジョン」や9月に出された社会保障制度審議会の社会保障将来像委員会の「第2次報告」は,第2次大戦後に作られた日本の社会保障政策を社会生活の変化に応じて大きく見直す提案である.特徴的な現象として「少子化・高齢社会」が取り上げられているが,それをきっかけに表面化した住民のさまざまな生活上の不安に応えていくことは社会の責任であると,改めて社会保障の役割を明言している.
これまでは公的扶助と年金・医療の社会保険を軸にした狭い意味の社会保障制度が考えられてきた.しかし,子どもの出生率を引き上げ,女性の社会進出を保障するためにも,子育てが政策の大きな課題になり,保育政策や育児休業制度の充実が求められてきた.また高齢化の進展に伴い介護を必要とする人の数が急速に増えるとともに,在宅のまま地域で暮らし続けたいという希望に応えるために,社会サービスとして介護サービスを24時間365日にわたって提供する必要に迫られている.しかも,障害者や高齢者,子どもたちが,介護や育児サービスを利用して地域で暮らしていくためには,なによりも安心して快適に住める住居の確保や自由に活動できるバリアフリーの町づくりが基礎に据えられなくてはならない.こうして社会保障政策はその範囲を大きく広げることになる.
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