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雑誌目次

雑誌文献

病院54巻11号

1995年11月発行

雑誌目次

特集 医療法人制度をめぐる諸問題

医療法人制度とは何か—現状と将来展望

著者: 鈴木晴彦

ページ範囲:P.1022 - P.1025

医療法人とは何か=法人の性格
 第三次医療法改正の新たな課題として医療法人制度の見直しが脚光を浴びている.
 医療法人制度が,わが国の民間病院の開設主体として定着し,2〜3年後には,わが国の病院の半数を越える開設主体となることが間違いないのだから当然であろう.

医療法人病院の特徴と問題点

著者: 藤原恒弘

ページ範囲:P.1026 - P.1031

はじめに
 医療法人の開設する病院は地域医療において中核的な役割を果たしており,昨今民間病院の社会資産としての評価がようやく論議され始めている.しかし,矛盾に満ちた法人制度の見直しについては昨年末に医療法人制度検討委員会の答申が出されたが,根本的改正には至っていない.
 医療における医療法人の果たしている役割は,数においては過半数を超えている.しかしその機能効率,医療の質,および国民の医療法人に対する理解と評価については,資料が皆無の状況である.そこで,医療法人病院の現況と特徴について調査し1),検討を加えたので報告する.

医療法人の設立から解散まで

著者: 塩原修蔵

ページ範囲:P.1032 - P.1036

はじめに
 医療法人制度検討委員会報告書によれば,医療法人のうち約97%は持ち分の定めのある社団たる医療法人であり,そのほとんどは,定款上,出資額に応じた持ち分の払戻しと残余財産の分配について定めている,と報告されている.
 また,資本の集積を容易にし,かつ医業経営の永続性を確保するという立法趣旨で,昭和25年に創設された医療法人は,現在では2万件を超えている.

医療法人の今後の発展性について

著者: 石井孝宜

ページ範囲:P.1037 - P.1041

 様々な制度上の矛盾や特異性を持っている医療法人は,それらの問題点を内包しつつも,結果としては,制度発足以来45年の間に,一人医師医療法人も含めた件数において約2万2千件,病院開設型医療法人のみでも概ね4千5百件程度に達しており,病院開設主体としては最大のものとなっている.
 本稿では,超高齢化社会への突入,疾病構造の変化,経済の低成長化,急激な社会構造の変化等により今後も厳しい経営を強いられる民間医療機関としての医療法人の今後の事業の発展性について,21世紀初頭の我が国医療産業の将来予測を前提に,その可能性について考えるとともに,医療法人の事業の発展を阻害する内的・外的要因について医療機関の個別の経営指導に携わっている会計士の立場から私見を述べさせて頂く.

[座談会]医療法人制度の改革に向けて—医療法人制度検討委員会報告書をどう考えるか

著者: 神尾友和 ,   中垣英明 ,   吉牟田勲 ,   岩崎榮

ページ範囲:P.1042 - P.1048

報告書の概要とねらい
 岩崎 今日は「医療法人制度の改革に向けて—医療法人制度検討委員会報告書をどう考えるか」というテーマで座談会を行います.医療法人制度は昭和25年の医療法改正で導入された制度です.制度ができてから45年たちます.その間少しずつ改革はあったものの,大きな改正がないままに今日まできています.
 これからは病院,診療所の公共性,公益性を考えると,やはり法人化していくメリットは大いにあると思いますし,それが将来的に経営の健全化にもつながると思います.そのせいかどうかわかりませんが,現在は病院全体の46.2%,診療所の12.4%が医療法人立となつているという状況です.しかも,医療法人を財団医療法人と社団医療法人とに分けると,社団医療法人で持ち分の定めのあるものが98%ぐらいを占めています.

グラフ

“全職員がコスト意識”“患者にやさしいアメニテイ”—碧南市民病院

ページ範囲:P.1013 - P.1018

□活力溢れる若い病院
 20数年間市民が待ち望んだ市民病院が1988年5月に誕生した.まだ8年目で,医師の平均年齢40代前半という若い病院は,着々目標実現中.
 診療圏調査は1975年に国民保健請求伝票を分析することに始まり,地域のメッシュ割人口分析などから患者数・病床数等を割り出した.出発の200床から現在は330床,16診療科.地元医師会の理解が得られての開院以来,市外に診療を求めていた市民の回帰も認められている.

第50回記念国立病院療養所総合医学会学会長を務められる 国立療養所南岡山病院院長 木畑正義氏

著者: 五島雄一郎

ページ範囲:P.1020 - P.1020

 木畑正義先生とのお付き合いは,脂質代謝の研究を通じてで,1965年頃ガスクロマトグラフィの研究からだったと思われるので,もう30年にわたって御交誼をお願いしていることになるわけである.
 この間日本における各種の学会や高脂血症治療薬の治験の研究会などで屡々御会いする機会があった.さらに,国際動脈硬化学会やlnternational Symposium on Drugs Affecting Lipid Metabolismなどの国際学会へ出題されて,欧米の地でお目にかかり歓談する機会があった.

主張

公的介護保険導入と病院

著者:

ページ範囲:P.1021 - P.1021

 社会保障制度審議会が公的介護保険導入を正式に勧告し,同時に医療保険制度の抜本的改革の必要性を強調した.これを受けて近い将来の介護保険導入論議が本格化する.
 すでに公的介護保険を社会保険方式で導入したドイツが参考となるわけであるが,同国では本年4月1日より,まず在宅介護に対して3段階の給付を開始した.ついで保険料のアップを図った上,明年7月1日よりの施設介護に対する給付も決定している.しかし介護施設の絶対数の不足の上,病院における在院日数の極端に短い国での介護保険と,我が国における医療・介護を同一視することには多くの問題を含んでいる.

対談シリーズ 介護問題をめぐって・2

介護問題と病院の対応

著者: 伊藤雅治 ,   山口昇

ページ範囲:P.1049 - P.1056

病院における介護場面の増加
 山口 現在の病院医療は,私が医師免許を手にしたころと比較するとずいぶん進んでいます.例えば脳外科の手術一つみても,現在はマイクロ・サージャリーがごく当たり前ですし,診断でもCTスキャンはもちろん,MRIやMRAなどのいろいろな技術が進み,的確な診断が可能になりました.もちろん治療面でも救命率も非常に高くなっています.
 昔でしたら命を助けられず,後遺障害を残して療養するケースは非常に少なかつたわけです.ところが現在では,生命は助けられたけれど,後遺障害を残して療養生活を余儀なくされるというケースが増えているのではないでしょうか.つまり,いわゆるケアが必要なケースが非常に増えているということだと思います.

特別寄稿

わかりやすいケア・プラン作成の手引—介護サービス標準化手法の理論的基礎

著者: 岡本祐三

ページ範囲:P.1057 - P.1061

 [編集室から]医療の質の向上を図るために厚生省は様々な施策を打ち出してきている.このような流れを受けて老人病院,老健施設,特別養護老人ホームなどではケア・プランの手法が導入されつつある.厚生省が米国で開発されたMDS—RAPs (Minimum Data Set-Resident Assessment Protocols)を日本で検証した後,『高齢者ケア・プラン策定指針』と題して翻訳出版したのが昨年の6月。以来,老人ケアの現場ではケア・プランへの関心が急速に高まってきている.しかし,従来から経験則に頼りがちだった現場の方々は,このような手法に馴染みが薄いせいか,戸惑いも少なくないようだ.習うより慣れうという言葉もあるが,どうもこの場合は当てはまりそうもない.論理で組み立てられているものを,論理で理解せずに無理やり暗記しようとするのは非効率の最たるものであろう.岡本祐三氏に,医学の方法論との対比でケアプランの構造を解明していただいた.

研究と報告

物品管理の盲点(2)—定数管理による物品管理の限界

著者: 松山文治

ページ範囲:P.1062 - P.1065

はじめに
 昨今,診療材料のディスポ化が進み,医療用消耗品の消費量は増加の一途をたどっている.しかもPTCA用バルーンカテーテル,心血管造影カテーテル,人工心肺,人工弁,人工関節,ペースメーカー等の超高額製品の種類も増えて,病院で購入する診療材料の種類や金額も急増している.
 このために,診療材料の購入方法を工夫するだけでなく,購入した診療材料の在庫管理と使用状況の把握が重要性を増し,ここに物品管理手法の導入が検討され始めた.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第13回

救命救急センター2題—船橋市立医療センター/杏林大学医学部附属病院

著者: 込山俊二 ,   松丸典義 ,   斎藤修一

ページ範囲:P.1066 - P.1075

はじめに
 船橋市立医療センターは,東京と隣接する6市からなる二次医療圏(人口150万人)のほぼ中央に位置し,市唯一の公立病院として,地域における中核的基幹病院の役割を果たしている.当医療センターの開設は昭和58年10月で,206床,9診療科でスタートした.本計画は,病床の増床に併せて,救命救急センターが設置されたものである.地域保健医療計画の規制等により,特定病床175床(循環器70,がん90,救急15),一般病床25床の計200床増床の認可を受け,総病床数406床,新設科目の循環器科,心臓血管外科,呼吸器外科,麻酔科,放射線科を合わせ診療科目を14科として,平成6年2月に増築工事が完成した.また,救命救急センターの機能の充実に合わせて,24時間,医師同乗によるドクターカーシステム(市医師会,消防局との共同作業)の運営により,救急医療のさらなる充実が図られている.

医療技術革新の展望とこれからの医療政策—ヒト遺伝子研究の意味するもの

遺伝子技術と障害問題

著者: 広井良典

ページ範囲:P.1076 - P.1079

遺伝子研究と「疾病」—「障害」概念の変容(承前)
 前回から述べてきたような「疾病」—「障害」概念の変容過程のなかで,ヒト遺伝子研究会やそれに伴う医療技術革新は,どのような影響や意味をもってくるのだろうか.
 これには2つの局面があるように思われる.

厚生行政展望

「医療保険審議会」中間取りまとめを読む

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.1080 - P.1081

 去る8月4日,「高齢者の負担求める」「薬剤適正化へ」などと,新聞の見出しを踊らせて,医療保険審議会から「中間取りまとめ」が公表された.正式には,「検討項目Ⅲ, Ⅳ,ⅤVを中心としたこれまでの検討内容の中間取りまとめ」という長い名前のものである.すなわち,「給付と負担の公平」,「医療費の規模及びその財源・負担のあり方」および「医療保険制度の枠組及び保険者運営のあり方」を中心に,医療保険制度の諸課題につき本年3月以降精力的に審議を重ねてきた成果であり,今後,秋以降に議論を深め年末の結論を目指すという.今回は,この「中間取りまとめ」を素材にして,今後の医療保険制度改革の方向を大胆に予測したい.

病院の少子化対策

CureからCareへ

著者: 森田潤 ,   冨永喜久男

ページ範囲:P.1082 - P.1083

 飯塚病院は,九州の産炭地の中心であった飯塚,嘉穂,山田,田川を診療圏(人口約40万)とする25の診療科を持つ総合病院である(医師146名,従業員総数1,227名,病床数1,157床).小児科は,小児の人口減少とともに医療過疎が進んでおり,他病院での病床の廃止,診療科目の削除,勤務医減少が続き,飯塚市小児科開業医の平均年齢は60歳を超えた.小児科医を目指す医学生が少なくなっているのもうなずける有り様で,研修医に“安心して小児科医になれ”とは言えず,このことは“安心してこどもを育てて下さい”と母親に言えなくなるのでは,と危惧している.その象徴が新生児医療ではなかろうか.本院でもNICU設置は採算がとれず困難と考えられ,他地域の病院に新生児医療を頼っているのが現状である.こうした情勢の中,筆者の一人が赴任した平成5年度より外来医療の見直しを進め,6名の小児科医のうち2名を日勤の外来に固定とし,特殊外来の充実を図ったことにより外来受診者(平均187名/日),のべ入院患者数(43名/日)とも増加を示し(図),小児科単独で黒字を経常している.患者の病院志向の強さが背景にうかがわれる.病院の小児科が地域の“子育て環境”を守るためには,以下の3つの状況を把握し,如何に解決策を実行に移せるかにかかっていると思われる.

病院の高齢化対策

検診から在宅ケアまで泌尿器科領域で包括医療に取り組む

著者: 山口秋人 ,   平祐二

ページ範囲:P.1084 - P.1086

はじめに
 原三信病院は明治12年(1879年)に現在地に開設され,明治30年代から昭和20年代までの約50年間は性病専門病院であった.ペニシリンの出現で性病患者は激減したが,下部尿路や性器疾患の患者が少なくないのに着目した理事長(原三信)は,泌尿器科専門病院を目指して努力を重ね,現在では病床数500床の総合病院である.泌尿器科を核にした総合病院は,日本では希有なケースではあるまいか.
 1995年現在,常勤医師数61名中で泌尿器科常勤医師は15名を数え,最近数年間の泌尿器科の平均年間外来新患数は8,000名以上・病床数120床・年間新入院患者数2,000名・平均在院日数17日・入院手術件数2,000件の現況である.

ナースステーション考・2

従来のナースステーション計画とその問題点

著者: 筧淳夫

ページ範囲:P.1087 - P.1089

1.「ナースステーション再考」とは
 多くの建築家は,ある建物の設計を依頼されたときに,まず類似した事例に頼ることが多い.「類似した事例に頼る」とは,その建築家のそれまでの経験に基づいたり,本・雑誌などで紹介された有名な建築を模倣したりすることである.優れた事例を継承し,その上に新しい蓄積を重ねていくことによって,より使いやすく完成度の高い建築が創られれば良いのだが,残念ながら世の中の多くの建物はそこまでのレベルに達していないように思われる.
 病院の建物は,その要求される機能が複雑で,多岐にわたることから,建築家にもその専門性が要求される建物である.そのため,「まちがいのない」建物を建てるためにも先行事例を模倣することが多いように見受けられる.先にも述べたように,模倣自体は悪いことではないが,得てして建物の計画が保守的となり,現状の問題点を見過ごしてしまう嫌いがあると言えよう.

病院管理フォーラム

[放射線設備・機器管理Q&A]診療用放射線照射器具使用室の構造設備

著者: 諸澄邦彦

ページ範囲:P.1090 - P.1091

はじめに
 1898年にキュリー夫妻によって放射性ラジウム(226Ra)が発見されて以来,ラジウムを用いた小線源治療は,子宮,口腔などの癌の根治的治療に欠せぬ手段であった.1951年にはカナダで初めてラジウムに代わるものとして,放射性のコバルト(60Co)が原子炉で作られテレコバルト装置に応用された.さらにベータトロン,リニアックなどの高エネルギー放射線発生装置による外部照射が普及すると,小線源治療はその優れた局所制御効果にもかかわらず後退を余儀なくされた.局所療法としての小線源治療は,手術に比較して非侵襲的で機能・形態を保存し,生活の質(Quality of life)が担保されるメリットがある.

[病院図書室]文献流通と病院図書室ネットワーク

著者: 野原千鶴 ,   飯田育子

ページ範囲:P.1092 - P.1094

はじめに
 1993年4月から製薬会社の文献情報サービスが自粛され,多くの病院で文献複写,文献検索,スライド作成に困難が生じましたが,文献検索にはCD-ROMやオンラインなどの機械検索の導入,スライド作成にはマッキントッシュ等のコンピュータを設置するなど,病院内での機器の整備により一応の対応は可能となりました.しかし文献複写に関しては,1図書室だけで充足できるものではなく,しかも検索用機器の導入でさらに需要も増加し,外部機関からの入手が不可欠なものとなってきました.
 そこで今回は文献流通と,病院図書館ネットワークについて考えます.

データ・ファイル

平成6年医療施設調査の概況

著者: 厚生省大臣官房統計情報部

ページ範囲:P.1095 - P.1098

 ●この概況は平成5年10月1日から1年間における全国の医療施設(病院・診療所)の開設・廃止等の動態状況をとりまとめ,平成6年10月1日現在として集計したもの.

医学ごよみ

11月—November 霜月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1099 - P.1099

□21日 ジギタリスの強心作用の発見
 “Foxglove”(キツネの手袋)という植物の有効成分であるジギタリスを浮腫のある患者に用いた10年間の知見を一冊の本にまとめた(1785年に出版)のは,英国のウィザリング(William Withering,1741〜1799)である.このとき彼は,まだ明確にジギタリスの強心作用に気づいてはいなかった.ウィザリングの本が出版された15年後の1799年に,同じ英国のフェリアール(John Ferriar,1761〜1815)が,ジギタリスには心機能を改善する薬効があり,利尿効果は2次的なものであることを明らかにした.
 11月21日はフェリアールがロックスバーグシャ(Roxburghshire)の近くのオックナム(Oxnam)で生まれた日である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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