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医療技術革新の展望とこれからの医療政策—ヒト遺伝子研究の意味するもの
ヒトゲノム・プロジェクトとアメリカの医療政策
著者: 広井良典1
所属機関: 1厚生省社会・援護局更生課
ページ範囲:P.188 - P.193
文献購入ページに移動OTA報告と合意形成
前回,ヒトの遺伝子の全塩基配列を解読するという「ヒトゲノム・プロジェクト」のアイデアがアメリカで提唱され,いくつかの紆余曲折をへて計画そのものの必要性についての合意が1988年頃までに固まっていく過程を見た.残るは研究推進体制の問題,すなわち先に触れたエネルギー省(DOE)主導の計画なのか否かといった点であるが,この点についての基本的なオプションとあるべき方向を示したのが,全米研究評議会(NRC)の報告のわずか2か月後(88年4月)に議会付設の技術評価局(OTA)から発表された報告書「ヒト遺伝子マッピング(Mapping OurGenes)」であった.
OTAはこの中でプロジェクトの推進体制について,「単一機関主導型(Single-Agency Leadership)」「組織間タスク・フォース」「コンソーシアム」等の選択肢を示しつつ,特に単一機関主導型に関する議論のなかで,先に述べたような「NIH=分散管理体制,DOE=重点的な大規模プロジェクトに向く」といった比較を行ったうえで,かりに議会がヒトゲノム・プロジェクトの主導機関を決めるとするなら,計画の任務ともっとも直接に関わり,また関連する研究者も圧倒的にNIHが支援している科学者コミュニティに属しているとの理由から,NIHを選ぶのが「論理的な選択である」と結論づけている.
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