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特集 薬価と病院経営
薬価差益の病院経営に及ぼす影響
著者: 米田啓二1
所属機関: 1全国自治体病院協議会
ページ範囲:P.234 - P.238
文献購入ページに移動薬価差益とは,略して薬価差とも言われるが,医療機関が保険者に薬剤費の支払いを請求する価格(薬価基準価格)と実際に卸売業者等から医薬品を購入する価格の差益のことを指して言う言葉である.この差益は,およそ1兆3,000億円,国民1人当たり年間に直すと1万円の計算になると言われ,薬価差益縮小の必要性が説かれている.しかし,反面この差益は,現に医療機関の経営に大きく寄与しているので単なる縮小のみでは,医療機関にとって大きな混乱を巻き起こすことは必至であり,対応は簡単ではない.
わが国では江戸時代より前から医師は薬師(くすし)と呼ばれ,医師の治療と投薬は一体のものと一般には考えられ,治療費は薬代として患者に請求される場合が多かった.昭和2年健康保険発足の頃は,医療機関は,一般に診療券の名義でそれぞれ有効期間と金額を決め,その技術差に応じていわば普通の初診・再診の診療料を先取りしていた.その頃の健康保険による患者数は,中流以下の労働者を対象としていた関係もあり,全体の1割程度に過ぎなく,医師の収入に対する影響も少なく,医師は「医は仁術」の立場から診察料は無料で薬の実費を頂くという傾向も多かったという.したがって,保険の医療費の配分が府県毎に人頭請負方式で始まった経緯があり,医療費の配分が薬本位,物本位の配分でその後推移していた.
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