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雑誌目次

雑誌文献

病院54巻5号

1995年05月発行

雑誌目次

特集 特定療養費制度の功罪

特定療養費制度とは何か

著者: 佐藤陽次郎

ページ範囲:P.434 - P.439

特定療養費制度について
 特定療養費制度は,昭和59年の健康保険法改正によって設けられたものである.その創設の趣旨は,国民の生活水準の向上や価値観の多様化に伴う医療に対する国民のニーズの多様化,医学技術のめざましい進歩に伴う医療サービスの高度化に対応して,必要な医療の確保を図るための保険給付と患者の選択によることが適当な医療サービスとの間の適切な調整を図ることであった.
 特定療養費が支給される場合は,大きく分けて2つある.

特定療養費制度による保険給付の調整とその将来

著者: 高木安雄

ページ範囲:P.440 - P.445

はじめに——平成6年医療保険制度の改革の歴史的な意味について
 平成6年(1994年)は,日本の医療保険制度の歴史において大きな転換期として記録されるにちがいない.なぜなら,「保険給付の役割・範囲の見直し」という新しい問題認識にもとづいた改革が進められ,これまでの患者一部負担引き上げなど財政的な理由を主にした改革とはその性質を大きく異にするからである.これらの改革は,わが国の急速な高齢化の進行に対応して,医療保険制度の長期的安定と保険給付の設計と内容の調整を意図したものであり,1961年以降の国民皆保険の歴史において大きな転換を意味するものである.すなわち,良質で適切な医療の確保の観点から,「保険給付の役割・範囲の見直し」が提案され,新たに入院時の食事について1日600円の一部負担が導入され,また,前者と連動して「費用負担の公平化と給付の重点化」の観点から,これまで看護・介護職員が少ない病院で行われていた付添看護を平成7年度末までに廃止することが平成6年度4月の診療報酬改定で決まり,患者の差額負担を解消し,すべて医療保険から給付することになったのである.

特定療養費制度の本当のねらい

著者: 二木立

ページ範囲:P.446 - P.450

はじめに——「第二次保険・医療改革」と特定療養費制度の拡大
 私は,1994年の医療費改定と健保法改正により,厚生省の医療費抑制政策は新たな段階=「第二次保険・医療改革」に入った,と考えている.
 1980年代初頭から10年間実施されてきた「第一次保険・医療改革」では,医療費総枠の抑制(「国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内に抑えていく」)が至上目的とされてきた.この「数値目標」は達成されたが,その代償として,2つの歪み(欧米諸国に比べた医療の質の低下と,老人病院の保険外負担等の不明朗な患者負担の拡大)を招いた.そのために,厚生省は,今後は,公的医療費の抑制は貫きつつ,特定の医療サービスの「保険外し」と「特定療養費制度の活用」による「合法的」患者負担の拡大を財源として,医療費総枠を拡大し,それによって,中所得層の患者が受ける医療の質の引き上げを図ろうとしている.しかも,後述するように,特定の医療サービスの保険外しは,長期的にみると,安定した診療報酬改定財源とはなりえないため,「特定」療養費制度の拡大=「一般」制度化が,「第二次保険・医療改革」の成否を握ることになる.

[座談会]特定療養費制度の運用と病院経営

著者: 原田充善 ,   大脇潔 ,   大塚宣夫 ,   大道久

ページ範囲:P.458 - P.465

特定療養費制度の変遷
 大道 本日は「特定療養費制度の運用と病院経営」というテーマで座談会を行いたいと思います.わが国の社会保険診療の基本的な考え方として,保険による支払いを受ける部分と,患者さんが直接みずから負担をして支払う部分とを混合してはならない,すなわち混合診療の禁止という原則がありますが,昭和59年に健康保険法が改正されまして,「患者が支払う療養費の一部を健康保険の療養の給付として認める」ということになり,これが特定療養費と呼ばれているわけです.
 当初は高度先進医療を社会保険診療に直接適用することについて,普及の度合や技術の水準から適当ではないと思われたので,患者さん自身にご負担いただくことになりました.しかしその後,厚生大臣が特に定める療養の給付について,特定療養費という考え方に基づいて運用され,今日に至っております.

当院における特定療養費制度の活用

サービスの提供とコスト増のバランスをとることが課題

著者: 渡辺明良 ,   鈴木敦子

ページ範囲:P.451 - P.453

はじめに
 聖路加国際病院は,創立90年を迎えた1992年に,小児病棟を除く全室個室(許可病床数520床)としてハードもソフトもリニューアルオープンした.
 特に全室個室(=all single care unit)は当院の特性の第1に挙げられるものであった.

特定療養費制度への提言

著者: 天願勇 ,   白石清隆

ページ範囲:P.453 - P.456

はじめに
 第2次大戦後50年を経た日本国民の多くは,自ら中流を意識し,衣食住ともリッチな「グルメ時代」を迎えている.
 医療の分野では国民皆保険に加えて,民間保険の加入率も上昇し,医療保険業界の規制緩和が叫ばれている中で,我が国の健康保険法も改正を余儀なくされている.そのような時代の変遷と国民多数の中流意識を考えた時,国際社会における先進諸国の一員として我が国の病院のアメニティ,特に入院施設の質は見直さなければならない.見直しの視点にも様々な立場があるがその基本はあくまで患者の側に立ち,供給側の医療機関の意見を参考にして,行政は調整役に徹し規制は必要最小限にしていくのが21世紀という時代のトレンドであろう.健康時の日常生活と患者になった時の入院生活のギャップは心身に多大な影響を及ぼし,病状の回復にも影響してくる.特定療養費制度の運用に関して言えば,病人だからこそ快適な環境とサービスを求めるのは当然であり,その基準を定めるにあたって,アメニティを損なうようなトップダウン式の規制は極力減らし,より良い医療サービスが提供できるようになされるべきである.

高度先進医療(ガンマナイフ)の活用

著者: 中村順一

ページ範囲:P.456 - P.457

はじめに
 当院では,脳神経外科領域の専門病院として開設して以来,常に最新鋭の診断機器や治療装置を導入し,地域医療の充実に心がけてきた.1991年5月には,新たにガンマユニットによる定位放射線治療(以下,ガンマナィフと略す.図1)を国内での普及に先駆けて導入した.近年脳神経外料領域は,手術顕微鏡の導入により,急速な進歩を遂げているが,未だに到達不可能な病巣部位が存在し,これらに対する治療装置としてガンマナイフが注目されてきた.ガンマナイフは1968年スウェーデンのカロリンスカ病院でLars Lek—sell教授により始められた.当初はパーキンソン病などの機能的疾患が対象とされたが,その後,脳深部の脳動脈奇形や聴神経腫瘍などの症例に応用され,良好な結果が得られたことから世界的にも普及しつつある.
 現在まで全世界で2万人以上の患者に対してこの装置による治療が施行されている.本稿では当院におけるガンマナイフの導入から本治療に対する特定療養費制度の活用に至る経緯,この制度の現状と将来への期待等について述べたい.

グラフ

開院10周年の節目を迎えた高志リハビリテーション病院

ページ範囲:P.425 - P.430

 富山県で身体障害者の福祉の増進を図るため,各種のリハビリテーション施設を総合した社会福祉総合施設を建設する構想が動き出したのは1972年(昭和47年)のことだった.2年後の74年には富山県社会福祉総合センター建設基本構想が策定され,76年に富山障害者職業センターを開設,続いて県立高志学園(肢体不自由児施設)を新築移転したのを皮切りに,翌年学園併設の高志養護学校(小・中・高等学校)を竣工,その後も高志授産ホーム(重度身障者授産施設),高志更生ホーム(重度身障者更生援護施設),高志療護ホーム(身障者療護施設)と各種施設の開設が続く.そして1984年(昭和59年),このような福祉・医療複合体の中にあって,各施設利用者に医療・リハビリテーションを提供すると同時に,①高度リハビリテーション医療,②地域リハビリテーション,③研究開発と臨床リハビリテーション工学サービス,に取り組み,富山県におけるリハ医療の中核をも担うべく設立されたのが高志リハビリテーション病院である.開院後10年を経て,病院としての基礎づくりを終えた当院を訪ねた.

榊原記念病院総婦長から済生会中央病院包括看護担当副院長に 山崎絆さん

著者: 伊賀六一

ページ範囲:P.432 - P.432

 山崎さんと初めてお会いしたのは東京都病院労務管理協会の席上だった.看護婦不足が深刻化しつつある中で,看護業務の整理・改善が喫緊の課題として浮かび上がり1991年,同研究会に看護業務改善委員会が結成された.その8名の委員の中に山崎さんと私が含まれていたのである.委員会で検討を重ねる中で,山崎さんは榊原記念病院ての実践に基づいて,看護の質の維持・向上を図りながら,他職種への業務委譲を含めて看護業務を改善してこられた経緯を語られた.これらのことは,委員会が取り組んだ「看護の質を高める評価の手引き」を作成するに当たって大きな力になったと思っている.看護の理念は理念として主張しつつ,その実現に向けてのプロセスを見通し,戦略を構想できる視野の広さと柔軟性,言葉を換えれば,良い意味での“したたかさ”をもった看護管理者として,その時山崎さんが私の前に立ち現れたのである.病院経営を共に語れる看護管理者に出会えたという印象は,委員会が回を重ねるごとに強まっていった.
 当院では看護部門の確りした基盤を作るために,虎の門病院の看護部長を退かれ自適の生活に入られていた栗原やまさんに無理を押して看護部長をお願いしていたのだが,懸案であった彼女の後任に,ぴったりの人が見つかったという思いだった.

主張

特定療養費と病院経営

著者:

ページ範囲:P.433 - P.433

 特定療養費制度の拡大により患者負担を求めることのできる項目は現在,高度先進医療,特別の療養環境,予約診療,診療時間外診療等の外,特定機能病院における紹介患者,歯科におけるメタルボンド,総義歯が導入されている.このうち従来一般的な病院経営に大きく関与して来たのは室料差額であった.平成6年診療報酬の改定と共に全病床の50%までの特別室の提供が一定の条件下で可能となった.しかし,全国的に見ると室料差領による収入は病院経営の中に占める割合はまだまだ低くその上地域差,病院差は著しい.
 将来病院経営を考えるとき,特定療養費の拡大による収入がどう影響してくるのか大きな問題と言える.確かに療養環境改善,初診料,再診料等の技術料,あるいは入院時の食事に関する診療報酬上での評価は低い.より良い医療環境,アクセスの良さに対して特定療養費がなじむのかどうかが問題点としてクローズアップされて来ているのも事実である.この問題は今後必ずや医薬品をどうするのかにも波及するであろうし,ペースメーカーや人工骨頭等の高額医療機器を入れるか入れないのか論議が白熱する点でもある.

特別企画 高齢者のケア・3

高齢者ケアと支払い方式—RUG-Ⅲによる費用保障の妥当性

著者: 高木安雄

ページ範囲:P.466 - P.471

はじめに
 高齢者の長期ケアに関するMDS(Minimum Data Set)とRAPs(Resident Assessment Protocols)による「高齢者ケアプラン方式」の今日的な意義とその可能性については,前述のとおりであり,ここでは,適正な費用保障の観点からMDSによるアセスメント結果をもとに開発されたRUG-Ⅲ(Resource Utilization Groups)の日本における検証をふまえて,施設に入所する高齢者のケア必要度・重症度に応じた支払い方式の必要性とその課題について考察する.
 わが国の高齢者の施設ケアが,老人病院,特別養護老人ホーム,老人保健施設という医療・福祉・保健の分立した体系の下で供給されていることは周知のとおりであり,その費用保障もそれぞれの制度体系でなされている.しかし,老人病院について1日当たりの定額による包括的な「入院医療管理料」が導入されたことを契機に,以下の3つの点からこれら施設群におけるサービスの評価と連携,その費用保障のあり方・調整は大きな課題となっている.

シンポジウム

新たな医療の枠組みの中で勤務医の果たす役割—日本の医療を良くするには勤務医は何をすべきか・1

著者: 西村昭男 ,   神尾友和 ,   矢野亨 ,   松村理司 ,   森養治 ,   紀伊國献三 ,   竹内實

ページ範囲:P.472 - P.478

 日本医師会主催の「平成6年度全国医師会勤務医部会連絡協議会」が「激動する医療の中で—勤務医の意識改革」をメインテーマに平成6年10月15日,札幌市の京王プラザホテル札幌で開催されました.この連絡協議会は全国各地域医師会の勤務医部会に参加している医師会員が一堂に会し,勤務医が抱える諸問題を討議する場として,地域医師会持ち回りで毎年1回開催されています.
 今回は北海道医師会の担当のもとに坂上正道日本医師会副会長の特別講演およびフォーラム・シンポジウム,調査報告などを企画しました.ここにその一部のシンポジウムおよび調査報告の記録を掲載しますが,病院の管理者クラスの勤務医のみならず広く一般勤務医も一読され,今後の勤務医のあり方を考えていただくことを期待します.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第7回

多摩南部地域病院

著者: 小山文雄

ページ範囲:P.479 - P.485

はじめに
 多摩南部地域病院は,東京都病院構想懇談会報告書(昭和59年)に基づき,東京都の長期計画の中で位置づけられた「区東部」「多摩南部」各地域病院の後者に該当するものである.医療不足地域の基盤整備をはかることはもちろんのこと,民間医療機関を積極的に支援し,有機的に連携することにより地域全体の医療供給の向上を目指している.
 地域医療システムのあり方を基本的な視点として構想されたものであり,基本理念は以下の通りである.

厚生行政展望

患者情報の地域管理

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.486 - P.487

はじめに
 再び,国民総背番号制の是非論議が始まろうとしている.前回は,といっても十年以上も前の論議であったが,プライバシー保護上の懸念が主たる理由で国民に総スカンを食らい,いつの間にか沙汰止みになってしまったのだが,今回は,構想の新聞発表時点では,前回ほどの国民的抵抗は見られていない.この十数年の間に情報化技術は格段の進歩を遂げ,プライバシー漏洩に関する危険性はむしろ高まっているというのに,国民サイドがむしろ寛容になってきているのはどういう訳であろうか.プライバシー情報の中でも,自分がどういう病気にかかり,どういう治療を受けているのか,といった患者情報は最も保護の必要性が高い情報のひとつである.国民総背番号制を背景に患者情報が無防備に流通することがないよう,医療関係者は,今回のこの動きに無関心であってはならないであろう.

医療技術革新の展望とこれからの医療政策—ヒト遺伝子研究の意味するもの

ヒト遺伝子研究の3つの流れ

著者: 広井良典

ページ範囲:P.488 - P.492

第3次医療技術革新
分子生物学・技術革新・医療費(承前)(ヒト遺伝子研究と「最年少の科学」の未来)
 前回,ルイス・トマスの,「医療技術の3段階発展論」を紹介し,その問題点を併せて指摘した.
 ここで,医療技術革新の背景となった理論科学における革新にまで遡って考えるならば,同じく前回に見た日本における戦後の技術革新と医療費との関係,そして今後の展望を考えるに当たって,彼のモデルは次のような意味を持つように思われる.

病院の高齢化対策

研究所付属の専門病院を目指す多根記念眼科病院

著者: 水川孝

ページ範囲:P.493 - P.495

特定医療法人きっこう会が創立40周年を記念して設立
 本院は特定医療法人きっこう会が40周年記念事業として設立したものですが,多根要之助理事長が医療関係の有識者(公私両面)に相談され,「これからの高齢者社会では眼科が一番有利だ」と聞かされて,計画されたのです.したがって,病院設計などは私が院長を依頼されてからは,すべてそのことを意識して進めました.勿論大義名分は欧米並みのInstitute付属の眼科専門病院を,私の希望通りに経費を惜しまずつくることで,1988年11月2日開院しました(実際は大鳥利文近畿大学教授の尽力によるものです).
 建築については,敷地面積992m2,建築面積647m2,7階建て,延べ面積3,854m2で,患者中心の高度のアメニティをハード・ソフト両面より考え,設計・設備しております.フロア構成は表1に示しました.

病院管理フォーラム

[放射線設備・機器管理Q&A]移動型エックス線装置,骨塩定量分析装置

著者: 諸澄邦彦

ページ範囲:P.496 - P.497

移動型エックス線装置
 移動型エックス線装置とは,特別の理由により移動して使用する装置をいい,「特別の理由」とは,重症患者や手術中の患者等で,エックス診療室に患者を移動することが困難な場合に,移動型エックス線装置を移動して,管理区域外での使用が例外的に認められている(医療法施行規則第30条の14).さらに,平成元年1月18日付健政発第20号の健康政策局長通知では,「移動型又は携帯型エックス線装置は,手術室で一時的に使用する場合を除き,撮影のみに使用し,透視は行わないこと.なお,使用する場合には,放射線診療従事者等及び他の患者等に対する必要な防護措置を講じた上で行う旨指導されたい」と述べている.以下,具体的事例により検討を加える.

[病院図書室]病院における患者図書サービス

著者: 山室眞知子

ページ範囲:P.498 - P.499

はじめに
 病状が落ち着いて,病院での長い時間をテレビや週刊誌で過ごす患者さんのために読書を薦めようと,ここ数年来患者さんのための図書サービスが盛んになりつつある.
 わが国の病院事情では,欧米諸国で見られるような患者さんのための図書室を院内に設置し,担当者を配置することなどはまだまだ考えられない.それでも病院における患者サービスまたはアメニティを考慮して,ボランティア活動による図書サービスを実施している病院が増えてきている.このような患者への図書サービスについての概要と問題点等について述べてみる.

[外国人医療費の未収金]トヨタ記念病院における外国人医療費の未収金対策

著者: 松尾雅次

ページ範囲:P.500 - P.501

はじめに
 私どもでは,ここ4〜5年のあいだに不法滞在の外国人の未払が集中し,このままいくと大変憂慮すべき事態になるとの危機感をいだいている状況である.問題は始まったばかりであり,今後の打開策を模索している段階であるが,当院の実態を報告し,関係当局の対策をお願いするとともに,関係各位からのご指導が頂ければ幸いと考える次第である.

データ・ファイル

平成5年社会医療診療行為別調査の概況(平成5年6月審査分)

著者: 厚生省大臣官房統計情報部

ページ範囲:P.502 - P.510

□調査の概要
 1.調査の目的
 この調査は,政府管掌健康保険(以下「政管健保」という)及び国民健康保険(以下「国保」という)における療養の給付の受給者にかかる診療行為の内容および傷病の状況等を明らかにし,医療保険行政に必要な基礎資料を得ることを目的としている.

医学ごよみ

5月—May 皐月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.511 - P.511

□5月5日 甲状腺疾患橋本病
 橋本病は今日最もよく知られた自己免疫疾患である.これは中年女性に多く,び慢性甲状腺腫があるが,甲状腺機能亢進を伴わない.この疾患を世界で最初に記述したのは,九州大学の前身である京都帝国大学福岡医科大学出身の外科医橋本策(はかる)である.
 橋本策は,明治14年(1881)5月5日に三重県阿山郡西拓植村御代(今の三重県阿山郡伊賀町御代)に生まれた.伊賀は忍者の里としても有名であり,また俳人松尾芭蕉や作家の横光利一の故郷でもある.また荒木又衛門36人切りの鍵屋の辻も近くにある.その昔陸の孤島といわれた伊賀の里も,現在では名古屋と大阪を結ぶ名阪高速道路が通り,名古屋からバスで約1時間の距離にある.またJRの関西線柘植で乗り換え新堂駅で降りるとよい.京都からは草津線でも来ることができる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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