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雑誌目次

雑誌文献

病院54巻6号

1995年06月発行

雑誌目次

特集 病院が倒産するとき

[講演]民間病院倒産事例とその対応策

著者: 高井伸夫

ページ範囲:P.530 - P.538

「倒産」とは何か
 現在,金融機関の経営が大変厳しくなって,今後,金融機関の倒産が相次ぐのではないかと言われています.あるいは倒産に至らないまでも,どの金融機関も生き残りに必死で,不良債権になる可能性がある融資を少しでも少なくすることを安全策として強く打ち出しております.
 金融機関倒産のあおりを食うというのは,適切な表現ではないかも知れませんが,病院においても経営が苦しくなり融資が得られない,資金手当てができない,となってくると必然的に倒産に結びついてしまいます.

病院経営に与える診療報酬の影響

著者: 針谷達志

ページ範囲:P.539 - P.547

はじめに
 1981年の診療報酬改定は,それ以後の医療費抑制策の第一弾であった.図に明らかなように,それまでの診療報酬は,原則として,人件費・物価スライド制を基調としていたため,人件費と物価が上昇し,病院の経営成績が悪化すれば,多少のタイム・ラグはあっても必ず引き上げられたのである.
 1974年までの病院の経営成績は,人件費と物価の上昇により悪化し,診療報酬引き上げにより好転することの繰り返しの歴史であった.

自院の経営分析と診断のポイント

著者: 渡邉亮一

ページ範囲:P.548 - P.551

はじめに
 病院は,公衆または特定多数人のために医業をなす場所で,傷病者が科学的でかつ適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され,かつ運営されるものであるとされている.したがって,その経営は,良質な医療サービスの追求が第一義であって,利益の追求が目的であってはならないことが古くから言われている.
 しかしながら,今日のように病院の存続そのものが危うい状況にあっては,病院の経営者・管理者は,採算性(経済的側面)をよく把握し,提供する医療の質(機能的側面)とのバランスを図りながら,病院を管理・運営する必要がある.

経営診断・指導の方法

著者: 糸井克己

ページ範囲:P.552 - P.557

はじめに
 社会福祉・医療事業団は,社会福祉事業振興会と医療金融公庫との統合により,昭和60(1985)年1月に設立されたが,この統合に際して,医療機関の有する非営利性,公的制度との深い関わり,労働集約的な事業形態等の特殊性や医療を取り巻く環境の巌しさの増大により,中長期的に健全な経営を確保していくためには将来展望に立った総合的な経営方針の確立が重要であるとの観点から,医療金融公庫の長年にわたる融資事業を通じて蓄積された各種の情報と知見とを活用して,新たに経営診断・指導事業を開始し,その後逐次事業内容を拡充して,現在に至っている.
 この経営診断・指導事業には,1)個別の医療機関について,(a)決算書等の書面データを用いて経営内容の調査・分析や財務分析を行ない,今後の経営の基本的方向を示すもの,(b)対象の医療機関やその周辺環境を実地調査して,診療圏や経営実態を詳細に調査・分析し,具体的な改善方策,実施方法等を提示するもの,2)民間医療機関の開設者等を対象に,行政関係者,学識経験者等を講師として,セミナー形式で実施する集団経営指導(これには,(a)病院・診療所向けと(b)老人保健施設向けとの2種類がある),

[インタビュー]病院経営におけるリスクマネージメント

著者: 師岡孝次

ページ範囲:P.558 - P.559

 阪神・淡路大震災により危機管理という言葉がクローズアップされましたが,リスクマネージメントの役割が非常に重要になっています.
 これまで日本では,リスクマネージメントという考え方が希薄で,外国に比較して非常に遅れているといえます.今回の阪神・淡路大震災では,医療関係に限っても10人の医師が亡くなり,約1,000か所の診療所が倒壊し,約20か所の病院がその機能を喪失しました.私も日本医師会の医療システム委員である関係で,兵庫県や神戸市の医師会関係の被災状況には関心を持ち,また現地の神戸医師会の役員の方から「テレビで見ているだけではだめだ.神戸まで来なさい」とのことで,現地を一泊二日で視察してまいりした.アスベスト・ダストによる肺癌のリスクは極めて大きいという実感でした.

[対談]戦略的経営と再建への道

著者: 三枝匡 ,   井手道雄

ページ範囲:P.560 - P.567

 編集部 三枝さんは先般(1994年9月)『経営パワーの危機』(日本経済新聞社)というタイトルの本を出されました.サブタイトルに「熱き心を失っていないか」とあります.この本では企業の再建に成功した一人のサラリーマンのサクセスストーリーが展開されています.このストーリーの主人公の伊達陽介の後日談も興味あるところですが,まず本書をまとめた趣旨をご紹介いただけますか.
 三枝 これまでの経営書の多くは内容が非常に固いんです.読んでいると眠くなるし,セオリーを勉強しても,それが自分の職場でどう使えるかわからないということが圧倒的に多い.そこでセオリー的なものを現場に適用してもらうために,小説仕立てにして臨場感を持って読んでいただこうという構成にしました.新しい形の経営書のジャンルを狙いました.

グラフ

脳卒中リハビリテーションを核に予防から在宅まで総合的サービスを提供—財団法人潤和リハビリテーション振興財団=潤和会記念病院、宮崎温泉リハビリテーション病院および関連施設

ページ範囲:P.521 - P.526

高齢化社会への対応
 「私が大学から宮崎に戻ってきた時はまさに当時の老人病院そのもので,正直言って,ここで医療をやっていくのかと思うと暗澹たる気持ちになりました」と大野和男理事長は帰郷当時の心の内をさらけ出す.
 宮崎温泉病院は当時の多くの老人病院同様にお年寄りを収容する場に過ぎなかった.

全国国立療養所院長連盟会長 国立療養所村山病院 中山昇二院長

著者: 林田基 ,   八木保

ページ範囲:P.528 - P.528

 中山先生には国立病院・国立療養所院長会議で初めてお目にかかった.一年半ほど前のことである.先生は既に院長経験10年のベテランで,しかも全国院長間の信任極めて厚く,選ばれて全国院長連盟の会長の要職についておられた.以来,ご指導を仰いでいる.
 先生は小田原生まれ.昭和31年に慶應義塾大学医学部を卒業され,同大学院卒業後,リウマチ疾患,とくに膠原病を中心に研究された.48年同大内科講師に任命され,翌年国立療養所村山病院に勤務されている.51年同病院副院長に,60年同病院院長に就任されている.現在,慶應大学医学部客員教授でもある.

主張

インフォームド・コンセントは患者から“与えられる”もの

著者:

ページ範囲:P.529 - P.529

 より人間的な温もりのある医療への希求を高めながら高齢化が本格的に進んできている.高齢社会になってはじめて見えてきたものは,社会のやさしさ,暖かさであろう.しかし,それへの実感が受けとめられるほど医療界での反応はそんなに速くはない.それは,今日のインフォームド・コンセントに象徴されるように言葉だけが先行していて,一向に日常の医療の場では真の意味でのインフォームド・コンセントが生かされていないことでも明らかである.
 1994年度に行われた健保連でのアンケート調査によれば,診療に対する不満の第一の理由に,「病状や治療について十分説明してもらえなかった」ということが挙げられている.さらに,「十分な説明を受け納得した上で治療を受けるべきだと思う」という人が,各年齢層において60%を越えており,若年層になればなるほどこの傾向は著明となる.女性の20代では実に83%の人がそのように望んでいるという結果となっている.医療界でインフォームド・コンセントが日本生まれでない言葉だとか,わが国の風土になじまないからといっているうちに,実際の医療現場では日増しにその必要性が高まってきている.そして先のアンケート調査結果にあるように,受療する患者サイドからは容赦のない勢いでインフォームド・コンセントを迫ってきている.

特別企画

[座談会]阪神・淡路大震災における聖マリア病院の支援活動

著者: 大濱京子 ,   高橋修司 ,   後藤琢也 ,   井手啓貴 ,   浦部大策 ,   田崎敦子 ,   中島康浩 ,   井手道雄

ページ範囲:P.568 - P.575

20日夕刻に現地入り
神戸海星病院を拠点に活動
 井手(司会) 阪神・淡路大震災は1995年1月17日(火曜日)の午前5時46分に発生しましたが,聖マリア病院は日本カトリック医療施設協会(以下,カトリック医療協)の一員として救護活動に参加しました.聖マリア病院はカトリック医療協の会長施設でもあります.
 大災害だということで,地震当日および翌日に神戸市内の海星病院,その他に電話しましたが,全く通じない状態でした.そこで,翌18日(水曜日)に,副会長施設である姫路聖マリア病院より院長のシスターほか1名で神戸の状況を調査していただきました.そして19日(木曜日)に姫路聖マリア病院から視察状況の報告がファクシミリで送られてきました.

[インタビュー]地下鉄サリン事件と聖路加国際病院の対応—聖路加国際病院副院長に聞く

著者: 三上隆三

ページ範囲:P.576 - P.579

 3月20日朝,聖路加国際病院では7時30分から幹部会を開いていた.この幹部会が間もなく終会となろうとした午前8時40分,アセトニトリルの化合物によるであろうという被害者が救急車で運ばれてきた.
 この連絡は直ちに幹部会に伝えられ,日野原院長は即座に緊急連絡を発した.

MSWの相談窓口から

あるMSWの独り言

著者: 水谷祥子

ページ範囲:P.580 - P.580

—最後の砦—
 医療と福祉の谷間,病と生活の谷間,そして豊かと貧困の谷間.
 病院の相談室は,谷間に吹く冷たい風を受けて,寒さに震えながら暮らす人々との出逢いの場.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第8回

イギリス,アイルランドの医療・福祉建築—(社)日本医療福祉建築協会第15回海外病院視察報告

著者: 上野淳

ページ範囲:P.581 - P.588

イギリス,アイルランドの医療福祉建築の視察
 (社)日本医療福祉建築協会の第15回海外病院視察団は,1994年9月17〜10月1日の15日間,イギリス,アイルランドを訪問した(図1).
 視察・訪問先の施設種類は,高齢者住宅からホスピス,コミュニティー・ケア・センター,大規模総合病院まで多岐にわたるが,以下,カテゴリー毎にそれぞれの概要を紹介してみたい.

シンポジウム

新たな医療の枠組みの中で勤務医の果たす役割—日本の医療を良くするには勤務医は何をすべきか・2

著者: 西村昭男 ,   神尾友和 ,   矢野亨 ,   松村理司 ,   森養治 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.589 - P.594

 紀伊國 次に国立佐賀病院院長の森先生にお願いします.

パネルディスカッション 21世紀の医療を目指して・1

<基調講演>今後の医療について—診療報酬の今後と病院の在り方

著者: 下田智久

ページ範囲:P.595 - P.599

 医療課長の下田です.前職の老人保健課長時代には老人医療のことで,先生方には迷惑をお掛けしたり,お願いしたりしましたが,今後ともよろしくお願いいたします.
 今日は「今後の医療」について,私どもが考え議論していることをご紹介し,皆様方と議論したいと考えております.

厚生行政展望

標欠病院

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.600 - P.602

 医療法では,病院が守るべき法定人員及び施設の基準等が定められている(法第21条).遵守すべき医療従事者標準数に欠けている病院のことを業界用語で「標欠病院」と呼んでいる.この標欠病院が最近話題になっている.医師・看護婦のいずれかが50%以下または医師・看護婦の双方が80%以下の場合には診療報酬の減額になるからである.特に著しい標欠の場合には新看護,基準看護等の届け出ができなくなることでも脚光を浴びることになった.最近,著しく標欠になっている病院名を公表すべきであると指摘する声がある.一所懸命努力している病院が報われないのはおかしいという主張である.これはごもっともである.今回はこの標欠病院について検討する.

医療技術革新の展望とこれからの医療政策—ヒト遺伝子研究の意味するもの

ヒト遺伝子研究への政策的対応—遺伝子関連技術をどのような技術としてとらえるべきか

著者: 広井良典

ページ範囲:P.603 - P.609

第3次医療技術革新(承前)
分子生物学・技術革新・医療費
 医学医療の流れとヒト遺伝子
 ヒト遺伝子研究と医学医療の流れといえば,自ずと浮かび上がるひとつの領域がある.それは「遺伝病」の研究(その診断・治療)である.
 メンデルの法則が「再発見」された1900年のわずか2年後,イギリスの医学者ギャロッドは,アルカプトン尿症(尿が空気に触れると黒色に変わる病気)がメンデルの法則に従う劣性遺伝であることを発表する.これは,メンデルの遺伝法則が「人間」について示された最初のものであった.ギャロッドはこの病気の患者の場合には正常な代謝過程が何らかのかたちで阻害されているとし,これらを「先天性代謝異常」(inbom error of metabolism)と呼んだ.1914年まではこうした先天性代謝異常においては代謝過程を正常に進行させるための酵素が欠けていることが示され,その酵素が単離された.こうして,アルカプトン尿症をもたらす遺伝物質は代謝過程のある段階を阻止する働きをしていることが示された.ここに初めて「遺伝子」と「疾病」との結びつきが明らかにされたのである.

病院管理フォーラム

[放射線設備・機器管理Q&A]放射線治療装置の許認可手続き

著者: 諸澄邦彦

ページ範囲:P.610 - P.611

 放射線治療は,そのすべてを悪性腫瘍・がんの治療に向けている.がんの治療には,外科手術,放射線治療,化学療法,免疫療法その他があり,集学的治療として総合的に利用されている.放射線の種類として,光子,電子,粒子線によるもの,照射方法として,外部照射,腔内照射,組織内照射とがある.さらに温熱など非電離線をも含むものにまで範囲が広がっている.
 放射線医学総合研究所の医療関係の実態調査では,放射線によるがん治療のうち65%が高エネルギーX線,7%が高エネルギー電子線による放射線治療を受けていた.最近はマイクロトロンも使用されているが,使用されている診療用高エネルギー放射線発生装置は直線加速装置(リニアック)が大部分である.その設置に際して,医療法では,診療用高エネルギー放射線発生装置(医療法施行規則第25条)としてあらかじめの届け出が,放射線障害防止法では,放射線発生装置としての許可が必要である.

[外国人医療費の未収金]外国人患者の「社会資源」の確立を求めて

著者: 洪東基

ページ範囲:P.612 - P.613

はじめに
 我が国においては,外国人入国者は年々増加し,現在では10年前の約3倍に相当する350万人に達すると言われている.
 また外国人登録を受けている在留外国人(永住者・定住者)も100万人を越え,その在留資格も多様化しており,このような状況は今後一層進行していくことが予測される.

データ・ファイル

平成6年6月病院運営実態分析調査の概要・1

著者: 全国公私病院連盟

ページ範囲:P.614 - P.617

 この調査は,全国公私病院連盟が社団法人日本病院会の協力を得て,毎年6月に実施している調査で,病院運営の実態を把握して病院の運営管理改善の資料とするとともに,診療報酬体系改善のための資料を得ることを目的としている.
 調査の結果は,「病院経営分析調査報告」,「病院経営実態調査報告」の2冊とし全国公私病院連盟から発刊される.前者は病院の職員数,患者数,診療収入,施設設備の状況など病院運営に必要な各種の指標を量的,質的に分析し,後者は病院の収支を中心にまとめたものである.

医学ごよみ

6月—June 水無月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.619 - P.619

□6月4日 胃鏡の開発者
 ウィーン大学の偉大な外科医ビルロート(Christian AT Billroth,1829〜1894)の弟子であり,いろいろの分野に名前を残し,かつ胃鏡を創りだした「ミクリッツ」と呼ばれるミクリッツ・ラデッキー(Johann von Mikulicz-Radecki,1850〜1905)の命日である.
 彼はオーストリア領(現在はウクライナ)のチェルノウイッツ(Czern-owitz)に1850年5月16日に生まれた.オーストリアの首都ウィーン大学医学部を卒業後,母校の外科学教室に入門した.そしてわずか7年後の1882年にはクラコウ(Kra-kow)大学外科,1887年にケーニッヒベルグ大学(Königsberg)の教授を歴任し,1882年にブレスロー大学(Breslau)の外科学教授に就任し,生涯そこで活躍した.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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