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雑誌目次

雑誌文献

病院54巻7号

1995年07月発行

雑誌目次

特集 病院の食事は今…

医療保険制度の改革と入院時食事療養費

著者: 大道久

ページ範囲:P.638 - P.641

はじめに
 入院時の食事の一部患者負担が実施に移されて半年余が経過したが,病院の現場に大きな混乱が起こったという報告はあまり耳にしていない.しかし,医療の一環たる給食についての給付の制限は,医療保険の従来の論理の変更でもあり,まさに医療保険の改革の当面の重要な対象と位置づけられたのであった.
 従来は給食と呼ばれ,今回ことさらに入院時の食事と言い替えての対応が,医療提供側の反対を押し切る形で実施され,しかも一応平穏に受け入れられているように見えることは,むしろ社会保険体制が医療の現場を過度に統制していることの反映のようにも思えるのである.

給食業務の委託の現状と今後の展望

著者: 堀籠章史

ページ範囲:P.642 - P.645

委託の現状
 日本メディカル給食協会では,会員会社の委託の状況について,各4半期ごとに異動の状況を把握するとともに,毎年度末現在での受託施設名簿(会員会社別,都道府県別)を作成し,実態の把握に努めている.異動報告の対象は,当該委託業務に調理業務を含むものに限ることとし,配膳,下膳,食器洗浄のみあるいは職員食のみといったものは対象から除外している.対象施設には病院および有床診療所のほか,老人保健施設,特別養護老人ホーム等社会福祉施設も含むこととしている.この報告に基づく過去5年間における病院の委託施設数および委託病床数は表1のとおりである.
 この表で見ると.平成5年度および平成7年度において大きな伸びを示していることが分かる.

入院時の食事のメニュー化を可能にする給食業務

著者: 水野文夫

ページ範囲:P.646 - P.649

はじめに
 平成6年10月の社会保険診療報酬改定で基準給食から入院時食事療養費に改編され,入院患者の食費の一部負担が導入された.
 食事療養費に関する改定は,特別管理加算(一定の基準に基づく適時適温の食事の提供について算定)が10点から200円へ増額,食堂加算(食堂における食事の提供を行った場合に算定),選択メニュー加算(複数の献立による食事の提供を行った場合に算定)にそれぞれ50円ずつが認められるようになった.

患者食堂をめぐる建築・設備

著者: 辻野純徳

ページ範囲:P.659 - P.665

 1994年10月,改正健康保険法の施行に伴い,社会保険・老人保健診療報酬も改正され,「入院時食事療養費に係る費用の額の算定に関する基準」が実施に移された.先に実施された患者の入院環境の評価を報酬に反映させた療養環境加算に続き,入院患者の食事の質と食事の環境が評価され報酬に反映したもので,画期的な改正である.
 その内容は,従来の「患者の病状に応じて必要とする栄養量」の提供(1,900円)を基本として,「調理方法,味付け,盛り付け,配膳等について患者の嗜好を配慮した食事」を,患者の「日常の生活サイクルや患者の希望等を総合的に勘案し,適切な温度の食事が提供される」ことを目指している.すなわち,選択メニュー加算(50円),適時適温の食事に特別管理加算(200円),そして食事の環境の整備に食堂加算(50円)である.そして給食料という字句は,入院時食事療養費と改められた.

[座談会]入院時食事療養費制度の導入と病院の食事

著者: 時崎謙 ,   片山一男 ,   金公女 ,   竹内實

ページ範囲:P.666 - P.673

 竹内 きょうの座談会のテーマは「入院時食事療養費制度の導入と病院の食事」です.昨年の10月から入院時の食事療養費の一部患者負担が始まりました.1日600円,96年10月からは800円になりますので,かなり大きな影響を病院に与えています.この辺の影響がどうか,そしてそれがどう病院の経営に作用しているかということ,それから,従来とかく病院の食事は,「まずい,冷たい,早い」という三悪みたいな評価がずっと定着してきましたが,最近は大分よくなってきたということですが,その辺の改善に向けてどうすればいいのかというようなことを中心にお話をお聞きしたいと思います.
 まず,入院時食事療養費制度が導入されて,従来の基準給食の時とどんなふうに病院が変わったか,あるいは変わらなかったのかということを最初にお聞きしたいと思います.

栄養食事指導の実際

城西病院での取り組み

著者: 関健 ,   古谷和枝

ページ範囲:P.650 - P.652

はじめに
 「醫食同源」「醫は食なり」など,病を醫する手段として食事療養が重要であることは昔も今も変わらない.入院時給食が保険給付の対象となってから久しいが,この10年の間にも幾多の変遷を遂げており(表1),特に平成6年10月からは,一部の指導料を除いて食事そのものに関しては,従来の1点10円の計算からはずれ,一定額の料金が支払われるようになった.同時に,患者自身から,入院時食事療養料の自己負担金を1日につき600円徴収するように改められた.この大きな変革にもかかわらず,混乱はなかったとされるが,給食をめぐっては病院現場としては質の問題を含め戸惑いとともに多くの対応を迫られることとなった.

君津中央病院における取り組み

著者: 戸崎千恵子

ページ範囲:P.652 - P.654

臨床栄養科の概要
 当院は585床の総合病院である.院内組織上,臨床栄養科は医務局に属し,直属の上司は医務局長である.スタッフは41名.管理栄養士7名,栄養士3名,調理師19名,調理補助5名,パート7名である.
 当科は従来より,食事サービス部門と栄養教育部門を明確にし,業務体制を組みあげてきた.この体制は栄養部門内の専門性を強調することによって,栄養士は栄養指導業務を,調理師は病態調理師としての自立を高めるための意味もあった.

時計台病院の栄養部の実態

著者: 大島峻

ページ範囲:P.654 - P.656

はじめに
 時計台病院は昭和57年7月にリハビリテーションを中心とした病院として誕生した.昭和59年には230床,基準看護特2類を取得していたが,平成3年にはフルタイム診療(土曜・日曜・祭日診療)と完全週休二日制を導入し,病床数を215床にダウンサイジングした.平成4年には基準看護特3類を取得し,平成5年には給食部門を外部委託し,職員数の削減と選択メニューの導入をはかっている.さらに平成6年には新看護2.5:1(補助者10:1)となっている.現在は内科・外科・整形外科・脳神経外科・泌尿器科・麻酔科・リハビリテーション科を標榜し,職員数は220名,外来患者は1日340人,糖尿病の専門外来を設置している.また,平成4年からは訪問看護ステーションを併設し,訪問看護・訪問リハビリをも実施している.

倉敷平成病院における栄養食事指導の現状

著者: 高尾公子

ページ範囲:P.656 - P.658

 Total Healthの病院づくりの中で,ドック・一般病棟・リハビリ病棟・外来・在宅訪問と,栄養士は多機能を要求されている.平成5年より栄養科の再構築を始めていたところ,平成6年10月,診療報酬の改定がなされた.現在はすべがてが開花したわけではないが,本稿では栄養食事指導について,その一端を報告する.

グラフ

“高度先進医療”と“患者中心の医療”をモットーに開設された—埼玉県立小原循環器病センター

ページ範囲:P.629 - P.634

県立小原療養所を統合して開設
 県立としては兵庫,神奈川に続いて全国で3番目に設立されたのが埼玉県立小原循環器病センターである.埼玉県は首都圏の中でも人口が急増している割には医療施設の設備が立ち遅れていた.
 県の主要な医療施設としては,東部地区に独協医大越谷病院,西部地区に埼玉医大と防衛医大,南部地区に大宮赤十字病院や自治医大大宮医療センターがあるが,熊谷などの北部地区には不足していた.

第21回日本診療録管理学会長を務める 秋田赤十字病院院長 竹本吉夫氏

著者: 木村明 ,   八木保

ページ範囲:P.636 - P.636

 私は学生の時に竹本先生に初めてお会いした.内科学臨床講義を担当されており,優しい感じ,判りやすい講義が記憶に残っている.
 先生は北海道稚内市生まれ,新潟医科大学昭和24年卒である.ご専門は内分泌学で,新潟大学医学部第1内科助教授を経て,昭和42年に秋田赤十字病院長に就任された.

主張

病院給食と流通システム

著者:

ページ範囲:P.637 - P.637

 先の震災で,厨房が破壊され,長期にわたってライフラインを断たれた病院に対して,給食を受託していた業者が,完全調理済み食品やクックチルと称する急速冷凍保存食品を供給して成果を上げたことが報告されている.平時は医療法などで規制されている院外調理による病院給食が,非常時の緊急対応として,県や医師会の了承を得て行われたものであるという.
 災害時の緊急事態であるから当然とも考えられる今回の事例は,実はここ数年にわたって続けられている給食センター方式による院外調理への移行についての論議に一石を投じるものである.医療における食事の位置付けが,国民の食生活の大幅な改善と多様化等によって見直されざるをえず,厨房設置の義務,および院内調理の原則の規制を緩和することの是非が問われていたからである.

シンポジウム

新たな医療の枠組みの中で勤務医の果たす役割—日本の医療を良くするには勤務医は何をすべきか・3

著者: 西村昭男 ,   松村理司 ,   神尾友和 ,   森養治 ,   矢野亨 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.674 - P.677

討論と質疑・2(前号より続く)
診療録の記載と勤務医の評価
 桜井(宮城県) 西村先生は,医師は原点に返るべきだということで,記載の必要性は当然だと強調されました.私は,われわれのアクティビティを高くする,あるいは良い医者という観点の一つに,臨床経験をまとめて発表することがあると考えています.つまり,先生が話された良い医者の定義と,私が考えていることとはどうも両立しない.若い医師たちを見ていると,それが両立するような医師は非常に少ない.臨床研究に目を向けている医師は臨床医としては悪い医師の方面に進んでいるし,逆に臨床が優れている医師は私のいう価値観からすると,そちらの面に弱い.
 私が考えているようなことを望むのはもう無理な時代でしょうか.西村先生のお考えをお聞きかせください.

資料 北海道医師会勤務医部会アンート調査より

勤務医の意識改革に関するアンケート調査報告を検証して

著者: 竹内實

ページ範囲:P.678 - P.680

 平成6年10月15日,平成6年度全国医師会勤務医部会連絡協議会が札幌市において日本医師会(以下,日医)主催,北海道医師会担当により開催された.昭和56年福岡市で第1回協議会が持たれてから毎年各地で行われ,今年は第15回目である.
 日医主催となってからは平成3年青森県,平成4年徳島県,平成5年愛知県で開催されている.

研究と報告

医療廃棄物に対する看護職者の役割(第1報)—神戸市立中央市民病院における医療廃棄物の発生量の実態

著者: 能川ケイ ,   志水奈保子 ,   金川治美 ,   梶谷佳子 ,   古西公幸 ,   岩永淳子

ページ範囲:P.681 - P.685

問題提起
 我々は多種多様のゴミを排出している.ゴミは環境汚染と埋め立地確保との面から大きな社会問題となっている.そのため,廃棄物処理法が改正され,平成4年7月4日をもって施行されている.この法律は,廃棄物の排出を抑制し,および廃棄物の適正な分別,保管収集,運搬,再生,処分等の処理をし,ならびに生活環境を清潔にすることにより,生活環境の保全および公衆衛生の向上を図ることを目的としている.
 廃棄物処理法の改正は当然病院から出る廃棄物に対しても適用されることになる.したがって医療機関においては,医療廃棄物処理検討委員会等を設け,また,「医療廃棄物処理に関する手引き」等を作成することによって,対応を急いでいる.では,実際に総合病院からいったいどのような廃棄物がどれだけ,どのように排出されているのだろうか.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第9回

ウェル・エイジング・プラザ奈良ニッセイエデンの園

著者: 高橋公雄

ページ範囲:P.686 - P.691

厚生省「ふるさと21健康長寿のまちづくり事業」第1号認定施設
 平成4年4月にオープンした「奈良ニッセイエデンの園」は,平成元年6月に制定された「民間事業者による老後の保健及び福祉のための総合的施設の整備の促進に関する法律」に基づき厚生大臣が認定した第1号の施設である.「ふるさと21健康長寿のまちづくり事業」といわれるもので,略称WAC事業と呼ばれる.
 この事業は,本格的な高齢社会に対応するため,保健・医療・福祉の諸施設や機能が,地域の中に総合的に整備されたまちづくりを目指そうというものである.

厚生行政展望

平成7年版厚生白書「医療」について

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.692 - P.693

はじめに
 厚生白書では,昭和31年に刊行されて以来,はじめて医療をテーマとして取り上げ,総合的な分析を行った.これは,平成6年度が,近代医療の基礎「医制」発布120年目に当たるためである.そこで,今回は,白書の内容を簡単に紹介しつつ,問題点を指摘したい.

医療技術革新の展望とこれからの医療政策—ヒト遺伝子研究の意味するもの

医療の質をめぐるアメリカの対応

著者: 広井良典

ページ範囲:P.694 - P.698

政策としての生命倫理
 今回から数回に分けて,ヒト遺伝子研究に伴う様々な倫理的,社会的な問題について,アメリカにおいてどのような対応がとられてきたかを見てみたい.
 遺伝子診断,遺伝子治療など,分子生物学のさらなる飛躍と医療への応用を背景に,生命倫理問題は新たな次元と政策対応の必要を迎えている.90年からNIHとエネルギー省共同の一大プロジェクトとしてスタートした「ヒトゲノム・プロジェクト」については,その予算(年間2億ドルで15年間,計30億ドルの規模)の3ないし5%は,遺伝子診断に基づく保険加入や雇用に伴う差別など,ヒト遺伝子解読に伴う倫理的問題等の検討にあてられるものとされ,そうした問題を扱う「ELSI(Ethical, Legal and Social Issues)プログラム」が始められている.が,近年議会の下院やOTAから出された報告書は,ELSIのようなアカデミックな色彩の強い研究プログラムでは不十分であり,より「政策」志向的な調査研究がなされることが必要であるとし,こうした趣旨から,アメリカにおけるこれまでの生命倫理関連の国家レベルの委員会の例を参照しながら,特に遺伝子研究をめぐる問題を中心に調査・政策提言を行う新たな政策調査機関が必要であることをうたっている(注1).

病院の少子化対策

高齢化・少子化社会を迎えて,小児科は今…

著者: 根岸宏邦

ページ範囲:P.699 - P.701

はじめに
 最近,小児科の患者が少なくなっているという嘆きを,小児科医の集まりでよく耳にする.確かに近年,診療所でも小児科単科でやっていけるところはほんのわずかになっているはずである.
 昨年,日本小児科学会の社会保健部では,小児病棟への保母の導入についてのアンケート調査を,小児科学会認定の臨床研修病院について全国的に行ったが,その過程において小児科臨床研修病院における小児科病棟の実態が少し浮き彫りにされた(「小児保健研究」投稿中).この調査は,全国の小児科学会認定研修病院が対象であるので,それぞれの地域では小児医療の中心的な役割を果たし,なおかつ卒後教育の根幹を担っている病院であると考えられるが,調査結果によれば国立から私立に至るまで,小児専用病棟をもたない病院が25〜27%存在しているという事実に驚かされる.すなわち,小児の入院患者数の減少により小児専用の病棟を維持していけなくなっているのである.また,研修病院でありながら平均の入院数が5〜6名というところがかなりあり,小児専用病棟を有する病院にしてもその占床率は80%前後である.すなわち,小児専用病棟を維持することが経済的にも非常に困難な状況が窺える.

病院管理フォーラム

[放射線設備・機器管理Q&A]診療用高エネルギー放射線発生装置(リニアック)使用室の構造設備

著者: 諸澄邦彦

ページ範囲:P.702 - P.703

はじめに
 放射線治療施設を有する医療機関をみると,テレコバルト1台のみで放射線治療専門医のいないところから,一通りの施設を持つ病院,完備した内容を持つ専門病院の「がんセンター」まであり,放射線治療施設の内容はそれぞれ異なっている.しかしながら,放射線治療を行う施設は,科学技術庁による障防法の規制を受け,施設の設置と使用に関して申請し,許可を受けなければならない.同様に医療法についても,医療法施行規則に従ってあらかじめ届け出なければならない(医療法施行規則第25条).
 放射線治療の65%が高エネルギーX線,7%が高エネルギー電子線によることは,前号で述べた.また,科学技術庁原子力安全局編集の放射線利用統計(1992年)でみるならば,放射線発生装置の医療機関における利用台数の92%が直線加速装置(リニアック)である.最近は放射線照射装置(テレコバルト)から,リニアック,マイクロトロンへの設置変更も多いので,医療法施行規則第30条の5に規定されている,診療用高エネルギー放射線発生装置使用室の構造設備について述べる.

[病院図書室]「患者図書サービス連絡会」の発足の意義と今後

著者: 岡部禹雄

ページ範囲:P.704 - P.705

はじめに
 「病院図書館」と呼ぶのが正しいのか,「患者図書館」と呼ぶべきなのか,これは用語の問題というより,もっと広範なしかも本質的な問題を含んでいるようである.私たちの会は,「患者図書サービス」の全国連絡会と名づけた.「病院図書館」で患者さんから図書サービスを求められたとき,いま病院図書室はどう対応できるのか,対応すべきなのか….「患者が図書サービスに求めるもの」といったとき,問題の視点はそう単純ではない.
 慢性疾患の入院患者が多く占めている病院で,心のケアを求める患者さんの文化的要求にこたえる患者図書サービスは,何よりも病院そのものの主体的かかわりを必須な要件とする.外からの働きかけ,また病院ボランティアの作用等は一つの条件ではあっても,それ自体では患者図書サービスは定立できない.これは自明の理である.

訪問看護ステーション 実践レポート—北から南から

試行期間を経て本格稼動へ—沖縄・オリブ山老人訪問看護ステーション

著者: 安室弘子

ページ範囲:P.706 - P.708

はじめに
 訪問看護ステーションは,在宅医療の中で重要な役割を果たしており保健,福祉の分野からも注目をあびている.
 オリブ山老人訪問看護ステーションは,目先の経済性にとらわれずに『葺の会』の在宅ケアシステムの1つの機能として開設された.そのため,私たちは運営活動に向けての取り組みをしないまま,採算を度外視して運営して来たが,地域での関わりが深まる中で,消極的な姿勢では,理想的な在宅ケアを展開してくいことは不可能と思い,活動の見直しをした.そのステーションの現状と今後の課題および展望を加えて報告する.

データ・ファイル

平成6年6月病院運営実態分析調査の概要・2

著者: 全国公私病院連盟

ページ範囲:P.709 - P.713

医学ごよみ

7月—July 文月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.715 - P.715

□1日 間接喉頭鏡の開発者
 先月号の6月7日の項で,間接喉頭鏡を臨床に応用したツェルマーク(Johann N Czermak, 1828〜1873,ドイツ)のことを述べた.そのさいにスペインの声楽家ガルシア(Manuel Garcia,1805〜1906)が,太陽光線を光源にして,歯科用の小型柄付き反射鏡を用いて自分の喉頭を観察する術を見つけたことを述べた.7月1日はこのガルシアの命日である.
 ガルシアは1805年3月17日に,スペインの有名なテノール歌手の息子として生まれた.パリ音楽院教授に就任したのちロンドンに移り住んだ.そして1854年9月のある日たまたまパリにて休暇中,パレ・ロワイヤルの中庭の窓ガラスに反射している太陽を見て,喉頭鏡のことを思いついたという.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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