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雑誌目次

雑誌文献

病院55巻1号

1996年01月発行

雑誌目次

特集 病院経営の改善

病院の経営改善—経営科学(Management Science)への御招待

著者: 長谷川敏彦

ページ範囲:P.18 - P.22

かつてなく厳しくなった日本の病院経営
①1990年代に激変した「経営環境」
 日本全体の病院の経営環境は,1980年代の終わりから全く新しい段階に突入し,極めて厳しいものとなっている.全病院を「資源を投入して保健医療サービスを産出し,国民の需要に応える」システムと捉えて,このシステム環境の諸要因をみてみよう.

聖マリア病院の経営実態とその対応

著者: 井手義雄

ページ範囲:P.24 - P.29

 平成7年7月29日北海道私的病院協会主催の「病院管理者夏期研修会」が平成7年度医療施設経営改善支援事業の一環として行われました.本稿および,岩崎,大道,河北論文と質疑応答はその時の講演を纏めたものです.

患者サービスの改善

著者: 岩崎榮

ページ範囲:P.30 - P.33

 基本的には,患者サービスを高めることで経営を改善できるのではないかと考えております.いかに患者さんを満足させ,安心した医療を提供していくかが大変重要ではないかと思っております.

病院機能評価事業

著者: 大道久

ページ範囲:P.34 - P.36

 わが国の病院機能評価事業を担うことになりました財団法人日本医療機能評価機構が事業を開始することになりましたのでこの話をさせていただきます.
 この財団につきまして,先般,設立の発起人会がありました.医療を評価をするのが非常に困難であるとされてきたわが国においても,第三者の評価機構がこれを行うというわけですから,画期的といえます.しかし,今後の展開は大変難しい局面が多かろうというのが衆目の一致したところです.

病院経営の改革

著者: 河北博文

ページ範囲:P.38 - P.41

病院運営改革のための3つの視点
 今日は皆さま方の医療機関の経営に多少プラスになるようなお話をしなければいけませんが,最初に,病院が抱えている問題を3つに分けて考えなければいけないと思います.
 第1に,自分たちで解決しなければいけない問題を本当に自分たち自身で解決しているのか.ほかの医療機関のせいにしたり,あるいは制度のせいにしているというようなことがあるのではないか,ということです.

質疑応答

著者: 紀伊國献三 ,   竹内實

ページ範囲:P.42 - P.46

 紀伊國(司会)質疑応答に移ります.
借入金について
 下沢(函館市医師会病院)井手先生にお尋ねしたいのですが,経営のなかで内部留保から借入金資金導入をなさったときに一般経営のノウハウを使ったということですが,具体的には一般経営のどのような面を挙げたか教えていただきたい.

中小病院の経営管理—医療施設経営改善支援事業アンケート調査を検証して

著者: 竹内實

ページ範囲:P.48 - P.49

 平成5年度病院経営,特に中小病院の経営危機を探る目的で厚生省が緊急調査を行った.その結果病院経営が深刻な状態であることが明らかになった.これに基づいていち早く2つの施策が行われた.1つが医療施設近代化施設整備事業であり,今1つが医療施設経営改善支援事業である.北海道私的病院協会は早速北海道より委託を受けて支援事業に着手した.
 まず北海道医師会(会長:吉田信)より3名,私的病院協会より4名,道より1名の8人による推進協議会が作られ,以後予算,事業計画,計画の実行はすべてこの協議会がプロモートすることとなった.推進協議会は専任の推進員を任命している.平成6年度,7年度現時点までに実施した事業内容は,表1,表2のごとくである.各会場とも熱心な参加者が活発な討論を重ね,4時間〜5時間のカリキュラムを消化した.

「医療施設経営改善支援事業」について

著者: 並木哲也

ページ範囲:P.50 - P.52

はじめに
 平成6年10月より医療施設経営改善支援事業が実施され,病院の経営に対する行政のバックアップも本格的に取り組まれることとなりました.
 支援事業は,医療機関の経営改善の自主的努力をその基本としていますが,行政側もその努力を支援し,病院関係者のこれまでの努力をさらに後押しして,より効果的なものにしようとするものです.

グラフ

救命救急センターを併設し北勢地域の基幹総合病院に—三重県立総合医療センター

ページ範囲:P.9 - P.14

県立塩浜病院と病院の新築
 名古屋から近鉄で四日市に向かう.木曽川を渡るともう三重県である.特急で約30分で四日市に着く.駅からタクシーで郊外に新築された県立総合医療センターまで約20分である.距離は駅から5kmと遠くはないが,渋滞のため時間がかかる.タクシーの運転手が「国道が片側一車線では話にならない…」と怒っている.病院への交通アクセスとして路線バスはあるが,主体は車であり,病院には700台分の駐車場がある.それだけに道路整備の立ち遅れが問題である.
 当センターは北勢地域の基幹総合病院としての役割を果たすべく,県立塩浜病院が移転して生まれ変わったものである.それに伴って旧病院は廃院となった.診療圏である四日市市,鈴鹿市,桑名市の人口は約60万人で県人口(約180万人)の約30%を占める.北勢地域は名古屋のベッドタウンとして人口の増加が著しい.旧病院のあった塩浜から西の郊外に移った新病院は,三方が森に囲まれた閑静な高台にある.

永平寺に負けない男—第46回日本病院学会会長 福井県済生会病院院長 藤沢正清氏

著者: 高橋勝三

ページ範囲:P.16 - P.16

 先生の知遇を得てまだ日も浅いのですが,御存知の通り一見して偉丈夫,体躯堂々として声も大きい.甚だ頼りになる親分,しかしそれだけではなかった.段々先生を識るにつれ,なかなか細かい気遣いのあることを察するようになりました.確かに一軍に将たるもの,硬軟,柔剛,粗密を兼ね備え,その使い分けの妙を心得ていなければなりません.
 そこで御略歴を拝見しますと昭和28年に慶應義塾大学を御卒業,大学研修の後昭和32年11月に現病院の外科医長,翌年より副院長に抜擢され,15年後に院長に就任,今日まで20年余の院長生活.これでよく判ります.この間,人を育て人脈を作り虎視眈々,時を待っておられたのでしよう.

主張

死ぬということ

著者:

ページ範囲:P.17 - P.17

 現在地球上には,約57億の人々が住んでいると言われている.そして,毎年1億人を越える人口の増加が今後予想されており,その数が100億人を越える時は21世紀に入りそれほど遠いことではない.また,その人口の増加は地域,民族,そして経済状態ごとに遍在があり,おそらく,この人口問題はそれに付随して起こる食糧問題,あるいは自然環境問題などと共に人類が抱える最大の問題となっていくことは確実である.今後も持続して成長していく経済を前提にした社会生活は,物理的に限りある地球ではエネルギーや他の物質的資源も有限であるから,不可能ではないにしても大変困難であろう.加えて,科学の発達により人問は等身大をはるかに越えた空間の移動を行うことによって地球の相対的大きさは一層小さくなっている.
 近年わが国は世界一の長寿国となったが,これは先進諸国の中でも一番低い新生児死亡率の達成といった医療の貢献によることも勿論であるが,バランスのとれた栄養の確保,衛生的生活環境の改善,義務教育の水準の向上等,生活における多くの面からの影響によることも否定できない.健康に自立した生活を送りながら長寿を全うできることは,まことに望ましいことであり,同時に,障害を持ちながらも充実し,豊かさを実感しながら生きていくことも素晴らしいことである.さて,現実は本当にそのような高齢化になっているのであろうか.

対談シリーズ 介護問題をめぐって・4

医療現場における介護問題

著者: 奥川幸子 ,   浜村明徳

ページ範囲:P.56 - P.63

 編集部 今回の対談は,お年寄りの患者さんおよびその家族と深く接しておられるお二人に,医療の現場における経験を踏まえた視点で介護の問題をめぐって話し合いをお願いいたします.
 奥川さんは日本の老人医療の最初で最大の拠点といえる東京都立老人医療センターで20年近く,医療ソーシャルワーカーとして,悩みを抱える患者さんや家族などの相談をされてこられました.また,浜村さんは,今や在宅ケアにとって不可欠ともいえる地域リハビリテーション活動を,十数年前に長崎市内で始められ,老人保健事業における機能訓練事業の先鞭をつけられました.

特別寄稿

消費税の損税と償還制度

著者: 長隆

ページ範囲:P.64 - P.69

どうなった「公平,中立,簡素」—インボイス方式が導入された!
 '97年4月からの消費税の5%への引き上げまで,1年3か月を残すだけとなった.引き上げ実施半年前の本年(96年)9月末までに,消費税の税率については,社会保障等に要する費用の財源を確保する観点,行政及び財政の改革の推進状況,租税特別措置等及び消費税に係る課税の適正化の状況,財政状況等を総合的に勘案して検討を加え,必要があると認めるときは,所要の措置を講ずるものとされている(改正法附則25).(アンダーラインは筆者,以下同様).
 今回の消費税の改正は,税率の引き上げだけでなく「益税」を大幅に縮減するため,消費税の中小事業者特例が見直され,売上高5千万円未満の事業者は納税額が安くなる限界控除制度を廃止するほか,仕入れ率を一定にみなすことで納税額が割安になる簡易課税制度の適用上限を売上高4億円から2億円に圧縮することになった.

研究と報告

パソコンのみを用いた医事業務電算化

著者: 大久保恒正 ,   松下捷彦

ページ範囲:P.70 - P.73

はじめに
 大規模病院においては,汎用機を中心としたフルオーダリングシステムや医事を中心とした医療情報システムが導入され,患者待ち時間の短縮をはじめとする患者サービスの向上,病院経営の合理化など多くの改善を図っている.フルオーダリングシステムに関しては,特に国公立病院においてその導入が顕著である1).しかし昨今の病院を取り巻く経営事情は年々厳しさを増し,特に地方中核病院にとってはなおさらである.本来営利を目的としない医療にあって,真剣に病院経営を考えなければならない状態になっていることは周知の事実であり,また病院経営を取り巻く環境が厳しくなってきていることも同様である.このような状況下の中で地方中核病院にとっての電算化の目的は,患者サービスの向上と同じかそれ以上に病院経営の効率化という点にあると思われる.国公立病院以外のいわゆる一般病院では,最先端の総合的な病院情報システムを導入し病院全体の効率化をはかることは,費用の面からして困難な場合が多く,むしろすでに多くの病院に導入されている医事システムの導入により業務改善をはかっている場合が多いと思われる.病院の医事システムは本質的な医療情報システムとは異なるものの2),一般病院においては今後総合的な病院情報システムへと発展するための足固めとしては不可欠な前提となるものと思われる.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第15回

[座談会]災害と医療施設

著者: 山本保博 ,   新道幸恵 ,   長澤泰 ,   河口豊

ページ範囲:P.74 - P.80

 河口 本日はお忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございました.昨年1月に阪神・淡路大震災が起きたわけですが,1年後ということで,今一度教訓を整理し,我々医療に直接・間接に関わる者としてきちんと記録をする意味で座談会を開かせていただきたきます.
 今までのいろいろな経験ですと,震度5ぐらいですと医療施設などはそう大きな被害を受けてはきませんでした.今度のように震度6ないし7のような烈震,激震になりますと,医療施設自体もかなり被害を受けました.本日はそういったときを想定して話を進めてまいりたいと思います.

厚生行政展望 コーヒーブレーク '96新春座談会

1997年4月に向けて動き出す今年の厚生行政

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.82 - P.87

病院機能評価
 中森 今年度はいよいよ第三者による病院機能評価の運用調査が約100か所の病院を対象に始まったようですが,病院にとってはどうとらえればいいんでしょうか.
 菊池 病院は不安もあるが,かなり期待している向きが大きいと思います.予想以上の応募があったと聞いています.

病院経営の新しい指標

病院の新しい経営指標

著者: 梅里良正

ページ範囲:P.88 - P.91

はじめに
 医療に対する社会的ニーズは大きな変化をみせており,これに伴い,医療施設も大きな再編の時代を迎えつつある.ニーズの変化は大別すると,人口の高齢化による高齢者の保健・医療・福祉ニーズの量的な増大と,国民の生活水準や医療に対する考え方の変化に伴い,医療提供サービスの質に対する要求水準が上昇したことの2点として捉えることができる.したがって,これらの変化に適切に対応し,病院としての経営目的を達成していくためには,常に自院の医療提供の現状を把握し,その問題点の改善を行い,再びその結果の評価を行うという経営サイクルを,院内に確立していくことが重要である.さらに,社会や地域の保健・医療・福祉ニーズを定期的に把握し,院内の経営サイクルへの影響を,経営方針として取り込んでいく姿勢も求められよう.
 このような病院の経営管理の必要性は,なにも今に始まったことではなく,その内容に違いこそあれ,すでになんらかの形で取り組んでいる病院がほとんどと言ってよいかも知れない.しかしながら,その取り組みのレベルや手法は病院によりまちまちであり,また努力の割に役立っ情報が得られないと感じられている病院経営者も多いのではないだろうか.

癒しの環境

病院における癒しの環境

著者: 高柳和江

ページ範囲:P.92 - P.93

 歴史的にみて,診療所から大きくなった日本の病院においては,医療提供者側からの機能が重視されてきた.平成7年度の厚生白書では,初めて医療がサービス業であると明記されている.アクセスが十分となり,量から質に世の中が注目している.質の良い医療の評価には患者が実際にどのような結果を受け,どのように満足しているかというアウトカム(結果)で測ろうとする流れがでてきた.こうした中で,患者中心の医療が注目されてきた.患者満足度調査も始められてきた1)
 患者中心の医療といわれるもののうちで,医療提供者が提供する医療環境に注目してみよう.患者がここにいたら安心だとほっとし,元気になるような気がするもの,落ち着くもの等が本当の癒しの環境と考えられる.身体の病気に苦しんでいる患者は,当然のこと,社会的にも個人的にも病気による影響を受ける.精神的な痛手もある.必ず,心も病んでくるのだ.ここに,癒しの要素が入る.癒しがあると,心の痛手が和らげられ,免疫力が高まり,病気からの回復も早い.後天性免疫不全症であるHIV感染者の最初の治療は,ストレス管理からはじまるのである.ストレス管理により,AIDS発症を遅らせるのである.医療施設には,癒しの環境が必須なのである.癒しの環境は,本来包括的なものである.現在の病院に,どれだけ癒しの環境が認識されているだろう.まず,患者の環境に関する認識から分析してみよう.

「医療施設近代化施設整備事業」による病院の建て替え

笠岡第一病院

著者: 宮島厚介 ,   和田繁市

ページ範囲:P.94 - P.95

はじめに
 この度,医療法人社団清和会笠岡第一病院(病床148床)は国,岡山県の平成6・7年度医療施設近代化施設整備事業に基づく補助事業の対象施設として,平成7年6月新病院を竣工致しました.近年,地域医療を支えていると自負する中規模病院にとっても,経営環境の悪化が顕著化してきました.この状況下で,経営上,機能主義にならざるを得なかった民間病院の建築において,この整備事業はアメニティ(快適性)に配慮する余裕を生む救世主となりました.私どもの病院建築計画についてご参考になればと報告致します.

病院管理フォーラム

[放射線設備・機器管理Q&A]診療用放射性同位元素の許認可手続き

著者: 諸澄邦彦

ページ範囲:P.96 - P.97

 医薬品である放射性同位元素で密封されていないもの(以下「診療用放射性同位元素」と言う.)を使用して,診断,治療を行う専門分野が核医学である.さらに標識トレーサ,すなわち診療用放射性同位元素を患者に投与して,体内分布とその経時的変化を測定して追跡するのをインビボ検査と言う.また,測定結果を画像として表示したものをシンチグラムと呼ぶ.インビボ検査の中には,赤血球寿命の測定,鉄動態測定など,トレーサを患者に投与した後,採集した血液,尿,便中の放射能を測定する検査もある.
 シンチグラムを含めて,組織,臓器の生理学的あるいは生化学的機能を評価できることがトレーサ法の応用である核医学検査の特徴と言える.標識コロイドを用いる肝シンチグラフィは肝クッパー細胞の機能を示す画像であり,123I-IMPを投与することによって得られる画像は,脳局所血流量に相当する情報をもたらす.したがって生体でなければ画像を得ることができず,生命の画像(image of life.H.N.Wagner, Jr.)と言われる所以でもある.

データ・ファイル

医療関連サービス基本問題検討会報告書—病院における患者等への食事の提供業務の外部委託について—医療機器の保守点検業務の外部委託について

著者: 厚生省健康政策局指導課医療関連サービス室

ページ範囲:P.98 - P.101

□病院における患者等への食事の提供業務の外部委託について(概要)
1.患者給食の意義
 医療法制定(昭和23年)当時の患者給食の目的は,療養に必要な栄養を衛生的な食事により提供することにあった.
 このため,患者給食は,病院内の施設において調理提供することとされており,院外で調理したものを持ち込むことは認められなかった.

医学ごよみ

1月—January 睦月

著者: 木村専太郎

ページ範囲:P.103 - P.103

 このシリーズを開始してまる2年になる.このシリーズに過去2回,登場したお玉ケ池に関連した話題から始めよう.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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