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厚生行政展望
O−157について
著者: 厚生行政研究会
所属機関:
ページ範囲:P.976 - P.977
文献購入ページに移動本年6月1日,岡山県邑久町で小学生が死亡して以来,日本中が0-157で明け暮れた.0-157による死者も十数人を数えている.厚生省「食中毒統計」上では病原性大腸菌による食中毒事件数は例年30件前後であり,特に増加傾向にあるわけではない.病原性大腸菌は発症までの潜伏期間が長いために臨床現場では食事との関連づけがなされにくく,集団発生が見過ごされがちである.当の患者自身,自分の現在の腹痛の原因が1週間前に食べたものにあるとは思わないであろう.保健所から喫食調査をされたところで,1週間前に食べたものなど思い出せるわけがない.かくして病原性大腸菌は,食中毒統計に晒されることも少なく,世間からの警戒を逃れて賢く日本社会を侵食してきたのであろう.
食中毒統計はごまかすことができても,死亡統計(人口動態統計)はこまかせない.死亡統計上は「腸管感染症」としてカウントされるものに紛れているのであろうが,1995年統計では1,096名がその診断名(その9割以上が「診断名不明確な腸感染」)で死亡している.1994年は945名であった.1994年統計について,死亡数の年齢階級別内訳を表1に示す.若齢者死亡も結構多く,小学生が「腸管感染症」で死亡するのは今年に限った話ではない.
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