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雑誌目次

雑誌文献

病院55巻11号

1996年11月発行

雑誌目次

特集 補助金と病院経営

[インタビュー]民間病院への補助金—その考え方

著者: 谷修一

ページ範囲:P.1022 - P.1023

 ▼医療施設近代化施設整備事業で初めて個々の民間病院に(以下,近代化事業)補助金が出されました.それまでは救急医療やへき地医療も含め公共性の強い医療機関への補助が中心だったようですが,そのような流れはあったのですか.
 谷 医療法という法の側面からいうと,元々公的病院については特別な位置づけが与えられていて,公的病院に対する補助規定が法に盛り込まれているわけです.戦後の,医療機関がまだ十分に整備されていなかった時代に制定された医療法の基本的考え方としては,公的病院を優先的に整備していこうという考えがあったと思うのです.その意味で,公的病院の設置命令的なものが法の中にあったといえると思います.

医療機関経営健全化総合対策とその後の動き

著者: 上田茂

ページ範囲:P.1024 - P.1028

医療機関経営健全化総合対策への道
 この対策が検討され始めたのは平成4年ですが,当時は,いわゆるバブル景気の崩壊により一般社会では不況の真っ只中にあり,医療においても病院経営が非常に厳しい状況にあった時代で,病院団体をはじめ個々の病院からも,厚生省にその対応策が求められたということがあります.
 そこで厚生省では,民間病院の経営状況が厳しいという声を踏まえ,平成5年6月に病院経営緊急状況調査を実施したわけです.この調査は平成3年度と4年度の民間病院の経営実態を把握するために行っています.

医療貸付けの現状と課題

著者: 佐野利昭

ページ範囲:P.1029 - P.1033

医療貸付の現状
1.貸付対象
 社会福祉・医療事業団は,民間社会福祉施設や民間医療機関などの整備資金を長期,低利に融資することを主要な業務とする政策金融機関として,1986年に設立された.前身は,民間社会福祉事業の経営に必要な資金を融通することを目的として1954年に設立された「社会福祉事業振興会」と,私立の病院や診療所などの設立などに必要な長期低利の資金を融通することを目的として1960年に設立された「医療金融公庫」という二つの専門政策金融機関であり,高齢化社会の到来などに対応して新たな観点から「福祉」と「医療」の連携による総合的サービスの提供体制を確立することを目指し,国の行政改革の一環として二つの法人が統合されたものである.医療貸付事業はこの内,旧医療金融公庫の融資事業を引き継いでいるが,社会福祉・医療事業団発足後の社会・経済の動向や医療環境の変化などに対応して,貸付対象などに大きな変革を迫られた.
 すなわち,第1に,医療施設はそれまで着実に整備が進められ,マクロ的にみれば施設数からみても病床数においてもほぼ充足された状態に達しており,今後は無秩序な病院病床数の増加をコントロールするとともに医療施設の地域偏在の是正や医療施設問の機能連携,必要な医療機能の体系的整備を図り,地域医療のシステム化を推進する必要が生じてきた.

補助金政策と病院のビヘイビア

著者: 田中滋

ページ範囲:P.1034 - P.1038

 本稿では,まずはじめに医療機関に対する補助金をマクロ的観点から位置づけ,あわせて金額の推計結果を報告する.周知のように,医療機関に対する補助金をめぐる最大の問題は,あまりにも大きな公私格差である.この問題意識をもとに,ミクロ経済学の視点から,医療機関の意思決定に与える補助金の影響を探っていく.
 その分析のために,第2節では医療機関経営の特質である“非営利性”の意味を整理する.次に仮設モデルを用いて補助金が非営利組織の行動をどう変え得るかを説明し,政策課題への誘導を試みる.最後に,医療機関経営と資本コストの関係を採り上げて政策提言を述べる.

病院のリニューアルに補助金をどう活用したか

リハビリテーション専門病床のリニューアル

著者: 石川徹

ページ範囲:P.1040 - P.1041

 当院の運営主体である「健康文化会」は1956年に設立された特定医療法人財団であり,東京都板橋区小豆沢(あずさわ)にある小豆沢病院を中心に板橋・北・練馬区に1病院,6診療所,3訪問看護ステーション,1歯科診療所を開設している.小豆沢病院は許可病床数225床,救急指定,看護基準は新看護体系2.5:1A加算である.1階が外来・レントゲン室,2階から5階が病棟,その他に手術室,透析室,理学療法室,作業療法室,訪問看護ステーションなどを有している.

痴呆性老人専門治療病棟の改築

著者: 岸明宏

ページ範囲:P.1042 - P.1043

 当院は,広島県北西部に位置する加計町にあり,1948年5月に殿賀村が内科だけの診療科で国民健康保険組合直営殿賀村診療所として開設したもので,その後1954年に町村合併により加計町に移管され,加計町国民健康保険病院として,加計町をはじめ周辺町村住民の診療にあたってきた.
 1970年12月に現在地に移転新築(一般病棟32床,結核病棟8床)し,以後増床・増改築を行い,現在病床数218床(一般105床,痴呆性老人専門治療病棟53床,老人性精神病棟60床),診療科9科を有し,近隣6か町村(診療対象人口は約20,000人)の地域包括ケアの中核病院として今日に至っている.

老人性痴呆疾患治療棟および療養棟の増改築

著者: 佐野孝

ページ範囲:P.1043 - P.1044

 当院は1966年に開院,1980年に医療法人に改組,275床の精神科,神経科を標榜する病院である.
 他に老人保健施設「常盤園」を併設している(95床,デイケア5床).新潟市から約20km南にあり,白根市,味方村の境界に位置しており,白根市,西蒲原郡,そして一部新潟市からの利用者もある.

看護婦宿舎の新設

著者: 山田昇司

ページ範囲:P.1045 - P.1046

 最近,看護婦の確保は比較的容易になってきたといわれ,都市部の病院では看護婦不足とは無縁のところも多いと聞いていますが,私どものような田舎の小規模病院ではまだまだ看護婦の充足は十分でなく,ことに夜勤可能な看護婦の確保に頭を痛めているのが実情です.
 原町赤十字病院は群馬県の北西部の山間地,吾妻郡吾妻町の原町に位置し,一般病床189,伝染病床15の小さな病院ですが,群馬県の面積の20%余りを占める吾妻郡内の広い地域から患者が来ています.職員の多くも地元の出身者で,約100名の看護婦も吾妻郡内のあちこちから車で通勤しており,看護婦の定着を図り,看護婦募集上も有利になるよう看護婦確保対策の上からも看護婦宿舎の整備は重要課題でした.1968年に建てられた木造モルタル2階建ての宿舎が病院に隣接してあり,6名の看護婦が入居していましたが,老朽化に加えて,風呂場,炊事場,洗濯場,トイレが共同使用で,諸設備や構造も不備で若者の生活様式に合わないこともあって,ワンルームマンション形式の宿舎建設の要望が数年来高まってきました.

全面的な建て替え計画

著者: 鈴木篤

ページ範囲:P.1046 - P.1047

 健和会(東京都足立区,柳原病院85床・みさと健和病院265床・7診療所・2透析施設・2歯科診療所・8訪問看護ステーション・1老人保健施設・2研究所)は,東京都東部および埼玉県三郷市で地域医療を展開する特定医療法人である.22年の歴史をもち,特に柳原病院を中心に,18年前から訪問看護を重視し,一昨年からは24時間在宅ケアを行うなど,公益的医療活動を実験的に取り組んできた.この柳原病院で,ここ数年,老人保健施設新設や老朽化した建物の建て替えなど,公的補助金を前提にした総合計画が押し進められている.
 ①老人保健施設「千寿の郷」建設:一住民から土地400坪の寄付を受け,補助金を基本に建設,1995年10月開設.9億6千万円の建設費の内訳は,国庫から「拠出金事業助成金(老人保健施設整備事業)」と「特別保健福祉事業助成金(老人保健施設整備事業)」で1億4千万円,「東京都老人保健施設施設整備費」から2億円,「足立区老人保健施設施設整備費補助事業」から3億円,併設する在宅介護支援センターへの国・都・区からの補助金合計3千7百万円,社会福祉・医療事業団借入1億4千万円,寄付金1億円,自己資金5千9百万円.

資料

病院への補助金事業など—都道府県/財団法人地域総合整備財団/厚生省の医療施設等施設整備に対する補助金制度

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.1048 - P.1057

【資料】各都道府県における病院への補助金などの事業
□北海道
▼事業名:院内保育所振興事業(平成4年度創設)
 1)対象項目など:子どもを持つ看護職員のための保育施設運営費の補助.ただし,国庫補助事業不採択施設および国庫補助要件に満たない小規模施設に限る.

グラフ

「市民病院」としても地域の医療に大いに貢献—三重県厚生連鈴鹿中央総合病院

ページ範囲:P.1013 - P.1018

フォーミュラ1(F1)レースの街
 鈴鹿と言えば鈴鹿サーキット.年1回,国際自動車レースのF1レース日本グランプリが行われる.観客席にレーシングカーが突入したり,スピンしコースアウトしたレーシングカーが,転がって炎上するシーンが目に飛び込むと,ヘリコプターや救急車で患者を受け入れる.この病院でも,鈴木亜久里選手が鎖骨骨折で2日間入院,ギャラリーが多く報道陣への対応が大変だったという.
 レースを主催するFIA(国際自動車連盟)の専任医師が,レース前に来院し,設備を厳しくチェックする.例えば第1手術室は“Oh, very good!”とお墨付きをいただいている.かくて,レースが行われる日程の間ずっと,多発外傷,一般外科,整形外科,心臓循環器科,脳神経外科,熱傷外科の6つの部門は彼方から聞こえるエンジン音を聞きながら,待機状態に置かれる.ちなみに他のレース,例えば鈴鹿耐久8時間レースなどでの対応は,ポケットベルでの呼び出しに応ずる体制を取る.

国際医療福祉大学医療福祉学部学部長に就任する 紀伊國献三先生

著者: 大谷藤郎 ,   八木保

ページ範囲:P.1020 - P.1020

 昭和30年代の終わりごろであったと思うが,厚生省の病院管理研究所で外国人学者のスピーチを鼻歌まじり(と思えた)であっちこっち見回しながら通訳している人を見てびっくりした.当方戦前の田舎の旧制中学の英語力で外国人コンプレックスときたものだから,こんなに堂々と外国人と渡りあえる日本人もいるものかと感心した.
 専門の病院管理学では,私の師匠格の若松栄一医務局長も紀伊國先生の大ファンで,リージョナリゼーションなどを一所懸命教えてもらって局長講演の参考にしておられた.

主張

まず基本理念の変更の議論を

著者:

ページ範囲:P.1021 - P.1021

 介護保険制度の新設を含め医療保険制度の改革が議論されている昨今であるが,その改革の必要性が財政ならびに,社会経済からのみの発想として考えられていることに大きな疑問を感じざるを得ない.もちろん日本のような国民皆保険を達成した社会保障的意味合いの極めて強い医療保険制度は,国家経済との調和の上に成り立っていることは当然のことであり,さらに,医療提供体制とも整合性を欠いてはならないことも大切なことである.医療のみが国家の経済力,社会や国民,企業の負担能力を超えてその費用が増えていくことは許されないことであるが,活力ある経済社会を前提としてその社会での行政責任として必要不可欠なサービスを必要性の順位で並べたとき,医療費の適正規模とその負担のしくみの変革が従来からの延長線上の議論だけでなく,理論的に理想像が描かれなければならないはずである.
 1985年に改正された医療法において地域医療計画が策定されたが,それは一言でいうと,既存の病院病床数を肯定しただけのことであり,ある時刻設定での将来の社会に対し理想的な医療制度の下での提供体制の確立の計画ではなかった.間もなく1997年を迎え,この地域医療計画の策定からすでに十数年を経ているわけであるが,日本の社会制度作りというものは医療制度を含め,政治も行政も,そして社会経済のほとんどの分野で発想の転換がいまだ成されていないのが現状である.

インタビュー

大学における医療経営管理の専門家の育成—紀伊國 献三 東京女子医科大学教授に聞く

著者: 本誌編集室 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.1059 - P.1061

 ▼国際医療福祉大学医療福祉学部の学部長ご就任,まず,お祝い申し上げます.
 国際医療福祉大学は開学して2年めの新しい大学ですが,来年4月に増設(認可申請中)される医療福祉学部には,日本で初めて医療経営管理学科を開設されると聞いております.そこで,大学での医療経営管理の教育,その専門家の育成についておうかがいします.

連載 病院主導の保健・医療・福祉複合体の実証的研究・1【新連載】

連載を始めるに当たって筆者の課題意識と各回(全6回)の主題

著者: 二木立

ページ範囲:P.1062 - P.1063

 ゴールドプラン(1989年度開始)を契機として,「保健・医療・福祉の連携と統合」の重要性が強調されるようになった.今やこの言葉は,この分野の改革を論じる際のキーワードや常套句とすらなっている.
 ただし,これの調査研究は主として福祉分野や保健分野の研究者により行われており,医療分野からの研究はごく少ない.そのためもあり,従来は,主として自治体や社会福祉協議会,保健所主導の連携と統合が強調されてきた1,2).一部では「保健・医療・福祉の統合化モデル」の一つとして「病院を中心としたモデル」も提起されているが,その場合に念頭に置かれている病院は,公立病院(全国的に有名な山口県御調町の公立みつぎ総合病院や新潟県大和町の大和医療福祉センターなど)である3)

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第25回

亀田クリニック

著者: 川名直樹

ページ範囲:P.1064 - P.1069

豊かな自然を生かして
 当施設は,千葉県の東南端に位置する鴨川市にあり,南側は国道をはさんで眼前に太平洋を望み,北側に豊富な山の緑を背景とし,ホテルなどリゾート施設群の東端に位置します.
 鴨川市の人口は約3万人ですが,県南のおよそ3市15町村,約23万人を医療圏としてカバーしています.また,救命救急センターの指定を受け,地域医療の拠点病院として24時間体制で活動をしています.

医療の質の評価と改善 組組織・運営・戦略におけるトータル・クォリティー・3

医療施設の機能評価(1)—背景と基本概念

著者: 今中雄一

ページ範囲:P.1070 - P.1073

医療機能評価の経緯——今なぜ第三者評価か
 医療施設の評価が行われるようになってきているのは国際的な流れであり,いずれの国でも,医療施設の機能や質に関する情報開示や,医療費高騰の抑制の上で質を保証し向上させようという社会的,財政的な動機に基づいているといえよう.
 医療の評価を行う主体として,当事者である提供者や受療者ではない第三者による評価の妥当性や有効性については,その評価の客観性および専門性という点から期待が高まっている.その第三者評価の典型的な一形態は,複数の専門評価者が病院を訪れ,病院の管理的立場にある人間や第一線のスタッフとの面接や,医療現場の観察などから多角的に収集した情報から評価するものである.

厚生行政展望

新興・再興感染症(Emerging and Re-emerging diseases)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.1074 - P.1075

 7月12日夜半より堺市の小学生の間に下痢,血便などを主症状とする多数の患者が発生し,7月14日には小学生26人の検便のうち13検体から病原性大腸菌O−157が発見された.この聞き慣れない大腸菌は,実は1990年埼玉県浦和市の幼稚園において,死者2名を含む患者268名を出した事件の原因菌と同一だったのである.抗生物質さえあれば感染症対策はこわくないと考えていたのは過去のことなのである.

癒しの環境

遊びたくなる階段

著者: 公文康

ページ範囲:P.1076 - P.1077

 病院らしくない建物の病院に,温室のある花屋さんと,くつろげるレストランが一緒にあれば,患者さんはもちろん,働く人も,どんなにか楽しいだろうという“夢”に始まる.
 病院らしくない建物……すなわち,入院した人々の居住性を高めるためにはと,住宅建築で世界的に第一人者である篠原一男先生を東京工業大学の研究室へ訪ねたのは3年前である.20年近く病院経営の苦楽をともにし,また,この敷地の提供者でもあった今は亡き両親公文適・久寿雄と語り合った「次の時代の病院は」という“夢”.その夢を現実のものとするために計画したが,住宅地という事情もあり花屋さんや,くつろげるレストランは実現できなかった.

病院管理フォーラム

[薬剤師の新たな業務]集団教育—(1)糖尿病教室

著者: 厚田幸一郎 ,   難波昭雄 ,   島田慈彦

ページ範囲:P.1078 - P.1079

 高齢化社会の到来により,糖尿病,循環器・呼吸器疾患などの慢性疾患患者の占める割合が増加してきている.これらの疾患はいずれも自己管理が治療に大きく影響を与えるため,患者やその家族に対して教育が必要となる.患者教育はこれまで一般に医師対患者という狭い関係で行われてきた.しかし,最近では教育効果や効率を高めるために,その疾患の患者を集め,教育側は医師のみならず治療上関与する職種がチームを組んだ,いわゆるチーム医療としての患者集団教育が実践されている.このような状況のなか,薬剤師も薬剤管理指導業務などの進展に伴い,患者教育への参画が広がりつつある.
 今回は,糖尿病に焦点をあて,薬剤師と集団教育について述べる.

「医療施設近代化施設整備事業」による病院の建て替え

大雄会第一病院

著者: 伊藤伸一

ページ範囲:P.1080 - P.1081

 医療法人大雄会は,大正13年に開設した医院を基礎として,昭和41年に医療法人が設立され,昭和62年に特定医療法人としての認可を得た.当会は現在,322床の総合大雄会病院(2.5:1看護),132床の大雄会第一病院(2:1看護),149床の老人保健施設アウン,大雄会一宮看護専門学校の他に,訪問看護ステーションと一宮市在宅介護支援センターを有している.
 総合大雄会病院と大雄会第一病院は,国策としての医療の量的拡大の基調に乗り,昭和40年代から昭和60年までに拡大成長してきた.同時に病院における看護の重要性に早くから着目し,昭和46年に全日制3年課程の看護学校を開校.またこれからの高齢社会に対応すべく,平成3年に老人保健施設を開設(表).

病院経営の新しい指標

中小病院の経営のために

著者: 西田憲策 ,   竹内實

ページ範囲:P.1082 - P.1084

 北海道私的病院協会では,平成6年度より厚生省が全国的に展開する医業経営改善支援事業を北海道より委託され行っている.北海道内660病院全病院を対象に各種研修会,個別経営相談などを行ってそれなりの効果が上がっている.平成7年度,8年度のアンケート調査でも具体的に経営が改善している結果となって現れている.しかし内容を分析すると中小病院(200床未満)の経営は予断を許さない現状が浮き彫りにされている.最近5年間で北海道の中小病院の約10パーセント強が,閉院もしくは有床診療所化している事実がそれを物語っている.
 その中でも多くの中小公立病院—そのほとんどは町村の国保病院であるが一の経営状態は最悪で,巨額の一般会計からの繰り入れにもかかわらず大幅の赤字を計上している.地域医療を守るという存在価値と過疎地における医療提供のコストの問題はもうそろそろ根本的な論議が必要な時期かもしれない.この構造的赤字を回避するためには,医療提供の仕組みそのものの変革と広域でカバーするシステム作りが避けられない.

特別企画 21世紀の病院経営

病院をめぐる今後の医療政策

著者: 糸氏英吉

ページ範囲:P.1085 - P.1090

 すでに周知のとおり,昨今,「9年度医療保険改革」ということで騒がしくなっております.また,介護保険についても次期国会に提出する準備のために日本医師会と厚生省で細部の最後の詰めの段階に入っております.これから先どういう方向になるのか,まだ明らかではありませんが,介護保険の制度化の前に医療保険の9年度改革の全体像を示すことになっているようです.
 医療保険改革についてはいろいろと報道されております.最初は百数十項目という膨大な項目から30項目程度に絞り込まれ,考えられる項目がほとんど羅列されているといってよいかと思います.

21世紀の病院経営—今後の医療提供施設について

著者: 宮坂雄平

ページ範囲:P.1091 - P.1093

 高齢化の進展,価値観の多様化,国民の意識の成熟,国際化の進行などによって,社会は大きな変化をきたしているといえましょう.医療についても多くの矛盾や問題点を抱えて今日に至っております.もはや従来のままでは,推移し得ない変革期に至っています.地域における医療を提供する施設も時代に見合った姿が追求されて参りました.そこで制度的にも次の医療法の改正が見込まれており,また,公的介護保険を導入するための法制の整備も進行中であり,現在,その施設のあり方が検討されております.
 これからの病院経営には,複雑化している現状を認識,把握し,かつ今後どのように変化するかを十分に見極めることが大切であります.このような視点から,現在の医療を巡る動きについてお話をさせていただき,これからの病院経営の一助にしていただければ幸甚に存じます.

データファイル

「医師に求められる社会的責任」についての報告—良きプロフェッショナリズムを目指して

著者: 日本医師会第Ⅳ次生命倫理懇談会

ページ範囲:P.1094 - P.1098

1.はじめに——この提言の目的
 昭和26年,日本医師会は「醫師の倫理」を作成,公表した.(中略)今,この「醫師の倫理」を読み直してみると,現在でも尊重されるべき普遍的な理念を基本としているものの,(中略)そのままでは受け入れがたい点も少なくない.
 このたび,日本医師会第IV次生命倫理懇談会では,平成6年7月以来10回にわたり,「医師に求められる社会的責任」という観点から審議を行い(中略)まとめた.良きプロフェッショナリズムを目指して,その確立に資するのがその目的である.

医学ごよみ

11月—November 霜月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1099 - P.1099

□2日 バビンスキー反射
 足の裏の外側をハンマーの柄の先で引っ掻くと錐体路に障害があるとき,母趾が足背に反転し,他の4趾が扇状に開く反射を発見したフランスの偉大な神経学者バビンスキー(Joseph FF Babinski,1857〜1932)が生まれた日である.“—ski”で終わる彼の名前から,ポーランドか東欧系出身と想像できるように,彼の両親は1848年にポーランドからパリに亡命してきた.ポーランド流の発音はバビンスキーであるので,多くの書物にはそのように記述されているが,彼はパリに生まれ,パリ大学医学部を卒業しているため,フランス流の呼び方で「ババンスキー」と書かれていることもある.
 彼は1884年にパリのサルペトリエール病院の,後世には神経学の父と尊敬されているシャルコー(Jean M Charcot,1825〜1893)の下で神経学の腕を磨き,1890年にサルペトリエール病院の横にあるピチェ病院の神経科医長になり,1920年に勇退するまで,その職にあった.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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