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雑誌目次

雑誌文献

病院55巻5号

1996年05月発行

雑誌目次

特集 病院管理者としての女性

〔対談〕管理職と女性

著者: 清水嘉与子 ,   坂東真理子

ページ範囲:P.422 - P.428

女性が管理職になることの難しさは何か
 女性管理職の実態
 清水 現在管理職に就いている女性はどの位いるんでしょうか.
 坂東 女性管理職の実態ですが,1994年の数字で言いますと,働いている人2,714万人のうち,雇用されている人が2,034万人です.雇用されている人の38.8%が女性です.管理職のうち女性の割合は8.9%です.中小企業の家族従業に近いような企業の役員は12%で結構高いのですが,従業員100人以上の企業の役職者は3.9%そこそこです.

21世紀に向けた女性像—病院と女性

著者: 橋本葉子

ページ範囲:P.430 - P.431

 病院で働く女性の職種は予想以上に増加し,特に大学病院ではその職種が多岐に亘っている.病院内における女性管理者も増加の傾向にあるようであるが,果たして如何なる病院でも同様な傾向が見られるのだろうか? 私自身は医師免許証は持っているが,インターンの時ほんのわずか臨床をかじっただけで,あとのほぼ40年間は基礎医学の道を歩んできたので,本論を担当するには不向きであることを編集者にご連絡したが,それでもということなのでお引き受けした次第である.したがって,大学病院特に東京女子医科大学付属病院を通してのみ,病院と女性職員との関わり合いについて考察することが出来るという,極端な制約の下に本論を記すことをお許し頂きたい.
 東京女子医科大学付属病院内での女性の職種は,①医師,②看護婦・看護助手,③薬剤師,④レントゲン技師,⑤検査技師,⑥作業療法士・理学療法士,⑦児童心理相談員,⑧歯科技工士・衛生士,⑨臨床工学士,⑩栄養士,⑪事務職員など多岐にわたっている.これらの職種の中で,女性管理者のいない職種はないようである.

世界と日本の女医の動向

著者: 酒井シヅ

ページ範囲:P.432 - P.436

はじめに
 女性の社会進出は目覚しくなったといわれて久しいが,日本では女子の医学部受験生の増加傾向は1980年代からみられる.とくに今年は女子の就職難が影響したのであろうか,医学部の女子受験生の数が多くなった印象を受けた.女子の高学歴化と,男性が主体を占めていた専門分野への女子の進出は医学部の現象だけでなく,一般社会の現象として現れている.例えば,女性の地位指標を調査した統計では,高学歴化が昭和50年(1975)を100とすると,平成2年(1990)には194.5とほぼ倍近くになり,その数は年を追うほど多くなっている.医師など女性の進出が少なかった専門領域への女性の進出も同じように,指数は平成3年(1991)に198.7(昭和50年が100)となって,これらの分野に女性が確実に進出している1)
 ところで世界各国において,女医の全医師に占める割合は日本と同じであろうか.国によってかなり違う(表).日本は低い.しかし,いわゆる西欧先進諸国では1950年代になって女医の数が増加した.その頃から社会的影響が問題視された2)

女性病院管理者からの提言

女院長35年で知った病院経営で一番大事なこと

著者: 安藤明子

ページ範囲:P.437 - P.438

人を育てること
 どんな会社でも同じでしょうが,病院経営にとっても,一番大事なのは,人を育てることではないでしょうか.
 私が主人の安藤忠夫と,江東区の北砂町に初めて小さな診療所を開業したのが,昭和30年12月11日でした.

パターナリズムからパートナーシップへ

著者: 中澤明子

ページ範囲:P.438 - P.440

 私自身はフェミニストではないつもりである.しかし最近になって,私のこの20年間の行動そのものが,フェミニズム運動であったかもしれないと思うようになった.常に一人で行動していたが,巡り会った方々が育てて下さった.多くの場合は男性であったが,女性としてよりも個の人間として扱い,機会を与えて下さった.恵まれていたと実感する.
 肩肘張るわけではないが,私は「仕事をする」ということは男性と同じ土俵に上ることだという意識をもっている.男女両性の感性をもちたいと願い「複眼で見る」努力をしてきた.実業界の男性が読む本を読み,男性のものの見方や考え方,仕事への取り組み方を理解し,リーダーシップについて学び自分もそれを踏襲しようとした.これらは実に楽しい学習であった.

男性とはひと味違った管理者に

著者: 太田緑子

ページ範囲:P.440 - P.442

私の生い立ちと医療への関わり
 1946年4月10日,日本の女性が初めて参政権を行使してから50年,毎年その日がめぐってくるたびに深い感動が甦ってまいります.
 「元始,女性は太陽だった」「婦選は鍵なり」の名言とともに,男女平等,婦人参政権運動を推進した平塚らいてう,市川房枝ら先覚者の業績が女性史上燦然と輝いています.

病院管理者として視野を広く

著者: 大濱正子

ページ範囲:P.442 - P.443

 病院の経営,運営は看護部マネジメントと大きく関係する.看護部は病院組織の多数を占めている.経済面,組織運営,病院の評価いずれにおいても看護部としてのスタンスがそれらを左右する大きな要素となる.女性の集団でもある看護部をうまくマネジメントすることが,看護部管理者に与えられた課題である.女性の組織を動かすことの面白さ,難しさを,日常の看護管理の中で考えてみる.

看護を目指す人に私の歩んだ道を振り返って提言する

著者: 小原恭子

ページ範囲:P.443 - P.445

看護婦への道
 副院長として3年近く経った現時点で,今一度看護婦になった経緯から書いてみたい.
 「これからの社会は,女性であろうと人に頼ることなく自立することだ.自分は何になりたいかよく考えて進学の道を選べ」とは父の口癖であった.

経営感覚を身につけよう

著者: 山本俊子

ページ範囲:P.445 - P.446

 病院管理職といえば誰もが頭に描くのは院長,事務長,総婦長(看護部長),副院長,その他各部署の長があげられる.
 病院職員の約半数を占める女性の集団が看護職であり,当然管理職も多い.それでは他職種の女性管理職数はどうであるか.女性職員としては,事務職,薬剤師,検査技師,栄養師等女性が活躍している職種は幅広い.その中で組織図から見た管理職上位には院長,事務長,総婦長(看護部長),副院長と続く.副院長とは今までほとんどの病院では,医師が任をとることが多かったが,ここ数年看護部長が副院長を兼務する施設が増え現在全国で21施設で活躍されていると聞く.

積極的にチャレンジしよう

著者: 青木孝子

ページ範囲:P.446 - P.447

チャンスを生かして能力開発
 私達ナースは,女性ばかりの学校そして職場を長い間経験するため,教師等のように卒業と同時に男性と伍して働く人と比べ,男女の差別を受けていると気づきにくい.初めてリーダーとなった時に他部門との関わりや会議の中で,自ら女性を意識することが多いのではなかろうか.私自身かつて総婦長として管理会議に出席する中で,ヒステリー集団の親分という名を当時の院長より拝名し,また小会議でトップをペチャンコにしたのでは,自分の意見が正しくとも通らないことも経験した.この男性中心の社会の中で,自らが思うことを組織に十分に伝え,看護職という女性大集団の意欲的活動につなげるにはどうしたらよいか大いに悩んだものである.
 その中で学んだことは,人数の少ない会議の場合は男性を傷つけずに反対論を展開することであり,多人数の会議においては,科学的,理論的に説得することを体得したのである.しかし老練の先輩婦長に言われたこともある.「青木さんの論理は蟻のはい出す余地もない」「盗人にも三分の理ということがあるではないか,今のままだと反感を買いますよ」と.しかし弱冠30歳の総婦長としては,それ以上にはうまい方法は浮かばなかった.総婦長が1人で頑張っても,ヒステリー集団の汚名を返上するのは大変である.

病院管理者となる女性に望む

女性理事長に望む

著者: 須藤祐司

ページ範囲:P.448 - P.449

 この度の原稿依頼に際し,未熟な小生には荷が重いと感じましたが,今までのささやかな自分なりの経験から,思いつくままに,素直に理事長職に関して述べてみたいと思います.
 先ず,小生のことで恐縮ですが,簡単な自己紹介をさせて頂きます.小生は昭和48年2月に東京都葛飾区東金町にて,内科単科病院を開業し,52年社団法人へ衣替えし,62年に特定医療法人格を取得しました.現在,嬉泉病院(東京),春日部嬉泉病院(埼玉),大島記念嬉泉病院(千葉)の3施設を運営致しております.他に重度心身障害者通所施設(板橋区内),精神発達障害者収容施設(千葉県袖ヶ浦市内)および通所施設(世田谷区内)等を運営致し,社会福祉法人嬉泉の理事長を兼任致しております.

女性院長に望む

著者: 藤沢正清

ページ範囲:P.449 - P.450

 女性の社会進出が目覚ましい昨今,病院という職場においても,女性の管理者が多く見受けられるようになった.特に今回は女性院長への提言ということで,少し述べてみたい.
 基本的には女性管理者だからと言うだけで,特別提言することはない.寧ろ女性であることが生かされるような,きめ細かさや優しさ溢れる病院作りは,患者さんにとってアメニティが満たされたすばらしい環境を提供できるのではないかと思われる.

女性事務長に望む

著者: 梅津勝男

ページ範囲:P.450 - P.451

病院事務長を求める環境変化
 病院事務長の存在が今ほど求められている時代は,過去にあっただろうか.昭和36年に国民皆保険制度となって,「いつでも,どこでも,だれでも」医療が受けられるようになり,医療需要は急速に増大した.このことは,診療所がその規模を拡大したり,病院の新築ラッシュという現象が起きたりで,病院はその数を増していった.しかし絶対的な医師不足は,医療需要の増大に追いつけず,「医療過疎」が問題となり,その結果48都道府県にそれぞれ医学部を開設する施策が取られ,医師の量産体制に入ったことは,新設医科大学の増加がそれを物語っており,まだ記憶に新しい.需要の増大は「病院は倒産しない」という神話を生み,昭和40年代後半に始まったオイルショックによる経済大不況も,医療界だけは別世界だった.銀行の支店長が,「お金を借りて下さい」といって,病院回りをしたのもこの時代である.しかも診療報酬は,このころから50年代中盤まで二桁台の改定率を維持し,49年にあっては1年に2回の改定が実施され,合計すると何と35%にもなる今となっては夢のような,超高率な改定が実施された時代であった.このような状況下にあっては,誰が運営しても,無理をせずとも「安定経営が実現できた」時代であった.したがって理事長・院長は「優秀な事務長の必要性」を感じることなく経営ができた時代でもあった.

グラフ

次の100年に向けて整備を進める—国家公務員等共済組合連合会総合病院横須賀共済病院

ページ範囲:P.413 - P.418

□街中に在り,交通至便
 京浜急行横須賀中央駅から徒歩5分,車では国道16号から200m弱という便利な位置にある.
 現在の病院は玄関が外来1号館に属し,その玄関への道路を挟んだ向かい側に真新しい病棟,A棟が立っている.この二つの棟は他に例のない「二階建ての渡り廊下」でつながっている.A棟の西側には病院付設の看護専門学校が在る.外来1号館の隣に並んで外来2号館,この両館の隣に,歴史を経てきた病棟群があり,第1(C),2,3,5,6の各病棟,コバルト棟,RI棟が密集している.

老人の専門医療を考える会を興こし主宰してこられた 天本病院院長 天本宏先生

著者: 河北博文 ,   八木保

ページ範囲:P.420 - P.420

 呉秀三は「精神病者の不幸はその病に冒された不幸と日本に生まれた二重の不幸である」と言った.天本先生は精神医学を専攻の後,専門領域を老人医療へと移した.先生が天本病院を開設されたのが昭和55年であるが,昭和50年代,日本の老人医療は惨澹たる状況であり,速やかな大改革が求められていた.それに応えるべく同志の仲間と実践と政策を通し,今日の老人医療まで多くの困難に直面しながらも改革を推進し,今後の超高齢社会へつなげる道筋をつけた.
 政策では「老人の専門医療を考える会」ならびに「全国介護力強化病院連絡協議会」の会長として全国を飛び回り,諸外国の制度の比較,導入に熱心である.同時期に新たにこの分野に参入した病院人の多くが創業者であり,アントレプレナー精神豊かな人が多い.その取りまとめ役はすでに10年を越え,実に苦労が多いが,人の意見を引き出し,愚痴を聞き,合意を得て政策にまとめていくことは天本先生の人間性によるところが大きい.

主張

病院の進路

著者:

ページ範囲:P.421 - P.421

 平成8年度診療報酬改定が行われた.今回改定は従来の改定より病院医療にとって一層明確な方向性が示されたと認識すべきである.
 まず第一に物と技術の分離を図る方向への転換である.従来の薬価の改定ルールと新薬の値決めの方法を大転換し,医療費に占める薬剤費のシェアの増大を阻止しようと意図した改定である.従来,薬価基準が引き下げられてもすぐに類似の新薬が発売され医療費に占める薬剤費が30%近くを保って来た.今回の改定では薬価の引き下げにとどまらず薬剤使用の適正化に大きく踏み込んでいる点は注目に値する.すなわち10種制限を8種とし,一方調剤報酬の実質的引き下げを行っている.更に次回改定時に長期収載医薬品の一般名収載が明記されている.

インタビュー

ある公立病院の院長交代と医療の継承

著者: 椙原美昭 ,   山口昇 ,   本誌編集部

ページ範囲:P.452 - P.456

 先駆的に地域包括医療を展開をしてきた広島県の公立みつぎ総合病院では,この4月に病院長が交代した.5年の院長定年を残しての交代である.今回の院長交代までにどのような経緯があったのか.山口前院長と椙原現院長に,その背景,および病院理念と病院運営の継承問題などについて,それぞれのお考えをうかがった.

特別寄稿

総合病院におけるインフォームド・コンセント—当院における委員会の取り組み

著者: 山雄久美 ,   松岡豊子 ,   溝口とみ枝 ,   星野雅代 ,   可児延子 ,   奥野雅子

ページ範囲:P.458 - P.463

はじめに
 インフォームド・コンセント(IC)は現代の医療においてきわめて重要な問題となっている.ICは日常の医療行為の意志決定に関わる重要な手続きであり,したがって医療者にとっては,「よい医療」を行うための欠くべからざるものである.最近になってICが特に必要とされる背景としては,慢性疾患や完全な治癒を望むことの難しい病態が増加し,患者の「生活の質」(quality of life)が問われるようになったこと,治療法の専門化および多様化,医療情報の氾濫による患者の治療選択肢の多様化,医療訴訟の増加などがあげられる.
 近代医学は治療成績の追求と患者の延命に高い価値をおいて発展してきており,このことには一定の評価を与えるべきではあるが,一方ではその限界と反省のなかからICが生まれたと言ってもよく,これは医療者側優位の,いわゆる「パターナリズム」から,患者と医療者との間の「開かれた医療」への医療の理念・価値感の変化としてとらえることができる.つまり,現代における「患者にとってのよい医療」とは治療成績のみによるのではなく,ことに難治性疾患などにおける治療の選択は患者にとっては,人生を選択することにつながるほど重要な意味を持つ場合があることを理解しなければならない.私達医療者にとってICとは,現代の医療における医療者と患者の関係がどのようにあるべきかを問われていると言っても良い.

レポート

大型自治体病院の経営実態を分析する〔第Ⅱ部〕—給与および職員数の変化

著者: 武弘道

ページ範囲:P.464 - P.467

給与の変化
 1.医業収益に対する給与費の変化
 医業収益に対する諸費用の比率の変化(50病院の平均)を表4に示した.諸費用の年度ごとの変化を見るには,医業費用の中の比率で見るよりも医業収益に対する比率で見るほうがわかりやすい.表4に見るごとく各費用の中で職員給与費が最も大きな部分を占める.職員給与費の比率は昭和60年代に入り毎年上がり続け1990年がピークであった.自治省がまとめた「平成6年度の地方公営企業決算の概要」1)を見ると,過去4年間の職員給与費の対前年度伸び率は1991年7.7%,1992年6.4%,1993年5.1%,1994年4.5%と最近ではしだいに低下してきている.職員給与費は看護婦の給与がその最も大きな部分を占める.看護婦の給与は1994年まで上昇を続けてきたが,その中でも1989〜1991年の間が最も著明に上昇した.したがって医業収益に対する職員給与費の比率もその頃が最も高い.
 図4は経営優良病院における医業収益に対する給与費比率の変化を見たものである.この10病院の平均値は1990年が最も高く52.0%であった.このような優良病院においては給与費を抑えようとする企業努力が他の病院より強いため,1994年には10病院中7病院が給与費比率50%以下となっている.

ケース・レポート

看護部から見たケアミックスの評価—病棟の役割がはっきりして,患者さんも明るくなる

著者: 橋田百合子 ,   長屋真理子 ,   土田ハル

ページ範囲:P.468 - P.470

はじめに
 福岡県行橋市(人口7万)の郊外で田園地帯にある当院は,内科系100床の病院で,特2基準の2つの病棟であったが,平成5年8月に急性期一般病棟と慢性期療養型病床群のケアミックスを導入して,丸2年が週ぎた.
 以前に当院から,病院長の立場でケアミックスの導入について本誌(病院53:278-281,1994)に発表したが,今回は看護部の立場から,ケアミックス発足までの経緯,一般病棟の変化,療養型病棟の取り組み,評価をまとめてみたい.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第19回

療養型病床群

著者: 山下哲郎

ページ範囲:P.471 - P.479

療養型病床群の制度概要
 戦後病院の機能体系は,一般病院・結核病院・精神病院・その他として大きく4つに分けられていたが,現実には,一般病院として区分されている病院の中にも,高度で先進的医療を積極的に提供している大学病院・がんセンター・成人病センターや,高齢者福祉と境界領域の比較的近い老人医療を提供している老人病院,等が混在することになり,昭和60年代には,こうした医療施設の機能分化の機運を迎えることになる.こうした中で,医療施設の類型化について検討し,具体的に類型についての提案を行った研究が,昭和63年度厚生科学研究の補助金で行われた(「医療機関の効率的運用指針の策定に関する研究(主任研究者:大池真澄)」).この研究報告書では,「今後の期待される機能に基づく類型化」として,表1のような類型化が提案されている.
 この研究以降,医療施設の類型化に関わる議論がまき起こり,多くの検討を経て,1992年6月に国会において特定機能病院・療養型病床群の新設を含む,いわゆる第2次医療法の改正が行われることになる.この中で,療養型病床群については,「長期入院を要する患者にふさわしい医療を提供するため,一般病床中に療養型病床群の制度を設ける」とし,

病院進化論・1

マンモス化と過適応の歴史

著者: 古川俊之

ページ範囲:P.480 - P.483

 この変哲なテーマに思い至ったのは,病院の変遷をデザイナーという造物主の眼で見ると,これが生物同様に進化してきたと感じるからである.釈迦に説法であるが,生物の進化とは「生物のある仲間から新しい仲間が生じ,それで種類が増えること」である.生物の進化は実験で確かめるにはあまりに永い道筋であるが,病院の進化は人類の文化史の一部であるから,はるかに調べやすい.かつ病院には進化の系統図が明らかにあり,西欧と日本では系統樹が違う.生物進化の仕組を重ね合わせて見るのも,病院の進化のアナロジーとして面白い.とにかく寓話的にいろいろ屁理屈をこねるのに都合がよい.

精神保健福祉法と病院の対応・2

社会復帰

著者: 浅井邦彦

ページ範囲:P.484 - P.489

はじめに
 「精神衛生法」(昭和25年制定)は,昭和62年に「精神保健法」に改正され,法の目的に「社会復帰の促進」が初めて明記され,社会復帰施設の制度が創設された.平成5年6月には,法の一部改正が行われ,「社会復帰施設から地域社会へ」という新しい流れが形成され,グループホームの法定化や社会復帰促進センターの設置が行われた.
 平成5年12月には,心身障害者基本法が改正され,「障害者基本法」が成立し,障害者の定義において精神障害者が身体障害者や知的障害者と並んで規定され,精神障害者が初めて障害者基本法の対象として明記された.基本法では,その目的および基本理念の規定で“障害者の自立と社会参加の促進”と“国,都道府県,市町村が障害者計画を策定すること”とされた.

厚生行政展望

診療報酬点数改定の流れからみる病院の将来

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.490 - P.491

はじめに
 日本医師会の会長に病院代表の坪井氏が選出された.会長が診療所代表から病院代表に替わったことにより日本の医療界が今後どのように変わっていくかは楽しみなところである.4月1日に改定された診療報酬点数は坪井新会長が副会長時代に手がけたものであり,厚生省も坪井氏の会長選出を支援していたと考えられることから将来の医療界の方向を予測することができる.今回は診療報酬点数の改定から今後の医療界の流れを予測できるトピックとして,①技術の差別化,②病院の質の向上と評価,③日本型DRGへの布石の3点について検討する.

「医療施設近代化施設整備事業」による病院の建て替え

広島県済生会呉病院

著者: 野間堯 ,   山田勝士

ページ範囲:P.492 - P.493

はじめに
 当院の改築にあたり,厚生省の補助事業である医療施設近代化施設整備事業の対象病院として,国・県からの助成により近代的かつアメニティ重視の病院が完成したことは,病院にとってはもちろんのこと,地域にとっても良質な医療が実践される足場が確保されたという点では大きな福音と言えます.今後の保健・医療・福祉に更に貢献出来ることを励みとして,その概要等について説明します.

病院管理フォーラム

[薬剤師の新たな業務]薬学部学生の病院実習

著者: 厚田幸一郎

ページ範囲:P.494 - P.495

はじめに
 医療に対する社会のニーズが年々高まってきているこの時代,薬剤師に対しても期待が大きい.とくに医療法の改正により,薬剤師が医療を担う一員として明記されることからも窺えるように,医薬品の研究開発から医療の現場における適正使用に至るまでの幅広い分野において,高度に機能する薬剤師が強く求められている.
 このような社会ニーズに応えるため,各方面で薬学教育の改善についての検討が行われている.その中で一つの重要な部分を占める問題が病院実習である.

癒しの環境

落ち着く環境

著者: 三宅康夫

ページ範囲:P.496 - P.498

はじめに
 戦後,わが国の医療は驚異の進歩をとげたが,われわれ医療者は,この著しい医療の進歩に目を奪われ,高度医療を追求するあまり,患者指向の,患者のための治療環境への関心が足りなかったことが指摘されている.
 また,最近は高齢社会を迎え,治療環境に患者のQOLの大切さが認識されるようになってきた.

データファイル

平成7年6月病院運営実態分析調査の概要・1,他

著者: 全国公私病院連盟

ページ範囲:P.499 - P.503

 この調査は,全国公私病院連盟が社団法人日本病院会の協力を得て,毎年6月に実施している調査で,病院運営の実態を把握して病院の運営管理改善の資料とするとともに,診療報酬体系改善のための資料を得ることを目的としている.
 調査の結果は,「病院経営分析調査報告」,「病院経営実態調査報告」の2冊とし全国公私病院連盟から発刊される.前者は病院の職員数,患者数,診療収入,施設設備の状況など病院運営に必要な各種の指標を量的,質的に分析し,後者は病院の収支を中心にまとめたものである.

医学ごよみ

5月—May 皐月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.505 - P.505

□1日 ニューロンの発見
 神経組織学の大御所ラモン・イ・カハール(Santiago Ramón Y Cajal,1852〜1934)の誕生日である.彼はスペインのピレネー山脈のあるアラゴン(Aragon)地方のペティラ(Petilla)という小さな町で生まれた.
 彼の父も医師で,息子が医師になるように望んだ.しかし彼は勉強嫌いで画家志望であったため,父を裏切ることが多かった.失望した父は床屋や靴屋奉公に出したが,愚鈍扱いされて帰ってきてしまった.しかし彼は17歳のときに医師を志し,サラゴサ(Saragossa)大学医学部に入学し,1873年に卒業した.当時のスペインには革命の嵐が吹いており,本国ではクーデター,植民地では内乱が起こっていた.彼は軍医として1874年から2年間,キューバに滞在した後,解剖学教室の助手として母校に戻った.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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