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雑誌目次

雑誌文献

病院55巻6号

1996年06月発行

雑誌目次

特集 病院のネットワーク化を追う

病院のグループ化とは—ネットワーク化へのステップ

著者: 河北博文

ページ範囲:P.534 - P.536

病院の連携の必要性
 なぜ,病院のネットワーク化が必要かというと,病院に対して医療供給体制の変化が要請されたことに端を発する.それは,1945年の第二次世界大戦の終戦後40年目に当たる1985年の地域医療計画策定に遡ることになる.
 1948年に国民に最小限必要な生活のうち,必要不可欠な医療を保障すべく医療法が制定された.それはとりあえず医療を量的に保障しようとするものであったので,それ以後の40年間は,医療の拠点を各地域に整備することに力が注がれた.1985年の地域医療計画の策定では,医療の質を充実させるという転換がなされると同時に,それまでは拡大指向であった医療供給体制に一定の枠が掛けられることとなった.それまで,公的病院の病院・病床数の規制もあるにはあったが,政策医療の名の下に拡大を続けていた.官業も民業もともに社会の中で自然に整備されてきたのであったが,この地域医療計画の枠によって,組織の拡大により収支のバランスを図っていた経営方針を転換せざるを得なくなった.また同時に,診療報酬も医療費抑制の方向が強く打ち出されるようになったこともあり,その後は組織としての経営管理の必要性が広く求められることとなった.

医療機関のネットワーキング

著者: 中村仁一

ページ範囲:P.537 - P.540

ネットワークとは
 医療技術の高度化や,患者・住民の高学歴化,医療情報の氾濫,医学知識の普及,生活水準の向上などにより,医療に対するニーズは多様化している.
 もはやこれらすべてに,一つの医療機関が規模を拡大して「自己完結方式」で対応するのは不可能な状態である.したがって,これらの要望に応えようと思えば,不足機能を他の医療機関や施設との連携によって補う必要がある.つまり競合から共同へ,ネットワーク化が要請されるわけである.機能分化と連携とは,同時に,限られた医療資源の効率的活用の点からも,望ましい姿であると言える.

米国における病院のネットワーク化

著者:

ページ範囲:P.541 - P.542

ネットワークとは
 米国における医療機関のネットワークは,交流,サービスの共有,他の機関へのマネジメント,合併など様々な形態をとっています.
 まず,米国で使われるネットワークという言葉の定義を述べます.英語でネットワークという言葉を使う時に,動詞形のネットワーキング(networking)と,名詞形のネットワーク(network)では若干の意味の違いが出てきます.前者のネットワーキングは通常の友人同士での会話や情報伝達,すなわちインフォーマル(informal)な関係を意味します.一方,この関係がビジネスなどのフォーマル(formal)な場に発展したのがネットワークです.

大学病院におけるネットワーク化

著者: 畑隆志 ,   吉村博邦 ,   大和田隆

ページ範囲:P.543 - P.546

はじめに
 医療をめぐる環境が,テクノロジーの面でも社会的側面でも著しく変化し,さまざまなレベルで病院のネットワーク化が進んでいる.一般に大学病院は高度医療の場という認識が定着しており,特定機能病院を運営する観点からは,紹介受診の促進や後方病院との連携といった側面が想起される.しかし,これからの時代に大学病院が「教育」,「研究」,「診療」の機能を十分に果たしていくためには,もっと幅広く多様なネットワークを進めていく必要がある.

ネットワーク化の歩み—県をまたいで医療情報を

著者: 大田浩右 ,   佐藤昇樹

ページ範囲:P.547 - P.550

はじめに
 当院をキーステーションとするCT画像伝送システムによる広域脳疾患救急医療ネットワークは現在参加病院が25病院あり,すべての病院が本システムに自主的に参加し連携している.画像伝送システムの発端は,広島県東部,岡山県西部において脳神経外科専門病院が当院しかなかったため,近隣の医療機関から特に救急患者の当院への転送の必要性について,電話相談を受けることが多かったことである.昭和50年代の後半CTの普及とともに,近隣医療機関からの紹介もCT画像所見を含めたものとなってきた.そこでCT画像伝送装置の開発に取り組み,1985年,池上通信の協力を得て大田式静止画像伝送装置を開発した.1986年,当初はまだ離島であった因島市医師会病院および三原市医師会病院との画像伝送を実験的に開始した.
 情報技術の進歩により,現在はテレラジオロジー,テレメディスンという言葉が一般的に用いられるようになったが,本システムは,今から10年前の1986年にスタートしており,テレメディスンネットワークを利用した遠隔診療支援システムとして,実際の医療現場で本格的に普及している全国的にもまれなケースと言える.

パソコン通信,インターネットを活用した医療情報サービス

著者: 平川淳一

ページ範囲:P.551 - P.554

はじめに
 病院のネットワークとは,それぞれの医療機関が互いの特色を理解し,利用し合うことであり,日常診療を円滑かつ適切に行うために非常に有用な手段であると考えられる.医療機関は,たいせつな社会資源でありこれを有効に活用できれば,経済的にも,物質的にも,サービス面でも多大なメリットが発生すると思われる.ここ数年,第2次医療法改正に基づく医療施設機能の体系化,診療報酬における病院の機能分化,診療情報提供書などの患者紹介の推進などのネットワークを推進しようとする施策が遂行されている.具体的には,東京都の精神疾患身体合併症のネットワークやAIDS診療のための病診連携なども行われ,他の地域でも,ネットワークが有機的に運営されているケースも多い.しかし,国民の需要や医療機関の機能分化の変化は急速で,近隣の医療機関が何をしているかも,把握しにくいのも現状である.そのため,ネットワークに必要な情報が極端に不足し,国民も医療機関も,十分に社会資源を活用できていないと思われる.マルチメディアが,急速に普及する時代,すなわち,情報がリアルタイムに飛び交う時代に,これらをいかに活用するかが重要な課題であると思われる.
 当社は,1991年1月より,医療情報提供サービスを行っている.

大学病院の医療情報ネットワーク化

著者: 髙橋隆

ページ範囲:P.555 - P.560

はじめに
 情報化の進展が社会の見通しを良くするということは誰しも認めるところであろう.衛星TV放送により防ぎようもなく宇宙から自由世界の情報の嵐を受けた社会主義国が一夜にして脆くも亡び去った例は,情報化がボーダレス化をもたらす格好の例であり,情報が持つ底知れないポテンシアルを世に知らしめた.
 さてその情報化の波は,クリントン政権下の米国の威信をかけた情報スーパハイウェイ計画によって一段と加速される様相である.わが国においても光ファイバーを全国くまなく設置するバックボーンネットワークとしての日本版情報スーパーハイウェイ/B-ISDN (Broard band Integrated Service Digital Net—work;150Mbits/sec)計画の前倒しが検討され,2010年には実現の見通しとなった.また大量の情報を伝送可能な通信衛星の利用も進展しつつあり,本格的なマルチメディアネットワーク社会の到来である.マルチメディアは新たな映像文化を創造し,新たな価値観を創造するという.

島嶼医療の将来ビジョン—保健医療福祉ネットワークサービスの展開

著者: 石野誠

ページ範囲:P.561 - P.564

はじめに
 今日の医療を取り巻く環境はきわめて厳しいものがあるが,その根底にあるものは,「需要は常に供給を上回る」ことであり,それらにかかる適正な費用を誰がどのように負担するのかが真剣に議論されなければならない.しかし,「少ない負担で最高のサービスを」という神話が一般国民および関係者の間の「同床異夢」の源泉となっているのが現実である.地域医療の現場ではもろもろの歪みが生じてきているが,もちろんサービスの供給側にも問題がないわけではない.医療資源の配分が地域によって偏っていることと,必然的に一方においてサービスの重複があることである.公的病院だけを取り上げてみても,都市部においては,国立,県立,市立,公益法人立の病院があり,それぞれに同様のサービスを提供している一方で,例えば救急医療体制の面では拠点的重装備病院と呼べるような水準に達している施設が整備されていない状況にある.今後の保健医療福祉サービスを展望するとき,そのキーワードはネットワークと言われるが,ネットワークとは役割の分担と連携であり,役割分担をするためには,それぞれの施設の機能の明確化が避けて通れないが,開設者が異なることもあって,現実にはなかなか進んでいない.

グラフ

壱岐の医療を担う民間医療機関のネットワーク—医療法人玄州会光武内科循環器科病院/老人保健施設光風江田小児科内科医院/医療法人潮陽会松嶋病院/大蔵医院

ページ範囲:P.517 - P.522

「この島でお年寄りが安心して暮らせるシステムをつくりたい」,「一人の開業医では限界がある」,「島にも老人保健施設が必要だ」
 それは4年前の宴席での議論から始まった.飲み仲間の4人の医師が老人保健施設をつくろうというのである.彼らはこの島で生まれ育った江田小児科内科医院江田副院長,大蔵医院大蔵院長,松嶋病院松嶋院長および光武病院光武院長である.

日本医師会会長に就任 財団法人日本医師会会長 財団法人慈山会医学研究所付属坪井病院理事長 坪井栄孝氏

著者: 梅垣洋一郎

ページ範囲:P.524 - P.524

 坪井栄孝氏は平成8年4月1日に日本医師会長に選出され就任された.現在の社会では多くの組織が利益擁護団体と化し,その代表者は既得権の代弁者あるいは利害の調整者としての能力への期待により選出されているように見える.坪井氏に指導者としてまた調整者として抜群の能力があることは私もよく承知しているが,今回の選挙はそれよりは氏の清新な人柄の魅力の結果であったと私は考えている.その意味で今回の選挙は新しい時代,つまり社会構造の再構築の時代へのスタートともいうべき快挙であった.
 坪井氏は国立がんセンター在任中に,早期肺癌の経気管支擦過診断法により90%以上の驚異的な確診率を挙げ,肺癌治療に大きな貢献をした.坪井氏の業績は,肺癌がいよいよ癌死亡のトップになった現在,ますます高く評価されている.

主張

プライバシーへの配慮の医療評価の低さ

著者:

ページ範囲:P.525 - P.525

「待合室で名前を呼ばれて診察室に入ると,すでに三人ほどの患者がいすに座っている.奥の机では問診が行われ,更にその奥のカーテン一枚へだてたところに内診室がある.」(「朝日新聞」ひととき欄「問診,つつ抜けの病院」より)
 この投書氏は問診の内容を人に聞かれない配慮や,女性の尊厳をもっと大切に考えてほしいと結んでいる.全くもっともな話である.

対談シリーズ 介談問題をめぐって・8(最終回)

政策課題としての介護問題

著者: 今井澄 ,   菅直人

ページ範囲:P.526 - P.533

 今井 大臣,今日はお忙しいところをありがとうございます.現在,日本は時代の大きな曲がり角にあり,その中で,われわれ政治家がしっかりしなければならないと思っていますが,評判のよくない政治家の中で一際光っている菅厚生大臣には,エイズ問題で大変なご尽力をいただき敬意を表します.
 そこで,現在,国民が大変関心を持っている大きな課題として介護の充実,そして公的介護保険がありますが,ちょうど今日(4月22日)は老人保健福祉審議会(以下,老健審)が最後の詰めの段階ですが,厚生省としても最後の正念場にあると思います.この新しい介護制度に対する国民の期待も大きいと思いますが,この点についてどのようにお考えでしょうか.

病院進化論・2

巨大化とスケールメリット

著者: 古川俊之

ページ範囲:P.565 - P.568

 なぜ病院は巨大化するか.それは進化の方向性の表現形でもある,というなら進化論の鵜呑に過ぎない.病院巨大化の最大の要因は,医療界が予想もしなかった医療技術の急速な進歩で,何とか新しい装備を取り込んで需要に応えるためである.
 奇妙なたとえかも知れないが,水中生活を選んだ恐竜には,その場凌ぎの適応で間に合わせた種属とそうでないものとがある.海棲恐竜のノトザウルスは,陸上恐竜の体型のまま尾に鰭を付け,四肢の指にミズカキまで付けたが推進力は弱く,餌を見つけて顎を開けると,水中抵抗が増して困惑したに違いない.デザインの優れたミクソザウルスは,尾鰭が垂直である以外は,現代のイルカとほとんど同じ優れた体型である.
 病院の進化も巨大化だけでなく,不細工な醜い図体になったものと,新しい設計思想で臨んだものとの差は歴然としている.まず巨大化の必然性を考察して,スケールメリットの如何を考えたい.

レポート

大型自治体病院の経営実態を分析する〔第Ⅲ部〕—経営の善しあしを左右する諸因子の検討と経営改善のための提言

著者: 武弘道

ページ範囲:P.569 - P.574

各年度ことの経営ランク
 経営の善しあしを論ずる場合には,良いか悪いかの指標がなければできない.経営を分析するのにいろいろな指標があるが,普通は医業収支比率でみるのがわかりやすい.支払い利息など,医業外費用なども入る経常収支比率ではその病院の純粋の医業経営状況は判断しにくいからである.
 それから自治体病院の医業収支比率をみる場合に,医業収益の中に入れられる他会計負担金が病院によって額がまちまちであることに注意を要する.1994年度の大型自治体病院50病院をみても医業収益中の他会計繰入金は病院によって大きく異なっている.

訪問看護ステーション 実践レポート—北から南から

病院と行政の結合で保健・医療・福祉を統合サービス—訪問看護ステーション「みつぎ」

著者: 平野幸江

ページ範囲:P.575 - P.577

はじめに
 「住み慣れた家庭,地域で生活したい.」このことは多くの老人が望んでいる.高齢社会を迎えて,要介護老人が増え,在宅ケアの必要性が強く叫ばれている中,訪問看護ステーションは,在宅医療の中で重要な役割を果たしている.
 御調町では,公立みつぎ総合病院を核として在宅ケアが行われてきた.老人訪問看護制度の創設により,1992年5月,県内トップで御調町老人訪問看護ステーションを開設した.1994年4月には,診療報酬の改正により,難病などで障害のある65歳未満の若年者も利用できるようになった.1995年4月,名称も訪問看護ステーション「みつぎ」と改め,はば広く利用してもらえるようになった.当ステーションの現状と今後の課題および展望を含めて報告する.

厚生行政展望

医療審議会の答申を斬る

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.578 - P.579

 医療審議会は,去る4月25日,「今後の医療提供体制の在り方について」と題する答申(正確には「意見具申」)を行った.介護保険やエイズ問題の陰に隠れて目立たなかったが,盛り込まれている内容は今後の医療体制全般にかかわる重要性を持つ.厚生省は答申に沿った医療法改正を,この国会に提出する意向とも伝えられている.そこで,今回は,この答申を紹介しつつ,医療法改正の行方を明らかにしたい.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第20回

北米の病院等に見るパブリック・スペースの演出

著者: 栗原嘉一郎

ページ範囲:P.580 - P.584

はじめに
 1995年9月9日(土)から23日(土)までの2週間,日本医療福祉建築協会のツアーでカナダ,アメリカの病院ならびに高齢者施設を廻った.その折の視察の全般については雑誌「病院建築」111号(1996年4月)に報告したので,本稿ではテーマをパブリック・スペースにしぼり,写真に重きを置いた紹介をしたい.
 医療・福祉施設を構成する基本的な要素はもとより診療部門,外来部門,病棟(居住)部門あるいは供給部門,管理部門の諸室だが,それらをつなぐスペースとしてのロビー,待合,廊下,庭などがここにいうパブリック・スペースである.誰もが自由に往き交うこれらのスペースは特定の部門に属さないだけに,施設計画に当たって真剣な検討の対象から洩れがちであるが,患者,職員のアメニティに大きく関わるほか,見舞客など外部からの来訪者に与える印象を左右する重要なスペースである.

精神保健福祉法と病院の対応・3

精神保健福祉法と人権擁護

著者: 高柳功

ページ範囲:P.585 - P.588

法の精神の変化
 精神保健法は,平成7年改正によって法律の題名も「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」と改められ,従来の精神保健法から,法の意図する精神あるいは性格が大きく変わることが期待されている.法の性格は時代背景の変化に応じて,今日まで何回かの大きな変遷をみてきた.
 筆者に与えられたテーマは人権,患者保護であるが,まずここに至るまでの精神衛生法制定以来の法の性格の変化を簡単に振り返ってみよう.

MSWの相談窓口から

ひとりでしか生きていけない

著者: 和田光徳

ページ範囲:P.589 - P.589

「人はひとりでは生きていけないって言うけど,そんなことはない.ひとりにさせられる,ひとりでも生きていくしか仕方ない人間だっているのよ.」
 22歳のA子さんは,一つ一つの言葉をかみしめるように,そして絞り出すように話をした.私には思わず息を飲むような,そんな迫力さえ感じる言葉だった.

「医療施設近代化施設整備事業」による病院の建て替え

財団法人育生会横浜病院

著者: 宮内政光 ,   稲垣博昭

ページ範囲:P.590 - P.591

はじめに
 この度財団法人育生会は,横浜市西区の繁華街にあった育生会横浜病院を保土ヶ谷区郊外に移転リニューアルし昨年12月に新開院したが,移転リニューアルに当たっては,平成7年度医療施設近代化施設整備事業の適用を受けることができた.
 本院は,終戦直後から50年にわたり地域福祉医療の中核的な役割を担ってきたが,建物の老朽化,敷地の狭小化,医療のニーズの変化などに対応するため,郊外への移転を企画した.病院の移転新築に合わせ,老人保健施設と特別養護老人ホームを同一敷地内に併設し,医療と福祉の有機的統合を図るというコンセプトを実現するに際し,タイミングよく近代化整備資金の導入を図ることができた.

癒しの環境

痛みを止める,がまんする環境

著者: クリストフクミコ

ページ範囲:P.592 - P.593

「ほっ」とできる環境では少しでも痛みが和らぐ
 病院にいて,患者も家族も「ほっ」とした時間を持ちたいと思う時がある.私は大学附属病院の中でヒーリング・アーティストとして毎日,医師,看護婦たちとともに働いている.ある一人のがん末期患者に対し,次のようなケアを行った.
 日々モルヒネを200mgほど使用している患者で,ほとんど食事もとることができなくなってきていた.私たちは通常でのカンファランスで日々の患者さんの病状の変化を大切に見守った.「痛い.体中が痛い」と,患者はベッドの上でのたうち回るほどである.がんは骨まで転移していた.

病院管理フオーラム

[薬剤師の新たな業務]薬剤管理指導業務—(1)概略と基本業務

著者: 高橋賢成

ページ範囲:P.594 - P.595

はじめに
 1994年4月の診療報酬改定において,入院調剤技術基本料は投薬の項から管理指導の項に移行され,点数も月400点から月600点(現在900点に変更)に引き上げられ,名称も「薬剤管理指導料」と改められた.これは,薬剤師の病棟業務に対する社会の期待と現実の薬剤師の能力,業務内容に対する本質の改善を含めた自助努力を期待するものであり,薬剤師の技術的評価に対するものである.薬剤師の病棟業務に対する医師,看護婦などの医療従事者および患者からの評価を真摯に受けとめ,薬剤師は物質指向から患者サービスの向上および医薬品適正の推進に向けて,さらなる質的向上を図る必要がある.

病院管理フォーラム

[病院図書室]病院図書室と日本医学図書館協会(JMLA)

著者: 青木孝雄

ページ範囲:P.596 - P.598

病院図書室と日本医学図書館協会のこれまでの協力関係
 1970年代半ばに広域あるいは全国的規模の病院図書室の組織として「近畿病院図書室協議会」,「病院図書室研究会」が相次いで創設されました.この二つの組織は,その後の病院図書室の活性化に主導的な役割を果たしてこられました.一方日本医学図書館協会(JMLA)も1980年の第51回総会で「病院図書室を含むネットワークの形成について」を議題として審議して以来,種々の試行錯誤を重ねながらも病院図書室との協力関係について,真剣に取り組んできました.また,その結果として,10指に余る病院図書室のネットワークが地区単位,あるいは,都道府県単位で組織され今や全国的な広がりをみせております.この間,病院図書室とJMLAとは,地区活動,全国的レベルでの文献の流通,職員の教育研修など,さまざまな場面を通じて,協力提携関係を保持してきました.

ナースステーション考・4

北九州市立医療センター

著者: 青木和枝 ,   筧淳夫

ページ範囲:P.600 - P.602

北九州市立医療センターの位置付け
 北九州市立医療センターは,「市民が共有の財産として誇れる病院」を目指し,1991年に旧小倉病院を建て替え,北九州市の中核病院としてオープンした.
 現在,北九州市は五つの総合病院と一つの結核療養所を有している.

データファイル

高齢者介護保険制度の創設について(概要)—「審議の概要・国民の議論を深めるために」—老人保健福祉審議会報告

ページ範囲:P.603 - P.605

〈報告の要旨〉
・高齢者介護保険制度については,国民の十分な理解と合意を得ながら,制度の創設と実施を進めていくことが重要である.このため,本報告では,現段階で意見が分かれているものも含め,それぞれの論点ごとに審議会で行われた議論の背景や理由を分かりやすく整理した.
・今後,本報告を契機に,国民の間で活発な議論が行われることを期待するとともに,厚生省において具体的な試案を作成し,広く国民に問うことを強く要望する.当審議会においては,同試案について検討を加えた上で,厚生省の諮問をまち,さらに審議を深め,答申を取りまとめる.(平成7年7月に高齢者介護制度を社会保険方式を基本として創設すべきであるという報告を第1次中間報告で,平成8年1月には介護サービスの具体的な内容,水準,利用手続き及び介護サービス基盤の整備のあり方に関する第2次報告を公表)

安心の介護をみんなの負担で—公的介護保険創設に当たっての基本的考え方(要旨)

著者: 社会民主党拡大厚生部会

ページ範囲:P.606 - P.607

 私たちは,昨年12月に「新たな介護システムの構築に向けて」(中間的な論点整理)をまとめた./その中で,介護を社会的に支える制度を確立することが喫緊の課題であるという認識の下で,今後の介護サービスは,介護を必要とする人々の自立した生活を支援することを目的にして,自己決定と選択の権利を尊重しながら進められるべきであるという基本理念を明らかにしてきた./また,社会的介護の確立にとって,住宅,交通,まちづくりなどの社会的インフラが並行して整備される必要がある./介護保険法案作成が,大詰めを迎えた今日の段階において,制度の基本スキームに関する私たちの見解は以下のとおり.

介護保障確立に向けての基本的な考え方(要旨)

著者: 丹羽雄哉

ページ範囲:P.607 - P.608

 Ⅰ高齢化の進展い伴い,介護の問題は老後生活の大きな不安要因となっている.この問題に対する国民の関心は非常に高く,21世紀に向けて,わが国の介護保障制度をどう確立していくかは重要な国民的課題.
 Ⅱ政権与党としては,ますます深刻化する介護問題をこのまま未解決の課題として放置できない.国民の強い期待に応え,介護保障体制の確立を目指すため,1月に取りまとめられた「三党政策合意」の考え方を踏まえ,関係者の合意形成を早急に進めていくことが必要.

介護保険制度試案(概要)

著者: 厚生省

ページ範囲:P.608 - P.610

〈基本的な考え方〉
 1)高齢化の進展等に伴い高齢者介護の大きな社会問題となっている状況を踏まえ,高齢者が自立した生活が送れるよう老化に伴い介護が必要な者に対して社会的な支援を行う仕組みを確立.
 2)地方分権の推進や介護サービスの地域性を重視する観点から,住民に最も身近な行政主体の市町村が基本.安定的かつ効率的な制度運営のために財政・事務両面で,国及び都道府県が重層的に支え合う.

医学ごよみ

6月—June 水無月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.611 - P.611

□5日 眼科細隙灯(slit lamp)の発明
 近代眼科学に偉大な貢献をしたスウェーデンのグルストランド(Al—lvar Gullstrand,1862〜1930)の誕生日である.彼はスウェーデンのランツクローナ(Landskrona)に生まれ,ウプサラ(Uppsala)大学とウィーン大学医学部に学び,1888年ストックホルムのカロライン研究所(Royal Caroline Institute)の医学部を修了し,そこで眼科学を学んで講師になった.さらに,ウプサラ大学の眼科学教授に就任したが,独学で眼科学の新しい分野に挑戦し,次々に研究成果を発表していった.彼は水晶体の光屈折(dioptrics)について新しい治見を次々に明らかにし,光の映像と虚像,そして乱視,これらの屈曲の実体を幾何学的生理学的光学分野で解決していった.
 また,種々の眼科器具を開発したが,その中には異物を発見したり,眼球表面の異常を拡大観察できる細隙灯(slit lamp)や反射検眼鏡の発明がある.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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