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雑誌目次

雑誌文献

病院55巻9号

1996年09月発行

雑誌目次

特集 診療報酬改定・96年4月を検証する

[座談会]診療報酬改定・96年4月を検証する

著者: 井手義雄 ,   大道久 ,   河北博文 ,   紀伊國献三 ,   岩﨑榮 ,   竹内實

ページ範囲:P.830 - P.837

 竹内 96年春の診療報酬改定は今後の診療報酬の流れを示すようないくつかのポイントがあります.そこに,十分な点数がついたかどうかは別にして,従来にはみられなかったいろいろな面が顔を出しています.そこで,今日はそのポイントについて検証したいと思います.

平成8年度診療報酬改定の意義

著者: 糸氏英吉 ,   尾嵜新平 ,   原徳壽

ページ範囲:P.838 - P.845

日本医師会の立場から
 今回の改定は中医協による平成7年12月の意見を踏まえて実施されたものでありますが,国民経済の低迷という厳しい背景の中で,中医協の論議も支払側と大蔵省との強硬な抵抗にはばまれて,われわれ診療側は当初から苦しい戦いを余儀なくされました.しかしながら,最低,人件費分の引き上げだけでも確保しようという固い決意の下で,平成8年度診療報酬改定引上げ率は医科平均4.3%を要望し,中医協にその理解を求めたのであります.1号側,2号側との様々なやりとりの中で,最終的に支払側とは,医科3.7%引き上げで,どうにか同意するに至ったのであります.以下改定の主要項目について述べたいと思います.

診療報酬からみた医療施設の機能分化

著者: 濃沼信夫

ページ範囲:P.846 - P.850

はじめに
 かって世界を席巻したわが国の経済的馬力は,世界最大の累積債務国への転落という事態に陥り,社会保障を支える国家財源の逼迫が深刻化している.薔薇色の老後が喧伝され,世界から羨望視された社会保障,とりわけ医療や年金の機能的な仕組みも,近年は制度疲労が顕在化し,その抜本改革が焦眉の政策課題となっている.こうした難しい時代にも,国民の命と健康を守る医療はその活動が停滞してはならないし,厳しい時代であるからこそ国民の幸福に直結する医療の役割は増大しているともいえる.
 変貌を遂げる社会経済環境の中で,医療保険制度と診療報酬体系は起死回生の大改革が開始されようとしており,介護保険制度は生みの苦しみの中にあるといえる.未曾有の超高齢化社会の入口に立ち,今こそ長く険しい経済停滞をはねのける英知と才覚が求められているといえる.医療施設の機能分化は,医療制度改革の重要な柱に位置づけられており,医療連携,情報開示,資源節約など多くの付加価値を有するものであり,新しい医療を開く起爆剤ともいえる.

中小病院のケアミックス

著者: 小林武彦

ページ範囲:P.851 - P.854

ケアミックスの歴史
 急性期一般病院の中に,老人長期入院患者が混在していた.多くの病院ではその老人慢性期患者に多くの付添婦がついていた.その急性期一般病院での治療は検査と薬物手術療法を主体とし,出来高で保険請求を行っていた.慢性期高齢者に対しても,急性期患者と同様に,検査と薬物療法を行っていた.その不適切な医療を改善するために,平成4年から,介護力強化病棟が急性期一般病棟と混在して認められるようになった.
 ケアミックスとは,急性期医療を担当する出来高払い制の新看護体系病棟と慢性期医療を担当する定額払い制の療養型病床群(介護力強化病棟)という医療内容および診療報酬体系の異なる病棟を一病院内に併せ持つことを意味する.

今後の診療報酬体系と政策展開

著者: 広井良典

ページ範囲:P.873 - P.877

はじめに—医療保険をめぐる現状認識
 日本経済の失速により医療保険財政の悪化が一気に顕在化する中,介護保険の通常国会提出が見送られることとなった.この結果,いうならば,介護問題への対応という“当面の応急手当”と,構造的な危機に瀕している医療保険制度全体の再編という“大手術”とを「分けて」考えられなくなった,というのが,日本の医療保険制度をめぐる現在の基本的な状況である.
 今回の診療報酬改定は,直接には昨年11月の薬剤費適正化に関する中医協・診療報酬基本問題小委員会報告書と中医協建議書を踏まえたものであるが,もともと基本問題小委員会は平成3年7月に発足したものであり,平成5年9月には今後の診療報酬のあり方についての包括的な報告書を公表していた.しかしながら,上記のように医療保険制度全体の改革の方向がまだ定まっておらず,そして,実は診療報酬そのものの「体系」の見直しが引き続いての検討課題とされているのが現状であり,こうした意味では,今回の改正は,多くの実験的ともいえる要素を含んだ興味深い内容となっている半面,いわば“既存の大枠の中での若干の改善”にとどまるものであることは否めない.中医協の診療側・支払い側ともに,今回の改正を「診療報酬の抜本的な改定に向けた一歩」と位置づけていることもこれと符合する.

診療報酬改定前・改定後の病院経営の変化

200床以上の民間病院の立場から

著者: 瀬戸𣳾士

ページ範囲:P.855 - P.857

中通総合病院の概要
 本院は特定医療法人明和会のセンター的病院で,539床の中で,人間ドック4床,未熟児室6床を含み,集中治療室(認可済)6床を運用.新看護2対1,(A)加算.職員総数は平成8年4月1日現在633人(医師79,看護婦378,その他176).平成7年度の職員1人当たり平均患者数は,外来1,304.8人,入院507.2人(4月).外来1,396.8人,入院505.5人(5月).8年度は外来1,379.4人,入院523人(4月).外来1,438.5人,入院515.5人(5月).
 法人はこのほかに大曲中通病院(内科・外科)124床,中通リハビリテーション病院220床の病院を持ち,港北中通診療所(内科・歯科)および2歯科診療所,8出張診療所と健診機関として,中通健康クリニック,ふき健診クリニックがあり,訪問看護ステーションを5か所,中通高等看護学院(1学年定員50名)を有している.保険医療機関の3病院1診療所および歯科診療所はすべて,院外処方箋を発行している.

専門病院の立場から

著者: 清水庸夫

ページ範囲:P.858 - P.860

 今回の診療報酬の改訂は脳外科専門病院の経営安定にはほとんど効果はなかったようである.しかし,患者にとっては情報量が多くなり,自分自身の病気の程度や薬の効能などをしっかり把握できるようになった.その反面,医師には病状説明にかかる時間が増えたことは確かである.
 将来もこの傾向はますます助長されるものと思われる.したがって当院では将来さらに細かく面倒な問題を提起された場合にも対応できることを想定して,薬剤投与と入院時インフォームドコンセントなどを工夫したので,それらを紹介したい.

中小病院の立場から

著者: 井下司郎

ページ範囲:P.860 - P.862

当院の概要
 今回の診療報酬改定の影響を述べる前に当院の概要について触れておく.
 当院は昭和56年開院,一般143床,内科,外科,産婦人科,小児科,循環器科,胃腸科,麻酔科,放射線科,理学診療科を標榜する地域密着型の中小病院である.新看護3対1,A加算,8対1.透析ベッド数12.病床利用率98.2%,全入院患者の平均在院日数は,48.2日.入院患者の65歳以上の老人が占める割合は77%.(いずれも平成7年度実績).常勤医師数11人.また,年間入院死亡数は,100人〜110人となっている.

介護力強化病院の立場から

著者: 中西利夫 ,   川合秀治

ページ範囲:P.863 - P.864

病院の概要
 当法人若弘会は大きく分けて健康局と生活局の二つの局からなり,健康局は救急病院230床と血液疾患専門病院80床(内介護力強化病棟40床)で,生活局は若草第二竜間病院(以下,竜間病院と略す)の介護力強化病院500床と併設の老人保健施設100床と訪問看護ステーション(3か所)である.
 竜間病院は高齢化社会に対応すべく慢性期医療を担当する病院として,昭和63年7月に,大阪府の東側に位置する大東市の生駒山系の中腹に特例許可老人病院として設立し9年目を迎える.

精神病院の立場から

著者: 髙臣武史

ページ範囲:P.865 - P.866

 バブル崩壊は日本経済の不況を招き,各方面に様々な影響を与えている.経済企画庁の報告などでは最近景気の回復の兆しがみえはじめているというが,一般庶民にはそのような明るさはほとんど感じられない.また住専やほとんどのノンバンクは膨大な赤字を処理できず,日銀は公定歩合を極めて低く抑えて銀行の負担を減らし,その穴埋めをしようとしているらしい.多くの老人の悩みは深い.
 最近病原性大腸菌O−157の爆発的流行が国民の大きな不安を招いている.

特定機能病院の立場から

著者: 山下貢司 ,   三宅博文 ,   小橋誠

ページ範囲:P.867 - P.869

病院の概要
 岡山と倉敷のほぼ中間に位置する川崎医科大学附属病院は,昭和48年12月に開院し,1日平均外来患者数約2,000人,同入院患者数約800人の岡山県内はもとより中国,四国地域をも診療圏とする総合病院である.また,高度救命救急センターを中心に最先端の医療機器とコンピュータを駆使した高度な医療を提供している.併せて,地方にある大学病院として地域に密着した初期医療に対する要望も強いため,昭和56年から総合診療部を開設して活躍している.
 開院してから四半世紀を経過した今日,特定機能病院としてまた地域基幹病院としての重責も担い,県内外の病院,医院との緊密な連携をとり,地域の特殊性を十分考慮しながら,その社会的使命を果たすべく努力している.

200床以上の公立病院の立場から

著者: 佐藤啓治

ページ範囲:P.869 - P.872

 激変する政治経済状況のなかで,少子・高齢化社会は着々と進展し,医療を取り巻く環境は保健・福祉の統合を含め大きく変容しようとしている.
 1985年,1992年に改定された医療法の,第3次改定,公的介護保険制度の導入,1997年4月実施の保健所法改正に伴う地域保健法の実施,さらに医療保険制度そのものの改革など,次々に案件が並び,あたかも医療と高齢者福祉のせめぎ合いの様相を示しながら国民の同意のなかで確実に実施されようとしている.

グラフ

「生活」を総合的に支える医療を展開—医療法人社団三草会在宅支援事業部/クラーク病院/老人保健施設もえれパークサイド

ページ範囲:P.821 - P.826

■三草会の地域リハビリ活動
 北海道歌登町.旭川からJR稚内線で北へ,音威子府駅で降りオホーツク海方面へ車で約30分.森と草原に囲まれた,まさに大自然に抱かれた町だ.人口は3千人弱.この町の保健センターに医療法人三草会のリハビリテーションチームが到着する.今回のチームは医師である三宅誼理事長,そして理学療法士,作業療法士,言語療法士,医療ソーシャルワーカーおよび事務職という編成.
 今回の活動は枝幸町,中頓別町,浜頓別町,猿払村および歌登町の共同事業「南宗谷機能訓練巡回診療」を三草会が委託されたもの.障害を持つ在宅の人たちが機能低下の予防や機能のレベルアップを図り快適な日常生活が送れるようにすることが目的.今回は歌登町保健センターおよび浜頓別町のデイサービスセンターで2日間にわたり実施される.

第36回全国国保地域医療学会会長を務める 国民健康保険久万町立病院 矢野侃夫院長

著者: 今井正信 ,   八木保

ページ範囲:P.828 - P.828

 介護保険制度創設に伴って,その基本理念とする地域包括ケアシステムを創設する役目が,各市町村にかかってこようとしています.この時期に,国保久万町立病院長の矢野侃夫先生が国保診療施設協議会(国保直診と略)主催の第36回全国国保地域医療学会会長(於:松山市)を務められることになりました.
 矢野先生は宮崎県のご出身であり,長崎大学医学部大学院医学研究科(外科)をご卒業になられ,愛媛県上浮穴郡久万町で地域医療に取り組んでおられます.

主張

後継者の育成と選任

著者:

ページ範囲:P.829 - P.829

 最近,近辺で組織のリーダーの方が相次いで亡くなられるという事件があった.それだけ人間の平均余命に近づいてきたということかもしれない.この時いつも語られるのが後継者の育成と選任である.はたして,どのようにすれば事業のスムーズな継承ができるのであろうか.「ワンマン」と呼ばれる強烈な個性のある組織リーダーに共通する特徴は,後継者の育成を怠るという面である.長くわが国医療界をリードされた方の共通点は,力をもつ後継者候補を必ず斬るということがあった.おそらく強力な権力をもつ人にとっては,力ある者をまず倒すというジャングルの掟が必要なのかもしれない.
 組織のリーダーは最も適当な人を選任することが第一である.そのためには,ある程度後継者を決めて帝王学を修めさせるのがよいのか,あるいはジャングルの掟のように最も適当な人が選ばれるよう環境を整備するのがよいか議論は分かれるところだろう.わが国の政界の流れをみると,どうも両者が交互に訪れるようである.おそらく組織も何年か経つと現状維持派が主力となり,弱体化してその混乱の中から強力なリーダーシップ待望論が生まれてくるのではないか.会社30年生存説は,この人間の組織維持力の弱さを物語るものであろう.理想的には組織は乱世型のリーダーと平和時の継続維持型の二人を常に用意する必要があるのかもしれない.

厚生行政展望

医療保険改革の行方を占う

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.878 - P.879

 介護保険法が頓挫して,解散がらみの臨時国会もあてにならない.そのため,介護保険待ちをしていた各制度改革のうち,医療審議会に続いて,医療保険審議会も6月21日に「今後の国民医療と医療保険制度改革の在り方について」という第2次報告を取りまとめて,事実上の見切り発車宣言をした.
 前回は,保険医定年制,診療報酬の総額請負制度など,報告中の各項目の主要な論点について議論を深めて紹介した.今回は,報告全体を評価するとともに,論点とその実現可能性を検討・整理し,来年度に予定されている医療保険改革の行方を大胆に予想した.

癒しの環境

わかりやすい環境—大阪市立総合医療センターを中心に

著者: 栗原嘉一郎

ページ範囲:P.880 - P.881

 病院は部屋数の多い建築物である.
 機能を明確にグルーピングした上で,各種待合ホール・通路・エレベータホールなどのパブリックスペースを空間構成の骨格となるように明確に位置づけ,このスペースを軸に院内の空間を患者が容易に把握できるようにすることが,「わかりやすい環境」をつくる上で必要である.

病院管理フォーラム

[薬剤師の新たな業務]医薬品情報室業務—変化に対応した情報の収集と提供

著者: 露崎浩子 ,   舟岡美砂子

ページ範囲:P.882 - P.883

 医薬品の適正使用を推進していく上で,医薬品をめぐる様々な情報を迅速かつ確実に収集し,随時必要部署に提供していくことは医薬品情報室の重要な業務の一つである.今回は医薬品情報室業務として基本となる情報の収集および整理保管,情報の加工と提供について概説する.

「医療施設近代化施設整備事業」による病院の建て替え

貝山中央病院

著者: 貝山仁

ページ範囲:P.884 - P.885

 当院はベッド数100床未満で70床という典型的な私的弱小病院です.その当院に対し厚生省の補助事業である医療施設近代化施設整備事業の対象病院と認められ国・県より助成をいただき,今回病院を新規オープンできたことに対し重い責任を感じております.今後地域に対し質の高い医療を提供してゆくことを心に誓い,歩み出したところです.

連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第23回

国民健康保険五戸総合病院

著者: 松浦一 ,   高橋明

ページ範囲:P.886 - P.891

 本敷地は,国道4号線が町の中心部を走る東に八戸市・北に十和田市と隣接する五戸町の中心部に位置する.
 当病院は1952年に開設された後,1969年に現在の敷地に移転された.しかし,旧病院の老朽化・狭隘化および構造上の不適合などの問題と,高度先進医療に対応するべく,診療圏(約3万人)における中核病院として旧病院の同一敷地内南側に計画された.

医療の質の評価と改善 組織・運営・戦略におけるトータル・クォリティー・2

医療のプロセスへのアプローチ—ケア・マップをめぐって

著者: 今中雄一

ページ範囲:P.892 - P.895

医療プロセスのモデル化の背景
 社会的にも医療プロフェションの間でも,医療の質と効率の体系だった向上がいっそう求められ,医療の判断・実践の過程の情報の開示がますます重要となってきている.今,医療の提供プロセスについて,1)そのプロセスを見やすく表示すること,さらに表示のフォーマットを標準化して,2)施設問・症例間での比較・参照を容易にすること,3)臨床研究の最新の知見やベスト・プラクティス,学会など専門家集団が認知する臨床行為ガイドラインの参照を促すこと,ならびに4)診療の無用なばらつきをなくして標準化し,診療の質を保証し向上させることは,非常に困難でありながらも,極めて強く望まれるところである.本論は,以上の課題に関して,診療プロセスのモデル化における「ケア・マップ」という一表現形の有効性と現実性について述べる.

病院経営の新しい指標

新しい病院経営指標

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.896 - P.899

 従来から経営指標として,病床規模別および地域別に医業収支比率や人件費率,材料費率,経費率,さらには患者数や職員数などを考察する方法が一般的に採用されている.しかし,この方法では,病院の機能や効率性が測定できない.そこで,本稿では,こうした問題点を克服する新しい病院経営指標とその考え方を紹介する.

データファイル

平成7年6月医療経済実態調査(医療機関等調査)の概況

著者: 中央社会保険医療協議会

ページ範囲:P.900 - P.906

1)この調査は,病院,一般診療所,歯科診療所,保険薬局及び老人保健施設における医業経営等の実態を明らかにし,社会保険診療報酬及び老人保健施設療養費に関する基礎資料を整備することを目的として,中央社会保険医療協議会が平成7年6月に実施したものである.
 2)結果表で集計された医療機関等数は,社会保険による診療・調剤を行っている全国の病院,一般診療所,歯科診療所,1か月間の処方せん平均取扱枚数が300枚以上の保険薬局及び老人保健施設のうち,病院1,187,一般診療所1,375,歯科診療所618,保険薬局612,老人保健施設476であり,これらの施設は次の抽出率で層化無作為抽出した.

医学ごよみ

9月—September 長月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.907 - P.907

□12日 人工放射能の発見
 現代医学には放射性同位元素は非常に重要であるが,そのきっかけである人工放射能を発見したのは,キュリー夫人の長女イレーヌ(Irène Joliot-Curie, 1897〜1956)とその夫フレデリック・ジョリオ(Frédéric Joliot)である.今日はこのイレーヌの誕生日である.彼女が生まれたころ,両親は放射能物質分離の仕事に没頭しており,イレーヌの養育を補佐したのは,著名な外科医であった祖父ウージェン(Eugène Curie)であった.とくに1906年に父ピエールが交通事故で死亡したあと,祖父が父の代わりをしてくれたという.その祖父も1910年に他界した.
 母のマリーはイレーヌの教育に心を砕いていた.当時の学校教育に疑問を抱いていた科学者仲間は,自分たちの子どもを交代で講義したり実験を指導する「組合学級」を開いていたが,イレーヌもそこで学んでいた.イレーヌが最初に「学校」に入学したのは12歳になってからである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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