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雑誌目次

雑誌文献

病院56巻12号

1997年12月発行

雑誌目次

特集 問われる事務(部・局)長の経営能力

求められる病院事務長の役割と権限

著者: 小山秀夫

ページ範囲:P.1082 - P.1085

はじめに
 「会社の寿命は30年」,「従業員の平均年齢30歳,本業比率70%を超える企業は,たとえ現在,業績がよくても,衰退期を迎える危険が大きい」.
 これは「日経ビジネス」誌上で1984年に展開された「会社の寿命」に関する法則である(注1).「企業の生き残り」とか「第2の創業」という合言葉が生まれたのは,この法則を意識したビジネスマンの危機感の表明であり,その後のリストラクチャリング,リエンジニアリングといった企業の業務改革ブームに火を付ける結果となった.その中心的課題は,いかなる組織を創り,いかに活性化するかにある.そして現在では組織の研究が経営学の最重要テーマであるといえる.

病院事務長に何を期待するか

〔座談会〕新しい事務長像

著者: 中村哲也 ,   林裕一 ,   林茂 ,   西田憲策 ,   竹内實

ページ範囲:P.1109 - P.1116

 竹内 本日は雑誌『病院』の特集「問われる事務(部・局)長の経営能力」のなかで「新しい事務長像」というテーマでの座談会にお集まりいただきました.
 まず,現在の病院における事務長の立場,お仕事,また悩みなどを,お1人ずつうかがってまいります.最初に公的病院という立場から,社会保険総合病院の中村事務長さん,口火をお切りいただけますか.

事務長からみた経営管理上の問題点

事務長のいろいろ

著者: 賴本節雄

ページ範囲:P.1095 - P.1097

はじめに
 病院にはいろいろある.営利・非営利のように組織の基本的性質の異なるもの,公私別を観点とする経営主体のいろいろ,業務の種別を,あるいは,規模の大小を視点とする区分など,同じく病院とはいえ,これらの要素の組み合わせにより千差万別の病院像を描くことができる.しかもそれぞれが生きた病院として様々な問題状況下にあることを思えば,一括して病院事務長を論じることなど不可能に近いのかもしれない.それにもかかわらず,どの病院にも院長・事務長がいて苦労しているという現実に普遍的アプローチをしたいと念じるが,便宜的イメージとして非営利・民間・総合・大規模病院を描きながら,この病院経営困難な時世に処する見通しを得たい.

病院存亡の今,事務長に求められるもの

著者: 田中熈

ページ範囲:P.1097 - P.1099

 事務長論が叫ばれて既に久しい.思い出したように論議されて,やがて消えていったという現象が過去何回か繰り返されたものだが,今,改めて事務長に問われているものが,当時と根本的に異なると思われる点は,既にして経営の一翼としての事務長論であり,問われているのは,そのアイデンティティだと思われることである.
 したがって,いまだに病院によってはよくみられる,単に医事・総務・人事・経理など事務部門の長としての事務長論や,信じていただけないような話ではあろうが,その病院の収支計算書もみせてもらえていないような事務長論は,ここでは論外としたい.

各部署の機能強化と有機的組織への脱皮

著者: 山下昭雄

ページ範囲:P.1099 - P.1101

はじめに
 病院経営と管理について記述するに当たり,病院勤務—筋約40年の筆者の就職前後の病院の状況を振り返ってみたい.
 就職は1958年8月で,日本の医療界に3基準(基準看護,基準給食,基準寝具)が医療法により施行され3年経過した年であった.前年(1957年)に薬価基準制度がスタートし,医療保険で使用できる「品目表」と償還される「価格表」とに基づいた,保険医療機関による薬剤供給が一般的となった.レセプトでの1点単価10円,償還請求が全国的に拡大し,保険診療が自由診療に取って代わり健康保険による受診が一般的となった.かくて諸々の公的保険制度が整備されはじめた時代に始まり,今日に至る病院経営と管理の現在と今後について考えてみる.

年度方針の院内展開から事務長の職責を顧みて

著者: 伊藤良則

ページ範囲:P.1101 - P.1103

 新年早々,法人の役員,院長以下幹部職員と医師全員が一堂に参集し理事長より法人方針を受ける.今年度は「楽しい職場作り」が打ち出された.それを受けて各部門ごとに方針がブレイクダウンされ,部門方針,課方針と展開していく.

病院事務長の活性化対策

ここ数年の変革期に強力なリーダーシップを

著者: 井手義雄

ページ範囲:P.1104 - P.1106

はじめに
 21世紀のわが国少子高齢社会における社会保障の問題は,国民の最大関心事として認識されている.特に本年9月より実施された健康保険法の一部改正などによる医療費の自己負担の増加は,消費税のアップと同様に国民生活を急激に圧迫してきている.まさに現行わが国の社会保障崩壊の前兆であるが,今後の医療政策の遂行における国民の目は一段と厳しくなるであろう.

先見性を持ち,戦略を立て,それを浸透させるために

著者: 竹田秀

ページ範囲:P.1106 - P.1108

はじめに
 病院事務や病院事務部のあり方,そしてそれを統括する責任者としての事務(部)長の役割や資質について論ずることは,古くて新しい課題である(以下「事務長」に表記を統一する).
 わが国でこの方面の研究については,石原信吾先生を嚆矢としよう.石原先生はご自分の体験も踏まえ,1960年代から1970年代にかけて病院組織や事務部の機能,そして事務長のあり方についての鋭い論考を重ねておられるが,今日読んでみてもいささかも古さを感じさせない.

グラフ

施設から在宅へ—医療・保健・福祉の総合サービスの展開へ—医療法人行陵会大原記念病院/老人保健施設博寿苑行風会特別養護老人ホーム大原ホーム

ページ範囲:P.1073 - P.1078

 今年4月,大原記念病院に隣接して社会福祉法人行風会の特別養護老人ホーム大原ホームが開所された.これにより,医療法人行陵会の目指す保健—医療—福祉の総合サービスの取り組みが一歩前進した.

第48回日本病院学会学会長を務める 武田病院グループ 武田隆男会長

著者: 菊池晴彦 ,   八木保

ページ範囲:P.1080 - P.1080

 武田隆男君とは京都大学医学部で同級である.学生時代から,温厚だが芯のしっかりした好青年だった.私はのんきな医学生で,馬術に夢中であまり授業に出なかったが,後で知ると,彼はすでに学生時代に結婚し,奥様とは医籍登録番号が続き番号であることからもわかるように,学生時代からしっかりした将来設計を持っていたようである.
 彼はその後皮膚科を選び,私は脳神経外科の道へ進み,しばらく交流が途絶えた時代がある.再び親しくつきあうようになったのは,私が京都大学へ赴任してからである.その間武田君は,徒手空拳で,診療所から地域医療の中核病院への道を奥様と二人三脚で歩んでいたことになる.

主張

薬と病院経営

著者:

ページ範囲:P.1081 - P.1081

 医療保険制度改革の第一弾といえる患者負担増が1997年9月より実施された.医療保険の財源をどう確保するかが検討された結果である.現時点ではある程度の負担増は国民も容認せざるを得ないと覚悟していたせいか,大きな混乱は報告されていない.しかし薬剤に関しての今回の負担は患者さんに理解を求めるのが難しいとの声が聞かれる.そして9月以降の受療抑制により病院経営にどのくらいの影響が出るのかはもう少し推移を見守る必要がある.
 薬に関する負担の問題点の第1は老人医療以外の場合2〜3割の定率で薬剤分も負担し,さらに投薬された種類数に応じて負担が加算されるという,いわば二重負担になる点である.この負担のルールは薬価に関係なく算定されるため薬価の低い薬のほうが負担率が上がってしまう.これを回避するために205円ルールがあるが,服用方法の変更によって負担額が変わる.場合によっては薬を減らしたらかえって負担額が増える場合もある.第2にこのような計算方法や説明のための窓口での混乱が起こっている.確かにわが国の総医療費に占める薬剤費率を考えるとなんらかの対応が必要ではある.しかしその場合,患者さんに理解しやすい負担方法が望ましいのはもちろん,多少でも疾病の治療の妨げになる方法は問題である.医薬品の提供と一部負担の問題はなんらかの解決方法が急がれる.

フォーラム 医療保険制度改革と今後の病院医療 北海道私的病院協会主催「医療施設経営改善支援事業研修会」より・2

再び医療計画の意義を問う

著者: 池上直己

ページ範囲:P.1117 - P.1120

 北海道は,私にとって非常に思い出が深いところでして,ケアプランの1つのモデルとして提示しているMDS (高齢者ケアプラン)方式を,北海道で広範に検証する作業にかかわらせていただき,毎月のように札幌に来ておりました.
 今日は,広井さんの話を受けて,大きく動いている医療制度の改革の中で民間病院としてどのように対応するべきか,を中心にお話ししたいといます.

民間病院への三つの提言

著者: 竹内實

ページ範囲:P.1121 - P.1122

 台風のために来札できない井手さんに代わって,ピンチヒッターで10分ほど,来年に向けての各論を少しお示し,ディスカッションに加わらさせていただきます.
 ただ,井手さんからレジュメをいただいておりますので,そのさわりを私なりの理解でコメントしたいと思います.

連載 病院主導の保健・医療・福祉複合体の実証的研究・14

第6報 その2 私立医科大学の保健・医療・福祉複合体化はどこまで進んでいるか

著者: 二木立

ページ範囲:P.1123 - P.1128

(前号より続き)
6.他病院の経営委譲(買収・寄付)により開設された分院
 表6(11号,1037頁)からわかるように1951〜1996年の45年間に,私立医科大学病院の分院は9病院から43病院へと34病院も増加した.厳密にいえば,第二次大戦前から存在した分院で1951年以降廃止されたもの(本院への統合も含む)が2病院あるため,1951年以降開設された分院の総数は36病院となる.これら以外にも,1951年以降開設されたが1996年までに廃止された病院が五つあるが,一部経緯が不明なので,今回は検討から除外する.
 表8に示したように,これら36病院のうち,実に13病院(36.1%)が,他病院の経営委譲(買収・寄付)により開設された病院である.しかも,そのうち11病院が買収(国立病院の経営移管も含む)である.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第38回

設計競技の優秀作品にみる近未来の高齢者ケア施設像,他

著者: 小滝一正

ページ範囲:P.1145 - P.1151

はじめに
 社団法人日本医療福祉建築協会は1995年度に栄誉ある保健文化賞を受賞した.それを記念する事業として,近未来の高齢者ケア施設像のアイディアを求める設計競技を行った.事業の目的は,高齢者ケア施設の設計について建築家の構想を提示して世に問うこと,および自ら研鑽を深めて蓄積を重ねる機会にすることにあった.
 本年5月に作品提出を締め切り133点の応募を得た.審査委員会(委員長:小滝一正)による厳正な審査の結果,優秀賞5点および佳作4点が選定され,7月23日には表彰式と作品発表会が盛大に行われた.

病院管理フォーラム 診療情報管理はいま・5

診療録整理と貸し出し業務

著者: 五十嵐よしゑ ,   細川治

ページ範囲:P.1129 - P.1131

 高齢化社会に伴う医療政策の変革,医療技術の多様化,患者や医療への関心の高まり,情報システムの医療への導入と,われわれを取り巻く環境は大きく変化してきている.
 診療録管理においても時代に対応した変革が求められ,その現れとして1996年より診療録管理士が診療情報管理士と改称されたことは周知のとおりである.このことを踏まえて診療録管理の原点としての①診療録整理と貸し出し業務,②期待される診療情報活用,③登録業務の重要性と他病院との連携,④院内の病歴委員会の意義の4点について当院の現状を紹介して問題提起と今後の課題について考察したい.

広がる病院患者用図書館・9

患者図書サービス—8年の経験から

著者: 嶋大二郎

ページ範囲:P.1132 - P.1133

サービス開始の経緯
 入院の主目的は病気との闘いであるが,しかし現実には「(検査も治療も)何もしていない時間」との闘いも入院中の患者さんにとっては大きな問題である.現代では,ラジカセやベッドごとのテレビなどある程度ひまつぶしとしての手段はあるが,十分な知的満足を得られるものではない.社会生活から隔絶され,病気をみっめながらゆっくりとものを考えるには読書が理想的手段であるのに,患者さんが利用できる図書室がないのはおかしい,という素朴な疑問から構想された当院の患者図書サービスは発足から8年が過ぎた.
 経済的基盤や身近な手本,そして専門的知識1)など限られた条件での出発で,手探りによる準備であったが,次のような基本方針でとりかかった.①既存の栄養指導室壁面を借用して始める,②書籍は職員からの寄贈本で賄う,③一般患者用「オアシス文庫」と小児病棟用「エンジェル文庫」を別に設置する,④書籍の整理は図書委員が行い,カバー貼りは全職員が分担する,⑤蔵書維持のため,ひととおりの貸し出し手続きを行う,⑥主眼は入院患者とするが,利用者は制限しない.

経営管理・6

新たな日常性の構築「かわらなきゃ」—職種別損益計算の試み(6)

著者: 塩谷泰一

ページ範囲:P.1134 - P.1135

 前号まで,職種別損益計算の実際について述べてきた.最終回の今回は,病院経営健全化におけるその意義,職員に対する波及効果および問題点と今後の課題について述べる.

院内倫理委員会・9

徳島大学

著者: 井形高明

ページ範囲:P.1136 - P.1137

徳島大学医学部倫理委員会設置までの経緯
 徳島大学医学部は,産科婦人科学講座から申し出のあった「不妊治療における体外受精と胎芽移植法の導入」をきっかけに,医の倫理のあり方,医学研究の妥当性を倫理的,社会的観点から事前に審査する委員会として,昭和57年(1982)12月9日,全国医学部・医科大学では初めて独自の徳島大学医学部倫理委員会を設置した.
 同時に,徳島大学医学部倫理委員会規則を制定し,「人間を対象にした研究は独立した委員会で審査されなければならない」とする世界医師会のヘルシンキ宣言の趣旨に沿い,「徳島大学医学部,同附属病院に所属する研究者が行う,人間を対象とした医学研究及び医療行為において,倫理的配慮を図ること」を目的とした.

いま,小児専門病院・小児科部門の運営は・9

東京都立清瀬小児病院

著者: 川村猛

ページ範囲:P.1138 - P.1144

沿革
 1945年太平洋戦争終結当時,東京には7,000名の小児結核患者がおり,毎年1,300名が死亡する時代であった.結核への特効薬の欠如はもちろん,戦争による社会の疲弊や衛生行政の混乱の結果と思われるが,これに驚いた占領軍最高指令部(GHQ)は1948年4月東京都に対し,急いで小児結核療養所の設立をするよう指示を行った.これを受けた東京都は同年11月,都立病産院のアフターケア施設跡地を利用して,急遽小児結核患者を収容治療する「都立清瀬小児結核保養所」を開設した.
 東京都立清瀬小児病院の沿革はこの結核専門療養所に始まる.100床で開設したこの施設は1949年には開発後間もないストレプトマイシンの使用など本邦小児結核治療に指導的役割を果たし,1953年の最盛期には300床を擁するまでに発展して「都立清瀬小児結核療養所」に改名,さらに結核に対する外科治療が導入されるに至って1958年「東京都立清瀬小児病院」と再び改称された.小児病院の呼称は1965年本邦最初の国立小児病院に先立つこと実に7年であるが,小児総合病院とは異なり,その診療活動は依然として小児結核中心であった.

保健・医療・福祉政策ウォッチング

行政改革(省庁再編・地方分権)が病院にもたらす影響

著者: 病院問題研究会

ページ範囲:P.1152 - P.1153

はじめに
 橋本内閣の最重要課題である行政改革案がまとまりつつある.郵政3事業問題ばかりがマスコミをにぎわし,医療関係の話題があまり聞こえてこない行革であるが,病院関係に絞ってその影響を検討する.

データファイル

21世紀の国民医療—良質な医療と皆保険制度確保への指針・2/平成8年受療行動調査の概況(基本集計分)

ページ範囲:P.1154 - P.1160

第2薬価制度の改革〈基本的な考え方〉
 医療における薬剤の占める割合が高いことが指摘されている.これは薬価が高いことや,購入価格との間に薬価差が生じているため,薬剤使用量が増えていることなどが原因とされている.薬価差を原資とする医療経営から脱却し,技術中心の医療に変えていくため,現行薬価基準制度を廃止し,薬価差が生じない新たな仕組みとする.

医学ごよみ

12月—December 師走

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.1161 - P.1161

 5日 近代病理解剖学の父
 死体解剖の所見と生前の臨床症状の関係を調べ,近代病理解剖学の基礎をつくったモルガーニ(Giovanni B Morgagni,1682〜1771)が亡くなった日である.
 彼は19歳のとき,ボローニア(Bologna)大学で医学と哲学を修め,卒業後は有名なヴァルサルヴァ(Antonio M Valsalva,1666〜1723)のもとで解剖学を学んだ.

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「病院」 第56巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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