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雑誌目次

雑誌文献

病院56巻2号

1997年02月発行

雑誌目次

特集 病院職員の高齢化対策

労働者の高齢化対策

著者: 高田一夫

ページ範囲:P.114 - P.117

人口高齢化と人事管理
 人口高齢化は21世紀の世界的課題であることはいうまでもない.特に日本の高齢化の進展度は著しく,21世紀には高齢化の先端に躍り出る.老年人口割合,すなわち65歳以上人口の総人口に占める割合は日本が世界をリードすることになる.
 労働力の高齢化はこうした人口高齢化の露払いとして最初に出てくる.既に団塊の世代は50歳代にかかり労働力の中高年化が進んでいる.労働力が高齢化すると一般に,人件費の増大,ポスト不足による人事の硬直化,労働能力低下という三つの問題が出てくる.これらの問題は,人口高齢化が進むと自然に出てくるのではない.社会制度が介在して問題を作り出すのだ.

企業にみる従業員高齢化対策

著者: 坂本武弘

ページ範囲:P.118 - P.123

21世紀初頭には労働力人口の4人に1人が55歳以上の高齢者に
 わが国の人口の高齢化は世界に類をみないスピードで進み,21世紀初頭には世界的にみても極めて高齢者の比率の高い超高齢化社会となることが見込まれている.
 一方,労働力人口についても,21世紀初頭には約4人に1人が55歳以上の高齢者になることが見込まれている.すなわち,55歳以上人口の割合は1990年には20.2%であったが,2000年には30%に,60歳以上人口の割合は同様に11.5%から20%にそれぞれ増加すると推計されている(図1,表).

年金制度と病院

著者: 竹内實

ページ範囲:P.124 - P.128

 病院職員の高齢化対策にとって年金制度の充実は欠かせない課題である.ほぼ成熟したかにみえるわが国の年金制度は本格的高齢少子社会に突入し,大きな見直しを迫られている.社会保障給付費は年々増大を続け,この中に占める年金支出は図1に示すように増し続け,現在では30兆円を大きく超え,なんらかの対応がなければさらに大きな額へと増えることは必至である.

最近の医療職賃金体系と給与の動向

著者: 西中正久

ページ範囲:P.129 - P.133

 高齢化対策を主題とするなかでの最近の医療職給与の動向を述べるためには,賃金制度のみでなく高齢者の人事処遇から雇用面の領域までの関連づけが必要であり,またそれなくして解決できない課題であると考える.そうした背景を若干考慮しながら給与に関する現状と施策とについて述べることとする.

病院業務の多角化と職務を中心とした人事制度の確立

著者: 篠塚功

ページ範囲:P.134 - P.138

はじめに
 当財団では,既に65歳定年制を実施しているが,現在平均年齢31.8歳という組織であり,職員の高齢化という状況にはまだ至っていない.ただし,社会全体で少産少子化と高齢化が着実に進んでいることは事実であり,当財団においても職員の高齢化への準備は,長期的経営戦略としての大きな課題である.
 高齢化の問題点として特に挙げられるのは,ポスト不足による職員活性化の低下および賃金と生産性とが乖離する職員の増加であろう.ポストが不足し,重要な役割を中堅の世代に与えることができなければ,人を育てていく土壌を作ることができず,意欲のある人材を開発していくことがができない.また,現在の病院の賃金制度は,職能資格制度を導入しているところもあるが,国家公務員準拠型がほとんどである.いずれにせよ,どちらの制度も年功序列型には変わりなく,年齢とともに賃金が上がる日本的人事制度である.同じ仕事を続けていても賃金が上がるのであれば,生産した対価よりも賃金のほうが高くなる状況が訪れることは当然のことである.万が一,自病院の支払い能力も考えないで,人事院勧告に沿って賃上げをしている病院があるとすれば,高齢化に伴い人件費倒産をする危険を十分にはらんでいる.

病院職員の能力開発と職能給

著者: 伊藤明

ページ範囲:P.139 - P.141

はじめに
 当院で職能給制度を導入して,11年を過ぎようとしている.その間には様々な経緯がある.11年前というと1985年.まさに1981年より医療供給体制の見直しのための病床規制が始まって4年目に当たる年であった.医業経営のあり方が問われ始めた年でもある.
 当時,病院における職能給導入は珍しく,同時にその体系の確立にも苦労したことは記憶に新しいところである.また,現在でも制度運用の維持に苦慮していることも事実であり,11年という年月を経ても,制度の運用と定着(内容の見直しと高度化)にはたゆまぬ努力が要求されているのが現状である.

〔座談会〕病院経営と職員の高齢化対策

著者: 垣花勝治 ,   細木秀美 ,   賴本節雄 ,   井手義雄

ページ範囲:P.142 - P.150

 井手 今後の高齢化社会は日本において最も重大な問題で,厚生行政でも各種対策がなされています.同時に高齢化は病院経営に対しても重要な問題です.そこで,今回「病院経営と職員の高齢化対策」について座談会を開くことにいたしました.

グラフ

「できる病院,よい病院」を目指す武蔵野赤十字病院

ページ範囲:P.105 - P.110

■迎え,見送るナイチンゲール
 中央診療棟(一番館)の定礎の上でステンドグラスのナイチンゲール(前ページ)が患者を迎え入れる.これは病院のシンボルとして作られた.建築時,事務長からの「何を入れようか?」との相談に「ぜひナイチンゲールを」と答え実現させたのが増子ひさ江看護部長.長く病院紹介のリーフレットを飾っている.
 院内放送が9時の時報を報じ,診療開始のアナウンスをすると,患者の詰めかけた武蔵野赤十字病院内部は一斉に活気づく.広範な一次医療圏は武蔵野,三鷹,小金井の各市で50万人が対象.二次に田無,府中,保谷,調布の各市,三次では練馬,世田谷両区を含む.1995年のデータでは,許可病床717床,実働567床で伝染病床60床を除く507床を有する.平均在院日数15.9日(含む眼科,分娩),占床率98.3%,年間入院患者数11,909人,一日外来患者数2,147人である.

小児総合医療施設協議会会長を務める 国立小児病院病院長 秋山洋先生

著者: 土田嘉昭 ,   八木保

ページ範囲:P.112 - P.112

 秋山洋先生は昭和30年3月の慶應義塾大学医学部のご卒業である.同じ年の3月に東京大学医学部を卒業された先生方の中に同姓同名の秋山洋という先生がおられ,現在虎の門病院の病院長をお務めになっておられる.当然,お二人は同じ時に医師国家試験をお受けになられた.筆者が外科医になったばかりの頃,お二人は既に新進気鋭の外科医として大活躍をしておられた.それぞれのご専門は,ここでご紹介する秋山先生が先天性食道閉鎖症,現虎の門病院の秋山先生が食道癌であり,はじめのころは雑誌社が依頼原稿の送り先をよく間違えたという.
 お二人とも手術がお上手で,しかも,早い.学術雑誌へのご執筆はどんなに忙しくても確実にこなされる.そして,業務上の難問には,決して逃げたりしないで,正面から向かって努力をされ,解決に導かれる.それでいて,ソフトなムードを常に漂わせておられる.

主張

国民はなぜ医療に不満を持っているか

著者:

ページ範囲:P.113 - P.113

 日本の国民は医療に満足していないように思える.ここでその理由を考えてみたい.
 まず第一は,建前として求める平等志向と,本音として求める自由志向との間には大きなギャップがある.平等志向に従えば,医療費は所得の高い者ほど多く負担する累進税によって賄われ,受けるサービスは全員に平等に提供される制度が望ましいことになる.自由志向に従えば,税金や保険料はできるだけ少ないほうがよく,それでいて医療サービスの質はできるだけ高いほうがよいので,それを実現させるためには医療費のかかる人々を締め出した健康人だけの保険制度が望ましいことになる.

米国からのレポート

医療の質の向上/ヘルスケア・リスク・マネージメント—Harvard Medical Practice Studyより

著者: 中島和江

ページ範囲:P.151 - P.157

 Harvard Medical Practice Studyは,1986年から3年間にわたってニューヨーク州で行われた医療事故の疫学と医療訴訟に関する研究で,これまでに米国で行われたこの種の研究のうち最も大規模で包括的なものである.研究チームは,Harvard School of Pubilc Health,Harvard Medical SchoolおよびHarvard Law Schoolの医師,法律家,経済学者,統計学者など多くの専門家たちから成っている.ニューヨーク州議会および保健省,Robert Wood Johnson Foundation, Klin-genstein Fund Grant, Harvard Risk Management Foundationなどからの合計400万ドルにものぼる研究助成金によって,この膨大な調査は実施された1).この研究結果は,日本における医療の質,特に医療事故の原因と予防を考えるうえで大変示唆に富んでいると考えられる.

連載 病院主導の保健・医療・福祉複合体の実証的研究・4

第2報・その1 老人保健施設の「母体」とチェーン化の全国調査

著者: 二木立

ページ範囲:P.158 - P.162

はじめに—厚生省「老人保健施設調査」ではわからない二つのこと
 老人保健施設は1986年の老人保健法第一次改正で創設され,1988年度から本格的整備が始まった.その後急速に増加し続けており,1995年10月1日には,1195施設,入所定員10万3017人(本稿執筆時点の最新値は1996年5月末現在,1403施設,入所定員12万2548人)に達し,「新ゴールドプランの優等生」と呼ばれている.
 この老人保健施設の開設者や併設施設の状況は,厚生省『老人保健施設調査』から知ることができる.同調査には,施設の状況だけでなく,利用者の状況,利用料・老人保健施設療養費の状況も掲載されており,貴重である.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第28回

ヨーロッパの医療福祉施設

著者: 長澤泰

ページ範囲:P.178 - P.184

はじめに
 南欧のイタリアから,東欧のチェコ,ハンガリー,オーストリアを経て,北欧のフィンランドへと縦断的に医療福祉施設を見学する機会が得られた.東西の壁の崩壊,EUとしての統合といった大変動を経験しつつあるヨーロッパの医療福祉施設の現状の一端を紹介する.

厚生行政展望

座談会 1997—その1

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.163 - P.165

 菊池 昨年はいろいろな話題がありましたが,厚生省は幹部の不祥事,O157とエイズで振り回された1年でしたね.
 中森 エイズにしても,O157にしても,厚生省の基本的な危機管理体制が問われたと私は理解しています.

訪問看護ステーション 実践レポート—北から南から

利用者の「障害」の一つ一つを看護で援助—わかくさ老人訪問看護ステーション

著者: 金盛千代美

ページ範囲:P.166 - P.169

はじめに
 1993年7月,医療法人若弘会わかくさ老人訪問看護ステーション(以下,当ステーションと略)は大阪府東部の東大阪市に府下10番目,同市では初の訪問看護ステーション(当法人若草第一病院併設型)として開設認可を受けた.
 当法人では現在,府下に3か所の訪問看護ステーションを有し,1996年度より在宅事業部を統括部門とし,独立運営している.暗中模索での3年がたち,当ステーションの現状をまとめ,今後の在宅支援活動のあり方を検討する一助としたい.

病院管理フォーラム

[薬剤師の新たな業務]在宅医療への取り組み

著者: 池田由美子 ,   松原肇 ,   島田慈彦

ページ範囲:P.170 - P.171

 北里大学病院では1990年に総合相談部を設立し,保健婦を中心として月平均70件の在宅訪問を行っている.薬剤部でも1994年10月に保険診療報酬の改定を機に在宅医療委員会が発足し,8名のメンバーで活動を開始した.在宅訪問の他に在宅医療に関する文献検索,他施設の見学,勉強会も併せて行っている.

院内倫理委員会・2

厚生連佐久総合病院

著者: 松島松翠

ページ範囲:P.172 - P.173

委員会を設置するまでの経緯・背景
 昭和58年に,当時の若月院長(現総長)が病院玄関内に「患者の権利宣言」というのを出したのが,そもそも患者の人権ということを病院で取り上げた最初である.
 これは「患者さんの権利と責任」という表題になっており,ただ患者の権利のみならず,あわせて義務として病院から指示された療養について専心これを守ることを心掛けること,そして医師と協力して医療の効果を上げることの重要性を強調している(表1).

いま,小児専門病院・小児科部門の運営は・2

名古屋第一赤十字病院小児医療センター

著者: 杉藤徹志 ,   有吉允子 ,   服部龍夫

ページ範囲:P.174 - P.176

●沿革
 名古屋第一赤十字社病院は1937年(昭和12年)4月に,日本赤十字社愛知支部病院として101床をもって開設され,診療科は内科,外科,産婦人科,皮膚泌尿器科,眼科,耳鼻科と小児科の7科であった.その後幾多の変遷と,病院規模の拡大があったが,小児医療関係では,1980年にNICU (新生児集中治療室)を開設,1982年小児外科を開いた.折から,愛知県に小児専門病院の開設を求める運動が展開されていたが,諸般の事情から頓挫をみたため,その代替となるべき小児総合医療センターを当院に設置することとなり,愛知県の補助のもとに,1984年9月に,92床(小児内科:46,小児外科系:28,NICU・NCU:18)から成る小児医療センターが発足した.さらに1993年には,小児血液免疫センター(骨髄移植センター)34床,NICU 6床を加え,現在は130床から成っている.なお,病院全体の病床数は900床である.

病院の広報

大阪回生病院院内報「回生だより」/仙台赤十字病院広報誌「Red Crossせんだい」

著者: 久富義郎

ページ範囲:P.177 - P.177

 「この院内報によって,われわれは人間らしく,いきいきと働くことができるだろう.病院全体が一大家族のように成った時,われわれの日々の努力の積み重ねは病院の使命達成に絶大な寄与となるだろう.」1983年4月1日の創刊号に故菊池二郎院長が寄せられた言葉である.伝統ある組織にありがちな風通しの悪さを払拭するための一つの方法として院内報が選択された.
 当初は季刊の予定であったが,現在は不定期刊行物化しているものの,31号まで発行済み.A4版10ページ前後の新聞の体裁とし,1ページ当たり約1万円の費用をかけ,毎号800部を発行している.

データファイル

平成7年医療施設調査・病院報告の概況—2.病院報告

ページ範囲:P.185 - P.190

1.患者数
 病院における1995年の在院患者延べ数は509,960,358人で前年に比べ1,103,370人(0.2%)増加している.
 新入院患者数は11,539,295人で357,605人(3.2%),退院患者数は11,532,811人で358,991人(3.2%),外来患者延べ数は646,202,674人で10,379,089人(1.6%)と前年に比べそれぞれ増加している.

平成7年度老人保健施設調査の概況

ページ範囲:P.190 - P.190

 調査対象 1)平成7年10月1日午前零時現在,老人保健法に基づき開設の許可を受けているすべての老人保健施設,2)平成7年9月中の老健施設利用者を対象,通所者・退所者については全数,在所者については1/2が客体.

医学ごよみ

2月—February 如月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.191 - P.191

 11日 フロイト亡命の救助者
 この日の花は「ぶな」で花言葉は「繁栄」である.この建国記念日には,有名なエジソン(Thomas A Edis-on,1847〜1931)が生まれた日である.
 医学の歴史では精神科の先生方にはよく知られているジョーンズ(Er-nest A Jones,1879〜1958)の亡くなった日である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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