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雑誌目次

雑誌文献

病院56巻3号

1997年03月発行

雑誌目次

特集 病院におけるマルチメディア

〔鼎談〕病院におけるマルチメディア

著者: 高田彰 ,   巻渕隆夫 ,   開原成允

ページ範囲:P.210 - P.216

マルチメディアの発展
 開原 まず,マルチメディアとは何を意味するのか,ということですが,その定義は意外に難しく,人によって考えているイメージが少しずつ食い違っているようです.ですから,ことばの定義を議論してもあまり意味がないと思いますので,差し当たり「映像と音とコンピュータが一体になった技術」と申し上げておき,実例のなかで,マルチメディアは何かということを考えていただくことにします.
 筑波大学の高田先生は,大学病院におられますので.教育病院でのご経験を中心にお話しいただきたいと思います.また,国立療養所犀潟病院の巻渕先生は,国立病院,それも都会から離れた病院でマルチメディア技術をうまく使っておられます.マルチメディア技術は大学病院などのように大病院のものだと思われがちですが,やる気さえあればどんな病院でもおもしろい使い方ができることなどを,お話しいただけるかと思います.

診療支援とマルチメディア

著者: 山本隆一

ページ範囲:P.217 - P.220

 医療の情報化は最初は事務的な手続きの合理化と効率化のための,レセプトコンピュータから始まつた.現在,整備が進められているオーダリングシステムは診療現場に情報端末が持ち込まれたという点で,レセプトコンピュータより進歩しているが,その基本機能は事務的な手続きの合理化,省力化にとどまっている.事務手続きを合理化することによつて,本来の診療行為にさける時間や労力を増加させる効果があるかも知れないが,直接的な診療支援がその機能の本質的なものではない.
 しかし,診療現場にコンピュータが持ち込まれた点は,診療支援を考える上で一つのターニングポイントとみることもできる.オーダリングシステムは一応の成果を上げており,持ち込まれたコンピュータ,つまり,情報端末は機能的には変化しても今後も置かれ続けるであろう.情報端末といっても昨今は高機能のコンピュータそのものであり,種々の用途に用いることが可能である.

病院運営管理の支援とマルチメディア

著者: 大江和彦 ,   松下正明

ページ範囲:P.221 - P.224

 病院に限らずある程度の規模以上の機構を運営していくには,機構の内部の様々な動きに関する情報,機構が置かれている外界環境の変動に関する情報,機構が置かれている外界での位置情報の三つが必要である.またこれらの情報は新しくなければ意味を持たない.さらに,必要十分な情報を必要なときにはいつでも入手できなければならない.そして,運営管理する人が分析しやすく,問題点を見落とすことのない方法で提示されることも重要である.例えば自動車の運転でも,ドライバーは燃料計,速度計,温度計,その他の多くの計器表示により自動車内部の稼働状況を把握し,フロントウインドウやサイドミラーなどから視覚情報とラジオからの渋滞情報や天気予報などにより外界環境の変動情報を入手し,カーナビゲーションシステムで自分の地図上の位置を確認しながら運転する.これらの情報はいつでも必要なときに最小限の労力で入手できるように運転席は設計されており,当然ながらリアルタイム情報が提示されている.速度オーバーや燃料切れなど重要な異常情報はアラーム音など別のメディアでドライバーに訴えるようになっている反面,トランクの中の荷物がどうなっているかといった運転に無関係な情報は提示されない.

教育・研修の支援

著者: 上田智 ,   格和勝利 ,   藤原佳代

ページ範囲:P.225 - P.227

 教育の目的は,良識ある市民を育成することにある.オスラー(W.Osler)は約100年前にscience (科学),art (技術),humanity (人間性)のいずれにもすぐれた人材が社会に求められていると記されており,大学の機能として,オスラーは立派な大学には二つの機能があると述べている.それは教えることと考えることであるとし,殊に後者の考えることに重点がおかれた様子がうかがえる.オスラーは学生に対して,研究する態度を学びとらせるために,高学年の学生には,それぞれ自ら選ぶテーマで研究させて論文を書かせたりしていた.そしてその論文は学会誌に投稿させていた.
 このように,オスラーは学生に勉学の動機づけと自ら学ぶ心を起こさせ,やろうという活力を学生の心の中に芽生えさせることが教育の神髄であると考えていたようである.

地域・患者への情報公開—インターネットによる医療機関の情報提供

著者: 池田俊也

ページ範囲:P.228 - P.231

 インターネットとは,複数のコンピュータを共通のプロトコル(インターネットプロトコル)により接続し,相互に通信を行うものである.技術的に比較的シンプルであることから,多くのコンピュータ・プラットホームや基本言語(OS)上で利用することが可能であり,接続のための方法も公衆電話回線や専用線など,予算や状況に応じて様々な形態を選択することができる.
 インターネットに関する研究は1960年代に米国において開始され,1970年代には国防総省高等研究局(Advanced Research Projects Agency:ARPA)によるネットワークARPAnetが構築された.さらに本技術を基にした学術目的のネットワーク(NSFnet)の構築が行われ,米国各地の大学がこぞって接続を行つた.この後,世界的に回線の接続が進むとともに,学術利用のみならず商業利用も進んできた.また,個人での接続も急増し,米国カリフォルニア州ではインターネット利用世帯が8%に達したと報告されている1).わが国でもインターネットの利用者は加速度的に伸びており,郵政省が公表した1995年の通信利用動向調査によれば,わが国の従業員2,000人以上の大企業のうち34.3%がインターネットを利用しているという(1)

地域・患者への情報公開—マルチメディアを活用したインフォームドコンセントとインターネット上での情報提示

著者: 大泉太郎 ,   大平貴之 ,   河瀬斌

ページ範囲:P.232 - P.234

 最近のコンピュータの性能向上は目覚ましいものがあり,周辺機器やソフトウェアの進歩とともに,フルカラーの動画や画像,文字,音声,音楽などの情報を統合し,デジタル処理を用い,リアルタイムでインタラクティブ(双方向的)に表現できるようになってきた.
 そこで実際の医療現場で,患者や家族へ公平でわかりやすい情報の説明を簡便に行うため,脳神経外科検査のマルチメディアを活用したインフオームドコンセント(以下IC)1),それらの情報のインターネット上での提示2)やアンケート3)を行ってきたので紹介する.

マルチメディアによるネットワーク化—国立がんセンターにおける情報ネットワークシステム

著者: 水島洋

ページ範囲:P.236 - P.237

インターネット上への情報提供
 国立がんセンターでは1993年2月よりgopherで情報提供を開始し,同年12月からはWWWでもサービスを開始した.1996年3月からはがんセンターとして公式な情報提供も行う体制を作り,がんセンターの各部署からの情報に加え,「がん情報サービス」(NCC-CIS:National Cancer Center Information Sys-tem)として,患者向け,専門家向けにがんに関する情報を提供している.現在,がんを防ぐための12か条,各種がんの解説,症状緩和と患者のケア,病院案内,講演会案内などが提供されている.
 NCC-CISの情報は,国立がんセンター情報委員会の監修のもと,がん診療総合支援システム総括班学術情報小班が企画し,がんセンター内の専門家に執筆依頼をして作成している.個人レベルや医局レベルのホームページ立ち上げや情報サービスの例はあるが,NCC-CISのように組織として十分な審査を受け認可された形での公開はわが国においては例のないものと考える.

マルチメディアによるネットワーク化—妊婦の在宅管理

著者: 名取道也 ,   北川道弘

ページ範囲:P.238 - P.239

 20世紀末を迎えるに当たり,高齢化に次いで少産,少子が社会のキーワードになっている.ここ数年合計特殊出生率は1.5以下となり,この原因としては女性の晩婚化や社会進出などの問題が挙げられ議論を呼んでいる.このような社会情勢の中で,医療に関する問題は介護との関係,医療費の削減,効率的運用,患者のアメニティなどが検討するべき項目として挙げられているが,一方医療の高度化とそれに伴う医療資源の大都市への集中,専門医の持っている医療技術や知識などの集中(地域格差)も考慮するべき問題として挙げられている.
 これらの問題点の解決の一つの方法として,電子的情報伝達手段の進歩を踏まえた在宅医療が検討されている.現在,在宅医療の対象として考えられている分野は,老人医療など長期にわたる医療の対象者もしくは介護的医療の対象者である.しかしわれわれは在宅医療の対象として妊婦にもそのニードがあるのではないかと考え,最近妊婦の定期検診を自宅で行うことについて試行を開始した.なおこのトライアルは1996年電源地域遠隔医療コンサルティングに関する調査事業の一環として財団法人ハイビジョン普及支援センターの事業として行われているものである.

マルチメディアによるネットワーク化—遠隔診療支援のための画像通信

著者: 名取博 ,   猪股英俊 ,   三谷正信 ,   白松文彦 ,   高畠博嗣 ,   辰口治樹 ,   森雅樹 ,   米倉修二 ,   平田健一郎

ページ範囲:P.240 - P.243

 離島・僻地の医療の確保は地域保健医療計画の重要な課題となっている.医師は地域医療計画の医療圏における所属医療機関の役割分担を判断し,かつ常に進歩する医療のレベルをとらえて医療機関の機能を整備する管理者としてばかりでなく,外へ出て地域での活動をも求められる.このような状況にあって,離島・僻地の医師にとって日夜絶えることのない重要な業務は,多くの制約の中で地域に発生した個々の患者に適切に対処することである.従来は診療に困難を伴う症例の診療連携は医師間の紹介ルートに沿って手紙,電話,ファクシミリなどで行われてきた.マルチメディアによる医師間の双方向性の情報伝達は,診療連携のためのツールとして,その有効性に多くの期待が寄せられ,施行のみならず実地運用が行われている一方で,全国的にみれば導入されたシステムが忘れ去られていたり,会議システムの機能が用いられずに単なる読影サービスのツールとなっている場合もある.北海道の離島・僻地に公的に導入された医用画像通信を含めたマルチメディアによる遠隔診療支援ネットワーク整備の運用過程の経験と,遠隔症例検討および遠隔講義のツールとして医学部の臨床実習カリキュラムに取り込んだ結果を検討し,今後の方向について展望する.

医療情報システムとマルチメディア—仮想空間の医療への利用

著者: 小山博史

ページ範囲:P.244 - P.247

 21世紀の社会システムの変革は「データのデジタル化,デジタルデータからの情報の構築,情報流通を加速化させるネットワークの拡大」の3点に象徴される.このような時代の変革に伴つて医療社会もシステム化によるリエンジニアリング(メディカル・リエンジニアリング)の時代に突入している.社会情報のデジタル化やパーソナルコンピュータの低価格化およびネットワークの普及は自然に診療情報や病院情報,医療情報のデジタル化を加速している.
 加速化された診療情報のデジタル化は医療連携のあり方を既成の医局中心縦型病院間連携の形態から互いの目的に応じた水平型病院間連携の形態に変えつつある(テレメディスン).また,医療社会のデジタル化は,患者間の医療情報伝達取得手段として今まで主流であった「聞き込み・噂型」から欧米のように時空間的な制約の少ない「電子メールフォーラム型」に広がりつつある.さらに,信頼のおける医師情報や治療情報など,患者に不可欠な情報が海外からも簡単に入手できる時代になりつつある.より正確な医療情報をもとに患者自身が自らの決断を行うことを支援できるようになりつつある(インフォメーション・テラピー).

医療情報システムとマルチメディア

著者: 上田博三

ページ範囲:P.247 - P.249

 厚生省においては医療のシステム化,情報化を従来より進めてきたが,少子高齢社会を控え,医療の質と患者サービスを向上させ,厳しい医療財政の中で医療の効率化を進める手段として情報化の活用に注目している.また,近年におけるマルチメディアおよびネットワークなどの技術と情報通信インフラ整備の進展は著しく,医療は教育分野,娯楽と並んで高度情報通信社会における有力なコンテンツとして注目されている.
 わが国の今日までの医療情報システムは医事会計システムから始まったという経緯から,ややもすれば,それぞれの医療機関において独立して発展してきたが,昨今の状況は本格的なネットワーク時代の黎明期と捉えなくてはならない.これからのネットワーク時代においては,診療情報こそが様々な医療情報の最上流にあるものであり,その具体的な形となる電子カルテの実現こそが,医療機関内(intra-facility)の統合的なネットワークづくりの原点となると考えられる.

グラフ

日本で初の医療大学付属病院が開院—茨城県立医療大学附属病院

ページ範囲:P.201 - P.206

 JR常磐線で上野駅から列車で約70分,荒川沖駅で下車し車で約15分.阿見町役場の近くに,わが国初の医療大学付属病院,茨城県立医療大学附属病院が昨年12月に開院した.

1996年度朝日社会福祉賞を受賞 ホスピスケア研究会代表 季羽倭文子さん

著者: 笠原嘉子 ,   八木保

ページ範囲:P.208 - P.208

 どなたもほっとやすらぎを覚える笑顔の持ち主の先生は,日本大学医学部付属看護学院で教務主任として看護教育に携わり,その間に二度イギリスに留学され,エディンバラ大学看護管理コースを修了されております.
 留学中は訪問看護とホスピスについて学ばれ,帰国後,日本大学板橋病院で訪問看護をお一人で始められました.

主張

患者さんを中心とした病院経営へ

著者:

ページ範囲:P.209 - P.209

 病院を取り巻く経営の環境の変化であるが,この1年間で180度転換したといっても過言ではないであろう.将来の高齢化社会を見据えた対応としての行財政改革の論議は,国民医療費の大幅な削減が必要とされているし,薬害エイズ事件,また厚生官僚の不祥事は,国民の医療に対する不信を急速に増幅させてしまった.本年5月より実施される予定の医療保険改革の第1弾は,医療を受ける側においてもまた医療を提供する側においても経済的また経営的な負担となることは間違いないであろう.また,近年の高齢化社会に対応した社会保険診療報酬による政策的な誘導は,地域における個々の医療機関の機能別確立を促し,方向転換が不可能となってしまっている.このような環境下における病院は,今後ますます厳しい経営を強いられるであろう.
 今後の病院経営のポイントは,古くからいわれているごとく「患者さん中心の病院経営」をいかに組み立てるかである.単純明瞭なポイントであるが,これを実践的に検討している病院は以外と少ないのが現状である.このような経営の概念は,一般企業においても「顧客指導型の経営」として積極的に検討されており,わが国経済の成長過程をみれば明らかである.第二次世界大戦後のわが国の経済は,需要が供給を上回り,企業としては生産性の向上が大きな課題であった.

連載 病院主導の保健・医療・福祉複合体の実証的研究・5

第2報 その2 老人保健施設の「母体」とチェーン化の全国調査

著者: 二木立

ページ範囲:P.250 - P.256

〔前号より続く〕
筆者の調査結果
1.老人保健施設の「母体」
1)老人保健施設の「母体」の全体像
 表5は,筆者の調査により明らかになった老人保健施設の「母体」を,開設者別に示したものである(1995年12月末現在.以下,断りのない限り同じ).これは本稿でもっとも重要な表である.なお,表1(1995年10月1日現在,2号160頁参照)と異なり,開設者は「大分類」ではなく,「小分類」で示している.そのために,表1と異なり,「社会福祉法人」には済生会を含まない.
 調査方法の項で述べたように,老人保健施設の「母体」は,①病院,②診療所,③医師会,④特別養護老人ホーム,⑤その他の社会福祉施設の五つに分け,①〜③の合計を医療機関「母体」とみなした.公立施設を含んだ全施設でみると,もっとも多い「母体」は病院で全体の68.6%である.これは,厚生省調査による病院「併設」割合48.9%(表2.ただし,1995年10月1日割合,2号161頁)より,19.7%ポイントも高い.診療所「母体」の割合も20.1%であり,厚生省調査による診療所「併設」割合13.5%より,6.6%ポイント高い.両者に医師会「母体」を加えた,医療機関「母体」小計の割合は,実に89.5%にも達する.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第29回

けいゆう病院

著者: 中岡覚

ページ範囲:P.274 - P.279

設計の基本方針と3つのテーマ
 国際的な新都市構想のみなとみらい(以下MM)21地区にふさわしい,21世紀を展望する総合病院を実現するために「アメニティ」,「ホスピタリティ」,「インターナショナリティ」という三つのテーマを設定し計画を進めた.三つのテーマを実現する上で,病院計画上の重要課題である病院機能の追求だけではなく,建築計画上,新たな時代認識や視点の追求が重要であるという認識のもとに計画を展開した(図1).
 現代人は,現代社会のテクノストレス,仕事,人間関係,あるいは生活上の様々なストレスを抱えていると考えられる.特にMM 21地区は,時代の最先端技術,情報の集積の場となることが計画されており,また,本計画もインテリジェント化を目指しており,ストレスの開放は今や患者やスタッフなどの院内のすべての人々にとって,建築計画上の根本的で重要な課題の一つとなっている.

病院管理フォーラム

[薬剤師の新たな業務]米国における臨床薬学—薬剤使用評価(DUE)を中心に

著者: 町田充 ,   厚田幸一郎 ,   島田慈彦

ページ範囲:P.257 - P.259

 クリニカルファーマシーは,1960年代に米国西海岸を中心に始まり全米に広がつた.その後,医薬品を物ではなく治療薬ととらえ,薬剤師がもっと薬物療法にかかわるべきだと考え,ファーマシューティカルケアと変化を遂げ,現在に至っている.日本でも臨床薬剤業務が実践されて約20数年近く経過し,臨床での位置づけ,その功績については多くの文献に紹介されている.
 しかし,これまで薬剤師による適正使用の推進は個々の薬剤師の持つ知識と実践力にたよるものが多く,病院薬剤師としてあるいは病院として取り組まれることはほとんどなかつた.米国では1980年代からクリニカルファーマシー(以下CP)が実践に移され,薬剤部として多くの適正使用を推進するためのプログラムが実行されてきた.例えば,ファマコキネティックスサービス部門の設置,薬事委員会活動,院内医薬品集の作成などである.薬剤使用評価(DUE:drug use evaluation)もこうしたプログラムの一つであり,米国の病院では規模によらず90%以上が実施しているものである.

院内倫理委員会・3

富山県立中央病院

著者: 舘野政也

ページ範囲:P.260 - P.261

 患者家族に詳細な情報を提供し,理解していただき,検査治療に対する選択と同意を得てはじめて医療が提供できる.
 インフォームドコンセントは今に始まったことではないが,確実にこのことを行ってから医療行為がなされるべきである.

癒しの環境

聞かれたくない

著者: 冨田信也

ページ範囲:P.262 - P.263

プライバシーと施設のリニューアル
 私たちの病院では建物の躯体構造だけを残して電気水道の配管など,他の設備を含めて全面的に新しくするリニューアル工事に取り組んでいる.この工事は平成5年(1993)度末から取り組み,平成10年6月末の竣工を目指して進めている.
 リニューアル工事では,旧施設の設備や環境内容の見直しがなされ,重要な視点の一つに患者のプライバシーを確保するという考え方が取り入れられている.英語のプライバシー(privacy)という言葉に置き換える適切な日本語が見当たらないので,私たちは新しい概念を片仮名でプライバシーといっている.このプライバシーとは,他人から聞かれないこと,干渉されないこと,秘密にしておきたいことなどがその意味を構成している.私たちはプライバシーという概念を生活に密着してはよくわからないままに取り入れたところがあり,その侵害についてはむしろ無頓着であったのではないだろうか.

「医療施設近代化施設整備事業」による病院の建て替え

松江生協リハビリテーション病院

著者: 善塔元和

ページ範囲:P.264 - P.265

 1996年3月1日松江生協リハビリテーション病院は,3,000坪の敷地に,山陰初の完全型療養型病床群の185床をもってオープンした.スプリンクラー設置義務に迫られていた旧病院から制限時間いっぱいのところでの全面新築移転だった.
 2月18日には雪の降る中,同病院を会場に松江保健生協健康まつりが開かれ7,000人の参加者で大盛況となった.このにぎわいは組合員,住民の大きな期待の現れであり,その源は1950年にさかのぼる.

厚生行政展望

座談会 1997—その2

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.266 - P.269

保険医定年制
 小泉 医療保険の改革に向けて,具体的にはどうしようとしているのですか.
 中森 医療保険の改革の現在の議論は,1997年度に赤字を解消するために何とかしなければいけないという短期の議論と,大ぶろしきを広げた長期の議論とが並行して進んでいます.

病院の広報

那覇市立病院院内広報誌 院内だより「甍 いらか」/函館中央病院院内広報誌「ふれあい」

著者: 与儀実津夫

ページ範囲:P.270 - P.270

 本院は17年前(1980年)に創立されましたが,その6年後の1986年12月に「院内だより」第1号が院内広報誌として創刊されました.創刊号は,医師,看護婦,技師,事務職員など5人の有志がその編集に当たり,以来毎月1回のペースでこの10年間継続して発行され,昨年,1996年11月で,第119号を送り出すことができました.
 当初の編集方針は,470床,17の診療科を有する那覇市立病院を支える500人の職員の人事往来,クラブ・サークル活動,自由意見の発表など,コミュニケーションの場にするということに置かれました.

いま,小児専門病院・小児科部門の運営は・3

医療法人真美会中野こども病院

著者: 中野博光

ページ範囲:P.271 - P.273

設置までの経緯
 昭和31年(1956)4月無床の中野小児科医院開設.昭和34年19床の有床診療所となる.地域住民の強い要望で,昭和41年10月中野こども病院創設.病床数30床.昭和44年40床に増床.昭和46年第2期工事完了.病床数73床.昭和52年医療法人真美会設立.昭和55年3月第3期工事.病床数90床となる.昭和60年日本小児科学会認定医制度発足と同時に研修施設に認定される.
 昭和63年4月病院向かい側に鉄筋3階建ての会館アリスの国(司馬遼太郎先生命名)新設.その建物の中に病院創立時より運営されてきた児童心理室を拡充させ,中野こども病院附属臨床児童心理研究所として移転.そのほか保育所,病児保育室,多目的ホール(視聴覚教室,健康教室,小児エアロビクス)として活用している.平成8年(1996)10月病院創立30周年を迎えた.

医療の質の評価と改善 組織・運営・戦略におけるトータル・クォリティー・6

組織運営の品質

著者: 今中雄一

ページ範囲:P.280 - P.282

経営品質賞の重要性
 医療の質と効率の向上を継続してくためには,病院にその技術と文化が根づいていなければならない.その組織運営あるいは経営を評価する枠組みを本論のテーマとする.
 わが国の品質に関する褒賞制度では,有名なものは伝統あるデミング賞である.同賞の枠組みやモデルは日本の産業のものづくりの品質を押し上げ,国際社会の中で日本製品を安いが劣悪というイメージから高い品質といつたイメージに押し上げていった一つの推進力となった.しかし,現在の経営環境からすれば,どちらかというと同賞の評価の枠組みはものづくりの過程に焦点が絞られ,実際に経営状態に反映しない例が存在したり,組織体全体の経営・運営の品質をみるにはふさわしくないという指摘がなされだした.こういつた背景のもと,日本経営品質賞が設立され,経営すなわち組織運営の品質について,それを向上する枠組み,評価する一つの枠組みが呈示された.ちなみにその発展過程では顧客価値経営賞と名付けられていた.

訪問看護ステーション 実践レポート—北から南から

24時間,365日を目指す—ヘイセイ訪問看護ステーション

著者: 後藤頼子 ,   高尾武男

ページ範囲:P.283 - P.286

 医療法人全仁会は1988年に倉敷平成病院を開設し,現在では医療に続き,予防・福祉へと施設を創り全仁会グループとして,地域に根づいたトータルヘルスケアをめざしている(表2).

医学ごよみ

3月—March 彌生

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.287 - P.287

□4日 解体新書誕生のきっかけ
 明和8年(1771)のこの日に江戸の千住,小塚原(骨ケ原)の刑場で青茶婆のあだ名で知られた悪女が処刑され,そのとき「腑分け」(解剖)の施行予定があった.町奉行の曲淵甲斐守の家臣から親切な申し出があり,前野良沢,杉田玄白と中川淳庵の3人の医師が,その腑分けを見にいった.
 そのとき,良沢は懐中から大切な一冊の蘭学書を出し,「これはターヘル・アナトミアというオランダの書物であり,長崎へ行ったときに購入した」と話した.玄白も淳庵の紹介で同じ本を手に入れており,その日に持ってきていた.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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