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雑誌目次

雑誌文献

病院56巻5号

1997年05月発行

雑誌目次

特集 病院機能評価の動向と将来

〔座談会〕病院をどう評価するか

著者: 丸木一成 ,   岩﨑榮 ,   鈴木久雄 ,   加藤良夫

ページ範囲:P.402 - P.409

 岩﨑 「病院をどう評価するか」ということで,それぞれの業界では機能評価機構にどんなことを期待しているのかいろいろとお話をうかがいたいと思います.
 特に病院を利用する患者さん,または患者さんになり得る方たちだけではなく,周辺の家族の方たちも含め,病院の評価に対する期待は高いと思います.しかし,一般の方々が期待しておられるのは,この病院がよい病院か,悪い病院かというランクづけのようなものなのではないかという気がしています.

日本医療機能評価機構本格稼働

著者: 大道久

ページ範囲:P.410 - P.414

 平成7年(1995)7月に設立された日本医療機能評価機構が,当初の予定のとおり平成9年(1997)から病院機能評価事業を本格的に開始した.これまで140余の多様な病院に運用調査という試行を依頼して,ようやく実運用に耐える評価方法と手順が確立したことと,この事業の要となる第三者の立場の評価調査者(サーベイヤー)も250人余が養成され,運用調査における評価作業の経験を経て,おおむね運用体制が整ったからである.
 初年度の病院機能評価事業は240病院の評価を受け入れることが計画され,4半期ごとに60病院の実施が予定されている.申し込みは随時受け付けており,既に第1期実施分の病院に対する説明会を終えている.手続きの周知期間が短かったことや,病院が平成9年度の事業予算の編成を終えていたことなどもあって,申し込み数は予定の半数程度であった.

病院機能評価と医師

著者: 瀬戸山元一

ページ範囲:P.415 - P.420

 医療機能評価機構による病院の機能評価が今年から開始される.総論としての病院機能評価については賛成する立場にあるが,各論として評価結果の取り扱いや評価方法,評価者の質の確保など数々の問題を抱えていることも事実である.病院機能評価として,診療のインフラ整備が重要であることにはだれもが異論のないところであり,医療人,特に医師についての適正な評価は,最も重要であると考える.そこで,「病院機能評価と医師」について持論を展開する.
 まず一診療例を紹介し,医師評価について問題提起をする.

診療の質の保証と評価手法

著者: 今中雄一

ページ範囲:P.421 - P.425

病院機能評価
 今日,わが国でいうところの病院機能評価は,地域での病院の役割機能に則って,質的機能の質を保証する病院の医療提供体制を評価するものである.医療の質そのものや診療そのものをみているわけではなく,むしろ,組織運営を評価するといったほうが現状を表している(表1).(財)医療機能評価機構の評価項目(1997年版,ver 2.0)では,診療部門の評価対象は表2のような章建てになっている.
 医師が自分の専門外の診療領域を詳細に評価するのは困難であるが,診療の質を保証する体制をみることならば可能であり,病院機能評価では,主として質を確保するためのインフラストラクチュア,組織の構造や運営形態を評価することが主体といえる.もちろん,まだ未成熟な段階ではあるが医療提供のプロセスについても迫ることを目指している.

精神科医療における機能評価

著者: 伊藤弘人

ページ範囲:P.426 - P.428

 日本における精神科病院は,精神科医療の質改善活動を自ら開始している.日本精神病院協会では,精神病院自己評価マニュアルやピア・レビュー活動などを通して,精神科医療機能評価を積極的に行ってきた1〜3).これらの経験と蓄積は,財団法人日本医療機能評価機構(以下,機構とする)の精神科病院版調査票の作成に生かされ,機構における精神科病院の医療機能評価事業が今年度から開始される.
 精神科病院版調査票の評価項目は,日本精神病院協会の病院管理委員会のメンバーが中心となって作成してきた.主に精神科病院の経験者が,自らその質を改善するために検討を重ねて結実したものが機構の評価項目なのである.改善動機が病院自らにあるという点で,行政主導で行われてきた日本の精神科医療の質の管理形態の歴史で,画期的な変化であるということができる4)

医療の質の経済的効果

著者: 広井良典

ページ範囲:P.429 - P.432

「医療の質」をめぐる様々な動き
 「医療の質」に関する政策や活動が様々なレベルで動き始めている.本誌で詳しく紹介されているように,日本医療機能評価機構は病院の機能評価事業を平成9(1997)年度から本格実施することとなっており,また,より個々の医療技術に即したレベルでは,昨年12月,厚生省健康政策局に「医療技術評価の在り方に関する検討会」が設置され,いわゆるテクノロジー・アセスメントをめぐる課題についての検討が,初めて国レベルで本格的に開始されることとなった.一方,より医療保険に近い場面では,薬剤の処方ガイドラインや医薬品の保険収載に当たっての経済評価に関する議論が活発化している.
 目を転ずると,医薬品の安全性のチェック体制強化などの観点から厚生省薬務局の再編が本年7月に実施予定となっているほか,4月にはこれまでの厚生科学会議が「厚生科学審議会」に発展改組され,研究段階から臨床までを含めて,厚生科学技術政策ないし「医療技術政策」についての本格的な政策論議がスタートすることになる.加えて,エイズ堝やO157事件なども踏まえ,今年の厚生白書は衛生行政ないし医療政策の再構築を主テーマに掲げて作成が進められているときく.

医療評価活動の国際的動向

著者: 橋本廸生

ページ範囲:P.433 - P.436

 医療評価活動といっても国際的にみた場合,その取り組みは様々である.国々の社会経済的状況,社会保障制度全体の枠組み,医療供給体制や医学教育のありよう,いわゆる医療文化風土,これらが異なれば評価というデリケートな問題への対応が様々であることは当然といえよう.
 製造業では品質大国と自他ともに認めるわが国でも,こと対人サービスの分野での品質管理の立ち遅れは従来より明らかであった.医療の評価はサービス自体の特異性もあり,関係者間での合意の形成に時間を要してきた.厚生省と日本医師会の自己評価方式による「病院機能評価マニュアル」から,医療の質に関する研究会による「第三者評価方式の実地適用」など,およそ10年の様々な努力を経て,1995年夏に公益法人としての第三者評価組織である財団法人日本医療機能評価機構が設立された.現時点での活動は,実質2年弱のfeasibility studyの経験をふまえて1997年4月より本事業に入った段階である.第三者評価事業の稼働のための一定の必要事項は整備できているものと思われるが,研究開発の方向やその体制構築,サーベイヤー組織のあり方,等々残された取り組むべき課題も多い.

グラフ

意識、組織の改革でますます心地よくなる県立広島病院

ページ範囲:P.393 - P.398

■既に将来構想が発動
 チンチン電車は,宇品線で県病院前下車すれば,1996年7月6日に新装成った県立広島病院の1辺約30mの直角2等辺三角形のアトリウムが迎えてくれる.1日外来1,600名,病床数は同所での地下1階地上4階建て時代の630床から地下2階地上8階建て755床に,診療科目も総合診療科,神経内科,救命集中治療科,新生児科を加え29科となった.
 県都にあって2.5万m2の敷地で,1床当たり50m2から63m2に拡大し最大4床室までとし,救命救急センター,母子総合医療センター,腎臓総合医療センター,地域医療支援センター,健康推進センターの新しい機能を存分に発揮している.

第38回日本人間ドック学会学会長 広島原爆障害対策協議会健康管理・増進センター所長 伊藤千賀子先生

著者: 佐々木英夫 ,   八木保

ページ範囲:P.400 - P.400

 現在は「女性の時代」といわれて久しいが,伊藤千賀子先生こそまさにその名称にふさわしい活躍ぶりといえる.糖尿病はわが国においても生活の西欧化に伴って急増しているが,その自然史についての明確なデータはなかった.しかし,約2万人の集団を最長30年にわたって追跡した独自の疫学調査によって,糖尿病は家族歴のない人でも発症しうること,生活様式によってその発症が左右されること,またそれは予知可能であることなど種々の重要な知見を得,わが国の糖尿病の実態を表す貴重な研究であると世界各国から注目されている.
 このような成果は決して一朝一夕の努力ではなく,1966年に原爆被爆者の健康管理に携わる現在の職務に就かれて以来,黙々と築き上げてこられたものである.その原動力は,と問うと「女性でもきちんとした研究ができることを示したかった」と微笑んでいわれるが,それまでの過程は並大抵のご苦労ではなかったことが言外に感じられる.これには同業の夫君やご家族の協力ももちろんであろうが,最近でも深夜までデータ解析を行うなど,まさに“仕事が趣味”というべき天性の研究者としての資質が花開いたものといえよう.

主張

求められる病院医療の効率化

著者:

ページ範囲:P.401 - P.401

 平成9年度診療報酬改定が行われた.今回改定は消費税のアップに伴うためのものであったが,薬価基準の引き下げ分を原資とする診療報酬の合理化に関する改定も行われた.合理化に関する改定で特徴的な事項は,病院外来のあり方,病診連携,在院日数の短縮などに視点が置かれている点である.当然この改定の流れは平成10年度以降の改定に繋がっていくものと思われる.一方で医療保険制度改革,介護保険法や第3次医療法改正が目白押しで審議中であり,これらの法案の成立と相まって医療提供体制の整備が進んでいくものと思われる.
 今回改定の中で病院医療に関係ある項目を拾ってみると,何といっても平均在院日数が随所に評価の基準に入ってきていることである.また初めて病院外来の紹介率が入院時の医学管理料にリンクしたのも見逃せない点である.既に紹介率を用いて初診料に差がついており,また特定医療費を使っての初診料加算が可能となっているが,大病院の外来数が減少してきたという情報は伝わってこない.大病院が自ら紹介なしの外来を制限すべきだと認識しない限り,この問題の解決は難しいと思われる.診療報酬で外来患者の病院指向をどこまで阻止できるのか改定の都度検証する必要がある.

連載 病院主導の保健・医療・福祉複合体の実証的研究・7

第3報 その2 病院・老人保健施設・特別養護老人ホームを開設しているグループの全国調査

著者: 二木立

ページ範囲:P.437 - P.445

調査結果
 1.「3点セット」を開設している グループ総数と調査対象一覧
 表1は,同一法人または関連・兄弟法人で病院・老人保健施設・特別養護老人ホームの入院・入所「3点セット」を開設しているグループを,「母体」病院の開設者別および3段階の「地理的レベル」別にみたものである(以下,「入院・入所」は省略して,単に「3点セット」と記す).
 病院の開設者の区分は,厚生省『医療施設調査』の開設者区分(小分類)に準じたが,厚生省の区分では「その他の法人」に含まれる済生会以外の社会福祉法人の区分を独立させた(この扱いは本連載で共通.以後,単に「社会福祉法人」と表記).なお,複数の異なった種類の開設者が複数の病院を開設している「広義」の病院チェーンの開設者は,最も大きな病院の開設者とした.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第31回

富山赤十字病院

著者: 高橋正泰

ページ範囲:P.458 - P.463

沿革
 富山赤十字病院が,全国に92ある赤十字病院のなかで,5番目に富山支部病院として開設されたのは1907年(明治40)のことである.その後,富山陸軍病院赤十字病院の時代を経て,1943年に富山赤十字病院となり現在に至っている.建物自体は1945年の空襲で焼失し1947年に再建され,その後1955年から1965年ころまでに整備されている.しかし,終戦直後から築40年が経過したものをはじめとして現在の医療に対応できなくなったことから1988年,改築に向けて「富山赤十字病院改築検討委員会」が設置され,1989年に富山赤十字病院基本構想が発表された.これを受け,1991年設計競技により設計者が選定され1992年から設計,1994年に建設工事が始まり1996年5月に竣工の後,8月に開院を迎えた.一方,今回一緒に移転・新築された富山赤十字看護専門学校の歴史は1895年(明治28)までさかのぼる.当初は「日本赤十字社準備看護婦養成所」として発足した.1945年に戦災で病院と同様に焼失し,1968年に現在の看護学校として再建されている.

病院管理フォーラム 広がる病院患者用図書館

病院患者図書館の運営

著者: 菊池佑

ページ範囲:P.446 - P.447

 前号では病院患者図書館の誕生と発展について概観したが,本号では運営方法やサービスの内容について述べたい.
 新しい問題点に最初に気づき行動を起こすのは古今東西を問わず素人である.

院内倫理委員会・4

東札幌病院

著者: 石川邦嗣

ページ範囲:P.448 - P.449

 わが国においても,近年,医学の進歩に伴い,脳死,臓器移植,尊厳死,体外受精,遺伝子治療などといった人間の生と死にかかわる様々な問題が生み出され,さらに欧米流の患者の権利意識が高まってきて,医の倫理についての見直しが迫られてきている1)
 特に,今日,なお,予後不良の疾患である癌の医療においては,患者の意思の尊重と人権の保護に基づいた倫理感がいっそう強く求められ,末期医療,インフォームド・コンセント,告知,尊厳死,安楽死などの問題をはじめとし,生死をめぐる多くの問題が切迫したかたちで提起されている.

癒しの環境

感情が出せる環境

著者: 沼野尚美

ページ範囲:P.450 - P.451

 入院してから本当の病人になった,病人らしくなったという言葉を患者からよく聞く.それはなぜだろう.入院生活の何がそうさせるのだろうか.考えられる要素はいろいろあるが心にぜひとどめねばならないことは,病院の環境が患者の心理面に大きな影響を与えていることである.例えば,入院すると規則の多い病院生活に追いやられ,外界の世界との直接的なつながりを失い,日常生活や社会生活から逸脱した敗北感,孤独感,坐折感を味わったりする.また,隔離された情報源の少ない静止的な状況の中で,身体の症状に関心が集中して敏感になり過ぎたり,単調な入院生活が長く続くと,思いが過去へとさかのぼり昔の過ちを後悔したり,よき思い出を懐しく回顧して涙したりする.それゆえに,病の状況がよくないならばなおさら,将来について何かを計画したり,希望したりするよりも,不安を感じて未来を考える意欲を失うのである.
 入院することによってみられる患者のこれらの心の動きに,病院が持つ環境も大きく作用していると思われる.そして良きケアを目指すならば,患者の持つ感情をないがしろにしてはならず,患者の心や感情を大切にする環境を求めていく必要がある.病院という特殊な環境のもとで,患者の感情を大切にするために,どのような配慮が可能なのであろうか.

「医療施設近代化施設整備事業」による病院の建て替え

細木病院

著者: 細木秀美 ,   宮地耕一郎

ページ範囲:P.452 - P.453

 医療法人仁生会細木病院は1946(昭和21)年,終戦直後にビルマ戦線から復員した細木高行によって開設された細木診療所から,1955年に病院に,1958年に医療法人仁生会細木病院となった.所在地は高知市のほぼ中央,高知城から西に約1kmの場所にある.現在,細木病院591床(一般病院360床,精神神経科病床231床)は内科,呼吸器科,循環器科,消化器科,外科,整形外科,小児科,精神科,神経科,泌尿器科,ペインクリニック,肛門科,放射線科,リハビリテーション科があり医局員は33名である.
 医療法人仁生会としては,その他に三愛病院(146床)と老人保健施設「あうん高知」(50床),サテライトクリニック「日高クリニック」,土佐看護専門学校と二つの訪問看護ステーション,二つの在宅介護支援センターから成り立っている.また,細木病院には高知市から委託されている病後児保育施設「キューピット・ハウス」が活動している.入院ベッドの利用率は平均約85%であり,外来患者数は1日平均,細木病院が約600名,三愛病院が約250名である.

病院の広報

新別府'96秋/あけぼの

著者: 黒岩英

ページ範囲:P.454 - P.454

 人は忙しい日々を過ごす中でも,なにかほっとする合間に思わずアルバムを開いてみるときがあり,さらに新鮮な意欲や発想が生まれるものです.「そんなアルバムのような院内広報誌があればよいなあ」とかねてから考えていましたが,1990年12月,待望の開院35周年記念誌が発刊されたのを機に,院内広報誌を持ちたいという機運が起こりました.
 広報誌編集委員長には庶務課の豊田ひろみ氏にとりあえずなってもらい,病院責任者会議のメンバー全員が編集委員となり,病院責任者会議の全面バックアップで制作を進めることになり,第1号「新別府'91春」は誕生しました.

いま,小児専門病院・小児科部門の運営は・5

社会福祉法人聖隷浜松病院

著者: 鬼頭秀行

ページ範囲:P.455 - P.457

●沿革
 当院は1960年(昭和35)に現在の地に開設された.当時,辺り一面は茶畑で病院の脇には竹藪があったと聞いている.人口の増加に伴って今では民家に囲まれその面影はない.小児科は病院開設後間もなくして診療を始めたが,多忙のなか常勤医師は1〜3名という状態が1984年(昭和51)まで続いた.1985年(昭和52)になり浜松市に未熟児センターを設置してほしいという要望が高まり,聖隷福祉事業団理事長と院長の英断のもと38床の未熟児センターが造られた.開設に当たっては所長に名古屋市立大学小児科小川次郎名誉教授が迎えられ,柴田隆主任医長(現順天堂大学伊豆長岡病院新生児センター教授)を中心に,静岡県西部地区を対象とした新生児医療の地域化がわが国で初めて実施された.これに伴い小児科医師は名古屋市立大学小児科より派遣されることとなり,以前に比べ格段に拡充され6名の常勤医師となり,新生児,未熟児から一般小児までの医療を担当することとなった.

レポート

日本病院会のエイズ関連事業についてHIV/AIDS EDUCATION

著者: 高柳和江

ページ範囲:P.464 - P.467

 川田龍平氏の勇気あるカミング・アウトと菅直人厚生大臣(当時)の行動で薬害エイズで激動した1996年(平成8)であったが,問題は性交渉で感染するエイズにもある.性感染によるHIV感染者およびエイズ患者が増加してきている.一時より下火になったとはいえ,いまだ現場では患者は差別され,医療提供者は診療を拒否している実態がある.エイズに対して正しい理解を深め,差別なく適切な医療を行うことは医療提供者の使命である.同時に,一般にHIV感染についての知識を広め,HIV感染者およびエイズ患者とともに生きる姿勢を教えるのは医療人としての義務であろう.
 エイズ医療に組織的に本格的に取り組んだのは日本病院会が初めてである1).1993年に諸橋会長を本部長とするエイズ対策本部を作り病院会会員病院にエイズ医療の実態調査を行い,また,拠点病院を募った.その結果57病院が自発的に日本病院会のエイズ拠点病院として登録した.さらに1993年9月にストップ・エイズ・キャンペーン企画委員会(SAC)が発足した.SACの目的は医療提供者にエイズ医療を受け入れてもらうこと,もう一つは一般の人にストップエイズの知識を伝えることである.また,エイズ対策本部はエイズ対策室と組織替えをして1995年にはSACとともにエイズ・ウォームラインが発足した.

現地にみるイギリス国営医療改革その後

著者: 宮下厚

ページ範囲:P.468 - P.470

はじめに
 イギリスの国営医療(National Health Service,以下NHS)は,1948年以来,長年にわたり,国民の収入に関係なく国民に無料で医療を提供してきたが,1980年代に入ると,医療費の高騰などにより増え続ける国民の医療需要に応じ切れなくなってきた.当時の状況をサッチャーは,回顧録の中で,「病院を経営している地域保健当局(District Health Authority,以下DHA)の多くは上半期で予算をオーバーしてしまい,仕方なしに,病棟の閉鎖や手術の延期によって経費の削減を図るという有様であった.」と述べている1)
 もちろん,それまでに何度も機構改革などがあったが,予期した効果を挙げられず,1991年4月1日からスタートした市場原理を導入した改革(NHS Reform)となった.

研究と報告

物品管理の盲点(3)—特定管理システム導入の効果と業務委託の問題点

著者: 松山文治

ページ範囲:P.471 - P.473

 われわれは定数配置方式の物品管理が①現場で必要とするすべての物品を管理対象としていないこと,②定数管理になじまない物品は,管理対象外になっているため,時間の経過とともに,これの末端在庫数量,金額が予想をはるかに上回る規模となっていること,を先に報告した1).またこのために定数配置とは別に,特定管理方式の導入を検討していることも報告した.
 今回,この方式を導入後数回の調整を行い,ほぼ初期の目的を達成した.ここにその結果を報告し,問題の根本的原因を考察する.

データファイル

「21世紀に向けた介護関係人材育成のあり方について」の概要,他

ページ範囲:P.475 - P.478

□報告の背景
 高齢化の進展に伴い介護を要する高齢者が今後急増すると見込まれる中で,現在新たな介護保険制度創設の準備が進められており,21世紀に向けて高齢者福祉,とりわけ高齢者介護にかかわる福祉・医療・保健サービス(以下,介護サービス)提供体制を整備することが急がれている.
 21世紀医学・医療懇談会においては,介護サービスが円滑に提供されるために必要となる介護関係人材の育成のあり方について,昨年9月から教育部会を中心に検討を行い,去る2月10日の懇談会においてその議論をとりまとめた.

医学ごよみ

5月—May 皐月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.479 - P.479

□3日 呼吸熱量計による栄養学
 基礎代謝量を測定する方法には,アトウォータ・ローザ・ベネディクト呼吸熱量計が使われるが,この熱量計の開発に大いに貢献した農学者アトウォータ(Wilbur O Atwater,1844〜1907)がニューヨーク州のジョーンズバーグ(Johnsberg)に生まれた日である.
 彼はバーモント(Vermont)大学とウェスリアン(Wesleyan)大学を卒業したあと,博士課程ではイエール(Yale)大学のシェフィールト大学院の農芸化学を専攻した.そこで幸運にもドイツのライプチッヒ大学出身の化学者であり,当時の米国化学界の指導的立場にいたジョンソン(Samuel W Johnson)に師事した.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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