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雑誌目次

雑誌文献

病院56巻7号

1997年07月発行

雑誌目次

特集 医療保険改革と病院

[インタビュー]医療保険改革の方向性

著者: 塩野谷祐一 ,   広井良典

ページ範囲:P.594 - P.599

 広井 現在,患者の自己負担引き上げを中心とした医療保険の改正案が国会で審議されていますが,本日は医療保険審議会の会長として医療保険の改革にかかわってこられている塩野谷祐一先生に,今回の改正案にとらわれずに,もう少し中・長期的な視点を含めて,今後の医療保険改革の基本的なお考えをおうかがいしたいと思います.
 まず,今回の健康保険法改正の議論の過程でどのようなことを感じられたでしょうか.

今後の医療保険制度改革について

著者: 中村秀一

ページ範囲:P.600 - P.604

平成9年度改正と今後の医療保険改革
 平成9(1997)年5月からの患者一部負担の見直しと政府管掌健康保険の保険料率の引き上げを内容とする「健康保険法等の一部を改正する法律案」が国会で審議されている.今回の法改正が求められた背景は,いうまでもなく近年の医療保険財政の悪化である.
 政府管掌健康保険は,1997年度に12年振りに赤字に転落し,以後連続して赤字を計上している.この結果,1996年度には約1兆5,000億円あった積立金が,1996年度未には3,000億円台にまで減少し,他方,将来見通しは,1997年度には単年度で8,300億円の赤字が見込まれ,5年後の2001年度には単年度で1兆7,800億円の赤字に達するという極めて深刻な状況にある.その他の医療保険財政の状況も同様に厳しい状況にある.健康保険組合では,1994年度に赤字組合が全体の5割を超え,1995年度の赤字組合は62%に達し,赤字総額は2,000億円を超えている.国民健康保険でも,1994年度に全体の3分の2の市町村が赤字を計上している.

病院からみた医療保険改革

著者: 川合秀治

ページ範囲:P.605 - P.608

 このタイトルで原稿依頼が舞い込んだときの率直な感想は,本当に僕でいいの? でした.
 執筆予定者のジャンル・所属母体の構成をみると,編集者は肩書などから表面的に筆者を理解してしまって,筆者が期待されていることは「この一連の医療保険改革の流れが,いかに医療側,病院経営側に不利な物であり,いかに厚生省がわれわれを不当に扱おうとしているかを切々と訴えかけることだ」と感じたからです.ここ数年にわたる医療制度改革に対しては筆者なりの考えは持っていますが,関係団体の巷間いわれている主張とは若干違っています.ですから,「病院からみた……」と題名を限定されると,筆者自身がそれら諸団体の代弁者的論旨で書かなければならないような心理的圧迫を受けますし,またおそらく意見を異にされるであろう大多数の方々を不愉快にさせてしまうことに危惧の念を持っています.編集部に確認すると「自由にどうぞ」とのことでしたので,客観性に乏しい,極めて個人的情緒的な文面になるかと思いますが,ご寛容の程を.

21世紀の医療保障システムの構築へ向けて

著者: 松本文六

ページ範囲:P.609 - P.613

 与党三党の「医療保険制度協議会」(以下「協議会」)は,昨年12月患者負担の大幅拡大を行うこととし,本年4月7日,〈基本方針座長試案〉を公表した.
 いずれも,その場しのぎの場当たり的「改革」案である.とりわけ後者は医療現場からすると,20数年前から指摘され続けてきた問題点を単に羅列したに過ぎないものである.

製薬業界からみた医療保険改革

著者: 尾藤猛

ページ範囲:P.614 - P.616

 健康保険法改正案が国会で審議され当面の財政対策が図られようとしているが,保険料や患者負担の引き上げを行うに際して,まず,医療費や薬剤費のむだを排除すべきであるという意見があり,与党医療保険制度改革協議会の合意案として診療報酬制度,薬価決定方式,高齢者医療保険改革の三つを医療保険制度の抜本的改革の中心として,協議会と厚生省がこれらの問題について改革プログラムをまとめることが予定されている.
 このような時期に,製薬業界としての考え方を以下に述べる.

経済界からみた医療保険改革

著者: 髙梨昇三

ページ範囲:P.617 - P.619

 今日,わが国の経済基調は大きな転換をみせ,今後相当長期にわたり低成長が続く可能性が大きい.本年度の実質GDP (gross domestic product,国内総生産)は,政府の経済見通しでは,1.9%であるが,民間調査機関の平均では1.4%程度と政府よりも相当厳しい見方をしている.
 一方,出生率の低下(合計特殊出生率1995年1.42),後期高年齢者の増加など,少子高齢社会が予想をはるかに超えて急速に進行している.厚生省の新将来人口推計によれば,2050年の65歳以上人口の比率は32.3%と,前回推計28.2%よりもさらに上回る見込みである.

医療保険改革とこれからの保険者像

著者: 佐藤公俊

ページ範囲:P.620 - P.622

 医療保険の保険者が深刻な財政危機に陥つている.このままでは遠からず保険料の引き上げも限界に達し,診療報酬の支払いに事欠くことになる.われわれは年々増大する老人保健拠出金が赤字の主因であることから,これを廃止して高齢者の医療制度を創設せよと主張しているが,その後の保険者がどのような姿に変化するのか?
 改革の行方を予測しながら保険者に及ぼす影響を健康保険組合(以下「健保組合」という)を中心に考えてみたい.

医療保険改革と高齢者介護

著者: 広井良典

ページ範囲:P.623 - P.626

 医療保険改革と高齢者介護ないし介護保険はどのような関係にあるのか.筆者は以前から,介護保険の構想を論ずるときは,医療保険改革,特に老人保健制度の改革案と一体のものとして論じなければならないということを強調してきた(例えば,日本経済新聞1996年5月11〜17日連載の「医療保険改革の方向性」).幸い昨年半ば以降,医療保険改革論議は急速に活発になり,老人保健制度の将来像についての突っ込んだ議論も少しずつ行われるようになってきている.本稿では,それでもなおバラバラとなりがちな医療保険改革と高齢者介護との関係について,どのような視点で考え,どのような方向を目指すべきかという点について私見を述べることとしたい.

グラフ

地域・患者のニーズに応えられる病院づくり—医療法人仁生会細木病院/細木ユニティ病院/三愛病院/老人保健施設あうん高知

ページ範囲:P.585 - P.590

◇増改築計画と医療機能の再編成
 細木病院では先般,本館および南・北病棟のリニューアルを終え,細木病院とユニティ病院とに機能を分け再出発した.
 増改築を繰り返してきた細木病院では,各機能が公道を挟んで点在し効率的でなく,実際には1日の平均外来患者数が548人であるにもかかわらず,外来の体制は病床数280床当時(昭和40年代)のままとなっていた.

第36回全国自治体病院学会学会長を務める 山形市立病院済生館長 櫻田俊郎先生

著者: 日下部明 ,   八木保

ページ範囲:P.592 - P.592

 第36回全国自治体病院学会の学会長となられた山形市立病院済生館長・櫻田俊郎先生は私の大学1年先輩である.
 先生は全国自治体病院協議会常務理事,山形県支部長として,私どもの山形県の会員病院をとりまとめておられるが,その他に種々の病院団体の役職につかれ,古い伝統のある全国公立病院連盟の会長もなさつており,病院運営に関して常に先導的役割をになつて活躍されており,このたび学会長に指名されたのはまさに適役といえよう.

主張

社会保障の国際協力

著者:

ページ範囲:P.593 - P.593

 医療保険改革を含め,社会保障の構造改革をめぐる議論が盛んである.しかし,社会保障をめぐる議論というのは,ともすればいつも「負担増」とか「財政が破綻して云々…」という具合に,せち辛い,というか,「後ろ向き」の話になりがちである.同時に,ドメスティックというか,様々な先進各国の事例は参照されるにしても,議論そのものは日本国内に完結した,「内向き」のものになりがちである.もう少しそうした「後ろ向き」,「内向き」でないような議論はないのだろうか.
 そのような話題の一つで,かつ,今後急速に重要性を増していくと思われるものに,「社会保障の国際協力」がある.今後急速に経済成長,産業化をとげ,かつ21世紀に入ると高齢化も急激に進んでいくアジアやその他の発展途上国に対し,日本の経験を踏まえ,医療保険や年金,福祉などの社会保障システムの設計・実施についてのアドバイスや人材派遣などの様々な援助を行っていく,という活動である.

連載 病院主導の保健・医療・福祉複合体の実証的研究・9

第3報 その4 病院・老人保健施設・特別養護老人ホームを開設しているグループの全国調査

著者: 二木立

ページ範囲:P.629 - P.635

〔前項より続く〕
 9.訪問看護ステーションと在宅介護支援センター
 次に,「3点セット」開設グループの訪問看護ステーションと在宅介護支援センターの検討を行う.この2種類の施設を選んだ理由は2つある.1つは,これらがホームヘルプと並んで,各グループの在宅ケア活動のよい指標になるのではないかと考えたこと,もう一つは,筆者が調べた範囲では,在宅ケアの関連施設で全国名簿が整備されているのはこの二つの施設だけだからである.
 表24は,訪問看護ステーションと在宅介護支援センターの施設数の分布をみたものである.いうまでもないことだが,在宅介護支援センターの法的な「実施主体」は市町村であり,各グループは市町村の「業務委託」を受けてそれを「設置」している.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第33回

胆沢町国民健康保険まごころ病院

著者: 佐藤基一 ,   小西剛

ページ範囲:P.656 - P.661

 岩手県胆沢郡胆沢町は,岩手県水沢市の西方に位置し,国定公園焼石連峰のすそ野に広がる胆沢平野にある人口18,000人の緑豊かな町です.
 旧胆沢町国民健康保険若柳病院は,一般病床24床結核病床9床の33床で昭和40(1965)年に町立病院として開院しました.

医療の質の評価と改善 組織・運営・戦略におけるトータル・クォリティー・7

医療のアウトカムの評価

著者: 今中雄一

ページ範囲:P.636 - P.639

診療のアウトカム
 評価の対象となる医療は,以下の三つの次元に分けることが古くからDonabedianによって提唱され,広く受け入れられている.ちなみに,その三次元とは,・構造(ストラクチャ)・過程(プロセス)・結果(アウトカム)である.ストラクチャは,病院という建造物の構造や機能のみならず,設備・機器,専門家を含めての人員配置,組織の形態・運営などを指す.患者に対する医療の質を支える基本的部分であり,古くから医療に関する評価対象として取り上げられている.これらの構造的因子の評価や審査は,方法論的に確立しやすい反面,医療の根幹部分や直接的な診療・ケア行為を評価することができない.そこで,診療やケアのプロセスやアウトカムの質の評価や保証が重要という気運が高まり,並行してその評価技術が進んできた.
 医療のアウトカムは,多次元的なものである.その指標について,五つのDが提唱されている(Lohr, KN,1988).すなわち,death (死亡率,など),disease, disability, dis-comfort (検査結果,術後合併症,身体・心理・社会機能,症状など),dissatisfaction (患者満足度)を指す.広い意味では,医療費あるいは資源消費量なども含まれ,表1のようになる.

病院管理フォーラム 広がる病院患者用図書館・4

病院の地域医療活動と図書館サービス

著者: 山室眞知子

ページ範囲:P.640 - P.641

 かつてはとかく暗いイメージを持たれてきた病院は,数年来,多くの病院にアメニティ委員会が設置されて療養環境の改善による明るい病院づくりが進められている.「早い夕食,冷たい食事」といわれていた病院給食も温冷配膳車の導入や18時以後の夕食には診療報酬加算の対象となって,適時・適温の食事環境が整えられ,患者食堂設置の動きもある1,2).また,医療機関と地域の人々との関連を持ち,医療機関の役割,医療従事者の業務などについての認識を深めてもらうためにボランティアを積極的に受け入れる方向が,日本医療機能評価機構3)のなかに示されている.
 表は1995年9月に全国患者図書サービス連絡会が行った調査回答4)のサービス開始年より,その増加数を示したものである.長年ごく限られた病院でしかみられなかった患者さんへの図書サービスが,ここ10年間で急速に広まりつつあるのは,このような病院の環境の変化が大きく影響していると思われる.それに加えて,公共図書館のサービス,特に障害者や図書館へ来られない入々へのサービスの拡大も見逃すことはできない.病院がボランティアや公共図書館のサービスを受け入れやすくなった環境になったことと,社会的にもボランティアの評価が高まってきたことも一つの要因であろう.

診療情報管理はいま・2

入院診療録の保管期間の現状と問題

著者: 大津淑子

ページ範囲:P.642 - P.643

入院診療録の保管期間について
 診療録は1948年に公布された現行の医師法第24条2項に5年間の保存を義務づけられているが,その他病院日誌,各科診療日誌,処方箋,手術記録,X線写真,入院患者および外来患者の数を明らかにする帳簿の保管期限は2年(医療法施行規則第20条12号)である.しかし終戦後よりわが国の大学病院,大総合病院などの診療録の保管年数は,外国にならい永久保存を理想としてきた.結果増え続ける資料の保全に,多大な労力と費用を費やしているのが現状である.
 近畿病歴管理セミナー(以下近ゼミ)では1995年10月に会員名簿を改訂するに当たり,診療録管理の現況についてアンケートを行ったので結果を紹介しながら最近の傾向をみていきたい.

経営管理・1

新たな日常性の構築「かわらなきゃ」—職種別損益計算の試み(1)

著者: 塩谷泰一

ページ範囲:P.644 - P.645

 たとえ公立病院であっても公共性の発揮はもちろんのこと,経済性の確保は病院企業として不可欠である.地域医療の中核となっている病院の経営悪化は,その地域の医療水準の低下につながり,単に病院だけの問題にとどまらず,地域住民の損失となる.それゆえ,「経営の安定なくして良質な医療なし」という大原則を病院全職員に認識させ,経営参画意識を醸成することが重要である.しかし,一般的に医業収益・費用で表される病院経営評価は,かなりの部分が「ドンブリ勘定」的であり,病院が直面する問題の本質の個別的・具体的・体系的な解決方法を示してくれない.
 当院では,従来の経営評価における「ドンブリ勘定」的発想を改め,病院運営にかかわる様々な職種の経営への貢献度を共通の基準で評価し,日常業務の改善に役立て,「病院の発展へ向けて各部門が何をなすべきなのか」という行動指針,ひいては病院将来計画策定の重要な基礎資料を提供する一つの手段として,(社)病院管理研究協会専門調査役谷田一久氏の協力のもと,職種別損益計算を試みている.

院内倫理委員会・5

市立舞鶴市民病院

著者: 松村理司

ページ範囲:P.646 - P.647

医の倫理委員会が設置された背景
 1986年7月に発足している.当時当院の不妊外来患者は150名を越えるようになり,新たに産婦人科がGIFT (garnete intra-fallopian transfer,配偶子卵管内移植)を実施することになった.そこで,それにまつわる倫理的諸問題を院内で検討しておこうということになったわけである.当時の産婦人科医長(現在神戸で不妊クリニックを開業)は,短期留学を含めGIFTへの準備を十分にしたし,GIFTが特に倫理的色彩が強い手技とも思われなかった.また,倫理的課題がGIFTに限られるわけでもなかったが,生殖医療の将来とインフォームド・コンセントがしきりに話題になってきた時代的背景を見据えた当時の病院長(現在島根県立中央病院長)の判断であった.

癒しの環境

スリッパ廃止の経験から

著者: 土井章弘

ページ範囲:P.648 - P.649

 病院における癒しの環境の整備が,機能を重視するあまり,今まで軽視されてきたと思います.病院がサービス業という認識が高まるなかで,癒しの環境に,ハード,ソフトともに関心が持たれるようになってまいりました.ハードはすぐには対応できなくとも,知恵を働かせれば,すぐ実行できることがたくさんあります.その一つにスリッパ廃止があります.その経験を報告いたします.
 病院の玄関でスリッパに履き替えて,病院に入る,このような日本的ともいえる風習は大病院では次第になくなっていますが,中小病院の多くが,まだ玄関でスリッパに履き替えるスタイルが多いのではないかと思います.私たちの病院は,脳神経外科,整形外科,リハビリテーション科を中心とし,脳神経運動器疾患を対象にした102床の急性期専門病院で,外来1日300名,平均在院日数25日の病院です.靴がなくなったり,スリッパが汚いなどの苦情がときどきあり,いずれ,スリッパ廃止をと考えていました.

保健・医療・福祉政策ウォッチング

社会保障政策の立案過程

著者: 病院問題研究会

ページ範囲:P.650 - P.651

 健康保険法改正の評判が悪い.国民に負担を押しつけるだけで,財政状況を改善するという当初の目的に関しては,実効性が上がらないのではないかというのである.
 介護保険法案もまた然り.いままた,財政再建という錦の御旗のもとに,政府・与党の「財政構造改革会議」は,年金改革や,社会保障予算に枠をはめる「キャップ制」の導入を決めた.厚生省に国民生活や社会保障政策を守ることはできないのかという,厚生省の政策立案能力についての陰口も聞こえてくる.

病院の広報

元気アップ主体会医療法人社団主体会広報誌/CHIGASAKI市立病院だより茅ケ崎市立病院広報紙

著者: 川村基子

ページ範囲:P.652 - P.652

 本誌は,1991年6月に『小山田だより』として創刊された小山田記念温泉病院の広報誌を,同法人の川村病院,川村第一病院,みえ川村老人保健施設などの広報誌と一体化する形で1996年9月にリニューアルし創刊された.
 その際,編集委員がそれぞれに名称の候補を上げ,検討の結果,利用者の元気アップに貢献しようということでこの名前が付いた.

いま,小児専門病院・小児科部門の運営は・6

福岡市立こども病院・感染症センター

著者: 本田恵

ページ範囲:P.653 - P.655

 1970年,病院事業運営審議会に,「市立病院の健全運営」に関する諮問がなされ,1971年「専門的かつ高度の医療を提供し,……学問的分野を加え医療技術者を定着せしめる」との答申を得た.これを実現する診療形態,市立病院の果たすべき役割とその具体的内容・規模についての再諮問に対し,1976年「本市の医療事情,市民の医療需要を考慮し,小児医療部門と感染症部門をもつ高度専門的な診療をおこなう新病院建設」が示された.
 1976年度には新病院の企画立案に着手し,1980年9月全面開院の運びとなった.20世紀の終わりの2000年に創立20周年を迎える.

米国からのレポート

医療の質の向上/ヘルスケア・リスク・マネージメント—薬剤による医療事故とその予防・2

著者: 中島和江

ページ範囲:P.662 - P.667

 前回,Adverse Drug Event Pre-vention Studyの「薬剤による事故とその予防のための研究1)」について紹介した.これによれば,100件の入院につき6.5件の「薬剤による事故」が認められ,そのうちの28%は医師らのエラーにより起こっており,予防可能なものであると考えられた.また100件の入院につき5.5件は,エラーはあったが幸い患者に何も傷害が起こらなかったり,事前にエラーに気がつき事故が予防された「潜在的な薬剤による事故」であった.今回は,エラーの起こったプロセス,原因,そしてエラーを誘発したシステムの欠陥について紹介する.

データファイル

医療構造改革構想,他

ページ範囲:P.668 - P.670

1.改革の基本的理念
 わが国は憲法25条によって,全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営むことが保障されている.したがって,医療構造改革にあたっては,この基本的理念を踏まえながら,推進を図るべきである.
 わが国の社会保障制度は国民経済の成長や医療・福祉関係者の努力に支えられ,1961年の国民皆保険制度の実現,年金制度の確立を契機として,質・量両面からの充実が図られ,国民の健康指標においても世界で最も優れた制度として高い評価を受けるに至った.

医学ごよみ

7月—July 文月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.671 - P.671

□2日 ホメオパシィの提唱
 ホメオパティ(Homeopathie)の提唱者であるハーネマン(Christian FS Hahnemann,1755〜1843)の命日である.彼は通常,“Samuel Hah-nemann”の名で親しまれている.
 江戸初期から佐賀の有田焼が伊万里港から大量に欧州に輸出されていた.その影響で,ドイツのマイセン(Meissen)や英国では陶器産業が興り,欧州に独特の陶器が発達していった.ハーネマンの父親はその初期のマイセン焼の絵付け師であったという.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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