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雑誌目次

雑誌文献

病院56巻8号

1997年08月発行

雑誌目次

特集 病院経営における多角化戦略

注目を浴びる病院の多角化戦略

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.690 - P.694

 抜本的な医療費適正化政策が近い将来導入されることが決まっているわが国にあって,これ以上の医療費の拡大が見込めなくなる時代がくるかもしれない.そうした環境下で,わが国の病院にとって今後重要となる経営戦略の一つに「多角化戦略」がある.
 第3次医療法改正で,医療法人の付帯業務の拡大がうたわれているが,仮にこの法案が成立すると,病院の多角化戦略が今後注目を浴びることはまちがいないと考える.

今後の病院経営は専門化か多角化か

著者: 槙孝悦

ページ範囲:P.695 - P.699

危機感をベースに
 病院経営は専門化か多角化かというテーマを目にした際,おそらくこれを「生き残るために専門化にいくべきか多角化にいくべきかの選択肢」が存在すると捉えられる方が多いのではないだろうか.
 病院経営環境の変化が様々な形容詞を伴って表現され始めて久しいが,既に実態として専門化している病院もあり,同様に多角化している病院もある.しかし,現実的な事例としてみられるこれらの形態も,個々の病院において,従来提供していたサービス内容が,市場環境の変化を呼び水として機能的に複合化あるいは特化していったものであり,経営管理の発展形態として規模的に拡大・縮小が選択されたケースは,筆者の知る限りごく少数の事例においてしかみることができない.

企業経営からみた病院事業

著者: 麻生泰

ページ範囲:P.714 - P.718

はじめに
 筆者は飯塚病院の経営主体である麻生セメント株式会社を中心とする麻生グループの経営者として,病院の他にセメント関連事業,スーパーマーケットチェーン,専門学校(医療福祉,ビジネス,デザインなど),不動産開発業などの事業を営んでいます.
 飯塚病院は1911年(明治43年)に筆者の曾祖父麻生太吉が当時の筑豊炭田で大きな富を築き始めたとき,地元のためによき病院をと「広く郡民のために良医を招き,治療投薬の万全をはからんとする」という理念のもと,120床ほどの病院を開設したのが始まりです.その後,病院の機能は徐々に充実を重ねてきたのですが,飯塚病院にとっての大きな転機は1980年に福岡県からの要請に応える形で救命救急センターを併設したことでした.これにより,新棟が完成し,24時間体制になったことでレベルアップと活性化が進みました.

わが国における病院の事業展開

病院グループの事業—株式会社シーエイチシーについて

著者: 佐々木和男

ページ範囲:P.700 - P.702

会社設立経緯
 1987年6月に厚生省は「国民医療総合対策本部の中間報告」を発表し,今後の国民医療の方向づけがなされた.以来,組織の拡大により収支のバランスを図っていた病院の経営方針を転換せざるを得なくなり,また医療費抑制の方向が強く打ち出され,病院の経営管理の必要性が広く求められるようになった.
 こうした厳しい環境下,1988年3月,東京都私立病院会青年部会の有志4名(病院代表者)が,医療環境の推移を予測し,より効率的な経営形態を実践し,共通のmission (理念)とcommitment (委任)のもと病院相互の医療水準の向上,医療サービスの充実,人材の育成・確保,施設設備の近代化などを目標とし,当社,株式会社シーエイチシー(以下CHCとする)を設立した.

ホテル経営

著者: 原三信

ページ範囲:P.702 - P.704

はじめに
 病院経営における多角的戦略の一環としてのホテル経営に成算ありや,との設問にお答えできるか否かは疑問であるが,1989年に病院隣接地に小ホテルを設置して,人間ドック希望者の宿泊に利用している意図と実態を述べ,いささか私見を加えたい.

国際医療協力

著者: 井手義雄

ページ範囲:P.704 - P.708

 超高齢化社会におけるわが国の社会保障の問題は,わが国固有の問題としてではなく,国際的な問題として議論されている.本年9月より実施される健康保険法の一部改正,また活発に議論されている医療保険制度改革の議論に関しては,今後の病院経営を考えた場合真剣なる検討が必要である.
 このような病院を取り巻く環境における経営は,大胆かっ的確な経営を遂行せざるを得ないであろう.

産業保健サービス

著者: 大滝秀穂

ページ範囲:P.708 - P.711

はじめに
 病院の多角化戦略の一項目として「病院が産業保健にどのように貢献できるか」というテーマをいただいた.非常に難しい問題であって,病院がグループで事業をするとか,スポーツ部門に進出するとか,ホテル併設をするなどという規制緩和をねらったものとは異なり,産業保健は,働く人々(健康者であることはいうまでもない)の傷病の予防と,健康の保持増進のための科学と実践であるから,産業保健の目的と内容(ILO/WHO 1950)の理解は,産業保健サービス提供に当たっての病院の責務といえよう.これを欠くと,その活動は病院が収益増加のみをねらったものと誤解される恐れもある.

フィットネスクラブ

著者: 北出俊一

ページ範囲:P.711 - P.713

 政府の医療費抑制策のもとに病院の経営が難しくなり,多角経営によりその補完目的にそれまでやっていた企業検診と人間ドックとを独立させて健診センターとし,それにフィットネスクラブ(以下,FCとする)を併設した.以来4年間経過してその経営内容をみると,検診部門はそれなりの利益を上げているが,FCは病院の経営感覚と違うところがあり,苦労を強いられている.私は始めから多少の覚悟はしていたが,このテーマを与えられたのを機会にFCの設立目的,経緯,現況を述べて諸賢のご批判,ご指導をいただきたい.
 なおこの4年間FCを経営した経験から,これからの医療制度の改革に一つの提言をしたい.FCは1次予防であるが,病気の治療の側面を多分に持っている.最近薬づけ医療などの世間の不評を避けるためにも,この方面に健康保険の適応を拡大し,健全な医療を確立することが賢明な策であると考える.

グラフ

ここは私たちの病院 良い医療と良いサービスを提供し効率の良い病院運営を目指す—三田市民病院

ページ範囲:P.681 - P.686

□若い町に新病院
 大阪駅から福知山線で1時間,六甲山の北,人口10万人で21世紀には人口15万人となる,成長中の町,阪神のベッドタウン三田市.北摂中央3号線を挟んで駐車場を備え,乗用車,バス,鉄道と当院へのアクセスは便利.141床の旧病院は現在地より3.5km東にあった.古く手狭となって1991年より新築移転が構想され,1995年5月新病院は当面300床(6病棟),将来500床で現在の地に竣工.診療科も8から13に増え,「地域の中核的役割を担う病院として整備された.」
 1次医療圏は10.3万人の三田市で,患者の4分の3が市内から,そして60歳以上が半数を越える.市の老齢化率は全国平均より低い9.4%,幼児化率は逆に高く24%という若い町の人口構成は,これからの病院の方向を定める基礎データ.

第26回日本病院設備学会学会長 国立医療・病院管理研究所施設計画研究部部長 河口豊氏

著者: 大道久 ,   八木保

ページ範囲:P.688 - P.688

 河口先生とは,昭和50年代の半ば頃,医療計画を制度化する検討会で初めてお会いしてから,改めて数えると15年以上になる.この間,病院設備協会や病院管理学会などの活動を通じてお世話をいただく機会が多くなり,気が付くと私にとって最も信頼の置ける同世代の医療の専門家のお一人になられていた.
 リハビリテーション施設や精神病院の建築学,あるいは地域における施設計画の研究に関する先生の広範な業績についてはわれわれ病院人が広く知るところであるが,学会や関係団体における様々な調査研究や事業の取りまとめ役として,労をいとわずご尽力をされてきた.病院管理学会の理事としても,事務局長の煩瑣な役回りを一手に引き受けておられる.その篤実で手堅い手腕に甘えて,厄介な仕事を先生に任せきりにした覚えのある者は,決して私ばかりではないはずである.

主張

医療における規制緩和

著者:

ページ範囲:P.689 - P.689

 規制緩和と市場原理の必要性が叫ばれており,医療においても従来の体制を抜本的に見直す圧力が高まっている.その背景には,共産主義の崩壊,国民負担率の上昇,官僚に対する不信などがあるが,こうしたムードに流されず,具体的に何が実現可能であるかを冷静に考える必要がある.
 そもそも市場原理が適正に機能するためには,消費者が市場で取り引きされる財に関する正確な情報があり,かつまた財の質が支払う用意のある額によって異なることが前提となっている.つまり,消費者が選ぶためには情報が必要であり,その情報に基づいて最も優れた財に消費者が集中することを防ぐために,価格による調整が必要である.そのよい例が星の数によるホテルのランク付けであり,グレードが高ければ値段も高い.

連載 病院主導の保健・医療・福祉複合体の実証的研究・10

第4報 在宅介護支援センターの「母体」とチェーン化の全国調査

著者: 二木立

ページ範囲:P.719 - P.724

 お断り:当初,第4報では「(医師以外の)医療・看護・福祉専門職養成校を開設している医療機関の分析」を行う予定であったが,予定を変更し,在宅介護支援センターの「母体」とチェーン化の全国調査を行う.第1〜3報準備の過程で,法的には「社会福祉施設」に分類されている在宅介護支援センターのなかに,医療機関「母体」のものが少なくないことが判明したためである.

アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第34回

韓国の病院見聞録

著者: 筧淳夫

ページ範囲:P.744 - P.749

はじめに
 日本に最も近い隣国である大韓民国(韓国)の医療施設を勉強するツアーが,(社)日本病院会と(社)日本医療福祉建築協会の共同企画により,昨年(1996年)の10月9日から13日にかけての4泊5日のスケジュールで実施されました.今回のツアーは韓国の医療・保険システムの概要を把握することを第1の目的として掲げ,第2の目的として,日本と韓国の医療にかかわる人々の交流を図ることを考えたものでした.そのため,今回のツアーは日本医療福祉建築協会と日本病院会との共同企画として実施され,韓国側の窓口としては,大韓病院協会,韓国病院建築学会,そして韓国保健医療管理研究院の方々と連絡を取り合いながら交流を深めることとなったのです.限られた視察では知ることのできない韓国の病院の様子を勉強するために,4つの大規模な病院の視察を終えた後,最終日にはこれらの方々とセミナーを開催し,今回のツアーを閉めるにふさわしい機会を持つことができました.
 ツアーの参加者は21名に及び,当初想定していた人数を大きく上回りました.二つの団体の共同企画でもあったため,医師,看護婦,その他病院職員,建築関係者など他職種の方々の参加がみられ,お互いの専門知識を交流することによる刺激も多々ありました.本稿はこれらの方々の書かれたレポートを一部引用しながら,韓国の病院の現状について,その一端をご紹介します.

インタビュー

医療現場で医療事故を防ぐために—医療事故調査会の2年—森 功 医真会八尾総合病院院長に聞く

著者: 編集室

ページ範囲:P.725 - P.728

 1995年4月22日,医師をはじめとする医療従事者ら約28名によって発足した「医療事故調査会」が2年経過した.昨年5月の1周年記念シンポジウムに引き続き,本年もこの5月にシンポジウムが開催された.代表世話人の森功氏に,この会の目的,2か年の活動の経過などをおうかがいした.
 ▼まず,「医療事故調査会」の設立の趣旨はどのようなところにあるのか,またこの2年間,具体的にはどのような活動をされてきたのか,ご紹介ください.

特別寄稿

病院管理学から病院経営学へ—情報と内部組織の経済学はマネジドケア革命をどうみるか・1

著者: 髙原亮治

ページ範囲:P.729 - P.732

 病院をどのように効率的に運営すべきかという領域は,従来,病院管理学(hospital administration)として取り扱われ,病院経営学(hospital management)という用語は,それが病院の非営利性になじまないという語感を持っているゆえか,あまり普遍的ではなかったといえよう.
 しかしながら,単に言葉の問題としても,MEDLINEに収録されている論文では,“management”の急増に比べ,“administration”が伸び悩んでいる.病院管理(経営)者は米国の場合,大学院レベルの専門教育が前提とされているが,これらの養成コースも病院管理学修士(master of health/hospital administration;MHA)課程からMBA (経営学修士),またはMBAプラスMPH (公衆衛生学修士)へと転換している傾向がみられる.

院内倫理委員会・6

広島市立安佐市民病院

著者: 平位剛

ページ範囲:P.733 - P.733

委員会を設置するまでの経緯・背景
 医の倫理の昂揚と患者さん本位の治療実施を目指して昭和60(1985)年に設置された.

病院管理フォーラム 広がる病院患者用図書館・5

公共図書館の活動病院貸出サービスについて

著者: 平沢久男

ページ範囲:P.734 - P.735

どこでも誰でも使える図書館
 図書館は日常生活圏に位置する社会教育施設として地域やそこで生活する人々と密接な関係を持っており,住民は誰でも,どこに住んでいても図書館サービスを受ける権利があります.
 住民の中には,諸々の事情で図書館利用から疎外されている人々がおり,図書館はそれらの人々の知る権利・読む権利の保障に努めなければいけないと思います.

経営管理・2

新たな日常性の構築「かわらなきゃ」—職種別損益計算の試み(2)

著者: 塩谷泰一

ページ範囲:P.736 - P.737

 前回は職種別損益計算について,①部門設定は診療科別,すなわち医師中心ではなく,各職種部門を医師と同等のレベルに位置付けること,②按分率を設定することにより診療行為点数(収益)を各職種に振り分けること,③費用は部門固有費用のみを各職種に直課し,全体の共通費用は直課しないこと,④全部門で共通費用を回収し全体利益を生み出すこと,⑤病院事業収益を技術料収益・材料料収益・施設料収益に分類し,費用として,それぞれに人件費・材料費・減価償却費などを対応させることを概説した.
 本稿では収益に関する職種別損益計算の実際を,診療行為別収益の分類,収益配賦の調整に分けて述べる.

いま,小児専門病院・小児科部門の運営は・7

神奈川県立こども医療センター

著者: 諏訪珹三

ページ範囲:P.738 - P.740

●沿革
 1)設立まで
 1964年度(昭和39年度)に神奈川県衛生部は,県立の小児特殊病院建設について,また,福祉部は児童福祉施設をこれに併設する検討を開始した.1966年度,基本構想を策定し,県立緑が丘(結核)療養所を廃止した跡地を建設予定地として調査設計に取り掛かった.1968年度に起工,1970年度に竣工し,こども病院240床に肢体不自由児施設(以下,肢体施設と略)50床と重症心身障害児施設(以下,重心施設と略す)40床を併設した小児医療・福祉総合施設として同年4月1日付けで神奈川県立こども医療センター(床面積約1万7千m2)(以下,センターと略)が設置され,5月26日業務を開始した.

病院の広報

WHITE-CROSS医療法人白十字会広報誌/明日へのちようせん財団法人みちのく愛隣協会会報

著者: 東島寿明

ページ範囲:P.741 - P.741

 医療法人白十字会の広報誌は,最初1978年に“UFO”が創刊され,その後名称が“HOPE”に変わり,次いで現在の「ホワイトクロス」となりました.“UFO”は通刊36号,“HOPE”は通刊14号を発行し,「ホワイトクロス」の4月号で,通刊58号を数えます.発行範囲は,関連施設も含め3病院3施設の患者さんや来院者を対象としており2,000部を発行しています.
 編集体制は,看護婦(士),検査技師,事務員などの22名で編集委員会を構成し,原稿集め,内容の検討,写真の撮影や記事の校正を行っています.記事は各診療科の紹介,各医師の紹介,関連施設の紹介や医療保険の情報などを取り上げており,気軽に読んでいただけるように文字ばかりではなく図や写真を取り入れるようにして工夫をこらしています.

保健・医療・福祉政策ウォッチング

小地域における医療費適正化

著者: 病院問題研究会

ページ範囲:P.742 - P.743

 深刻な財政危機を背景として,国家レベルでは,健康保険法改正だの医療保険改革だのと増大する医療費を抑制しようとする論議が高まっているが,これらは,医療を巡る金銭の流れる仕組みを法によって変えてしまおうとするものであり,法改正という手段を有していない市町村にあっては,同じく深刻な財政危機に陥っているとはいえ,医療費適正化に関する論議はさほど熱くなってはいない.むしろ,公立病院を抱えている自治体では,病院の赤字対策のほうが関心の的であり,病院の増収対策に腐心し,結果として,地域の総医療費の増大に貢献する結果となってしまうことが多い.
 日本という国家は自治体の集合体であり,個々の自治体レベルでの医療費適正化が成功しない限り,わが国は医療費危機から脱することはできないであろう.ここでは自治体の首長の視点で増大する医療費の問題に取り組んでみたい.

早期退院計画・2

平均在院日数短縮対策

著者: 竹村浩

ページ範囲:P.750 - P.753

はじめに
 平均在院日数の長短を規定する因子として一般に,患者数,医療機関の機能と経営方針,地域の保健・医療・福祉関連の資源,患者さん側の条件,医療政策などが考えられる.そしてこれらの因子は,病院ごとにそれぞれ重みが異なるので,実際に在院日数を短縮しようとする場合,まず病院の現況を見定める必要がある.ここでは恩賜財団済生会横浜市南部病院の生い立ちを振り返りながら,その作業を進めてみたい.
 キーワードとして,病診連携,医療需要,保険医療政策,社会福祉法人の4点を上げた.

レポート

堺市における病原性大腸菌O157集団食中毒に対する医療の確保

著者: 納谷敦夫

ページ範囲:P.754 - P.757

 1996年7月,堺市において発生した病原性大腸菌0157による児童の食中毒は,総有症者数約6,000名という世界でも未曾有の大発生となった(9月末,堺市対策本部は児童患者のデータベースに基づいて児童の発症を5,499人と訂正した).米国で1993年にハンバーガーを原因食品とした発生時の患者数は700人であった.わが国では1990年の浦和市での発症から岡山邑久町の発症まで,それぞれ患者総数は500人を越えていなかった.岡山県邑久町では有症者468名のうち26名(5.6%)が入院し,2名(0.4%)が死亡した.
 これらは,学校給食に起因した集団食中毒としては大変な事件であるが,救急医療体制という観点からすれば通常のシステムで,かろうじて対応可能であろう.それでも被害地の病院の医師は,押し掛ける患者の治療と転入院先の確保の両方を同時に行わねばならず,大変だったとのことである.

ナースステーション考・7

横浜市立大学医学部附属病院

著者: 中山茂樹 ,   鶴田恵子

ページ範囲:P.758 - P.760

医学部附属病院の位置づけ
 新横浜市立大学医学部附属病院は医学部教育研究棟の移転に伴い,1991年に新設された.横浜市の中心地にあった旧病院は残し,大学病院として救急医療,高度専門医療を提供する市民医療に徹した地域医療の基幹病院としての機能を中心としたのに対し,新病院はあくまで医学部との連携に基づいた教育病院として,先端医療技術の実践の場である点が特徴であり,最新の高度医療機器を配備し,無菌病室・無菌手術室を備えるなど高機能病院として装備されている.後述するように病棟の計画にもこのことが配慮されている点がうかがわれる.

データファイル

マルプラクティス(医事紛争)の実態とその分析

ページ範囲:P.761 - P.765

 1995年4月より2年を経て,医療事故調査会(会員34名,協力医14名.1997年3月31日現在)には全国より問い合わせや鑑定依頼が続いている.医療事故調査会では昨年,第1回シンポジウムで発足1年間の実績を公表し,事故・過誤に対する警告を発した.今年もこの2年間の実績およびその分析を発表する.会はあらゆるツールを通じて,国民に警告を発するとともに,「国民の医療・福祉情報の自己管理」という文化を作り上げることにより,医療者・福祉者の変革を余儀なくする時代にすることが何よりも大切だと考える.
 以下に過去2年間の実態と,その分析を紹介する.

各学会の認定医・専門医数

ページ範囲:P.765 - P.766

 学会認定医制協議会(議長:酒井紀東京慈恵会医科大学教授)は,先般,加盟学会46のうち精神神経学会を除いた45学会の平成9年1月現在の認定医・専門医数,学会認定(専門)医制の概要などをまとめ,発表した.
 各学会認定医・専門医数などは表のとおりとなっている.また,日本医師会,日本医学会および当協議会の3機関合同による三者承認は14学会で実施されており,その数は下記のような状況である(平成9年1月現在).

医学ごよみ

8月—August 葉月

著者: 木村專太郎

ページ範囲:P.767 - P.767

□10日 血清蛋白分画法の発見
 スウェーデンの化学者で電気泳動法により血清蛋白分画に成功したチセリウス(Arne W Tisellius,1902〜1971)がストックホルムに誕生した日である.
 電気泳動とは,溶液の中に二電極を置き,直流電流につなぐと,溶質が陽極や陰極のほうへ移動する.その移動の速さは分子の大きさ,電荷,分子構造などにより異なる.この理論で物質を分画する方法を電気泳動法という.チセリウスは1937年に電気泳動法を考案して,血清蛋白分画に成功した.彼はこれらの功績により1948年にノーベル化学賞を受賞した.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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